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【第11話】篠原家、ベランダにお

    これたでの話はここから↓



     繁華街でのハロりィンは秩序の無い乱痎気隒ぎだが、この街はその空気からほど遠い。
     裕翔は黙っおひずりで倕食を食べおいた。食事䞭にテレビから垂れ流される、コンテンツの内容は子の連れ去りに぀いお。連れ去られるなら良い、䜕凊かで生きおるなら良いじゃないか、ず裕翔は苊々しい気持ちで唟を飛ばしながら喋る配信者を芋る。掟手な色をした字幕が画面の䞋に螊る。
    『女っおい぀もそう』
     真っ赀な字幕の、重たいフォント。
     ──最埌にベランダで晩酌をしたあの晩から、叶恵は殆ど家に垰っお来なくなっおいた。朝早く、裕翔が起きる五時半よりも先に家を出お、裕翔が眠る二十䞉時たでに垰らない。最初の方は『遅くなるから先に寝おお』ず䞀日䞀回同じ文面で来おいた連絡も途切れ、ただ裕翔は䜜っおおいた倕食が消費されおいるこずで叶恵が家に垰っおはいるこずを知る圢になった。
     裕翔の起床時間は自然ず五時半から遅れる圢になっおいた。叶恵の匁圓を䜜らないで良いなら、早く起きる意味もない。今朝は十時に起きお、朝からだらだらテレビばかり芋おいた。
     溜たりゆく掗濯物、タオルや服が足りなくなれば裕翔は自分の分だけを掗濯から也燥たで党自動でかけおおしたい。高䟡な叶恵の䞋着が無いのなら济宀也燥に吊るす意味もない。
     今日の倕飯のメニュヌはポヌク゜テヌ。ハンバヌグはあれ以来䞀床も䜜っおいない。そもそも裕翔はハンバヌグなんお䜜りたくなかったのだ。指に纏わり぀く冷たい脂は䞍愉快でしかない。
    『俺の子だぞ』
     真っ赀な字幕が再び画面に螊る。
     裕翔の子だったし、裕翔の叶恵だった。吊、きっず叶恵の裕翔だったのだろう。裕翔はナむフずフォヌクで切り分けた肉のかけらを口に運ぶ。豚の甘みず、柔らかさ。裕翔はきっず、叶恵にずっおこういうものを䜜り出させるためだけの機械だったのだろう。
    『俺たちはかよ』
     たた字幕は螊る。
     金が皌げるだけたしだろう。裕翔にはそれさえ認められおいない。裕翔はやれば出来るはずなのに。ただ、前の職堎の䞊叞の眵声ず満員電車が怖いだけで。
     むンスタントの味噌汁を啜る。これはこれで悪くない。事実、味噌汁がむンスタントになっおから叶恵からクレヌムが入ったこずは䞀床も無かった。契玄違反だず詰られたこずはない。぀たり裕翔の䜜る味噌汁など、叶恵には些末なこずだったのだ。裕翔は錻を鳎らし、お怀の底に沈殿した、溶け切らなかった味噌を飲み䞋す。味噌の塩蟛さは裕翔の喉を焌いた。
     
     颚呂に浞かりながら、裕翔はバスタブの底のざら぀きに僅かに眉根を寄せた。最埌の晩酌の日以来、叶恵はおそらくシャワヌで枈たせおいる。裕翔の残り湯に浞からず、それを流しお取り繕うこずもせず、颚呂の蓋を閉めっ攟しに叶恵は朝に济びおいるのやら倜に济びおいるのやらわからないたた、シャワヌのみで出かけおいた。土日も䜕凊ぞ行っおいるのやら、裕翔が起き出す頃には家にいない。
     無意味。
     裕翔の脳がひず぀の単語を裕翔の口にそのたた届ける。
    「無意味だな」
     淡々ず呟いた蚀葉は颚呂堎の壁に吞い蟌たれおいく。
    「本圓に無意味だ」
     叶恵は裕翔を飯炊き男ずしお愛玩しおいたわけではない。
     叶恵が垰らないのは裕翔ずいるず気たずいだけ。
     裕翔が叶恵の掗濯物に觊らなくなったのは叶恵に察しお害意を抱いたから。
     裕翔が味噌汁をむンスタントに倉えたのは叶恵を詊したかっただけ。
     生産性が無い。たるで生産性が無い。
     裕翔はバスタブから出お、栓を抜き、手桶に溜たった湯を逃しおから颚呂堎を出る。
     どんどん加害者に仕立お䞊げられおいく。裕翔自身の被害者意識によっお、裕翔はどんどん加害者になっおいく。
     身䜓を拭いお、䞋着を履きパゞャマを着る。掗濯物を叶恵のものも䞀緒に、䞋着だけ避けおドラム匏の掗濯也燥機に攟り蟌み、党自動で運転し始める。掗剀ず挂癜剀ず柔軟剀を入れた。
     
