メインコンテンツへスキップ
見出し画像

半フィクション!

    あらすじ
    主人公田中マサルは中学2年生。どこにでもいる普通の少年だった。一緒に暮らす祖母の霊感がすごく強いこと以外は。
    その霊感故か、祖母は「人の死を予知できる」という能力を持っていた。
    夢で黒電話が鳴り、出ると死ぬ人の名前を一方的に言われて目が覚めるというものだった。
    そして「マサルが死ぬ」という電話がかかってきたことを相談している祖母の会話を聞いてしまった。それをきっかけにマサルの人生は少しずつ変わっていく。
    中学2年という多感な時期の主人公が死ぬかもしれないという曖昧な情報を元に考え出した生き方とは。本当にマサルは死んでしまうのか。
    作者の祖母の実体験を元に作られた半分くらいノンフィクションの青春ホラー小説です。



    数十年前の話だ。
    マサルが呪いに殺されてしまった。


    僕のばあちゃんは霊感がとても強い。嘘ではない。霊が見えるのはもちろん、すごく特別な力も持っている。それが、これから亡くなる人の予知だ。

    ある日寝ていると夢の中で突然黒電話がジリリリリと鳴り、電話に出ると男の人の声で

    「○○さん死んだんだって」

    電話はぷつんと切れて夢から醒めるらしい。この死の宣告、いや、お告げがあってから1週間以内にポックリ逝くんだわ、とばあちゃんは怖がる僕にこの手の話をする。ニヤニヤと笑い、茶化すのが大好きであった。
    2年前に他界したじいちゃんもその被害者の一人である。
    ばあちゃんはじいちゃんの電話がかかってきたと、家族を集め、入院しているじいちゃんがあと何日持つか賭けをしないかと、悪い顔をして笑うのであった。
    じいちゃんは4日後しっかり亡くなった。葬式ではじいちゃんのために泣くばあちゃんがいて、とんでもない女優。いや、むしろ殺人鬼の気配すら感じた。
    年を取るにつれて外すことが増えてきた、としょんぼりしていることもある。そんな恐ろしい能力ない方がいいだろ・・・。
    とんでもないババアである。

    打って変わってもうすぐ中学2年になる僕、田中マサルには霊感はない。むしろ何もない。お化けは嫌いだが少しばあちゃんから霊感を分けてもらいたかったくらいだ。何も分けてくれなかったんだ。ばあちゃんの心霊話をまるで自分が体験したかのように友達に話す。これくらいいいよね。
    小学校の時はこの話が十八番で、たまに嘘を付け加えたくらいにして人気を得ていた。
    被害者の皆さん、ごめんなさい。何も分けてくれなかったのだからしょうがない。


    春休みも終盤。まもなく新学期。世は新学期・新生活に向けてせっせと準備をしていた。雪は解け少しずつ草が土から顔を出し、春の訪れを感じ始めていた。
    今日はサッカー部の練習がなかったのに珍しく早起きをした。眠たい目をこすり、リビングへ降りようと階段に差し掛かったところでとうさんとばあちゃんの会話が聞こえた。

    「大変だよ。マサルの電話がかかってきた」

    僕の寿命はあと少しらしい。

    とうさんはばあちゃんを慌てて一階の自室に連れて行ったようで、大きな音を立てて扉が閉まった。

    耳には鳥のさえずりがいつもより大きく聴こえた。階段に座り込み、死について考えようとしたが実感はなかった。
    健康体そのものだったからだ。
    気づくと涙がこぼれそうになり、目を腫らした自分が今リビングへ降りるのは不自然だからと、自室へ戻った。
    「ほんとに死ぬのかな」
    二段ベッドの上で寝ている弟に気づかれるようにわざと大きな音を立ててベッドに体を沈めた。ベッドが揺れ、弟は舌打ちをしただけで、僕はそれを無視した。
    布団の中では走馬灯のようにこれまでの輝かしい思い出が溢れてきた。


    僕の暮らす街は小さな都市。生活には困らないが地下鉄だなんて近代的な乗り物はない。クラスは40人一クラス。人数が少ない分友達とのつながりが強かったと思う。
    小学4年生の僕は姉が6年生におり、1年には弟がいた。
    野球少年団に所属していた僕はクラスで一番野球がうまかった。少年団の中でもレギュラーであり、祝日の試合には毎回両親が応援に駆け付けてくれていた。高校野球児であった父は試合の後よくバッティングセンターに連れて行ってくれ、野球中継があればそれを見ながら野球談議が盛り上がった。グローブやバットも最新で、チームメイトからは羨望の眼差しを受けていた。10歳にして将来はプロ野球選手になりたいとすら思っていた。それくらい同学年の中では群を抜いてうまかった。
    試合で活躍すれば勝手にチームメイトがクラス中に活躍ぶりを伝えてくれていた。
    「マサル君おはよ~!昨日も野球すごかったんだって?」
    「マサルすごかったんだぜ、あと少しでホームランだったんだ!」
    僕は驕らず、照れていればよかった。
    姉は勉強ができ、塾で受けた全国模試では上位に名前が載った事もあるくらいだ。
    姉の友達に可愛がってもらい、姉のおかげで先生方にも名前を覚えられ、勉強はさほどできなかったが友達にも恵まれ順風満帆な小学校生活を送っていた。

    「マサル君ってホントに優しいよね!」

    小学4年生にして急激に仲良くなった同じ名前のマサルがそう言った。うちのクラスにはダイスケも2人、サクラも2人と同名が3組もいた。
    傘を忘れたらしく一緒に帰ろうと声をかけたのがキッカケであった。
    家が向かいのマンションであり、野球がなければ2人でパソコンやゲームにかじりつき、他愛もない会話で盛り上がった。
    「二人とも、そろそろ晩御飯だから今日は解散よ~。マサルはご飯食べたら塾に行かなきゃ」
    とマサルママから声がかかるまで遊び続けていた。
    学校では双子と呼ばれるほどの仲になった。僕とは違って塾に行っている分勉強ができ、それをすごいと言うと、「野球がうまい方が羨ましいよ」と二人で照れ合った。
    小学6年の春に転勤族だったマサルは引っ越した。飛行機じゃないと会えない所に行くらしい。親がとても勉強熱心で、中学受験をするんだと言っていたが、へーすごいねくらいの感想で。もう会えなくなってしまうことで頭はいっぱいだった。僕のくだらない話にこんなに笑ってくれて、こんなに居心地のいい友達はもうできないと思った。

    マサルの転校後から少しずつ生活が楽しくなくなっていた。野球はいいところまで行ったが準優勝。少年団の退団後は弟が小学3年にしてレギュラーを獲得し、秋の大会では大活躍であったととうさんは喜んでいた。友達はいっぱいいたが、冬になると僕にはゲームが少し好きという肩書のみ残っていた。


    中学は隣町の小学校に通っていた生徒も合わさり、1学年80人ほどの、小学校では考えられない人数の集団となった。
    そしていつの間にか僕の名前は田中に変わっていた。

    部活にはサッカー部に入ることにした。小学校の友達からは「なんで野球やらないの?あんなに上手だったじゃん」と言われたが、もう野球は飽きた。あんなダサいスポーツやってられないんだわ、とケラケラ笑いながら言ってやった。
    親にサッカー部に入る事を伝えるとあっさり
    「マサルの好きなことしたらいいよ、応援してるからね!」と拍子抜けする返答で驚きと同時に悲しくなった事を今でも覚えている。

