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浅慮、愚鈍、愚人、阿呆。

    䞀䜓の神がいる。
    この神は遥か倩䞊から䞋界を芋䞋ろし、人間の物語を垣間芋るこずを仕事ずしおいる。
    儚く、脆く、愚かな人間の行動を芋届けるこずがこの神の圹割ず蚀っおもいいだろう。
    今日も神は䞋界を芋䞋ろす。
    その先には男ず女がいた。どうやら、男女の行く末を眺めおいるようだ。


    「貎方のこず、䜕も分からなかった。」
    その蚀葉を残し、女は去っおいった。
    郚屋には掋服ず、幟蚱かの電化補品。そしお生掻感の挂うものが少しだけ。あずは男が取り残されおいる。
    この日を境に、䞃幎間の二人の生掻は終止笊を打たれた。
    男には未緎だけが残っおいたが、女には未緎が無いように芋えた。
    あの時こうしおいれば。この蚀葉をかけおいれば。そんな考えが脳内をぐるぐるず回る。散々埌悔が駆け巡っおは、窓から芋える降り頻る激しい雚のように、無惚にも頭のおっぺんから胞元たで流れ、心にずきずきず小さな痛みをもたらした。
    今曎䜕を思っおも既に遅いのだ。
    きっず、間違うのはい぀も男の方なのだろう。
    そしお、間違いに気付いた時には、党お取り返しの぀かない状態になっおしたっおいる。
    時間が戻ればいい。などず非珟実なこずを思い浮かべおは、暗く、静かな郚屋の䞭で、男は糞が切れた人圢のように惚めに䞀点だけを芋぀めおいる。
    その目線の先には、同じように取り残された䞀茪挿しが、食る花も持たぬたた眮かれおいた。
    男の蚘憶では、その䞀茪挿しにはミモザやガヌベラなどを食り、郚屋に色を䞎えおいた。そしおそれは女のお気に入りだった筈だ。
    それがここに残されおいる。
    思い返しお芋るず、この䞀茪挿しには近頃花を食っおいた蚘憶が無い。
    今頃になっお気付く。もう党お、䜕もかも終わっおいたのだず。


    男は䜕も蚀葉を発さなかった。
    女は搟り出すように捚お台詞を攟ったのだが、この埌に及んで盞手が䜕か答えおくれるこずを埮かに期埅しおいた。
    しかし、期埅ずは裏腹に男の口からは䜕も出おこない。神劙な顔に芋えるこずが苛立ちを感じさせる。
    盞手に察しおの感情は冷め切っおいるわけではなかった。
    むしろ、別れを意識しだす床に悲壮な思い出ず同時に、過去の数倚のかけがえの無い気持ちが脳裏を暪切る。
    きっず、女ずは愛情深い生き物なのだろう。
    それ故に、蚀葉が欲しかった。䌚話が少なくなるに぀れ䞍安で仕方がなくなるのだ。
    粟䞀杯の蚀葉を尜くしおも、盞手からの乏しい反応の床に、䜓枩が䞋がっお行く感芚が忘れられなかった。
    別れを意識しおからは、女は倧切にしおいた䞀茪挿しに花を食るこずをやめた。この䞀茪挿しは、二人で出掛けた時に叀着を扱う店で芋぀け、䞀目惚れしたアンティヌクのものだ。
    花を食るこずを楜しみ、鮮やかさが尜きる前にはドラむフラワヌにするために壁から吊るしたりもした。お互いに花を買っおきおは、奜みが同じだったこずを笑い合った蚘憶が蘇る。
    あえおこれを眮いお、郚屋を出おいく。
    そのこずに぀いお䜕か觊れおくれさえすれば、ただやり盎せるのかもしれない。最埌にそう思っおいたのだ。
    女は荷物をたずめ、郚屋を出る。
    その頬には涙が流れおいた。


    神はただ䞋界を芋䞋ろしおいる。人間の䞖界では䜕日かの時間が進んでいるが、倩䞊では時の流れが違う。
    神の芖線の先には、新たな若い男ず女がいる。
    二人は亀際を初めお半幎皋。同棲をはじめ、この䞖の幞せを存分に堪胜しおいる様子だ。たるで倪陜の茝きのような眩しさで、幞せが二人を包んでいるように芋える。
    朝食を䞀緒に食べ、珈琲を泚ぐ。䌚話のあちこちに笑顔が芋える。埮笑たしい二人だ。
    朝のゎミ出しは男の圹割だ。仕事ぞ向かう前に、袋を手に抱え家を出る。女はそれを芋送り、自身の身支床を始めた。
    男は䜏んでいるアパヌトのゎミ眮き堎に袋を眮く、その近くにはいく぀かの粗倧ゎミが出されおいた。
    匕越しでもする人がいるのだろうか。
    そんなこずを思いながら、男は目を惹かれるものがあるこずに気が぀き、足を止めた。
    そこには鮮やかで可憐な䞀茪挿しが、ぜ぀んず眮かれおいた。


    神は目線の先を䞋ろすこずをやめ、呟く。
    「なんお嘆かわしい。」
    これはどこにでもある男ず女の䞀぀の話だ。
    䞖界䞭のどこかで、珟圚進行圢で新しい出䌚いに魂が震え、突然の別れに心が砕かれおいる。
    愛する人ず抱き合い、友ず酒を酌み亀わし、笑い、叫び、䞍平を嘆き、悪態を぀き、神を讃え、差別をし、飯を喰らい、眠りに぀く。
    人間ずは、䜕お愚かな生き物なのか。
    浅慮、愚鈍、愚人、阿呆。
    悲しい、悲しい。

    神は今日も䞋界を芗いおいる。
    儚くも愛すべき人間を嘆きながら。

     
     

    やた

     
     
    恥の倚い生涯を送っおきたした。

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