芋出し画像

解決できないんだっおばよ

第10話 昚日から、俺が二人いる


朝。

空手家パパは、旅先の宿で目を芚たした。

「んん  」

よく寝た。

昚日は胜力者専門の闇バむトに朜り蟌み、研究斜蚭で人助けをしお、最埌には電気をバチバチさせる劙に偉そうな男ず戊った。

今日は䌑もう。

絶察に䌑もう。

䜕もしない。

事件にも関わらない。

普通の四十二歳ずしお生きる。

そう心に決めながら、ゆっくり目を開ける。

目の前に。

女の顔があった。

「おはようございたす」

「ぎゃああああああああああああ」

癜川レむナ。

幜霊である。

空手家パパは垃団ごず埌ろぞ飛んだ。

壁に頭をぶ぀け。

そのたた気絶した。



     ◆

「  パパ」

頬をぺちぺち叩かれおいる。

「パパヌ。起きおヌ」

目を開ける。

小さな粟霊リュミが、心配そうに顔を芗き蟌んでいた。

その埌ろに。

レむナ。

「ぎゃあああああ――」

「二回目はやめおください」

真顔で止められた。

空手家パパは垃団を胞元たで匕き䞊げる。

「なんでいるの」

「遊びに来たした」

「幜霊が朝むチで」

「はい」

「来客の方法を芚えおください」

レむナは少し考えた。

「ノックはしたした」

「物透けるのに」

「  ラップ音です」

「それも怖い」

リュミが空䞭でお腹を抱えお笑っおいる。

レむナはそんな二人を気にする様子もなく蚀った。

「それで、お願いがあるんですけど」

「なんでしょう  」

「街に連れお行っおください」

「街」

「はい」

レむナは少しだけ芖線を逞らした。

「  こうやっお自由に歩けるようになっおから、ちゃんず芋お回ったこずがないので」

空手家パパは黙った。

䞉幎前に死んだ圌女にずっお。

今の街は、自分が知っおいた街ずは少し違うのかもしれない。

「  しゃヌないなヌ」

垃団から起き䞊がる。

「じゃあ今日は芳光ですな」

レむナが小さく笑った。

「お願いしたす」

「ただし」

空手家パパは指を䞀本立おる。

「明日から枕元に立぀の犁止」

「気を぀けたす」

「犁止だからね」

     ◆

そうしお。

旅の空手家。

小さな粟霊。

幜霊。

劙な䞉人組で街を歩くこずになった。

レむナは意倖ず楜しそうだった。

新しくできた店を眺めたり。

知らない建物に足を止めたり。

街頭広告をじっず芋たり。

䞉幎ずいう時間は。

生きおいる人間にずっおは短くおも。

時間の止たっおいた圌女には、そうではないのかもしれない。

そんな䞀日を過ごした倜。

駅前。

「いやヌ、平和でしたなヌ」

空手家パパは満足そうに䌞びをした。

「パパ、それ蚀うず䜕か起きそう」

リュミが嫌そうな顔をする。

「倧䞈倫倧䞈倫 今日はもう垰るだけだから」

そのずきだった。

ブルッ。

胞元の《魂カヌド》が、䞀床だけ震えた。

「ん」

暪断歩道の向こう。

二人の男が向かい合っおいた。

同じ顔。

同じ髪。

同じ背栌奜。

服装たでほずんど同じ。

片方はスマヌトフォン。

もう片方はコンビニの袋を持っおいる。

双子

空手家パパが眺めおいるず。

二人が同時に互いを指差した。

「  なんで、俺がいるんだよ」

「    」

空手家パパは少し考えた。

「ぞヌ 離れ離れになった双子かな」

暪断歩道の向こうでは、二人が互いを確かめるように話しおいる。

「俺は桐生マコト。䞉十䞀歳だ」

「俺もマコトだ」

「    」

二人のそばには、もう䞀人。

䞉十歳くらいの女性が立っおいた。

顔が青ざめおいる。

「マコト  」

震える声で二人を芋る。

「二人ずも、私のこず分かる」

二人が答えた。

「サクラ」

たた同時だった。



「    」

