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人を集めたのは、カリスマではなく『吸引力』だった

風俗店経営が好調の時の話し。
風俗店や飲食店がうまく回っていた要因は、僕に経営力、カリスマや魅力があったからではない。
ただ一つ、「吸引力」があったからだと思っている。

​優秀な人間が吸い寄せられるように集まってきた。その理由は単純だ。
お金が回っている現実を、僕が意図的に見せていたからだ。
「この男の側にいればチャンスがある」「人生の時間をショートカットできる」そう思わせていた。
事実、入店わずか2ヶ月で、たまたま目にとまった人間の給料が30万から200万に跳ね上がったこともあった。
(もっとも、その200万は基本給ではなく成果報酬だが)
そういった成功の具体例を意図的に言いふらすことで、野心のある優秀な人材を引き寄せていたのだ。

​僕自身が経営者として優秀だとは全く思っていなかった。
だからこそ、店に顔を出す機会があっても、なるべく早く帰るようにしていた。
長時間話せば、底の浅さやバカがバレる。
バレる前に立ち去るのが賢明だった。

​そんな風に、最初の2〜3年は駆け引きばかりだった。
関係者と会うことはイコール駆け引きだった。
だからこそ、逆説的に孤独と向き合っていた気がする。
カフェにいたり、本屋にいたり。キャバクラ行ったり、愛人と会ったり。
一人ぽつんと公園のベンチに座り、草木を眺めて癒やしを得るようなこともあった。
そうやって癒やしを求めていた。

​やがて風俗店と飲食店がある程度の数に達した段階で、僕は現場から物理的に距離をとり始めた。
なんか疲れて嫌になったのだ。
店舗運営の歯車が逆回転を始め、転落編へと繋がっていくのは、ちょうどその頃からだ。
それでも、手を離してから7年ぐらいは持った。
よく持ったとも思う。

​結局のところ、風俗店も飲食店も、ビジネスの基本の仕組みはそれほど変わらない。
例えば、若くて地頭のいいヤツがいれば、デリヘル1店舗ぐらいは300万もあれば作れる。
事務所を用意し、広告を打ち、求人を出して回していくだけだ。
仲のいい不動産屋、付き合いのある広告代理店やスカウトグループ、そういった人脈があればいい。
スタート時には、僕の方でスタッフや女の子を回すこともできた。
店を5つ持っていれば、各店からスタッフ1人と女の子2人を借りてくるだけで、スタッフ5人と女の子10人の新店舗などすぐに作れる。
やろうと思えば、客の導線すらこちらでコントロールできた。

​核になる店長が1人いれば、僕が種銭と箱を用意し、あとは勝手に回してくれる。
ダメなら店長を入れ替えるだけだ。
僕は金と人脈を用意するだけで、口をあまり出さないオーナーだったから、地頭のいい野心家にとっては都合が良かったはずだ。

​僕の成功パターンはこうだ。
まず僕が300万〜500万を用意する。
不動産屋、広告代理店、スタッフ、女の子といったリソースを一旦揃える。
店が回りだしたら、毎月50万〜200万のレンジで投資分を回収する。
基本は店長と僕とで利益を折半する。店長にとっても人生の時間をショートカットできる仕組みであり、僕にとっても高コスパで金儲けができるシステムだった。

​そして、その分かりやすい成功例が、次の優秀で野心のある人間を引き寄せる。
その繰り返しだった。

​しかし、ここで一つの限界が訪れる。
地頭のいい野心家というのは、ある程度のところまで育つと、当然のように自分の種銭を握って独立していくものなのだ。
彼らを繋ぎ止めるための防壁として、向こう側の世界との繋がりや、不文律の抑止力が一定の効果を持っていたのも事実だ。
ただ、僕は意外に独立を認めていた。
それが次の出会いに繋がるからだ。
縛りつけてもいずれは離れていくし、恨みをかうこともある。
何よりスマートではない。
面倒な貸し借りやしがらみを抱え込むくらいなら、去る者は追わず、そのまま手放した方がコスパが良かった。

​金で集まった人間は、より多くの金や独立のチャンスが見えたら出ていく。

​人間関係をもコスパで割り切った金儲け。
吸引力が保てなくなると、歯車が逆回転し崩壊を始めた。

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