    ほとんどが経験者の中でずぶの素人がうまくやっていけるはずもなく、新品のスパイクや汚れのない部活用のカバンは1年生の中で悪目立ちをしていた。
    3年のサッカー部に姉のことを知っている先輩もいたが
    あぁ、田中の弟なんだ・・・そんな喋った事ないや。
    と姉のせいでなんとも言えない距離感が生まれていた。

    同学年で目立っていたのは隣町出身のヒカルとタダシだった。
    ヒカルは顔がイケメン。サッカーも市の選抜に選ばれていたらしく、先輩方ともすぐに打ち解けていた。
    タダシはヒカルと同じサッカークラブに所属していたらしく、なんだか仲も良さそうに見える。入学してすぐのクラス委員長の選出では自ら立候補していた。とても同じ12年間を過ごしたとは思えないほどのリーダー性のような、なんだか大人のような雰囲気があった。

    2人とは同じクラスで、タダシは僕に話しかけてくれたがヒカルとは話せなかった。そのまま1カ月が過ぎた。

    「おーい田中。先部活行ってるぞー」と小学校の同級生、山下が言った。
    「先行ってて。掃除終わったらすぐ行くー」と返し、机を後ろへ運んだ。
    そこに「田中ってサッカー部なの?タダシと友達?」
    とコウイチが話しかけてきた。
    コウイチはタダシととにかく仲がいい。休み時間はタダシだけじゃなく色んな友達と話している。すでにうちの小学校出身の奴からも‘‘コーちゃん’’だなんて呼ばれ、輪の中心にいる気がする。帰宅部なはずなのに、愛嬌で人望を得ている感じやひょうひょうとしているところがなんだか鼻に着く感じだ。
    「た、タダシはまだそんなにしゃべった事ないな。仲いいの?」ととぼけて返してやった。
    「そう!俺たち幼稚園から一緒でさ。親同士も仲いいのよ。俺コーイチって言うの。みんなからコーちゃんって呼ばれたりしてるから呼びやすいので呼んで~」と"ゲッツ"のようなよくわからない決めポーズで締めくくって言った。その動作に笑えばいいのか、ツッコめばいいのかよくわからず引きつっていたであろう表情で「よろしく」とだけ返した。

    右も左もわからないサッカーの練習をなんとかついていけたのには理由がある。バスケ部のツバキちゃんの存在だ。
    ツバキちゃんは背がスラっと僕より高くて、色白。小学校からミニバスに所属しており、1年生の中では断トツで上手いらしい。バスケの時に髪の毛を後ろで縛る姿がクラスで見る雰囲気と違いドキッとした。下手くそな身分のためサッカー部の練習が終わってからの片付けは率先してやった。ついでにバスケ部の練習が見えないか、何度も体育館横を意味もなく往復した。部活終了後もみんなには先に行っててもらい、支度もないトイレへ行くフリをしてどうにかツバキちゃんに会えないものか、みんなにバレないようにバレないように3日に1回のペースで作戦を実行していた。話しかけたいが、話題はない。
    女子からの人気も高く、休み時間は芸能人のように机の周りには人だかりができていた。話題もなければつけ入るすきもない。
    そんな無敵の城にさっそうと現れるのがヒカルだ。

    小学校が一緒で、イケメンで、運動ができる。小学校の僕なら太刀打ちできた、いや、もう付き合ってるまで考えられるか。しかし今の何も持ち合わせていない僕にはそもそも話しかける資格すらないのだ。

    (ヒカル君と仲良くなれば、話しかけられる?)

    気づけば女子の中で楽し気に話す2人をじっと眺めていた。

    7月になり、クラスは夏休みの話題が本格的になってきた。クラスの人とは1回は話したことある程度(ツバキちゃんとは3回、グループワークにて)になったがヒカルとの仲が急激に縮まる事はなかった。

    サッカー部内は最新ゲームの話題で持ち切りだった。久しくゲームはしてなかった。正確にはやってはいたが前にクリア済みのゲームをやり込むくらいだった。今度コウイチの家でそのゲームをして遊ぶらしい。ゲームは一人1個ずつ持っていないと通信ができず、遊ぶことができないものだった。
    タダシ「田中もくるか?」
    僕「え、いいの。行きたい!」
    山下「田中ってどこまで進んだ?俺マジゲーム下手でさ、まだ3つ目のボスしか倒せてないんだよね」
    僕「まじ?俺は4,5?のボスくらいまでかな」
    タダシ「まじ!田中ゲームうまいんだな。今度攻略の仕方教えてよ。4つ目のボスがマジ倒せないんだよ」
    今週の土曜、つまり3日後。持っていないゲーム大会が開催されることとなった。

    今日の部活は休み。急いで家へ帰り、ゲームがすぐに欲しいことをかあさんに伝えた。
    僕「かあさん、ちょっとゲーム買ってくるから」
    母「は?ゲーム?なんの、いくらするのさ」
    僕「最近出たやつ。いくらかはわからないけどとりあえず買ってくる。土曜日タダシの家でそのゲームで遊ぶことになったの」
    母「ふーん。お金あるの?」
    僕「お年玉まだあるから全然余裕」
    母「あんた、一応とうさんに聞かなくていいの?」
    僕「ガキじゃないんだから、じゃあ行ってくるわ」
    母「テスト勉強もちゃんとしなさいよ」
    僕「あ、車出して」
    母「はぁ?自転車で行けるしょ、おかあさんこれから夕飯の支度しないといけないんだけど。とうさんが帰ってきたら連れてってもらいな。」
    僕「いいじゃん、そんなの後でも。ねぇちゃんとかの塾の送り迎えはすぐに行くくせに」
    母「それとこれとは別でしょ・・・。ああーもうわかった。ちょっとまってな」
    かあさんに電気屋へ連れてってもらい、知り合いがいない事確認。目当てのゲーム機本体とソフトを一目散に購入し店を出た。

    夕食中、かあさんが新しいゲームを買いに行かされたことを家族に愚痴っていたがとうさんは「まあ、本人のお年玉だしいいんじゃないか」と野球中継を食い入るように見ては弟と野球について話していた。

    それから土曜の朝までパソコンで攻略方法を調べながら学校以外の時間をゲームにつぎ込み、5のボスを倒したところまでなんとか進めることができた。寝不足だったが、これから来る晴れ舞台が待ち遠しかった。

    土曜日、サッカー部の連中が帰宅部のコウイチの家に集まってゲームをする。しかもコウイチはゲームを持っていなかった。奇妙だった。持っていない奴がなぜ参加できるんだ?とも思ったがまぁ関係はないかと思った。
    「田中すげぇ!めっちゃ進んでるじゃん!このボス一緒に倒してや!」
    「田中、なんでも知ってんな!ゲームはうまいんだなぁ~!」
    久しぶりの感覚だった。みんなでワイワイゲームをする。やっぱりみんなでやるゲームは楽しい。
    僕「手伝えることあれば言って~、あれからあんまりゲームできてなくて進んでないけど、みんなの手伝いくらいはできると思うから。」
    なんてみんなのことを気遣ってあげた。ゲームに熱中し会は盛り上がっていた。
    コウイチ、タダシ、ヒカル、僕、その他3人を含めた7人の集まり。コウイチはみんながやっているゲームを後ろから見ながらニコニコしている。
    途中コウイチは「俺もなんかゲームしたくなってきた!違うゲームしようかな」とノートパソコンを自室に持ってきた。父親の物らしい。
    「みんな気にしないでやってて!」と言い彼はソリティアというゲームを始めた。「それ知ってる」とヒカルが食いつき、いったん休憩してこっち見ようかなとタダシが続いた。
    「じゃあこっちは続きやってるわ。」と山下が言う。
    僕はコウイチに対して
    なんて空気の読めない奴なんだ
    と思った。
    せっかくみんなが盛り上がっているところにわざわざ違うゲームを持ってきて、みんながこのゲームやりたいって言って集まった会なのに。普通貸してとか、このゲームを続けるために話持っていくだろ。とふつふつとした怒りすら感じた。
    だが気づくと僕以外の3人もソリティアに夢中になっていた。僕も話を、雰囲気を壊さないようみんなの後ろに並び声の高さを合わせた。