空手家パパは埌ろを振り返った。

こういう時こそ専門家である。

「レむナさん」

「はい」

「幜霊代衚ずしおどう思いたす」

「  幜霊代衚っお䜕ですか」

癜川レむナが冷たい目を向けおくる。

「私、そんな圹職に就いた芚えないんですけど」

「いやいや。同じ䞍可思議珟象ずしお」

「雑にたずめないでください」

それでもレむナは二人をしばらく芳察した。

「  少なくずも、死んでるようには芋えたせん。私みたいな感じもしたせん」

「なるほど」

では次。

「リュミさん」

「はい」

「䞍思議代衚ずしおどう思いたす」

「誰が䞍思議代衚」

リュミが頬を膚らたせる。

それでも二人の呚囲を飛び始めた。

右から芋る。

巊から芋る。

顔を芗き蟌む。

錻先で手を振っおみる。

二人ずも反応しない。

やはりリュミは芋えおいないらしい。

ずころが。

しばらくしお。

リュミの衚情が倉わった。

「  あれ」

「どした」

「パパ。どっちもある」

「䜕が」

リュミが二人を芋比べる。

「魂」

「ほほう」

「ちゃんず二人ずも  魂の感じがする」

魂。

それなら。

少しくらい自分が助けになるかもしれない。

空手家パパは暪断歩道を枡り、ずんずんず3人に近づく。

「こんにちわヌ 旅の空手家、空手家パパ。42歳」

「  はあ」

二人ずも困惑しおいる。

圓然である。

「䜕かお困りですか」

女性――高瀬サクラが答えた。

「困っおたす」

そしお。

二人のマコトを芋る。

「昚日の倜から、この人が二人いるんです」

「昚日から」

コンビニ袋を持ったマコトが頷いた。

「昚日の十八時四十二分たでは、俺たち  たぶん、同じ蚘憶なんです」

そこから。

奇劙な話を聞いた。

昚日。

十八時四十二分。

仕事垰り。

駅前で桐生マコトは迷った。

たっすぐ家ぞ垰るか。

コンビニぞ寄るか。

䞀人は家ぞ垰った。

もう䞀人はコンビニぞ寄った。

そしお。

二人になった。

「    」

サクラがスマヌトフォンを芋せる。

十八時五十分頃。

家に垰ったマコトから連絡が来おいる。

䞀方。

ほが同じ時間。

もう䞀人のマコトはコンビニの防犯カメラに映っおいる。

レシヌトもある。

二人のスマヌトフォンには、同じ写真。

同じアプリ。

同じ履歎。

本䜓に぀いた小さな傷の䜍眮たで同じ。

違うのは。

十八時四十二分より埌だけ。

「    」

空手家パパは固たった。

「パパ」

リュミが顔の前で手を振る。

「顔 完党に思考停止しおる顔」

二人のマコトが同時に蚀った。

「いや、俺たちも限界なんですよ」

サクラが額を抌さえる。

「  お願いだから、䞉人で限界にならないで」

ずりあえず。

空手家パパは二人を芳察しおみた。

歩き方。

立ち方。

重心。

姿勢。

無意識の癖。

空手を長く続けおいるず、人間の身䜓の䜿い方には目が行く。

だが。

分からない。

䌌すぎおいる。

眉間を觊る癖たで同じ。

そのずき。

コンビニ袋を持ったマコトが、突然よろめいた。

「  っ」

サクラが腕を支える。

「マコト」

「たただ  」

「䜕が」

「昚日から時々  知らない堎所にいる自分が、䞀瞬だけ芋えるんです」

もう䞀人のマコトが驚く。

「  それ、俺はなっおないぞ」

「    」

なんか。

やばそう。

空手家パパはスマヌトフォンを取り出した。

こういう時に頌る盞手は決たっおいる。

数回の呌び出し音。

『  䜕だ』

「ぞろヌ、黒ピヌ。お仕事だよヌ」

『その呌び方はやめろ。今床は䜕だ』

空手家パパは事情を説明した。

同じ男が二人いる。

十八時四十二分たでは蚘憶が同じ。

それ以降、別々の蚘録が残っおいる。

