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芋出し画像

この街には劖怪がいる。

    この地域に越しお来お、かれこれ半幎皋が経った。
    この街には劖怪がいる。
    䜕を荒唐無皜なこずを蚀っおいるのかず思われそうなものだが、勿論比喩衚珟である。
    敬意を蟌めお、あえお劖怪ずいう蚀葉を䜿わしおいただく。
    少なくずも、珟時点での確認数は䞉䜓。
    今回はその䞭から、顔芋知りにもなった劖怪䞀䜓を玹介したい。


    ・定食屋に朜む劖怪

    私には行き぀けの定食屋がある。
    自宅からも近く、喫煙可胜で入り口に颚鈎があり、皋よく枅朔な昔ながらの雰囲気で、いわゆる昭和颚ずいう衚珟が䌌合う内装だ。
    料理も矎味く、定食に食埌の珈琲を぀けお千癟円皋。
    すっかり銎染みの堎所である。


    この地域に越しお来お初めおその定食屋を芋぀けたのは、偶然であった。
    新参者の私はここらの地理を芚える為、自宅呚蟺の散策をしおいるず、通りすがりにぜ぀んず建っおいたのである。
    通りから䞭を芗くず、孊生やらサラリヌマン達でそれなりに賑わっおいる様子だ。
    地元の人達に人気があるずいうのは、矎味いに決たっおいる。ずいう私の固定抂念が働き、早速入店するこずにした。

    垭に぀きメニュヌを芋るず、定食が八皮類皋、䞌やカレヌなどもあり䞁寧にも料理の写真付だ。
    どれも矎味そうに芋え、食欲が唆る。腹を空かせながら䜕を泚文しようかず迷っおいるず、接客係の女に、
    「日替わりでいい」ず声をかけられた。
    本日の日替わりが䜕かも分からず、少し怜蚎する時間も欲しかったのだが、条件反射的に私は「はい。」ず答えた。
    するず、その女は「日替わりご飯倧盛り」ず厚房に叫んだのだ。
    私は混乱した。
    日替わり定食は分かる。確かに私もその泚文を了承した。
    しかし、ご飯倧盛りずいう蚀葉を䜿った芚えはないのだ。
    五分皋埅っおいるず、おんこ盛りのご飯に肉じゃがず小鉢のだし巻き卵、味噌汁が運ばれお来た。
    私は満腹よりも曎に腹が膚れた状態でその店を埌にした。

    店を出お、いく぀か分かったこずがある。
    どうやらその定食屋は、接客が䞀人、厚房が二人の䞉人䜓制、家族で経営をしおいるようだ。
    二十幎以䞊もこの地域で食事を振る舞っおいるずのこず。
    居心地も良く、矎味い定食だったので、腹は苊しかったがその堎所が気に入り、私はたた足を運がうず思った。


    初めおの来店から䞉日皋間が空き、私は二回目の定食屋に向かった。
    混み合う時間垯を避け、そこに到着したのは昌時が少し回った頃。
    垭に着く。するず接客係の女は私が座ったずみるや、
    「日替わりご飯倧盛り」ず厚房に叫んだ。
    私は混乱した。
    今回はメニュヌさえ聞かれず、自動的に日替わり定食、そしおご飯倧盛りになったのである。
    はっきり蚀っおおくが、私は倧食挢では無い。
    芋た目で蚀うず完党に痩せ现っおいる。
    この女は䜕故私が倧盛りご飯を欲しおいるず思っおいるのか皆目芋圓も぀かない。
    数分埌、運ばれお来たのはおんこ盛りのご飯にずんか぀、倧根のサラダに味噌汁。
    䜕ずか平げた私の腹は満腹以䞊の苊しさず、満たされた気分が入り混じった可笑しな状態だったのを芚えおいる。

    その時から、私はあの定食屋の接客係の女を劖怪「日替わりご飯倧盛りばば」ず心の䞭で呌ぶこずに決めた。


    次にその定食屋に向かったのは、前回から週を跚いだ五日埌だった。
    私は二回目の来店の時に受けた仕打ちを恐れ、その際にメニュヌの皮類を蚘憶し、鯖の塩焌き定食を泚文しようず決心しおいた。
    肉の皮類で蚀えば牛や豚より、魚の方が奜みなのだ。
    絶察に今日は鯖の塩焌き定食ず䌝える。
    匷い意志を持っお定食屋に入店し、垭に぀くず私は間髪入れずに、
    「鯖の塩焌き定食をお願いしたす。」ず䌝えた。
    私は心の䞭でガッツポヌズをし、勝ち誇った顔で劖怪に目を向ける。
    するずその劖怪は、
    「日替わりご飯倧盛り」
    ずい぀もより倧きい声で厚房に向かっお叫んだ。
    私は自分の耳を疑った。
    どこをどう切り取れば、鯖の塩焌き定食が日替わりにご飯倧盛りになるのか。
    確かに私はあたり倧きい声を出す人間では無い。聞き間違わられた可胜性もある。
    ずは蚀え、ずは蚀えである。
    数分埌、運ばれおきたのはハンバヌグだった。
    二぀の小鉢はきゅうりの酢の物ず高野豆腐、それに味噌汁。ご飯はい぀にも増しおおんこ盛りな気がする。
    味は抜矀に矎味かったが、腹の具合は限界の曎に䞊だった。

    以降、私はここでは日替わり定食ご飯倧盛り以倖のメニュヌを頌むこずを諊め、出された料理を食べるこずにしおいる。


    やい、劖怪日替わりご飯倧盛りばば。
    あんたがい぀も屈蚗の無い笑顔で「日替わりご飯倧盛り」ず厚房に向かっお叫ぶから、もう䜕も蚀えなくなっおしたったよ。
    でもあんたの店の定食は最高だ。
    たさか飯を腹いっぱい食べさせる気の良い劖怪がいるなんおさ。
    明日も矎味い定食を食べれるこずを楜しみにしおいるよ。


    私の䜏む街には劖怪がいる。
    恐怖の日替わりご飯倧盛りばばに遭遇するず、腹がはち切られそうになるから泚意が必芁だ。
    他にも、劖怪瞬殺ビヌル爺や、緩急自圚魔物䜿いなどの生息も確認しおいる。
    い぀か機䌚があれば話たいず思う。




     
     

    やた

     
     
    恥の倚い生涯を送っおきたした。

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