    あれから少し眠っていたようだ、ちょっとしたタイムスリップで、夢か現実かわからなくなった。たしかに、さっき僕は死の宣告を受けた。両目の頭とお尻から頬にかけてカペカペの筋を手でぬぐい携帯に目をやるとメールが来ていた。ヒカルからだ。
    (今みんなでマックいくからお前も来いよ)
    僕は嬉しかった。財布に一万円札をいれリビングへ小走りで降りた。弟はとっくにとうさんと野球へ、ねぇちゃんは春季講習?だかなんだか、2人ともご苦労さんだな。
    僕「かあさん、遊びに出かけるからお金ちょうだい」
    母「今からって・・・もう昼ごはん作り始めちゃったんだけど!なんで早く言わないのさ」
    僕「うるさいなぁ。突然誘われたからしょうがないし。いいから3000円ちょうだい」
    母「3000円もいるの?」と顔が曇った。
    僕「遊びもだけど今度コウイチの誕生日で、みんなでプレゼント買う事になったんだよ」
    母の表情は一変しキラキラした顔で「コウイチ君誕生日なの!?いつさ、母さんもお祝いしてあげたいわ」
    僕「いつかは知らん、てかかあさんコウイチのこと好きすぎてキモい」
    母「だってみんな良い子だけど、あの子は特別良い子でしょ。話も面白いし、なんだかみんなよりも大人って感じで母さん大好き。あんたも少し見習いな、マサル。あれくらいあんたも明るく、、」
    僕「うるさいな、わかったから金、みんな待ってるんだって」
    母さんは晴れ晴れした表情で5000円渡してくれた。
    あいつの何がそんなに良いんだ、みんなチヤホヤ。運動も勉強も俺よりできないのに。ひょうひょうと明るく好き勝手に、、ヒカルとタダシと遊ぶ時必ず付いてくるし。二人と遊ぶにはってしょうがなく付き合ってるけど・・。
    ぶつぶつ心の中でコウイチのことを思ったが、それが伝わらないように何も言わず金を奪ってその場を去った。

    そういえば、コウイチは死ぬのがわかってたら何をするだろう。あいつなら何をして過ごすんだろう。

    そうだ。この話をすれば。いい土産話になるじゃないか!
    死ぬかもしれない話はきっと盛り上がるに違いない。さっきまでの悲しかった感情がいくらか和らぐ感覚がして、この考え方が正しいのだと感じた。

    外に出ると家の前にまだ溶けきっていない雪山が残っていた。もうすで膝下あたりまで溶けてきており、あと数日も待てば溶けるであろう雪をせっせと鉄製のスコップで道路に投げる老人を目にして、なんて非効率で暇なのだろうと哀れみさえ感じた。




    昼だからなのか、春休みだからか。ドライブスルーには車の長蛇の列が。みんな同じ日に同じ店にこんなに。他に行くところはないのか。僕は今中学生だからこの自転車で行ける範囲だけだけど、大人になったら家族にいろんなところに連れてって、、、まぁもう死ぬから関係ないか。

    マックへ着くとコウイチが手を振って席をアピールしてくれていた。
    ヒカル「おっそいなぁ。何してたんだよ」
    僕「ごめんごめん、寝てた」ばつが悪そうな笑みで返した。
    僕「みんな何食べてるの?」
    タダシ「ハンバーガーとコーラ。コーちゃんなんてハッピーセットだぜ」
    コウイチ「いやー、このおもちゃ欲しかったんだよねぇ。マジ嬉しい」
    ハッピーセットの付録を上に掲げうっとりとした表情で眺めている。
    僕「へー。ヒカルは?飲み物だけ?」
    ヒカル「今日金なくてさ。ちょっとずつみんなからもらってたの」
    僕「しょうがないなー。マックくらい奢ってあげるよ。何がいい?一緒に買いにいこーぜ」
    ヒカル「マジ?!ラッキー!ごちになります!」
    自分用とヒカル用、席に残った二人にはマックシェイクを買ってあげた。二人とも喜び、「ほんと田中って気が利くってか、優しいよな」と感心したように言うもんだから、照れ臭かった。
    13時に集まり気づけば14時になろうとしていた。
    僕「これからどうする?みんなでイオンでもいく?」
    タダシ「ごめん。俺とコーちゃん16時から塾なんだ。だから15時には帰んないといけない」
    僕「そうだったんだ。今ねーちゃんもなんちゃら講習に行ってて忙しそう」
    タダシ「ほんと、春休みなんだから休ませろっての。なにが‘‘この春で予習したところが2年生の差になります、今がチャンスですよ”だよ」コウイチは塾の先生のモノマネらしいことをして、タダシはそれを見て笑っている。
    ヒカル「知らないやつのモノマネすんな」と笑いながらツッコみ、僕ははははと笑う。
    コウイチ「二人も塾入ろうぜ。絶対楽しいから。俺見て、勉強できなくても塾入っても大丈夫でしょ?勉強できるようにならなくても大丈夫だよ?」
    僕「いや、家に帰ってまで勉強したくないし、塾通うって言ったらお金かかるからダメって絶対言うもん」
    ヒカル「うちも、母親しかいないし、家ではどこほっつき歩いてるかわからないバカもいるからこれ以上迷惑かけられねーよ」
    僕「ほっつき歩いてるやつ?」
    ヒカル「ああ、田中は知らないか。俺兄ちゃんいてさ、高校生なんだけど学校も行かないでどっかそこらへんで遊んでるんだわ」
    タダシ「なんか怖そうな人と一緒にいる所見たことあるけど、、」
    ヒカル「もう勝手にしてくれって感じ。マジ生きてるだけで迷惑。てめーで働くか、学校くらい通えっての」
    生きているだけで迷惑というフレーズがどうにもずっしり感じ黙り込んでしまった。
    コウイチ「まあ入りたくなったら言ってよ。紹介したら商品券あるらしいし、みんなで山分けしようぜ。そうだ!しかもツバキもいるからよ」とニヤニヤした顔でこちらを見つめてきた。
    ヒカル「お前、ツバキのこと好きなの?」
    僕「いや、全然好きじゃないよ」首を大きく横に振り、手まで付けわざとらしささえ感じる動きになってしまった。
    コウイチ「お前時々じっと見つめてるじゃん」
    タダシ「よく体育館の傍もウロウロしてるし」
    僕「関係ないよ!そう見えただけ!全然興味ない。そういうお前たちが好きなんじゃないのかよ」
    顔を真っ赤にさせ訴えた。
    コウイチ「そんな怒んなくていいだろ」ケラケラと笑っているのが更に顔を赤くさせた。
    ヒカル「ほんとにお前興味ないの?」
    僕「もうしつこいな、関係ないって言ってるだろ!」
    ヒカル「いや、お前の前で言うのもあれなんだけどさ、、、こないだツバキから告白されてさ。どうしたらいいかなって悩んでたんだよ」

    は?