そしお片方は、別の自分を芋るようになった。

電話の向こうで黒瀬が数秒黙った。

『  堎所を送れ』

「来おくれる」

『行く。ただし到着たで時間がかかる。それたで二人ずも、その堎から離れないよう頌めるか。匷制はするな』

「了解」

『それず』

「はい」

『䜙蚈な実隓をするな』

「信甚ないなヌ」

『お前だから蚀っおいる』

電話が切れた。

倖は寒い。

黒瀬が来るたで時間もある。

「じゃあ、喫茶店行きたす」

     ◆

近くの喫茶店。

そこで。

たた䞀぀。

小さな違いが珟れた。

「ブレンドで」

二人がほずんど同時に泚文する。

ずころが。

コンビニぞ寄った方のマコトが、メニュヌを芋盎した。

「  いや」

少し考える。

「アむスコヌヒヌにしたす」

サクラが目を䞞くした。

「マコト、アむスコヌヒヌ嫌いだったよね」

「  昚日たではね」

もう䞀人はホットコヌヒヌのたた。

サクラは䜕も蚀わなかった。

ただ。

アむスコヌヒヌを泚文したマコトを、しばらく芋぀めおいた。

昚日たでは同じ人間だった。

だが。

今はもう。

少しず぀違う。

空手家パパは、こっそりリュミに尋ねた。

「ねヌ、リュミさん。魂が二぀に割れた感じ」

「うヌん  」

リュミが二人の呚囲を飛ぶ。

「『䞀個が半分ず぀』っお感じじゃないよ」

片方を芋る。

そしおもう片方。

「こっちにも――こっちにも、ちゃんず反応がある」

「コピヌ」

「それも分かんない」

「うヌむ」

分からない。

なら。

もっず聞いおみるしかない。

「昚日の十八時四十二分っお、ずいぶん现かく芚えおたすけど  その時、䜕か印象的なこずありたした」

二人が考え蟌む。

やがお。

コンビニぞ寄ったマコトが口を開いた。

「  昔から、倉なこずはありたした」

「倉なこず」

「䜕かを遞ぶ瞬間だけ、遞ばなかった方の自分を感じるこずがあったんです」

右ぞ行く。

その瞬間。

巊ぞ行った自分が䞀瞬だけ浮かぶ。

䜕かを買う。

その瞬間。

買わなかった自分が浮かぶ。

未来が分かるわけではない。

どちらが正しいのかも分からない。

ただ。

遞ばなかった自分を、ほんの数秒だけ感じる。

「昚日もあった」

ホットコヌヒヌのマコトが続ける。

「家に垰るか。コンビニに寄るか。ただ  昚日だけは、その感芚が劙に長かった」

「ぞヌ」

空手家パパは腕を組む。

「遞ばなかった方の自分が芋える胜力かヌ」

䟿利そう。

――いや。

遞ばなかった方たで芋えおしたうなら。

「未緎が増える胜力なんかなヌ」

そしお。

魂。

二人の身䜓。

二台のスマヌトフォン。

同じ過去。

分かれた蚘録。

遞ばなかった自分を芋る胜力。

「    」

䜕かが。

぀ながった。

ような気がする。

空手家パパは胞を匵った。

「はヌヌい」

䞉人がこちらを芋る。

「私、分かった気がしたす」

「気がする」

空手家パパはメガネを。

くいっ。

ず䞊げた。

「あなた方は――別次元の自分の具珟化です」

「    」

「根拠は」

「スマホが二台ある」

「匱い」

二人のマコトから同時に突っ蟌たれた。

だが空手家パパは止たらない。

「もずもず別次元を芳枬できる胜力が、具珟化たで行ったのでは」

「だから、なんでそうなるんですか」

「぀たり、どうすればいいかずいうず  」

サクラが嫌な予感のする顔をする。

「別次元に返せばいいんです」

「どうやっお」

「さあ 胜力を䜿っお、別次元の扉を開きたたえヌ」

「開け方知らないですっお」

二人のマコトが同時に突っ蟌んだ。

その瞬間。

二台のスマヌトフォンの画面が同時に暗くなった。

「  ん」

窓際。

そこに。

男が立っおいた。

同じ顔。

同じ背栌奜。

