
地震で揺れた日に もらったもの
緊急地震速報だー
と びっくりしていたその直後、激しい揺れに襲われる。
あーこれ
結構大きいヤツだ。
東日本大震災ほどではないにしても、それに近いくらいの大きさ。
その時、私は駅構内にいた。
大きなガシャンガシャンという音と共に、高い天井からたくさんの黒い塊が降ってくる。
危ない。
頭を守らなきゃ。
そう思っているのに、私がとった行動は──
ちょうど券売機から切符が出ている最中だった。6枚ある切符を、手は無意識に拾い集めようとしていた。
頭では身を守れと叫んでいるのに、身体は全然違う動きをする。
人間って、本当に不思議だ。
(結局、黒い塊は埃だったのでケガせずに済んだけれど、物によっては大変なことになっていたかもと思うと、少し怖い。)
その後、新幹線は運転見合わせ。
4時間半、車内で待機したあと、ゆっくりと慎重に出発。
通常なら2時間弱で着く乗り換え駅に到着したのは、待機時間を含めて8時間半後のことだった。
車内では、ひたすら無になることで疲労を最小限に抑えた。バッテリー消費を防ぐためスマホも使わず、思いがけないデジタルデトックスにもなった。
乗り換え駅では、振り替え手続きのために窓口の長い行列へ。今回は「大人の休日倶楽部」の割引切符にネット購入の切符を組み合わせたせいで、駅員さんに操作してもらわなければならない。
散々待ったあとに、また行列か──と思ったけれど、仕方がない。
また心を無にして、並ぶ。
ふと、後ろに並んでいた60代くらいのご夫婦と話がはずんだ。奥さんが女優さんかと思うほどお綺麗で、白髪がとてもよく似合っていた。
たわいもない会話だった。お互いの疲労をねぎらい、これから続く旅程のことを少し話しただけ。それでも、あの時間を共に過ごした者同士というだけで、不思議と言葉が弾む。
私の手続きに手間取っている間に、ご夫婦の順番が先に回ってきたらしい。奥さんがそっと私の肩先をちょんと触れ、笑顔でお先に、と目で伝えてくれた。
何だかとても嬉しくて、笑顔で手を振っていた。
素敵な一期一会。
道具もお金もかからず、人を元気にする方法って、あるんだな。
私もそんな人になりたいと思った。
この先、まだ倍以上の距離を新幹線で行かなければならない。しかも接続がうまくいかず、1時間の待ち時間。
普段は封印しているアイスカフェラテを自分へのご褒美に買い、一つだけ空いていた待合スペースの椅子に座って、ぼんやりと飲んでいた。
そこへ、20代くらいの可愛らしいお嬢さんが私と目線を合わせるようにしゃがんで、切符を見せながら話しかけてきた。
「何番線に行けばいいか教えてもらえますか」
降車駅は上越新幹線も北陸新幹線も止まる駅なので、○番線ですよ、と答えた。
でも彼女は乗車案内板の前で、切符と案内板を交互に眺めながら、まだ不安そうにしていた。
そうか。新幹線に不慣れなんだ。
もっと丁寧に教えてあげなきゃと気づいて、駆け寄った。○番線の○時○分発の○○号に乗れば着きますよ、と伝えると、ようやくお嬢さんの顔に笑顔が戻った。
お礼を言いながら歩き出す彼女を見送りながら、ちょっとだけいい気分。
と同時に、恩返しができたような気がして嬉しかった。
実は私の娘も、初めての駅や新幹線がとても苦手で、行くたびに親切な人に助けてもらった話を聞かせてくれる。世の中には親切な人がいっぱいなんだと、聞くたびに温かい気持ちになっていた。
今日は私も、少し親切のおすそ分けができたかな。
この2つの出来事のおかげで、心はかなり軽い。
でも座り続けた私のお尻は、かなり四角くなっていることでしょう。
自宅を出て12時間が過ぎた。
目的地まで、まだ1時間半。
頑張れ、私。