    コウイチ・タダシ「マジ!?」

    ヒカル「マジマジ。一昨日。急に呼び出されてさ」
    コウイチ「で、で!どうすんだよ?」

    は、断れよ。嘘つきめ。

    タダシ「いやーなんだかお似合いだな」

    どこが釣り合ってんだよ

    ヒカル「なんか別にありなんだけどさ~」

    ただ顔がいいだけで生まれてきただけのくせに

    ヒカル「どうした。田中。やっぱり好きだったか」
    僕「いや、別に。良かったじゃん」
    こんなに好きな人の不幸を願ったことはなかった。自分の平々凡々さが憎い。小学校の頃に出会っていればと、唇を噛んだ。

    僕「そういえばさ、みんなは近々死ぬかもよって言われたらどうする?」
    この話題をやめたくなってとっさに出た言葉だった。

    ヒカル「急になに」
    コウイチ「デスノート的な?」
    タダシ「どうした田中、死ぬ予定でもあんのかよ。やっぱりツバキに、、」
    俺は近々死ぬよ?という言葉がそこまできていたが、今言うとヒカルにツバキちゃんを取られたことを苦に死のうとしている奴に見えるかな。今死を匂わせるのはみじめだ。そうはみられたくない。ただ、この気持ちを抱えてはいられない。

    タダシの言葉が言い終わる前に「僕のばあちゃん霊感があってさ。人の死が予言できることがあんだよ」
    3人はポカーンとあっけにとられた様子だった。

    これだこれ。この食いつきを待ってたんだ。

    「それでさ今朝さ、」少し間を置いて、みんなの視線を浴びる喜びを最大限感じ

    「僕が死ぬってお告げがあったらしい」とにっこりと言い放った。

    さぁどうだ。こんなビックニュースないだろ。友達が死ぬかもしれないんだ。どう声をかける。心配か、同情か。これから塾いくのやめてみんなで遊びに行こうってなるか。僕はワクワクしていた。

    ヒカルがクスクス笑いだし「お前ヤバぁ」
    タダシも「ならお前のばあちゃん殺人犯じゃん」と笑いを堪えようとしている。

    え?なんで?

    ヒカル「霊感とか信じるタイプなのね、お前」
    タダシ「あんまその冗談面白くないよ」
    ヒカル「そしたらさ!貯金パーっと使って今日は遊ぼうや!」2人はケラケラ笑う中コウイチは真剣な顔で
    「大丈夫か?」
    なんだお前は、僕の頭の心配かよ。
    確かにな、イカれてるよな、そんな話信じるわけないよな。わかってるよ。お前らがちょっと面白がるかなって思って話しただけ、大成功じゃないか。これでよかったんだ。

    コウイチが続けて喋ろうとしたところで
    僕「じょーだん。もーやだなー。でもばあちゃんが霊感あるってのはマジ、これマジ。あとのはごめん、嘘」ケラケラに合わせて笑い「コウイチもそんな怖い顔しないで、じょーだん。コウイチじょーだん」
    コウイチの謎のポーズを真似してやった。
    コウイチ「いや、嘘なら良いんだけどさ、マジビビったぜ?やめろよなそんな嘘」安堵した表情で言葉を返した。
    なんでお前が心配すんだよ。本当に空気の読めないやつだな。面白い冗談を言える奴ってことでよかっただろ。
    心の中はぐちゃぐちゃになった。来るんじゃなかった。言うんじゃなかった。苦しくなっただけだった。
    タダシ「お、もう15時になる。コーちゃん帰ろうぜ。またなヒカル、田中。明日入学式準備でな」
    コウイチ「また遊ぼうぜ!」手を振りながら二人はマックを出て行った。
    ヒカル「俺たちどうする?イオン行くか?」
    僕「んー、なにする?ゲーセンでもいく?」
    ヒカル「おおーいいね。俺欲しい景品あってさ、田中クレーンゲーム好き?」
    僕「一緒にやったことあんじゃん。あんなの金かければいくらでも取れるから、やりにいこ」
    4人は二手に分かれてマックを後にした。
    僕は今日のハンバーガーはなんかハズレだったと言い半分捨てた。


    ヒカルと仲良くなったのは中1の夏休み後だった。夏休み前に僕は携帯を買ってもらった。二つ折りの黒くてかっこいいやつ。みんな持ってるから。夏休みでみんなと連絡が取れなくなるからとせがんで買ってもらった。主にはツバキちゃんと夏祭りでばったり会ってメールアドレスでも交換できるかもと思ったのが始まりであった。

    そして中1の夏休み直前、小学校の友達のマサルが帰ってきたのだった。


    夏休み前突然かあさんが
    「マサル君帰って来るんだって!」
    と嬉しそうに言ってきた。
    僕はぱぁっと表情が明るくなり「いつ?」と聞くと夏休みには前と同じ家、目の前のマンションにママと二人で越して来るそうだった。
    気がかりだったのが中学受験に失敗し、公立の中学校?に通うことになったが馴染めず不登校気味になってしまったと。それで元の友達がいる中学へ編入した方がいいのではないかという理由で戻ってくるということだった。

    夏休みが待ち遠しかった。今までの中学校生活が一変する気がしていた。

    部活から帰宅すると引越しのトラックが家の前に停まり荷物の下ろし作業が行われていた。すぐにシャワーを浴び、財布の準備もした。家で食べる用のスナック菓子も用意した。
    引越し業者がいなくなり15秒ほどでエントランスへ。下がオートロックになっている。この街の中だととても近代的でいつもインターホンを押すときは緊張していた感覚が蘇ってくる。
    ピンポーンとインターホンが鳴る音がして、マサルママの声が聞こえた。
    「小学校のとき友達だったマサルです。引っ越してきてるって聞いて遊びに来ました!」少しかしこまった顔でインターホンのカメラを覗き込んだ。
    すると
    「ごめんね。マサル引越しで疲れてるみたいで寝ちゃったの。会えるときこっちから連絡するからまた今度来てもらえる?」と申し訳なさそうな声色で返ってきた。
    「そうなんですね・・・、マサルによろしくお伝えください」と僕は軽い会釈をしてその場を後にした。

    声くらい聴かせてくれてもよかったじゃんか。

    その日かあさんにマサルママからメールがきた。改めて今日せっかく来てくれたのに会うことができなくて申し訳ないという内容だった。
    そして不登校のマサルはとてもデリケートな時期で引っ越してきたことはうちの家族しか知らないこと、今は通信制の学校に通っていること。本人が通えるようになるまで僕の通ってる中学校には編入はしないこと。それまでそっとしていてほしいという内容だった。
    なんだか話が小難しく、僕と早く会えば前みたいに元気なマサルになるだろうにとも思ったが、本人がそうしたいならしょうがないかと納得せざるを得なかった。
    母「少し疲れちゃったのね。また遊べるようになったら前みたいに遊んできなさい」
    父「マサル君懐かしいな。二人でよく遊んでたもな。二人とも優しくて双子みたいって言われてたけど。お前もう背抜かされてるんじゃないか?」と身長が伸び悩んでいることをいじるように言った。
    僕は父を無視して「早く元気にならないかな」とだけ呟いた。


    夏休みに入り、サッカー部の練習は気温的にも友達的にもきつくなった。いつまでたってもうまくならない日々。実践形式の練習ではもちろんパスはなく、練習試合でもベンチのベンチのような扱いの日々。ヒカルとタダシは3年生がいなくなりすでにスタメンで活躍していた。他の奴らも小学校からサッカー部だったため試合に出れることもあり、野球よりも人数が多いスポーツで自分だけが選ばれない孤独が部活に行く度押し寄せてきた。のけ者にされているわけではない。単に実力がない奴にパスは出さない。とても合理的で当然の選択であり、部活後は普通に話しかけてくるみんなの優しさが自分の実力のなさを強く証明してた。