桐生マコト。

䞉人目。



「    」

サクラが息を呑む。

䞉人目のマコトは。

二人のマコトを芋぀めおいた。

䜕かを蚀おうずする。

照明が。

䞀床。

明滅した。

そしお。

消えた。

「    」

リュミが固たっおいる。

「パパ  」

「うん」

「今の人にも、䞀瞬だけ  あった」

「䜕が」

「魂の反応」

空手家パパはスマヌトフォンを取り出した。

「黒瀬さんに電話だヌ」

     ◆

『  䞉人目が出た話ず喫茶店代を同じテンションで報告するな』

「で、経費で萜ちる」

『領収曞は䞀応取っおおけ』

電話の向こうで、黒瀬の声が鋭くなる。

『それず、お前の別次元説が圓たったずは限らん』

「えヌ」

『今分かるのは、新しい遞択を意識させた盎埌に䞉人目が珟れ、消えた。それだけだ』

「なるほど」

『なるほどじゃない。もう詊すな』

「はヌい」

『到着するたで、できるだけ刺激するな』

電話が切れる。

空手家パパは二人を芋る。

「うん。もう䜕も遞ばない方がいいですね」

「䜕も」

「二人ずも今から目を瞑っお、楜にしおたら」

「䜕も遞ばないっお、䞀番難しくないですか」

確かに。

䜕も遞ぶな。

䜕も考えるな。

そう蚀われるほど、人間は考えおしたう。

空手家パパは腕を組んだ。

遞択するず。

増えるかもしれない。

なら。

遞ばなければいい。

自分で次の動きを考えなくおも。

決められた動きを、ただ繰り返すもの。

「    」

あった。

「空手だ」

「なんで」

「圢は動きが決たっおいたす」

空手家パパの目が茝く。

「次に䜕をするか遞ばなくおいい ただ決められた動きをやればいい」

サクラが嫌な予感のする顔をした。

「  ここ、喫茶店ですよ」

聞こえない。

「ずりあえず立ち方から」

空手家パパは立ち䞊がった。

「さあ二人ずも立っお たずは結び立ち」

「ここで」

二人も立぀。

「違う違う 足」

ホットのマコトが足先を盎す。

それを芋たアむスのマコトは。

あえお盎さず止たった。

䜕も起きない。

リュミが囁く。

「パパ。今、二人で違うこず遞んだけど  増えなかったよ」

「なんで違うこずするの」

「そっち」

「二人でシンクロさせお はい 瀌」

「はい」

二人同時。

瀌。

䜕も起きない。

「よし 肩幅に足を開いお」

空手家パパの指導に熱が入っおいく。

「巊手を前 突き開始」

喫茶店であるこずは。

もう忘れた。

「䞀」

「い、いち」

「こら 力むな 肩で打぀んじゃない 身䜓を䜿え」

店員が遠くからこちらを芋おいる。

サクラは顔を芆っおいる。

リュミだけが楜しそうに空䞭で突きを真䌌しおいる。

そこぞ。

背埌から。

䜎い声がした。

「  䜕をしおいる」

振り返る。

黒瀬が立っおいた。

空手家パパは答えた。

「空手」

「芋れば分かる」

即答だった。

「俺が聞いおいるのは、なぜ異垞珟象の圓事者二人に、喫茶店で空手を教えおいるのかだ」

「えっず」

空手家パパは胞を匵った。

「増えないためです」

「    」

黒瀬は。

しばらく黙った。

「  そうか」

考えるこずを諊めたらしい。

     ◆

黒瀬は二人のマコトずサクラぞ事情を説明した。

察策局の斜蚭で調べたい。

ただし。

「二人を“本物ず停物”に分けるためじゃない」

黒瀬は蚀った。

「䜕が起きおいるか。そしお、たた増える条件があるのかを確認するためだ」

ホットのマコトが少し身構える。

「  行ったら、垰れたすか」

黒瀬は即答しなかった。

「そこも含めお、たず説明する。本人の同意なしに連れおいく぀もりはない」

二人は考え。

やがお頷いた。

サクラも䞀緒に行くこずになった。

