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「おぉ、357!」──この一言で分かる、里芋農家のお隣さん事情

私は里芋農家の娘です。
この9~10月は収穫作業の全盛期。
普段の農作業については、知識も体力もない私はお呼びでない感じなのですが、この猫の手も借りたいような繁忙期には、しっかり手伝いをしています。

里芋の収穫は、株を掘り起こして砕くところから始まります。
里芋の株は、大きく育つと、両手で抱え上げるのにも苦労するようなどっしりした重さになります。
地上に伸びた茎の根元に親芋があり、その脇にたくさんの子芋、孫芋がくっついています。
うちの場合は、まずは畑で株を粗く砕いて子芋と孫芋だけをコンテナに放り込み、選別のための場所へ移動させます。
特別な作業場があるわけではなく、自宅の車庫に持ち帰るだけなのですが、屋根がある分、初秋の強烈な日差しを避けることができますし、雨が降っても作業が続けられるんです。

選別作業は、粗く砕いただけだった芋を全て一つひとつに分け、表面についた泥を落としつつ、芋から生えてる根っこを取り除き、コブのようにひっついている小さな芋を包丁などを用いて切り落とす作業の繰り返しです。
その作業をしながら、腐っている部分はないか、ひび割れはないかなどを確かめ、問題がなければ出荷用に回します。

前置きが長くなりましたが、ここからがタイトルの種明かしです。

そろそろ正午を迎えようかという時間帯に、私が車庫で選別作業をしていると、お隣さんの庭に車が停まる音がしました。
ドアがバタンと閉まる音がしたと思ったら、お隣さんの奥さんの声。
「おぉ、357!」

聞こえてきたのは、たったこれだけ。
でも、私も両親もそろって、にやりとしてしまいました。

うちを含め、近隣の里芋農家が芋を出荷する先は限られています。
お隣さんもうちと同じ出荷先。
里芋を出荷すると、芋を積んだ状態と空になった状態とで軽トラの重量が計測され、その重量の差から出荷量がkg単位で算出されます。
そして、出荷量が印字された伝票のようなものを受け取ります。

きっと、お隣さんは、午前中に収穫した里芋を昼前に出荷し、持ち帰った伝票を奥さんに手渡したのでしょう。
コンテナの個数で、大体の重量は分かります。各コンテナに8~9割入っていれば、コンテナ1個で20kg程度になります。満杯近くまで入っていれば、コンテナの個数×20kgより多くなることが期待できます。
お隣さんの奥さんは、コンテナの個数と芋の入り具合から出荷量を予想していて、その重量を超えていたから「おぉ」という感嘆詞がついたんだと、私にも両親にも想像がつくわけです。

お隣さんの方がうちより大農家で、うちは1日で200kgを超えるのを目標に頑張っているんですが、お隣さんは機械などを駆使して半日で350kgも出荷できてしまうんです。
お隣さんが羨ましいねえなんて会話がうちで交わされていることに、お隣さんはきっと気がついていないことでしょう。

以上、里芋農家のちょっとした“お隣さんあるある?”でした。

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