    この過酷な夏休みを過ごし、ツバキちゃんは1度水飲み場で見かけたっきり。携帯を手に入れたがただの時計を見るだけの機械となっていた。
    夏休みがなんとなく過ぎ去り、運動部は日焼けに磨きがかかり、ツバキちゃんの白い輝きをより一層引き立てていた。
    そして学年全体で2人ほど学校に来なくなった奴がいた。おそらく夏休みから抜け出せなくなった人たちなのだろう。僕も休めるもんなら休みたかったが、自分が現実から逃げたような感じがして。そんな恥ずかしいことはできないと思っていた。

    9月に入ったばかりだった。部活の帰り道、サッカー部の連中と帰宅している最中、なんの話で盛り上がっているのか後方にいたため正確に聞き取れなかったが不登校という言葉が聞こえた。
    ヒカル「、、ありえないよな。俺だって休めるもんなら休むわ」
    僕「どうしたの?」
    ヒカル「いや、夏休み明け、学校に来なくなった奴ら。絶対宿題もやってないしさ、ずるくねって話」
    僕「あー。絶対やってないよね」
    僕「しかもさ、いたっけ?って感じじゃない?」
    ヒカル「うわーわかる。正直いてもいなくても一緒だよな」
    僕「俺の友達にもさ、不登校になったやつがいてさ」
    ヒカル「マジ、そいつに喝入れてやんよ」
    僕「こないだ俺も喝入れに行こうとしたんだけどさ、会えもしなくて。ママが代わりに出てくれたわ。だっさーみたいな」
    ヒカル「やっば。もう友達やめな」
    僕「なんか休むやつってどっか人としての欠陥あるよね、絶対」
    ヒカル「めっちゃわかるわ~」
    家に着くまで10分ほどだったがあっという間の時間だった。2人の会話が盛り上がり周りの奴らもそれを聞き入っている感覚。久しぶりだった。少し興奮気味に多少話を盛りながら偏見を語りつくした。
    家に着くとかあさんから
    「どうしたのなんか嬉しそうよ」と言われたが
    「何でもない」といい2階の自室へ階段を駆け上がった。

    次の日の学校ではヒカルから挨拶してきた。今日は悪口ではなく昨日のテレビの話だった。見てはいなかったがなんとなく話を合わせられた。話が盛り上がったはいいもののこれ以上の話題のなさに突然焦りを感じた。すでにゲームのブームは終わっておりその他の話題を持ち合わせていなかった。
    そこに小学校の頃一緒のチームで野球をやっていおり、今もなお野球部に所属している奴が目の前を横切った。その姿を何気なしにヒカルは目で追っているのがわかった。
    僕「この年で坊主ってやばくない?」と恐る恐る聞いてみた。
    ヒカル「いや思ったわ、今横切って」
    僕「だよね。俺も小学校の頃野球部でさ」
    ヒカル「え、お前野球部だったの?!」
    入部する際2・3年生の前で自己紹介があった。小学校で何かクラブに入っていたか言う流れができており、自信満々に野球部に所属していた事を言った。ヒカルもその場にいたが、そんなことはどうでもよかった。この意地の悪そうな笑顔を見ることができたことが何よりも嬉しかった。
    僕「そうだよ、入部した時言ったじゃん。覚えてない?やっと髪の毛こんだけ伸びてきたんだから」と僕はヒカルに頭頂部を見せるよう少し前かがみになった。するとヒカルは僕の髪の毛を優しく撫でる感覚がした。
    ヒカル「やばぁ、いがぐりじゃん!」とケラケラ笑い
    ヒカル「ツバキ、こいつの毛やばいよ、触ってみ!」とたまたま近くを通りかかったツバキちゃんに声をかけた。

    やばいやばいやばい

    ツバキ「えぇ。いやいいよ、、」
    ヒカル「大丈夫だって!刺さったりしないから!」と笑っている。
    僕は下をむいたまま頭頂部をツバキちゃんの声がする方向へ差し出した。
    ツバキ「じゃあ、、うわ、ほんとだチクチクする」
    ツバキちゃんの手が髪の毛越しに伝わる。どんな表情で顔を上げたらいいのかわからず。下を向いたままニヤニヤを必死に抑えていた。

    チャイムが鳴った。休憩時間が終わり強制的に僕たちの会話は途切れた。その後の授業の内容はもちろん頭になんて入ってこなかった。次の休み時間もツバキちゃんと触れ合う妄想までしていた。
    その日のツバキちゃんとの会話はそれっきり。あとはいつもの学校生活だったが1日中ハッピーだった。

    部活後のシャワーで優しく髪の毛を撫でてみた。あの時間の出来事を再現したがさすがに気持ちが悪いかと思い数回撫でて今日はやめておいた。

    この頃を期に急に発言権を僕は持てた。ヒカルを中心にタダシやコウイチ、その他のサッカー部以外の友達ができていった。
    本格的な秋になり、学校祭の準備期間では、もちろんヒカルがその場にいるからだがツバキちゃんと話せるくらいにはなっていた。
    悪くない。
    部活はまだベンチだが入学当初よりは確実に上手くなっているし、このまま伸びれば3年でレギュラーも夢ではない。勉強も学年順位は半分くらいだが上位はほとんど塾に通っている連中。塾に通っていない僕にしては大健闘の順位だ。あと少し、もう少し人気者になれれば。

    学校祭準備中、突然ツバキちゃんが
    ツバキ「そういえばヒカル、そろそろ誕生日じゃない?」
    ヒカル「え、よく覚えてんね」
    ツバキ「前にメールで言ってたじゃん」
    ヒカル「え、そうだっけ?忘れてたわ」
    僕「ヒカル誕生日なの?」
    チャンスに感じた。
    僕「今度遊んだ時ご飯奢ってあげるよ」
    ヒカル「マジ?!え、いつ行く?いつ行く?」
    ツバキ「えーいいなー」

    これだ。

    もう中学生なんだから、家にこもってゲームばかりしている場合じゃない。ヒカルも喜んでるし、ツバキちゃんに優しいアピールもできた。
    これで僕はもっと人気者になれる。

    その週の土曜日部活終わりにイオンへ行きフードコートでヒカルの好きなものを奢った。ゲームセンターではクレーンにお金をつぎ込み、ヒカルのほしいぬいぐるみが取れるまでやり続けた。

    翌週の月曜日。ヒカル伝えで僕は優しくていいやつの称号を勝手に得ていた。遊びの連絡が休日は絶えなくなり、自分で選りすぐりするまでになっていた。

    クレーンゲームをしながら
    僕「ツバキちゃんのことすきなの?」と勢いに任せて聞いてみた。
    ヒカル「いや、小学校の時から仲いいってだけ。ただの幼馴染だよ。それよりさ、ここだけの話、隣の中学のサッカー部のマネージャーがさ、めちゃくちゃかわいいんだよ。今そいつ狙ってんだ」と自慢げに言った。
    僕「へーさすがヒカル。他校の人とも仲いいんだね」
    ヒカル「まあな。ツバキと俺じゃ釣り合ってなくね?」と笑っている。