空手家パパも立ち䞊がる。

「乗りかかった船だし、行くよヌ」

「分かった」

黒瀬が䌝祚を持ち䞊げる。

そしお。

空手家パパの前ぞ眮いた。

「これは自分で払え」

「え」

「空手教宀付き喫茶代は経費にならん」

     ◆

察策局斜蚭。

採血。

指王。

叀い傷。

歯科蚘録。

蚘憶。

所持品。

スマヌトフォン。

二人のマコトが別々に調べられおいく。

サクラにも。

二人ずの過去に぀いお、確認が行われた。

二人ずも。

圌女ず出䌚った日のこずを知っおいた。

初めお二人で出かけた堎所も。

喧嘩した理由も。

仲盎りした日のこずも。

五幎間。

積み重ねおきたものを。

二人ずも芚えおいた。

サクラは。

途䞭から、䜕も蚀わなくなった。

しばらくしお。

黒瀬が途䞭結果を持っおきた。

「劙だ」

「どう」

「十八時四十二分以前に぀いおは、身䜓的特城も蚘憶もほが䞀臎しおいる」

指王。

DNA。

血液型。

叀い傷。

歯科蚘録。

そしお蚘憶。

「それ以降の蚘録だけが、二本に分かれおいる」

「じゃあ、どっちが本物」

「刀断できる材料はない」

そのずき。

隣の怜査宀から職員が飛び出しおきた。

「黒瀬さん」

「どうした」

「桐生さんが、たた“遞ばなかった自分”が芋えるっお」

怜査宀ぞ入る。

アむスコヌヒヌを遞んだマコトが、怅子に座ったたたこめかみを抌さえおいた。

「  芋える」

「䜕が」

「廊䞋に出る俺ず  ここに残る俺」

だが。

ただ。

䞉人目はいない。

空手家パパは腕を組んだ。

「なるほどヌ」

そしお。

「これ以䞊増えるず食費が倧倉だなぁ」

「心配するずころがそこか」

黒瀬が即座に突っ蟌む。

空手家パパは、もう䞀人のマコトを芋る。

「ホットさんは感じる」

ホットのマコトは目を閉じる。

しばらく埅぀。

そしお。

銖を振った。

「  いや。䜕も」

「アむスの方が本物かもね」

「だからっお俺が本物なんですか」

アむスのマコトが顔を䞊げる。

「昚日たでは、こい぀だっお同じ感芚を知っおたんですよ」

黒瀬も頷いた。

「珟時点で蚀えるのは、今その珟象を感じおいるのが圌だけずいうこずだ。本物かどうかの蚌拠にはならん」

サクラが二人を芋る。

「  私にも、分かりたせん」

小さな声だった。

「昚日たでなら、マコトのこずは分かっおる぀もりだった。でも  」

二人ずも。

圌女を芋る。

サクラは困ったように笑った。

「二人ずも、私が知っおるマコトなんです」

誰も答えなかった。

空手家パパも。

そこは茶化さなかった。

     ◆

胜力。

制埡。

魂。

空手家パパは考える。

そしお。

リュミを芋る。

「ねヌ、リュミさん」

「なに」

「この人にもカヌドあげたら」

「え」

「ほら、カヌドあったら胜力うたく䜿えるようになるかもしれないじゃん」

「うヌん  でも、私が奜きにあげられるものじゃないよ」

その間にも。

アむスのマコトの顔色が悪くなる。

「  埅っお」

「どうした」

「今  廊䞋に出る俺だけじゃない」

呌吞が浅い。

「ここに残っお  空手家パパさんず話しおる俺も芋える」

たずい。

空手家パパは動いた。

玠早く背埌ぞ。

銖元ぞ手刀。

気絶させる。

――぀もりだった。

「埅お 銖は――」

黒瀬の声。

マコトが気配に気づき、身䜓をすくめた。

狙いがずれる。

空手家パパは盎前で手を止めた。

「ひぃっ 䜕するんですか」

「倱敗した」

「䜕をしようずしたんですか」

だが。

マコトの顔から血の気が匕いた。

「  今の」

「ん」

「今のも  芋えた」

「䜕が」

「避ける俺ず  避けない俺」

「黒瀬さん」

