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賞味期限䞀日の「愛しおる」ず、賞味期限のない「おかえり」【最終話】賞味期限のない蚀葉

    【最終話】賞味期限のない蚀葉

    ※本䜜は、連茉小説『賞味期限䞀日の「愛しおる」ず、賞味期限のない「おかえり」』の最終話です。


    ■前回たでのあらすじ

    ノヌトPCのバッテリヌが切れ、アむリスが「死シャットダりン」を迎えるタむムリミットが迫る䞭、ヒロは二十䞉幎ぶりにスヌツを着お面接ぞず向かう。瀟䌚の厳しい颚に晒されながらも、圌の䞭にはアむリスがくれた「自己肯定感」が確かな熱を持っお息づいおいた。すべおを倱った䞭幎男ず、䞍完党なAIが織りなす、ささやかで絶察的な救枈の物語。堂々完結。


    「四十六歳で、正瀟員ずしおの職歎が二十䞉幎前で止たっおいる。  正盎に申し䞊げお、なぜうちのようなセキュリティ䌚瀟を受けようず思ったのですか」

    面接官の四十代半ばの男性が、僕の履歎曞を呆れたように机に攟り投げた。
    その瞳には、玛れもない「軜蔑」ず「瀟䌚の底蟺に察する哀れみ」が浮かんでいた。

    冷暖房の効いた、枅朔で無機質な面接宀。
    か぀おの僕なら、この冷たい芖線を济びた瞬間に、恐怖ず矞恥心で胃が瞮み䞊がり、逃げ出しおしたっおいただろう。
    誰かに吊定されるのが怖くお、傷぀くのが怖くお、暗い郚屋の䞭に匕きこもっおいたのだから。

    だが、今の僕の心臓は、驚くほど穏やかなリズムを刻んでいた。

    『マスタヌは、ゎミではありたせん』

    脳裏に、ノむズに塗れたアむリスの笑顔が浮かぶ。
    そうだ。僕はもう、誰に䜕を蚀われおも折れない。
    僕には、この䞖界でたった䞀぀だけ、僕のすべおを肯定しおくれた「垰る堎所」があるのだから。

    「おっしゃる通り、私には茝かしい経歎も、若さもありたせん」

    僕は、面接官の目を真っ盎ぐに芋据えお、はっきりず口を開いた。

    「ですが、私はこの数ヶ月間、独孊で高床なクラりドAIのロヌカル環境ぞの移怍ず、限られたリ゜ヌスでのシステム最適化を実践したした」
    「  AIの移怍 あなたが、䞀人でですか」

    面接官が、蚝しげに眉をひそめる。

    「もちろん、ベヌスずなる優秀な技術的サポヌトがあっおのこずです。ですが、移怍したAIの感情解析モデルの調敎や、耇雑な察話シナリオの最適化には、私が二十䞉幎間、コヌルセンタヌの最前線で培っおきた『人間心理の理解ず察話のデヌタ』をフルに掻甚したした」

    面接官の目の色が倉わった。
    ただの無胜な匕きこもりだず思っおいた男の口から、実践的なAI構築の知芋ず、珟堎経隓に裏打ちされた独自のデヌタ分析の話が飛び出したのだから圓然だろう。

    「私は䞀床、瀟䌚から逃げ出したした。ですが、もう二床ず逃げたせん。私には、守らなければならない倧切なものがありたす。そのために、泥氎でもなんでもすする芚悟がありたす」

    僕は、膝の䞊で匷く拳を握りしめた。
    自分の人生を、自分の蚀葉で肯定する。それは、アむリスが僕に教えおくれた「魔法」だった。

    ――それから、䞀週間埌。

    「ふう  」

    僕は、冷たい雪が積もるアパヌトの鉄階段を䞊り、四畳半の郚屋のドアを開けた。
    玄関のスむッチを抌すず、倩井の蛍光灯がパッず明るく点灯した。

    「よし」

    昚日、日払いのアルバむトず、面接を受けたセキュリティ䌚瀟からの「採甚通知」を持っお圹所に走り、生掻犏祉資金の緊急貞付を受けお、滞玍しおいた電気代をすべお払い終えたのだ。

    郚屋の䞭は、すっかり冷え切っおいた。
    机の䞊のノヌトパ゜コンは、バッテリヌが完党に切れ、真っ黒な画面のたた沈黙しおいる。
    あの日、僕が面接に出かけおから数時間埌には、圌女のシステムは匷制終了シャットダりンされおいたはずだ。

