8歳の茶猫が教えてくれた、当たり前のありがたさ
去年の10月、和歌山に旅行に行っていた。
帰り道、三重で一泊した。もう一泊、伊豆にも寄ってから帰る予定だった。
その晩、実家から電話が来た。ぎんなんの世話を頼んでいた両親からだった。ご飯を食べない、何度も吐いている、と。
毛玉を吐くことはこれまでもあった。でも、今回は違う気がした。吐いた後も、ずっと食欲が戻らないと聞いて、伊豆はキャンセルにした。三重から、そのまま家に向かった。
いつもと違う
家に着いて、すぐに動物病院に連れて行った。
その日は吐き気止めをもらって帰った。それで少し様子を見ることになったけれど、翌日になっても調子は戻らなかった。
もう一度、今度はしっかり調べてもらうことにした。
エコーで、腸に炎症があること、リンパ節が腫れていること、少しだけ腹水があることが分かった。細胞診では、腫瘍の可能性は低いと言われた。ほっとしかけたところで、「これ以上は、開腹して見てみないと分からない」と言われた。
決めるまでの一晩
急に、大きな決断を迫られた。
一度は家に連れて帰った。手術をするかどうか、その晩ずっと考えていた。
こういうとき、自分がどれだけ何も知らないかを思い知る。開腹検査が一般的なのか、他に方法はないのか、この病院に任せて大丈夫なのか。次から次に疑問が出てきて、気づいたらAIに聞き続けていた。
朝も夜も関係なく、藁にもすがる気持ちで調べた。あとから思えば、この時期が一番AIを使った時期だったと思う。ここから、AIを相棒のように使うようになった気がする。
結局、次の日には手術を決めていた。
手術の日
開腹すると、腸の機能性閉塞が2か所見つかった。リンパ節の腫れも、やはりあった。
その場で切除できるところは切除して、閉じた。
もともと通っていた病院は車で20分ほどかかる場所だったけれど、このときは近くの病院に駆け込んでいた。おかげで、入院している間は毎日会いに行けた。それだけは、幸いだったと思う。

それから
切除した組織を調べてもらって、しばらくしてから結果が出た。
低悪性度リンパ腫、ということだった。
ステロイドと、クロラムブシルという抗がん剤を併用する治療が始まった。今年の7月からは、クロラムブシルだけに減らせている。
今のところ、それなりに元気に過ごしている。
当たり前だったこと
あの数日のことを思い出すと、今でも少し落ち着かない気持ちになる。
「いつも通り」が、いつまで続くのか分からなかった。ご飯を食べること、吐かずに過ごせること、そういう当たり前のことが、当たり前じゃないんだと、あのとき初めて分かった気がする。
窓辺で丸くなっているぎんなんを見ると、今もふと、あの数日を思い出す。
それだけは、たぶんこの先も変わらない。