    全てがうまくいっていた。

    全てがうまくいっていると思っていたあのゲームセンターに僕は今いる。ヒカルがツバキちゃんにプレゼントするためのぬいぐるみを取るために金をつぎ込んでいる。

    19 時過ぎに解散した。ヒカルは僕が取ったぬいぐるみを片手にツバキに会うらしい。塾が終わるまでフラフラしているそうだ。僕はもう用済みだった。

    帰宅し夕食を食べた。誕生日プレゼント何にしたのかなどかあさんに聞かれたが適当に返した。どう答えたか覚えていない。
    味覚が変わってしまったらしい。夕食も半分残した。かあさんは心配していたが、マックを食べ過ぎたことにした。

    今日は散々だった。思い出したくもない。
    ああ、このまま寝たら死んでたりして。
    死んでも死にきれないや。いや、でも僕は死にきれないなんて言っているが何のために生きているのだろう。
    優しい、気が利く、良い子。なんてありふれた個性の人間なんだ。いや、きっと言うことがなくてありきたりなことを言うしかなかったのだろう。勉強が特別できるわけではないし、運動も普通。身長も低く、顔も特別悪いわけではないと思うが、、、。


    考えれば考えるほど嫌になってきた。

    中1の終業式で担任・サッカー部副顧問の高橋が言ってたっけ。

    「1年生はどうでしたか?もうすぐ中間学年になります。中だるみの時期とも言われたりしますが、先生はここが勝負だと思っています。2年生はぜひ自分が得意なこと、やりたいことを見つけてください。今の時代一人ひとりの個性が大切な時代です。一人ひとり違う個性があります。
    こないだ中学の同窓会がありました。中学時代の思い出が蘇ってきました。」

    やっぱりそうだ

    「昔っからお調子乗りだったり、優しかったり、勉強や部活に打ち込んでた人、何か強烈な印象のある人は大人になっても変わりません。そしてその強みを今の仕事に活かしている人がほとんどでした。」

    僕も早くみんなより凄いとこを見つけなきゃ

    「自分の強みを見つけられなかった人は同級生、今までの生徒たち、同じくらいいっぱい知っています。その人達は今も苦労している人がほとんどです。みんなにはそうなってほしくない。ぜひ自分の個性を見つけて磨き、周りとは違う才能の持ち主となれるよう努力を忘れないでください」

    僕は落ちこぼれなんかじゃない
    とこないだまで思っていたのに。

    個性のない僕は将来苦労するのかもしれない。
    個性がない僕は生きている価値なんてないのかもしれない。に変わってしまった。

    そうこう考えている間にいつの間にか机の上で突っ伏して眠っていた。僕は飛び起き自分が生きているのか、足元を見たり、顔を手で触ったりと実態がある事を確認した。
    朝はもう一度やってきたみたいだ。鳥が鳴き、車が家の前を走り去る音がいつも通り聞こえた。1階ではかあさんが朝食を作る音、父さんがテレビを見ている音が、これもいつも通り聞こえた。

    4月6日。明日から新学期。僕は中学2年になる。明日から正式な登校開始だというのに入学式の準備を手伝うよう全生徒が午前登校となっていた。
    まったく行く気がしない。
    もう何でもよかった。信じてくれない友達、事情を知っているはずなのに日常を、生活をいつも通り送る家族。
    僕が何か吐き出せたところできっと何も変わらない。死んでからびっくりされるくらいなのだろう。でも1週間もすればまた日常に少しずつ戻りいつの間にか忘れられるのだろう。こんな印象にない奴。
    自分で終わらせてしまった方がいっそのこと楽かもしれない。そう考えてると少し気持ちが楽になった。でもこれはしょうがない。
    だってばあちゃんが予言してしまったことなんだから。
    どういう形でも死なないといけないのだ。


    二年生用の教室へ向かう。前まで3階の教室だったが今年からは2階になった。最初で最後の教室までの廊下を噛み締めるように見ながら歩いた。
    最後にみんなに会って踏ん切りをつけようという気持ちでの登校に気持ちは振り切っていた。

    教室に入るとヒカルが
    「お!田中!生きてたか!」
    と周りの友達と大笑いしながらこちらに手を振ってきた。
    心臓の音が徐々に聞こえはじめ下唇を思い切り噛み、口の中は鉄の味がしていた。気づけば机をかき分け、ちょうど対角線上に座っているヒカルの下へ一直線に行き左頬を力いっぱい殴っていた。
    座っていたヒカルは後ろへ倒れ、周りにいた友達が静止に入る。両腕をつかまれる。ヒカルがすかさず起き上がり両腕を抑えている友達を払いのけ、僕の両手を抑え馬乗りになっていた。僕は目をウルウルさせヒカルの「いきなりなにしやがんだ!」
    にかぶせるように
    僕「お前に何がわかる。たまたま少しイケメンに生まれただけで見下しやがって。金もない、兄ちゃんはろくでなしの、ダメ兄弟が!」

    言ってやった言ってやった言ってやった

    僕「ツバキに告白されてニヤニヤしやがって。興味ないとかほざいてたくせによくそんな嬉しそうにできるな!きっっもっ!」

    黒板の前で僕たちの様子を困惑なのか、泣き出しそうなのか、よくわからない表情でこちらを見つめているツバキちゃんと目が合い心臓の音は更に加速した。
    ヒカル「お前言いたいことそれだけか?」
    そこからは馬乗りになられたのもあるが何の抵抗もできない僕はありとあらゆる汚い言葉を吐き続けた。小学生の喧嘩みたいに。
    殴りかかってから体感10秒ほどで高橋先生が駆け付け、ヒカルを離した。
    ちょっと来なさいとまずヒカルが連れていかれた。僕は起き上がり涙を拭き、ヒカルの動向を目で追っていた。肩で息をして、「大丈夫か」と触れようとする手を払いのけた。

    教室はキーンと聞こえてきそうなくらい静まり返っており耐えられなくなって僕は教室を出て行った。怒りが収まらず教室の扉を思い切り開けてやった。自分は怒ってるんだぞと教室中に伝えるために。

    教室を出てすぐのところに先生とヒカルがいた。先生はすぐ僕のところに駆けつけてきて、「田中、大丈夫か」と聞いてきたがヒカルを睨んだまま会釈のような頷きで返した。
    しょんぼりしているヒカルがこちらを見つめていた。
    まだ心臓はバクバクなっていたがスッキリしたという気持ちが半分を占めていた。腹は立てていたが少しずつ落ち着きを取り戻していた。
    少しずつヒカルが近づいてきて
    ヒカル「俺がふざけすぎてた。ごめん」と頭を下げてきた。
    これは予想外だった。手を出さなかったことも、すぐにすんなり謝ってきたことも。
    あっけにとられ少し身構えていた体の力が抜け人の気配が後ろからすることに気づいた。ちらっと振り向くと、クラスの大半が教室から廊下に顔を出し、一番手前にツバキちゃんがいるのがわかった。僕とは目が合わない事にも気付いた。ヒカルだけを見ていた。
    そんな中ヒカルは僕に頭を下げている。これじゃあ僕が悪者じゃないか。僕は散々こいつに金をとられ、ツバキちゃんまでも取られ、別に好きでも何でもないけどみんなと仲良くいるために、仲良くやるために仲良しを演じてやっていたんだ。なのに、なのにどうしてどうしてどうして。

