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高3のコンプレックス

    僕はやっぱり、まずかったなと思った。
    クラスの仲間と海に遊びに来てしまったのだ。

    僕はもともと色白で痩せてるし、みんなみたいに手足に毛も生えていない。
    みんな優しいから何も言わないけれど、自分では、本当にもやしみたいだと思う。

    そのうえ、水泳は大の苦手だ。 皆が波打ち際で楽しそうに騒いでいるのを、
    僕はただ笑って、じっと眺めていることしかできなかった。
    「ああ、早く帰りたいなー。」

    その時だった。
    「田島くん!」 後ろから声が聞こえた。
    振り向くと、市村さんが笑ってた。
    市村さんは校内一の美人でスタイル抜群、僕たちみんなのアイドルだ。
    彼女はいきなり、ドスンと僕の隣に座った。
    心臓がドキドキドキと、一気に高鳴るのを感じた。

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    「あら、田島くんの足の指、きれいね」 何を言っているのか、分からなかった。
    「私の指と全然違う」 そう言って、彼女は自分の足を僕の足にそっとくっつけた。
    僕は驚いて、固まった。

    「ほら、よく見て」彼女は続けた。 「指の形、爪の形……田島くんの指、本当にいい形。羨ましいわ」 そう言われて、初めてじっと彼女の足の指を見てみた。
    それは妙に小さくて、指が複雑に曲がっていた。いわゆる、へんちくりんだった。

    「私の指、最初から少し変だったんだけど、トウシューズのせいで、もっと曲がっちゃったの」 僕は自分の足の指を見てみた。
    まっすぐ伸びていて、爪も形よく整っている。
    彼女の指とは段違いに、立派に見えた。

    ………。
    どう言ったらいいのか、僕は焦った。
    ………。
    僕は自分のコンプレックスをひた隠しにしているのに、
    彼女は今まで口をきいたこともない様な僕に、
    一番気にしてるであろう肉体的なコンプレックスを
    堂々とあっけらかんに話している。
    ………。
    何か言わなくちゃ。
    ………。

    「そんなに、気にするほどじゃないよ」
    彼女に向かって、一気に言った。
    ――どの口が言ってるんだ。自分でも思った。

    僕はそれ以上何も言えず、前を向いて固まった。
    波の砕ける音、皆の嬌声が響く。
    そして。
    僕らの前には、真っ青な空が大きく広がっていた。

    もうすぐ過酷な受験生活に突入する、高3の夏の出来事だ。

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    茨城の松岡中学の隣で生まれました。 フリー素材「海の素材屋」のサイトを運営して いましたが、その役目も一段落しましたので、 書き溜めていたgif画像や短文などを載せています。

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