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『Light upのその前に』の後に

11月3日 午前0時55分。


札幌で打ち上げが終わった。



札幌の街は連休最終日にも関わらず元気があったが、少しずつ眠りにつき、笑い声の残響がアスファルトを漂っている。



メンバー5人とA&Rの和田さんを含めた、男6人が向かい合って、翌日の集合時間の確認をしていた。



「それでは…また明日。お疲れ様でした。」



と、締め括られ、各々がホテルに戻る流れになったが、


「ねぇ…ラーメン食べたくない?」
「あそこのラーメン並ぶ?」
「豚カツ食べたい」
「油そば食べない?」


メンバー達は、札幌での最後は好きな食べ物で締めくくりたい気持ちに溢れていた。



そこで、Vo.湯口翔平がKONGに話を振ってくる。


『KONGさんはホテル直行ですか?』


KONGは少し考える。


そう。


実はKONGにもやり残している事が一つだけあるんだ。


もはや食欲ではない。


これは“使命”だ。



その時の為に、
ホテルの冷蔵庫に"氷結無糖4%"を待機させている。


KONGは、ひと息つき湯口に一言。



「俺は、セイコーマートのフライドチキンを探す。」



湯口翔平は半笑いで言う。


「もうこの時間はどこもないですよ!?」



わかっている。


そんな事はわかっているのだが、それを自分の目で確かめない事には終われない。



メンバーは散り散りに己の決めた目的地に進んで行く。



それはまるで


『2年後…ここでまた会おう。』



と、約束した戦士の後ろ姿のように堂々としていた。


殿(しんがり)を任せられた気分で進んで行くメンバー4人の背中を見送るKONG。



おや?


6人いたのに後ろ姿が5つではない?


ふと横を見ると、スマホで近辺の『セイコーマート』を探していた男がいた。



和田さんだった。



「僕もコンビニで水を買うので、お付き合いしますよ。」



間違いない。


これは――事件の始まりだ。

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第一の店:セイコーマート狸◯路店?


交差点から歩く事8分。



和田さんにナビゲートしてもらい、店の前に到着しそのまま突入。


しかし、"ホットシェフ"のケースは無情にも電気が消えている。



数分前まで並んでいたであろう"フライドチキン"の亡霊だけが、ガラス越しにこちらを見つめている。



「……やられましたね…。」



和田さんは呟いた。


まるで犯人に先回りされた刑事のように。



少しでも手がかりが欲しくて、2人は店員さんに駆け寄る。



「この辺でフライドチキンが売ってそうなセイコーマートありますか?」



店員「いや〜この時間は多分あまりないですけど、ここを左に真っ直ぐ行った所はあるかもしれません。」



有益な情報だった。



店員さんにお礼を伝えて、2人は次の現場に向かうのだった。


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第二の店:セイコーマート南◯条店?


歩く事5分。


遠目からオレンジ色に輝くセイコーマートが姿を現した。


寒い夜に優しく照らしてくれる暖色系。


なんて優しい光なんだ。


「……ありそうですね。」



鼻息荒く入店。


……しかし、ホットシェフコーナーはお店の外装とは打って変わって漆黒に包まれていた。



誰がどう見ても終わっている。


いや、終わっているように見えるだけなのかもしれない。


和田さんは店員さんに声をかける。


「すみません。ホットシェフってないですよね?」



店員「すみません、終わっちゃいました」



心に氷点下の風が吹き抜ける。



「終わっちゃいました」が、なぜか人生の一幕みたいな響きだ。


すると、和田さんがパックに入った"唐揚げ"をKONGに見せてくれる。


「ここに…唐揚げが…。」



『これで手打ちにしたい。』



そんな気持ちが伝わってくる。


そりゃそうだ。


この人は自販機でも買える"水"を買うのが目的なのだ。



KONGはアホなフリして返答する。



『それ…フライドチキンですか?』



…。



和田さんは優しく唐揚げを戻して口を開く。


「コレは唐揚げでした。」



すかさず、和田さんはスマホを開き、



「10分ぐらい歩けば次のセイコーマートありますね。」


再び2人は次の現場に向かったのだ。

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第三の店:セイコーマート南◯条店?


歩く事10分。

北海道の夜は寒い。


だが、その寒さの中でだけ味わえる温もりがある。


もはや和田さんも何も言わない。


2人が黙って店のドアをくぐると、



"ふわり"
とスパイスの香りが鼻を突き、



どこからか「おめでとう」と聞こえた気がした。



レジ横のケースを覗く。



『これは…夢なのか?』



そこにあったのだ。



アラジンのランプのように黄金色に輝く、伝説の食べ物。



『フライドチキン』



我々は震える手でフライドチキンを取った。


何故か和田さんは2つ取った。


だからKONGも、もう一つ取った。


『温かい…』



こんなにも…温かかったのか…。



店員さんのセイコーマートの制服は神々しい光を放って見える。



「この時間までやっててくれてありがとう。」


と、全力で抱きしめて、フライドチキンの衣のように包み込んで感謝を伝えたい。



笑顔が戻った和田さんと並んでホテルへ戻る。


足取りは軽い。


このフライドチキンはもはや食べ物ではなかった。


戦利品。


冒険の証。


夜を越えた者だけが味わえる、星のかけら。


フライドチキンのために、3軒をめぐる夜があってもいい。


あまりの達成感からなのか、


和田さんは"水"を買い忘れていた。



この日のことは二度と忘れないだろう。



"フライドチキン"のこと。


そして、


ホテル横のコンビニで"水"を買おうとした和田さんを置いて行こうとするKONGを見る和田さんの顔を。



あの表情を、KONGは忘れない。



それでは!



また!

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