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大地の加護VS厄年

春。


たまに暑い日がある春。


夜は寒い日がある春。


この次にやって来るのが…梅雨だ。

洗濯物は乾かない。


そのうえ靴は濡れる。


地面はぬかるむ。


テンションは湿気と共にシリカゲルに吸われていく。 


だからこそ


『今でしょ???』


KONGは窓の外を眺めながらスマホを取り出した。

(ポチポチ…ポチ…)

『今がチャンスなんじゃないのか?』


余計な説明はいらない。

男のLINEに、主語なんぞ不要だ。

KONGは矢文のような一方通行の文章を送信した。


そして数分後…スマホが震える。


『いついけますか?』


……通じた。



ふふふ。



そう。



KONGが目指したのは


オートキャンプである。

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今回のKONGには明確な目的があった。


新しく買った"オイルランタン"。



もうコイツをとにかく夜空の下で使いたい。



オイルランタンを持ちながら、ピノキオのゼペットじいさんのように歩いてみたい。


購入してからというもの、気持ちが先走り、家でも何度か点火練習をしていた。


ランタンの芯に1時間近くオイルを染み込ませ、火加減を調整する。


一人で



「ほぉ〜〜〜〜」


とか言いながら炎を見つめる夜。


部屋にロッキングチェアがあれば、ここはもう港町。



魚はいないが亀はいる。


いっぽう近所の人から見たら、



『黒魔術でも始めたのか?』



という雰囲気だっただろうよ。




しかし、おかげで準備は完璧だ。



ぬかりはない。



この一連の流れを全て行きの車中で、今回もキャンプに同行してくれる相棒のPちゃんに伝える。



彼は笑いながら。



「楽しみですねぇ!」



と、言ってくれて、
そんな会話を繰り広げながらキャンプ場へ到着したのだ。



到着するやいなや、キャンプスペースで、朝日の位置、地面の平さを確認しながらウロウロするおじさん2人。



数分間の儀式の後、、




決めた場所にKONGは荷物を降ろし、2人は手際よくタープを展開。

そして。



お気に入りのLOGOSのテーブルに、ギラリと輝くオイルランタンを吊るす。


自分でもわかっている。



『まだ早い』



だが、ロマンティック同様にこの衝動は止められない。


吊るしたら最後。



何度も



「コレ見て!」

「ちょい!!コレ見てごらんよ!!」



と、見せてしまう。



普通なら



『もう、うるせぇよ!!!』



と、なるところだが、



「来て良かったですねぇ。」



と、優しい返答が返ってくる。




まさに大地の力。




コレぞ大空の心。




ビバキャンプ。




もはや戦力外だが、開始20分間はKONGの承認欲求は止まらなかったのである。



ようやく落ち着きを取り戻したKONGは、お気に入りのテーブルにガスコンロ(タフマルくん)を置き、肉を焼く。



"タフマルくん"
はガスさえあれば即点火。



風にも強くキャンプギア界の"現場に一人いると安心するベテラン作業員"みたいな存在だ。



KONGはニヤニヤしながら肉をひっくり返す。




ふふふふふ。




設営より先に肉。



もはや、キャンプ場に来たというより、
「屋外焼肉会場」のオープン準備である。



(ジュゥゥゥ……)



肉の焼ける音が春の空気に溶けていく。



KONGお気に入りのLOGOSのテーブルも大活躍だ。



木材ではない。



プラスチックでもない。



ということは?



熱に強い。



極端な話、アツアツの鍋を置いても平気だ。



もちろん直接は置かない。



だが

「あちち!!」



となっても、置けばいい。


そう思いながら、KONGは毎回熱々の鍋をちょっと触り後悔する。



学習はしない。



完全に仕上がっている。




すると相棒が、半笑いで尋ねてきた。



「今回、焚き火台は持って来てないんですか?」



その瞬間。



KONGの動きが止まる。


キャンプの醍醐味……焚き火。


人はなぜ火を見ると落ち着くのか。



それは遥か昔…



プロメーテウスが神々から火を盗み、人類に与えたから……

なのかどうかは知らんが、とにかく焚き火はロマンだ。



薪を割り、




火を育て、




炎を眺めながら無言になる。



あの時間こそ、キャンプの真髄。



だが今、KONGの前にあるのは


鉄板。


肉。


タフマル。



即戦力の火力。


ロマンティックは止められないのにロマンは止めてしまう。



相棒は察していた。



『この人……焚き火を忘れるくらい、ランタン使いたかったんだな』



KONGは静かに肉を裏返した。



(ジュゥゥゥ……)



そして一言。

「今日は、"火を見る"方向性を変えようか…。」


お互いこの状態でも笑えてしまう。


コレが大地の力なのだろうか。

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腹ごしらえも終わり、オイルランタンの点灯式までの時間を気にするKONG。



ふと、腕時計に目をやると。。。


時計が止まっている…。


『おいおい…。
俺を縛るものは、もう何もないってコトなのか?』


そんな冗談が出ることはなく



何か一瞬嫌な雰囲気に呑まれそうになる。



そして、相棒に"止まってしまった時計"と伝えていなかった言葉を伝える。



「俺…厄年なんだ。。。。」



大地の加護を纏った男は、笑いながらこう返してくる。


「今日ぐらい休んでもらいましょう!」



この男。



太陽ぐらい眩しいぜ!!!!



こうして、日が暮れ、



炭で火を作り、


夕食を食べ、



ゆっくりお酒を飲む時間に突入する。



そして、本日の主役。


"オイルランタン"の芯にマッチで火をつけて、



静かに激しく燃えるランタンの灯。



優しい光がKONGの顔と心を照らした瞬間。



消火……。



『おや?』



どうした?



早さで例えるなら線香花火のハズレのやつ。



相棒がオイルランタンの芯を捻った瞬間。



ポロリ…。



芯が抜ける…。



相棒が口を開く。


「芯が終わっちゃってますぅー!!

替えの芯入れましょう!!!」


……。


…。


KONGは自分の荷物を脳内で確認する。


『オイルはたくさん持ってきた。』

『替えの芯?』

『芯って一本の燃える速度ってそんなに早いの?』

『芯って買ったっけ?』

『芯なんて買ってないよ?』


無言のKONGを見た相棒は目を見開き笑いながらこう言う。



「厄年って本当にあるんですね…。」




練習のしすぎで試合に出れなくなった中学生時代を思い出す。



この日…。


この瞬間を誰よりも楽しみにしていたのはKONGであったが…。


心を温かくする夜の光がポロリとなくなってしまい、
半袖しか持っておらず寒さに耐えながら、
どのテントよりも早く消灯時間を迎えたKONGのテントだったとさ。



それでは!



また!


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