KONGと傘と潔さ
どうも。
KONGです。
ミステリーとは突然やってくる。
あと10秒。
いや、あと5秒何かが違っていたら、このnoteは存在していないかもしれない。
その日、KONGは駅ビル3階のトイレで手を洗い、鏡の前で自分の顔を確認し、
「うん、今日も悪くない。
だが…決して良くもない…」

と、つぶやいたその瞬間。
個室トイレのドアが『ガチャリ』と閉まった。
KONGは悟った。
『傘がない。』
視線は一瞬で床を探り、記憶を逆再生。
『うむ…個室のフックに掛けたままだ…。』
しかし、時すでに遅し。
次の戦士(ネクストソルジャー)が入ってしまったのだ。
KONGは少し右手の人差し指と中指に力を入れてドアの前で立ち尽くす。
ノックを…する勇気があるだろうか?
「あのぉ…すみましぇん…
私の傘……そこにぃ……」
言えるか?
見知らぬ人に?
トイレのドア越しに?
そもそもここは『すみません』なのか?
『ごめんください』の方がしっくりくるのでは?
時期的に『トリックオアトリート』の方がいいのか?
……。
無理だ…。
そんな羞恥プレイ、KONGの経験値では難易度が高すぎる。

とりあえず、同じ空間で立ち尽くすのもお互い気持ちが良くないので一旦外に出た。
自分の精神を保つ為に、心の中でこうつぶやく。
「時には待つことも大切だ。」
外のベンチに座り、スマホをいじるふりをするが心は完全にドアをロックオン。
時間にしておそらく5分。
いや、体感3時間。
心臓は無駄に鼓動を速め、頭の中では『傘が返ってくる確率』を数値化しようとするが答えは出ない。
すると、
トイレのドアが『ガチャリ』と開き、KONGはまるで刑事のように立ち上がった。
中から出てきたのは、穏やかな表情の紳士。
手にはーービニール傘…。
いや、まさか…。
偶然だ。
ビニール傘など、この世にいくらでもある。
そう、自分に言い聞かせた。
そもそも、あの紳士がこの雨の中、傘を持たずにここにいるとは考えにくい。
"あぶない刑事"モードのまま、KONGは両手で拳銃の構えをしたままトイレに突入した。
途中で誰かが入ってきたらこう言おう。
『関係ないねッ!』
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(ギィ……)
蛍光灯で照らされた白い床が光を反射している。
足音を殺し一歩一歩進むKONG。
中は静かだがうっすら店内BGMが聞こえてくる。

個室の前で足を止めて確認する。
『間違いない…ここで何かが起こった。』
無造作にちぎられた、トイレットペーパーの後が物語っている。
何故ならKONGは三角折りをしていたのだ。
自分が入った個室のドアを開けて、フックを見上げる……。
THE・空虚。
KONGは呟いた。
「傘よ、お前は自由を選んだのか……?」
外はまだ雨だった。
家にはあるけど、ないと困るし、なんか買ったら負けな気がするランキング1位の『傘』(KONG調べ)をコンビニ購入しKONGはふと笑った。
『今日も一つ学んだな。』
人生において、本当に必要なのは“傘”ではなく、“潔さ”なのだと…。
……。
今日も、あの傘がどこかで元気に開かれていることを願っている。
きっと今も、誰かを雨から守っているに違いない。
ありがとう、傘。
さようなら、KONGの心の防水具。
ただ一つ。
あの時、言ってみればよかった。
『トリックオアトリート。』
それでは!
また!
