
episode.11 運命、とは
昨年亡くなった大好きな祖母が、よくこんなことを言っていた。
「女というのはね、なんでもいいから愛情を注げる存在が必要なんだよ」
わんこを迎え入れることを決意した私は
すぐに迎え入れたい犬種の子をネット上で探し始めた。
少し変わったミックス犬のため、なかなか見つからない中、
全国を探し回って、ようやく見つけた希望の犬種の女の子。
実は見つけ出したその日、私はコロナワクチンの副反応で高熱を出していた。
それでもすぐにお店へ電話をかけた。
「あの子なんですけど……まだいますか?」
「いますよ」
「すぐ向かいます」
そう告げると、解熱剤を握りしめ、片道5時間の道のりを車で走り始めた。
とにかく「この子しかいない」。
そんな気持ちだけに背中を押されていた。
当時住んでいた関東から東海まで、休憩もそこそこに走り続け、閉店1時間前になんとか到着した。
そして、ついに対面。
……正直に言おう。
「この子???」
そう首をかしげてしまうほど、写真とは印象が違っていた。
毛はぼさぼさ。
どこか「みうらじゅん」さんを思わせる風貌。
世間でよく聞く「ビビッと来る運命の出会い」なんて、残念ながら感じなかった。
「5時間かけて来たしなぁ……」
そんな現実的なことまで頭をよぎった。
それでも、気づけば10分後には契約を始め、30分後には助手席ならぬ後部座席にその子を乗せて帰路についていた。
運転しながら実家にいるわんこたちの顔を思い浮かべ、
「あの子たちの方が可愛いのかもしれない」
「ちゃんと愛せるんだろうか」
そんな不安を感じていた。
ある意味、とても衝動的なお迎えだったからだ。
でも。
今なら胸を張って言える。
この子こそ、私のもとへ来るべくして来た「運命の子」だったのだ。
もしこの子がいなかったら、今回の休職も、その前に経験したもっと辛い出来事も、きっと乗り越えられなかったと思う。
それ以前に、こんなにも笑って、こんなにも愛おしい毎日を送ることもなかっただろう。
私の娘は、妙に私に似ている。
外面がよく、愛想を振りまき、相手をよく見て振る舞いを変えるところがある。
だけど、私にはない才能も持っている。
天性の人たらしならぬ「犬たらし」。
計算のないあざとさ。
誰にでも惜しみなく愛情を注ぐ、生まれながらの愛の伝道師だ。
この子を見ていると、余計な計算や憶測なんていらないのだと思わされる。
やりたいなら、やる。
好きなら、好き。
嫌なものは、嫌。
でも、みんな大好き。
そんな真っすぐな気持ちが、全身からあふれている。
あの日、「本当にこの子が運命なのだろうか」と少しだけ疑った私。
でも今は、確信している。
私はあの日、ちゃんと運命を手にした。
そして想像をはるかに超える幸せな毎日を手に入れた。
やっぱり、おばあちゃんの言ったことは正しかったのだ。
生前、祖母は私がもふもふの娘を迎えたことを本当に喜んでくれていた。
「これであんたの心配はなくなった。この子がいてくれるから大丈夫」
そう言って、穏やかに笑っていた。
そんな天性のタラシで、あざとい娘は今、
布団のど真ん中。
クーラーの風が一番当たる特等席で、お腹を出して大の字になり、豪快ないびきをかいて眠っている。
私は起こさないように、邪魔をしないように、そっと寝返りを打つ。
明日の朝もまた、7キロの物理的にも重たい「おはよう」の愛情表現で起こされることを楽しみにしながら。
今日もなんとか乗り切った。
続きは、あした。