アンリが旅に出る理由(第一話)
あらすじ
山村アンリ(17)は平凡な高校2年生であったが、
ある時を境に地獄へ落とされるこ ととなる。
実はアンリの住む日本では「連座法」と言う「犯罪を行った者の家族に罰が及ぶ」江戸時代さながらの連座制度が施行されていた。
さらに凶悪犯罪等の重犯罪の場合、犯人には切腹が促されるが、犯人が切腹を拒否した場 合、その家族が「追放人」とされ人権剥奪、全財産の没収と法の適用外の人間とされてし まうのであった。
そんな中、アンリの慕う兄、山村累(20)が
児童連続殺傷事件「サクラガワ事件」の 犯人である事が判明。
多くのメディアが押しかけ、アンリは学校でも街でも迫害される。
あくまでも兄の無実を信じるアンリであったが実は、累は快楽殺人者であった。
家族の手で累を殺せば、アンリの母も父も「追放人」から解放される。
そのためアンリは累を殺そうとするが 結局できず累は逃走。
その後、父の雅夫は暴徒に襲われ撲殺される。
「累を殺さなかったため父は殺された」
と後悔するアンリは、累の殺害許可書、ミソギ許可書を取得。
アンリはを累を殺す旅に出ることを母に伝え去
本編・シナリオ
〇黒背景
T・西暦20××年。
拡大した経済格差と長年の国力衰退、外国との紛争により日本は軍事クーデターが勃発。伝統回帰を掲げた軍事政権は悪化した治安を回復させるため、凶悪犯罪に対し、みせしめとして江戸時代の「連座制」と「切腹」を復活させた・・・・・・。
〇スタジアム・全景(夜)
〇スタジアム・内部
暗く静まり返ったスタジアム。
5万人の席は満席。
ステージに立つ司会者。
司会者の横で怯えるお婆さん(76)。
ライトが司会者に当たる。
司会者「レディースアンドジェントルメン!」
音楽隊が賑やかに演奏を開始。ピエロを先頭にパレードが開始。
観客は大盛況。笑顔の司会者。会場の真ん中には震えたお婆さん。
司会者「さあ本日の主役、神田博。そのお母様がこちらです!」
司会者はお婆さんにマイクを渡すがお婆さんは号泣。
司会者「おやおや?息子さんの罪。お分かりですよねぇ?」
ステージには白装束姿の神田博(46)が大柄な刑務官に引き連られてくる。
司会者「おおっ。神田です! 神田がやって来ました!」
大ブーイングの観客。刑務官の腰には日本刀。
神田は顔面蒼白。スタジアムの画面に映し出される4人の笑顔。
司会者「皆様。黙祷を」
静まりかえる会場。
司会者「5年前の今日です。あの笑顔の4人はこの通り魔、神田博に命を奪われました。イライラしてたというあまりにも身勝手な理由で・・・」
すすり泣きが会場に響く。
司会者「さあ。神田博。アナタが最後にやるべきことは?」
刑務官が短刀を神田に持たせる。
震えあがる神田。泣き叫ぶ神田
神田「いやだ! 死にたくない! 許してください!」
泣きじゃくり土下座する神田。ブーイングの会場。
司会者はお婆さんの顔を蹴り上げ、お婆さんは鼻血を出し倒れる。
司会者は冷酷に話す。
司会者「テメエが腹切らねえと、このババアが追放人になるぞ。あ?」
怯えるお婆さんを見て神田は決意の顔。
神田「ぐぐぐぐぐ。ぐああああああ」
神田は腹に刀を刺す。同時に刑務官が刀で神田の首を斬り落とす。
司会者「おおおっ! 神田はミソギを払いました! お母さん。アナタの人権は守られました!」
お婆さん「博! 博! 博! 博!」
お婆さんは神田の首を抱きしめ号泣。観客は拍手喝采。
〇飲み屋(夜)
暗く薄汚れた飲み屋。人相の悪い客達。
店主がテレビを見ている。テレビでは司会者がカメラ目線で語る。
司会者「全国の皆さん。凶悪犯罪を犯すことは家族の人権も奪う事になります。そのことを肝に銘じて・・・・・・」
