コングのグルメ〜第10話〜
朝。
乾燥した空気で喉がカラカラになったKONGが目を覚ます。
重い布団を跳ね除け、湿度を上げる為に干していた分厚めのバスタオルを触り、
「ほぅ…」
決してカラカラではないが、ほぼ乾いているバスタオルをそのままベランダに干してKONGの今日が始まる。
少しボッーっとしながら身支度を済ませて、コップに入れた水を飲み干し喉と頭がようやく動き出す。
「水を得た魚だな…」
冷蔵庫に反射するKONGの姿は"ブロブフィッシュ"のようだった。
つい先日。
『SAKANA&JAPAN FESTIVAL in 代々木公園』と言う素敵なイベントに参加したKONG。
勿論、
出店ではなく会場を盛り上げる演奏としてだった為、
『演奏前には食べない』を自分ルールにしているKONGは会場をウロウロし、お魚達に挨拶をするだけでイベントは終わってしまった。
あの日から数日経った今でもシーフードが頭から離れない。
外は晴れており出歩くには丁度良い天気だ。
「うむ。
今日は、お魚フェスだ。」
こうして『SAKANA&JAPAN FESTIVAL in KONG家』が幕を開ける。
(プシュー!!)
電車に揺られ目的の駅に到着したKONGは、駅から少し離れたスーパーを目指す。
フェス同様、気になるブースに向かうかのようにMAPと睨めっこするKONG。
KONGぐらいになると、お魚フェスの範囲は"代々木公園"ではなく"東京23区全土"になる。
「こっちが駅だから…コッチか?」
GoogleマップのGPS的なsomethingに振り回され、まずは自分の向きとGPSの矢印を合わせる作業に苦戦する。
体の向きを変えると矢印もグルグル。

らちがあかない。
試しに少し進んでみるが、KONGの現在地は海面に漂うワカメのように"ズズズ"と移動してワケワカメな状態になる。
「やはり…」
毎度この1/4ぐらいの確率しかないスタート方向を間違えてしまう。
正直、
食材集めの買い物は家の近くのスーパーでも良かったのだが、今回は【海老】を探していたので大型スーパーに突撃する事にしたのである。
少し進んで現在地とMAPがピッタリ合ったら、あとはカジキマグロの如くスイスイ進み目当てのスーパーに到着。
「うむ。
歩いて食材を揃えるのもフェスっぽくていいじゃないか。」
いい感じにお腹も空いたKONGは、タコが壺に入るのように"初めまして"の大型スーパーに吸い込まれるのだった。
入店したスーパーは大海原のように広く、鮮魚コーナーはキラキラした食材が所狭しと並んでいる。
「ギョギョギョ…凄い…」
「うぉ!アレも食べたい。」
「うぉ!コレも食べたい。」
目に映る海鮮全部を購入したい。
一歩進んで心が躍り、
二歩進んで笑顔が溢れ、
三歩進んで商品を手に取る。
同時に磯の匂いが嗅覚をくすぐり、幼い頃の"貝殻拾い"がフラッシュバックする。
(あぁ…
あの頃…
綺麗な浜辺で貝殻を拾ってたなぁ…
嗚呼…
あの時…
父さんは…貝殻を……。)
「うゲッ!!」
心地よい回想シーンにサプライズ登場した父親が貝殻を踏んで足の裏が大変な事になったのを思い出し、現実世界に押し戻されたKONGは再び鮮魚コーナーをウロウロする。
「それにしても…
どれもコレも主役じゃないか。」
お腹の減り具合が購買意欲を掻き立てる。
気になる食材は買っておきたい。
だが、
KONGは"投影バイアス"と言う言葉を知っていた。
お腹が空いた時、スーパーに足を運ぶとついつい買い過ぎてしまうのは
『空腹がずっと続くんじゃねぇの?』
と、いった感覚になりついつい買い込んでしまう行動らしい。
が、移動手段を電車にしたため、買い込む事は物理的に出来ない。
「ふふふ。
…戦略勝ちだ。」
予定通り必要な材料だけ買い込む事に成功したKONGは、"サザエさん"を口ずさみながら家に戻るのであった。

家に着いたKONGは早速【海老】の頭と殻を剥く作業に取り掛かる。
(…パキッパキッ…)
今日は動画で見つけた【海老ハンペン】を作るのだ。
(パキンパキッ…)
集中力が切れたら、頭と殻がついたままの海老をフライパンの持ち手部分に乗せては
「陸にいたら怖い生き物だな。。」
…(パキンパキン)…
「海老とナマコは最初食べた人は凄いな…。」
…(パキッパキッパチ)
「このまま塩で焼こうかな…。」
そんな事を考えながら、海老の殻剥きを終えて、海老を細かく切る。

そして袋に
【海老】
【はんぺん】
【鶏ガラ】
【コーン】
【片栗粉】
を袋に入れてグチャグチャにするのだが、このタイミングでビニール袋を買い忘れてしまった事に気付く。
「しまった…」
ここまで来てメニュー変更は、長蛇の列を並んでようやく回って来た自分の順番前に列を抜けるような行動である。
「恐ろしき…フードフェス。」
勿体無い気もしながらZiplocに入れる。

なぜ勿体無いのかは…
そう…
この料理は…
袋の角を切らねばならない。

そこに串を刺して…
絞りながら串を引くと、
あら不思議

簡単に棒状の練り物が出来るのだ。
仕込みが終わったKONGは、ビールを"プシュ"とし椅子に座ってようやく一服。
「この"ホッ"とする感じ。
フードイベントで言うとテントだな。」
人が賑わうフードイベントは、なかなか席に座るまで一息つけない。
会場で座ってお酒を飲めた人達もこれぐらい気持ちよかったのだろう。
一息ついたら、再度キッチンへ向かい仕込み終えた棒状の【海老ハンペン】を揚げる。

ドン!!!

「もう、このまま食べちゃえ。」
(ガブリ…)
「とても熱い。」
しかし"パリッ"と"フワフワ"な食感と、
ハンペンが海老のエキスをしっかり吸い込み見事に全員が引き立っている。
上顎を火傷してしまった以外は大満足なKONG。
熱々の料理をそのまま食べる。
これぞ!
フェス!!
『KONG』同様、名称は『ブラックタイガー』とパンチのある名前だが、
熱が入ると赤くなり、
冷蔵庫に反射するKONGの姿は背骨も曲がっている。
ひょっとしたら前世は【海老】だっかもしれない。

ありがとう。
ブラックタイガー。
ありがとう。
『SAKANA&JAPAN FESTIVAL in KONG家』。
それでは!
また!