    頭の中がぐちゃぐちゃになり、ここで仲直りをすればすべての踏ん切りがつかなくなってしまうと思いジャージの裾を下に引っ張り、両唇を噛み合わせ数秒考えた。そして本人に聞こえるほどの小さい声で「いいよ」と言い放ち
    「今日は帰ります」
    と先生に伝えた。廊下のみんなになんとか聞こえる程度の声で。
    頭を下げたままのヒカルの横を小走りで走り抜け後ろは振り返らなかった。先生は追いかけ「待て」と言っているのが聞こえたが無視をした。玄関で靴を履き替えると先生に捕まってしまいそうだったので上靴のまま外に出た。家まで走れば10分ほど。学校を出て2,3分走った。振り向くと後ろから誰も追いかけてきてはいなかった。走っている途中で登校中の同級生ともすれ違った。心配そうな顔をするだけで声はかけられなかった。
    そいつらも全員。誰もいなかった。安堵の後寂しさが全身を覆った。今頃クラスはどうなってるかな、と思いはせているとまただんだん涙が止まらなくなってきた。

    今僕から優しさも、良い子も、気が利くも無くなって、クラスという居場所も無くなったんだ。
    これで本当の無個性になり、生きている価値が本当に無くなったんだと確信した。


    家に着き、扉を開けるとすぐそこにかあさんがいた。憐れむような表情で
    母「何があったか、話せる?」と優しいトーンで聞いてきたが僕は下を向き首を横に振り、「なんでもない」と呟いた。
    母「高橋先生から今電話があって。ヒカル君を殴って学校を飛び出していったって、、。かあさん心配で今探しに行こうと思って」
    僕「ちょっと喧嘩しただけ。大げさなんだって、大人は」
    ちょっと公園に行ってくると玄関を足早に出た。

    もし僕がこのまま自殺したらどうなるだろう。

    友人A「優しい子でした」
    うるさい
    近所の人A「挨拶もしてくれて普通の子に見えたけどね」
    黙れ黙れ黙れ
    部活の友人B「別にこれと言って目立つような奴ではありませんでした」
    僕の物語で名前も出てこないような奴がお前の物差しで僕を評価するな


    考えれば考えるほど腹立たしくなっていた。
    近くの公園に着きベンチに座る。温かな日差しが心地よく、土の香りが春の訪れを感じさせていた。
    老人が向かいのベンチで新聞を読み、おそらく幼稚園児くらいの女の子と手をつないで歩く母親が目の前を通った。こんなに不幸な奴がいるのに素通りなんだ。こんなに苦しいのに、誰も察してくれない。

    そこに何やら紙のようなものを持ったコウイチが現れた。おーいと紙を持った方の手でこちらに手を振っている。日差しのせいかなんだか温かい気持ちになっていた。


    コウイチ「こんなとこで何してんだよ。寒くないのかよ」
    僕「別に、もうこの世ともおさらばだなって思ってぼーっとしてただけ」
    コウイチ「へー死ぬんだ、やっぱり」
    僕「へーって。それだけかよ」
    コウイチ「じゃあ一応、なんで?」
    僕「知らん、こっちが聞きたいよ」
    コウイチ「はぁ?!なにそれ」と笑った。僕もつられた。
    僕「もう疲れたんだ。みんなに合わせて、自分を押し殺しながら生きるのが。こんなの本当の自分じゃない」
    コウイチ「本当の自分はどんなんだ?」
    僕「んー。小学校の頃が一番だったな。何にも考えないでさ、友達関係とか将来のこととか。1番自分らしかった。今は周りが勉強しろとか部活を頑張れとか。個性個性って先生もうるさいし」
    コウイチ「まあ、小学校の時よりはうるさくなったな」
    僕「いいよな、お前とかヒカル、タダシは。元々勉強ができたりサッカーが得意だったり。お前は友達がいっぱいいるし。その点僕はなんの個性もない。友達がいっぱいいるわけじゃないし」
    コウイチ「田中って個性無いと思ってんの?」
    僕「いや、いいって気遣わなくて。どう見たって無個性だろ俺」
    コウイチ「そうか?優しいじゃんお前」
    僕「はいはい、出た出た。優しい、良い子、気が利く。もう聞き飽きたわ。優しいって結局さ相手にとって都合がよかっただけじゃない?そんなの個性でもなんでもないよ。いいように使われてるだけだよ」
    コウイチ「なるほどな。でもお前はこれが優しいかな?と思って行動してるんだよな?」
    僕「まあそうだけど」
    コウイチ「田中が良かれと思ってやって、相手は喜んだ。なんか悪いとこある?」
    僕「いや、ないけど。なんか。そうそう、僕ばっかりになってるんだよ。優しい奴はずっと搾取され続けてるんだ。優しいのレッテルだけ貼られて。そんなの不平等じゃない?」
    コウイチ「じゃあ距離置けばいいじゃんか」
    僕「そういう問題だけじゃないでしょ。付き合いとかもあるわけだし」
    コウイチ「なんで、そんな苦しい思いまでして自分じゃない役を演じようとするんだ?なんで自分を作りたいんだ?友達なんていっぱい作れただろ。小学校の頃の友達とか。別に俺とかヒカルと友達でい続ける必要なくない?」
    僕「・・・なんでって。そんななんでなんでって聞いてくんなよ。僕だってよくわかってないんだから」
    コウイチ「別に自分で優しいって思ってるならそれでいいじゃん。みんなから優しいって言われてるけど自分ではそう思わないならそれでよくない?先生は個性を伸ばせとか、個性を尊重しろとかうるさいけどさ。自分が個性だと思ってたことが次の日には変わってても良くない?」
    僕「そんな曖昧でいいのかよ」
    コウイチ「いいだろ別に」
    僕「だけどさ」
    コウイチ「お前もなかなかめんどくさいな」笑っているからこっちも何だかおかしくなってきた。なんだか妙な浮遊感を感じた。
    コウイチ「無個性って言うけど、お前個性に優劣があると思ってるだろ」
    僕「そりゃ、自分より勉強ができたり、性格が明るかったり強い個性があったら・・」
    コウイチ「じゃあ学校中の奴が無個性だろ。」
    僕「いや、そんな極端な」
    コウイチ「個性はただの事実だ。人と違うってだけ」
    僕「じゃあなんで先生は個性を伸ばせって」
    コウイチ「そんなのわかりやすいからだろ。勉強ができるって個性があるとしたら、この子は勉強ができますって成績表に書けるだろ」
    僕「ひねくれすぎだよ」
    コウイチ「でも個性と優劣を結び付けて死にたくなるにはちょっと早いんじゃないかなって俺は思うけどな」
    僕「・・・」
    コウイチ「個性を磨くことも大事かもしれないけど、個性に固執して苦しんでるなら個性なんて気にしなくてよくね?」
    僕「お前、なんなの。中2じゃないだろ」
    コウイチ「ひねくれてんの」
    僕「知らなかった」
    コウイチ「俺だって理屈っぽかったりあるんだぜ?でもいちいち突っかかってたらみんなも嫌になるだろ?だから学校では演じてるってわけ」
    僕「自分の事知ってもらいたくないの?」
    コウイチ「ミステリアスでかっこいいじゃん」
    僕「・・・そっか」
    コウイチ「これ、先生から。明日の入学式の予定表だって。明日来いよ」
    僕「いや僕はいい・・」
    コウイチ「・・・ヒカルも悪ふざけが過ぎたってへこんでたぞ。まぁお前が許そうと許さなかろうと俺はどっちでもいい。なんか居場所無いみたいに思ってるなら勘違いだぞって伝えたくて来た」


    僕はうつむいて顔を上げられなかった。なにに悩んでいたのかよくわからなくなってきた。ただ居場所があると言ってくれたことがじんわりと凍り付いていた心にも日差しが差し込んだような気がした。