席でバンダナを頭に巻く山村アンリ(19)がテレビを消す。
小柄の美少女。
店主「おいおい!なんで・・・・・・」
鋭い目つきで店主を睨むアンリ。
店主は仕事に戻る。
アンリ「この男。知らない?」
アンリは山村累(20)の写真を出す。
首を振る店主。ため息をつくアンリ。
人相の悪い客A、B、Cが店に入ってくる。
客Cはアンリの肩に腕をかけるがアンリはその腕を払う。
客C「ふられちゃった。さみしぃ」
客Cはアンリの写真を奪う。
アンリ「返しなさい」
客A「おお、こわ」
からかう客A。客Bが写真を見て驚く。
客B「おいっ!これ、山村累だ!」
客C「山村累って。あの山村累?」
客Bはアンリのバンダナをはがす。
アンリのおでこには七色の鎖の刺青。
客A「マジか!この女、追放人だ!」
客C「オマエ。山村累の家族?」
アンリ「だったら?」
平静なアンリ。にやつく客達。
客C「今夜はついてるな。こんな美人に人権無いなんて」
客達はナイフを取り出す。
客A「大人しくしろ。殺しはしねえ」
客B「売られた後は知らねえけど」
下卑た笑いの客達。だが隙を見てアンリは客Aの股間を蹴り上げる。
客A「ぐおっ」
うずくまる客A。
客B「て、てめえ」
すかさず客Cの顎を蹴り上げるアンリ。
失神する客Cのナイフを取り、客Bの喉へ。震えあがる客B。
アンリ「アタシら追放人もね。正当防衛の権利は残されてんの。このまま喉笛掻っ切ろうか?」
足が震える客B。
アンリ「失せな」
逃げていく客B。驚いている店主。
アンリ「邪魔したわね」
アンリは店を出て行く。
○ 駐車場(夜)
アンリはバイクのエンジンをかける。
地図を確認するアンリ。
アンリ「今度こそ」
アンリは累の写真を見る。
アンリ「殺す」
アンリはバイクで去っていく。
○倫道高校・全景
T・二年前
〇同・2年A組
スクリーンに映し出される映像。
映像は戦争と原子爆弾の投下映像。
授業をする浅田山門(29)。
生徒の中に山村アンリ(17)、佐竹美琴(17)。
浅田「こうして第三次世界大戦の後、衆愚政治を起こした民主主義は脆くも崩れ去った。一方、新たな世界秩序はテロや凶悪犯罪を誘発することとなった」
浅田は前に乗り出す。
浅田「そこで我々は治安回復のため、ご先祖様の知恵を借りようと江戸時代の制度を復活させたわけだ」
美琴「江戸時代の制度?」
浅田「みんながよく知る『連座法』だ。犯人の家族に罰が課せられる制度のことだな」
クラスのどよめき
浅田「残酷なようだがこの制度。専門家によると『犯罪者も家族が大切』ということで、とても抑止力になっているそうだ」
皆、納得している。
浅田「では凶悪犯罪や重大なテロの場合、犯人はどうなる?」
美琴「死刑、はもう無いんでしょ?」
考える美琴。
浅田「誰か分からんか?」
再度起立するアンリ。
アンリ「ハイ。犯人に切腹が促されます」
浅田「さすが、山村。死刑が無い今。切腹も江戸時代の知恵の一つだな」
浅田「では犯人が切腹を拒んだ場合は?」
アンリは答えようとするが授業終了のチャイム。
浅田「じゃ今日はここまで」
生徒達は立ち上がる。
浅田「皆もお互いの監視を忘れずに。疑わしきは密告。忘れるなよ」
はーい、という皆の声。
浅田「あと来週までにレポート5枚もな」
「えーっ」という嫌がる皆の声。
〇享宝大学・全景
〇同・医学部・解剖室
白衣を着た医学生達がラットを解剖。テキパキ解剖をする山村累(20)。
医学生は顔色が悪い。
累は穏やかな笑顔。
医学生「俺ダメ。全然、慣れない」
吐きそうになる医学生。
累「俺。やっとくよ」
医学生「す、すまん。頼んだ」
医学生は口を押え急ぎ解剖室を出る。
累は口に笑みをたたえ解剖を続ける。