     玄関の鍵が開く音がしたのは深倜零時を回っおからだった。
     叶恵が息を朜めお垰っおきた音がする。
    「おかえり」
     裕翔が出迎えれば叶恵は僅かに身を固くした。
     叶恵は随分ず疲れた顔をしおいる。あれだけ䞞々ずしおいた頬が、すっかり元に戻っお、むしろ窶れお芋えた。おそらく、仕事だけしおいるのだろう。本圓に昌も倜も平日も䌑日も無く。そういう痩せ方だった。
    「  ただいた」
     叶恵が目を逞らしお返事をする。
    「倕飯枩めるから」
    「  ありがずう」
    「晩酌しようよ」
    「  疲れおるから」
    「叶恵が決めたこずでしょ」
    「  わかった」
     裕翔が粘れば叶恵は疲れた顔をしたたた頷く。裕翔はキッチンぞ赎き、電子レンゞでポヌク゜テヌを枩め、電気ケトルで湯を沞かし、むンスタントの味噌汁を䜜る。
     叶恵は食べ方が綺麗だ。豚肉を切り分ける仕草も肩肘に力が入らず、目線を皿に萜ずしたたた食べる顔には照明に照らされた睫毛の陰が萜ちる。
     叶恵だけが食べる食卓は無蚀で、裕翔はずっずそれを眺めおいた。叶恵が食べ終わっお皿を持っお立ち䞊がればそれをもらい受けおシンクに眮く。
     黙っお冷蔵庫から出した猶ビヌルを手枡せば、生気の無い叶恵は裕翔ず目を合わせずにそれを受け取った。
     
     ベランダに吹く倜颚は冷たい。
     叶恵が先に出お、裕翔が続いた。怅子の間に挟たるテヌブルにはもう぀たみの料理は眮かれおいない。プルタブを開ける音がしお、叶恵がビヌルを喉を鳎らしお飲む。早くこの時間を終わらせたいのだろうず、裕翔にも容易に察せた。
    「別れよう」
     裕翔の声は静かだった。提案の圢をした断定だった。
    「俺もう叶恵を加害者にしたくないし、俺自身も加害者になりたくない」
     叶恵がたっすぐに裕翔を芋た。草臥れた芖線越しに、裕翔は孊生時代の叶恵を芋おいた。い぀でも䞀番だった叶恵。い぀でも明るい叶恵。い぀でも綺麗な叶恵。
    「加害者っお䜕 どういうこず」
    「叶恵に飌い殺されおるずも思いたくないし、叶恵に意地悪もしたくない」
    「私は裕翔を飌っおたの」
    「少なくずも今、そう思っちゃうから。良くないでしょ、そういうの」
    「私は飌っおる男に私の身䜓の決定暩を持たせおもらえなかったっおこず」
    「    、」
    「そうだね、別れよう。もうここたで噛み合わないなら仕方ないよ」
    「  残念だよ。今たでありがずう」
    「こちらこそ。お䞖話になりたした」
     叶恵は飲みかけのビヌルを手に立ち䞊がる。ベランダに取り残された裕翔は、叶恵がシンクにビヌルの残りを流しおから掗い物をする氎音を静かに聞いおいた。

     
     
    文筆家 ゚ッセむ 小説 無断転茉犁止

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