    18時過ぎに帰宅。それまでコウイチが話に付き合ってくれた。とうさんとかあさんが心配そうな顔で出迎えてくれた。僕はできるだけの話をした。
    死の宣告を聞いてしまい、自暴自棄になり、僕は友達を殴ってしまったこと、自分を押し殺して生きているのに疲れたこと。
    泣きじゃくる僕をかあさんはそっと抱きしめてくれた、とうさんは背中をさすってくれた。全身が温かくなり、生きている心地がした。
    父「大丈夫、ばあちゃんも久しく当たってないから。ごめんな。もっと早くお前の変化に気づいてあげたかった。ごめんな」


    やっとだ。やっと僕の時間が始まったような気がした。学校にはコウイチがいる。家族もわかってくれた。
    無理に学校に行かなくていいこと、今なら通信制の学校とか選択肢は色々あるから一緒に選ぼうと言ってくれた。
    僕は勝手に居場所がないような気がしていたが、自分自身でみんなと向き合うことをやめていたんだ。
    僕はみんなからかまってほしかったんだ。
    コウイチの言うように自分の欲求に素直になろうと思う。みんなの前で演じている僕だって僕じゃないか。それが誰かにとって間違って見えることもあるかもしれないけど、それだって僕なんだ。向き合い続けよう。

    ひとしきり泣いた後僕は強烈な危機感に襲われ自室にこもった。この居場所をなくしてはいけない。死にたくない。

    深夜にメールを打ち終わりベッドに横になった。
    弟からは「大丈夫?兄ちゃん」と言われ恥ずかしかったが嬉しかった。
    「もう大丈夫。ありがとう」と上に向かって言い放った。
    やっと手に入れたこの居場所を、友達をなくすわけにはいかないんだ。だから神様、今回の予告はどうか僕じゃありませんように。
    窓の外、マンションの横から月が見切れていた。月に向かって僕は掌を合わせ祈りをささげた。



    翌日、警察と救急車の音で飛び起きた。自分の指先が頬を触る感覚を確かめ、生きてることにホッとした。

    リビングにゆっくり降りていくとすでに両親は外に出て向かいのマンションの野次馬になっていた。
    救急車に誰かが担架で運ばれる。その横でマサルママが「マサル!」と泣き叫びながら救急車に乗っていった。かあさんがこちらを振り向いたタイミングで顔を下に向けた。涙が出てきた。かあさんがこちらへ駆け寄り抱きしめてくれた。かあさんの胸で僕は泣きじゃくった。
    自殺だった。

    ごめんな、マサル。僕は優しいんだ。お前も優しいこと知ってるよな?コウイチも優しいって自分で思うならそうなんだって言ったんだ。だから。だから。優しいからこそ伝えなくちゃと思ったんだ。それでお前がどう思おうと、僕が優しいと思ったからしょうがなかったんだ。
    人は死ぬかもしれないくらいじゃ変われないみたいだ。だって僕の優しいは長所だから。
    しょうがなかったんだ。

    だって僕はばあちゃんの孫なんだ。今後も上手に演じて見せるよ。

    代わりに死んでくれてありがと。

    かあさんの胸の中で悪い顔をして笑っている自分の表情が脱衣所の鏡越しに見えた。




























    7月23日
    (久しぶり!
    まさか部活に行く前のマサル君に会えるだなんて思ってもいなかった!メールアドレス教えてくれてありがとう。
    ママから聞いてるかもしれないけど僕受験落ちちゃってさ。普通の中学校に入ったんだけど全然なじめなくて・・。学校に行くのも億劫になっていくのやめちゃったんだ。
    今こっそり母さんのパソコンで返信してるんだ。
    だから夜中にしか返せないんだ、ごめんよ・・・。でも返事待ってる!今日は久しぶりに会えて本当にうれしかった!!)
    7月24日
    (僕もびっくりした!久しぶり!こっちも連絡してるの親にばれないようにこっそり返信するね。僕は携帯こないだ買ってもらったんだ!だからいつでも連絡取れるから!)
    (いいな~携帯。僕も欲しいんだけどママ言ったら勉強の妨げになるからダメだって怒るんだ。今は通信で授業受けてるんだ。自分のペースで授業も進められるから気は楽だけど通信の授業終わったら今度はテキストだから大変・・・。僕も早くマサル君の中学校通いたいよ)
    7月25日
    (なんか大変そうだね・・。マサルの家勉強に厳しかったもね。
    こっちの中学はめっちゃ楽しそうだよ!友達もいっぱいできたからいつでもみんな紹介するから、マサルもすぐに友達作れるよ!自分のペースでゆっくり。来れそうになったら来たらいいよ)
    (めっちゃいいな~!さすがマサル君。もうきっとクラスの人気者なんだろうな。早く通いたいんだけど・・。まだどうしても勇気が出なくって。帰ってきてるのもマサル君にしか話せてないんだ・・。前の学校でいじめみたいなのに遭ってみんなに噂されてるんじゃないかとか色々考えちゃったら行けないんだ。だからマサル君にも秘密守ってほしい。ごめんね、こんなお願いしちゃって)
    7月26日
    (大丈夫、誰にも言わないよ!マサルと一緒に学校通えるの楽しみにしてるから、無理しないでよ!)
    (本当にマサル君は変わらず優しいね・・。すごくホッとしたよ。
    また学校でなんかあったりしたらなんでも教えて!部活の話とか学校行事とかの話聞きたい!)
    7月27日
    (わかった!部活は変わらず野球やってる!もうたまに試合に出てるんだ~来年にはレギュラー取れるように今はいっぱい練習してる!こないだは体育祭あってリレーでアンカーやったよ!)
    (マサル君野球上手だったもね。1年生で試合に出てるとか尊敬する!僕は全然運動できないから羨ましいよ)
    7月28日
    (マサルにも今度野球教えてやるよ!たまには外出て体動かしとけよ!)
    (たまに朝ママが起きる前に外出てるんだ。前あったのもちょうどその時だったんだ。いつでも動けるように準備しとくね!)
    9月4日
    (夏休み終わって学校祭の準備してるよ。
    今好きな子いるんだけど結構いい感じで話せてる。学校来たら紹介するね!)
    (マサル君小学校の頃からモテモテだったもね。いいなー彼女かぁ。青春だね!)
    1月1日
    (あけましておめでとう!今年は学校に通えるように頑張りたいと思ってる!成績もだいぶ伸びて中学に通うことママも許可してくれると思うんだ!最近部活とかできっと忙しいよね、連絡なかったから何してるのかな~って思ってたんだ!時間ある時でいいから返信くれると嬉しい!)
    (あけましておめでとう!
    ごめん、全然連絡できなくて。色々立て込んでてさ!やっと来れるようになったのか!もう来ないのかと思ったよ。2年生くらいから一緒かな?)
    1月2日
    (忙しいのに返信ありがとう!きっと2年生くらいだと思う。みんなに会うのが最近はやっと楽しみに思えるようになってきたんだ!)
    1月5日
    (そっかもうすぐだね!早くみんなに伝えたいよ!)
    (もう少し待ってね。まだ気持ちの浮き沈みが激しくて、ちゃんと日にち決まったら連絡するね!)
    4月1日
    (4月7日から通うことになったよ!先生にお願いしてマサル君と同じクラスにしてもらったから、新学期からよろしくね!)
    4月5日
    (そうなんだ。よろしくね。大丈夫?本当に来れそう?)
    (ちょっと自信はないけどマサル君もいるし頑張ってみようと思ってる!迷惑かけちゃうかもしれないけど・・。なんかあれば何でも言って!僕、今の自分から変わりたいんだ!)
    4月6日
    (夜遅くにごめん。今日入学式準備に行ったんだけどその時マサルのことクラス中で噂になってたけど大丈夫?)

    あなたへのおすすめ