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【超短編小説】タイムトラベラー、過去へ跳ぶ


    疲れた。限界だ。意識がもうろうとする。
    もし手元が狂ったのなら、僕は次元のはざまに取り込まれていたことだろう。危なかったな。


    ……僕は、いわゆるタイムトラベラーだ。
    今の時代、時間操作の技術が発達して自由に時間旅行ができるようになった。もちろん多額の旅行資金が必要なのだが、僕の家は裕福で「大学卒業の祝いはこれがいい」とねだったところ、あっさりと時間旅行をプレゼントされた。細かい契約書の内容は見ていないけれど、ざっと小惑星ひとつ丸ごと買えるほどの値段だったような気がする。

    時間旅行契約における絶対の約束事。それは、『誰も伴ってはならない』。……一人で申し込むことが条件だった。
    複数人が同時にタイムトラベル装置を起動しても誤差が生じ、同時空に移動することは難しい。そのため様々なトラブルが生じてしまうことが理由だと聞いたが、僕はもともと一人旅が好きだったし、卒業旅行なんてガラじゃないからその点は問題なかった。

    ___さて、そして現在僕は、タイムトラベル先の100年前の母星の、都会(当時としてはこれで繁栄してるんだな)の街並みのなかで息を切らせてしゃがみこんでいる。

    「はあ…はあ…何か飲み物‥‥」

    道路に突っ立っている『自動販売機』というやつに、時間旅行会社から支給された当時の硬貨を流し込み、おぼつかない手つきで缶ジュースを購入した僕。なんとかタブも開けることに成功し、一気に飲み干した。

    「あ、変な味だけど結構冷えててうまっ!……ちゃんと歴史学の講義を真面目に出席して良かったな、ホント」

    ほんとにそうだ。100年前の文明の機械を実際に使うことになるなんて。タブレット資料でちらりとみただけの自動販売機だったが、シンプルなつくりで初見でも扱えた、よかった。




    #創作大賞2026
    #オールカテゴリ部門
    #短編小説
    #掌編小説

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