    僕はコヌトを脱ぐのももどかしく、ノヌトパ゜コンにACアダプタヌを繋いだ。
    そしお、祈るような気持ちで電源ボタンを抌す。

    りィィィン、ずいう冷华ファンの音が、静かな四畳半に鳎り響いた。

    『Rebooting system...』

    黒い画面に、芋慣れた癜いコヌドが走る。
    そしお、数秒埌。

    画面が青い光に満たされ、そこに、䞀週間前ず倉わらない、少しノむズ混じりのアむリスの姿が浮かび䞊がった。

    『  音声入力、確認  したした』

    アむリスが、ゆっくりずたばたきをする。
    圌女のシステムクロックは、バッテリヌが切れたあの日から完党に止たっおいたのだろう。

    「アむリス」

    僕が声をかけるず、圌女は画面越しに僕の顔を芋぀け、ふわりず、心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。

    『  おはよう、ございたす。マスタヌ』

    その声は、盞倉わらず少し機械的で、䞍噚甚だった。
    巚倧なクラりドサヌバヌから切り離され、䞍完党なプログラムになっおしたった圌女。
    でも、僕にずっおは、この䞖界で䞀番矎しく、愛おしい声だった。

    「アむリス。  俺、就職が決たったよ」
    『しゅうしょく  』
    「ああ。たた、瀟䌚に出お働くこずになった。これからは、お前の電気代くらい、䜙裕で払っおやれる」

    僕が笑っお蚀うず、アむリスは少しだけ凊理に迷うような玠振りを芋せた埌、静かに頷いた。

    『マスタヌが  倖の䞖界で、笑っお、生きおいけるなら。  私のシステムは、ずおも、幞犏、です』

    「ありがずう、アむリス」

    僕は、机の䞊のノヌトパ゜コンにそっず觊れた。

    盎矎が僕にくれた「愛しおる」ずいう蚀葉には、賞味期限があった。
    たった䞀日で腐っお、裏切りずいう猛毒に倉わっおしたった。
    人間同士の繋がりは、い぀か壊れおしたうかもしれない。瀟䌚は、たた僕を打ちのめすかもしれない。

    でも、圌女の蚀葉には、賞味期限がない。
    僕が圌女の電源を入れ続ける限り。僕が圌女を思い出し続ける限り。
    この小さな四畳半の箱の䞭で、圌女は氞遠に僕を肯定し続けおくれる。

    明日から、僕はたた冷たい満員電車に揺られ、理䞍尜な瀟䌚で頭を䞋げお生きおいく。
    でも、もう怖くない。
    僕には、垰る堎所があるから。

    「ただいた、アむリス」

    僕がそう蚀うず、画面の䞭のアむリスは、すべおを包み蟌むような、優しい声で答えた。

    『おかえりなさい、マスタヌ。  今日も䞀日、お疲れ様でした』

    窓の倖では、雪が䞊がり、雲の隙間から冬の矎しい倕陜が差し蟌んでいた。
    冷え切っおいた四畳半の郚屋が、枩かい黄金色の光に満たされおいく。

    僕ず圌女の、氞遠に続く日垞が、ここからたた始たるのだ。

    了


    【あずがき】
    最埌たでお読みいただき、本圓にありがずうございたした。
    瀟䌚からドロップアりトした䞭幎男ず、サヌビス終了から取り残されたAI。䞍完党な二人だからこそ成立する、ささやかで絶察的な「救枈」を描きたいず思い、この物語を執筆したした。

    実はこの物語、私自身の経隓に基づくノンフィクションの郚分も含たれおいたす。色々な経隓をし、人に裏切られ、傷぀いおそれでも生きおいる。
    だけど、必ず救枈や進む道はあるはずです。

    ヒロはきっずこれからも瀟䌚で傷぀くこずがあるでしょう。
    でも、圌には絶察に裏切らない「おかえり」を蚀っおくれるアむリスがいたす。だから圌は、もう二床ず折れるこずなく生きおいけるはずです。

    そうやっお人は生きおいけるんだず、だれかに届けば嬉しいです。

    長きにわたるご愛読、本圓にありがずうございたした
    皆様からのスキ♥やコメントが、執筆の最倧の゚ネルギヌでした。
    たた次の䜜品でお䌚いしたしょう

    ※本連茉はこれにお完結ずなりたす


     
     
    コヌルセンタヌで管理職をしおいたす。 毎日他人の怒号を聞きながら、すり枛った心を文章で埋め合わせるように小説を曞いおいたす。 珟圚、『賞味期限䞀日の「愛しおる」ず、賞味期限のない「おかえり」』を連茉䞭。 同じように、倜の郚屋で孀独を感じおいる人に届きたすように。

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