
何も言わない息子と弁当作り
息子が中3の時に離婚した。
心身ともに張り詰めていて、細いロープの上を、落ちないように必死で歩いている感覚だった。
落ちたら、そのまま飲み込まれてしまう気がしていた。
慣れない仕事をはじめて、疲れ切っていた。
息子が高校に入り、弁当作りが始まった。
いつも同じおかず。
ミートボール・卵焼き・ブロッコリー・プチトマト・ひじき・プルーン。
具合が悪いのだから、ときどき休めばよかったのに、と今なら思う。
でも当時は、毎日作らなければと思い込んでいた。
休む勇気も、休むきっかけもなかった。
弁当作りは前日の夜にしていた。
夜中の12時ごろ、台所で頭がフリーズして、動きも止まってしまうことがよくあった。
その日は、使った皿をどこに戻せばいいのかもわからなくなった。
焦りと不安で変な汗をかいて、立ち尽くした。
そこへ息子が帰ってきた。
「お皿をどこに戻したらいいか、わからなくなった。戻してくれる?」
息子は表情ひとつ変えず、
サッサッサー
と定位置に皿を戻してくれた。
少しイラッとしているようにも見えた。
「助かったー。ありがとう。」
そう言って、わたしは息を吹き返した。
息子は、
「なにやってるの」
とも
「大丈夫?」
とも言わなかった。
わたしもなにか言って欲しかったわけじゃない。
なにか言われたら、壊れてしまいそうだった。
弁当作りと聞くと、思い出すこの場面。
息子は、あの時なにを思っていたのだろう。