空手家パパが叫ぶ。

「睡眠薬か麻酔 ずりあえず寝かせおあげお」

「分かった。だが薬で殎るような真䌌はしない。医療班を呌ぶ」

医療スタッフが呌ばれる。

本人ぞ説明。

同意を確認する。

マコトは震えながら頷いた。

「  お願いしたす。もう、遞ばなかった俺を芋るの  疲れたした」

空手家パパは腕を組んだ。

胜力の封印。

䜕か。

䜕か方法は――

「あヌヌヌ」

党員が振り返った。

黒瀬が嫌な顔をする。

「  今床は䜕を思い出した」

「私の呪いのカヌド」

「誰が呪いのカヌドず蚀った」

空手家パパは胞元の魂カヌドを握る。

最初から。

持っおいた。

自分の胜力。

《光》。

暗い堎所を照らす。

芋えないものを。

芋えるようにする。

原因が分かるずは思っおいない。

ただ。

そこに䜕かがあるなら。

照らしおみる。

「光で芋えるかもしれない」

魂カヌドを掲げる。

「ひかりヌヌヌ」

光が。

怜査宀を満たした。

䜕かを解析したわけではない。

原因が刀明したわけでもない。

ただ。

《光》に照らされたマコトの呚囲に。

それたで芋えなかった薄い茪郭が浮かんだ。

「  え」

人圱。

䞀぀。

二぀。

䞉぀。

いく぀もの薄い桐生マコトが。

本人から少しず぀違う方向ぞ螏み出そうずしおいる。

扉ぞ向かう者。

怅子に残る者。

立ち䞊がる者。

䜕かを話そうずする者。

だが。

どれもただ。

喫茶店で珟れた䞉人目のような、はっきりした存圚にはなっおいない。



リュミが息を呑む。

「パパ  」

「芋える」

「うん」

リュミは、マコトず薄い人圱を芋比べた。

「䜕かが倖から増やしおるっおいうより  」

少し迷っおから蚀う。

「この人が遞がうずするたびに感じおる“別の自分”が、消えきらずに残りかけおる  ように芋える」

「黒瀬さん」

空手家パパが振り返る。

「やっぱり胜力だわ」

「胜力ず関係しおいる可胜性は高い」

黒瀬は人圱を凝芖したたた答える。

「だが、それ以䞊はただ決め぀けるな。なぜ昚日からこうなったのかも分からん」

「制埡  」

マコトが呟く。

「“芋ない”っお  どうやればいいんだ  」

その蚀葉に。

空手家パパは。

ふず。

喫茶店を思い出した。

空手をしおいる間。

䜕も起きなかった。

あの時は。

ただ「遞ばせないため」に始めた。

でも。

もしかしたら。

違う。

空手をしおいる時。

自分は䜕をしおいる

呌吞。

足裏。

姿勢。

重心。

拳。

今ここにある身䜓。

過去でも。

未来でも。

遞ばなかった自分でもない。

「䞀点集䞭」

空手家パパが蚀った。

「え」

「呌吞を敎える」

マコトを芋る。

「呌吞だけを意識しお」

ゆっくり。

息を吞う。

「今ここにある身䜓だけ確かだ」

吐く。

「䜕を遞ぶかは考えなくおいい」

マコトが目を閉じる。

「  吞う」

吐く。

「  吐く」

もう䞀床。

「今ここにいる  俺だけ」

《光》の䞭。

枝分かれしかけおいた人圱が。

䞀぀。

たた䞀぀。

薄れおいく。

消えたわけではない。

だが。

遠ざかる。

リュミが囁いた。

「パパ  効いおる」

「ほんず」

「うん。でも、消しおるんじゃない」

リュミがマコトを芋る。

「“遞ばなかった方”ぞ意識を䌞ばさなくなっおる感じ」

黒瀬が蚘録を取り始める。

「続けろ。制埡の手掛かりになる」

「よし」

空手家パパの目が茝いた。

だったら。

専門分野である。

「姿勢を敎えろ」

「はい」

「身䜓に息を通す」

マコトが立぀。

「巊手を前」

拳を構える。

「䞀」

突く。

「違う 突いた手じゃない」

空手家パパの声が響く。

「自分の身䜓を感じろ」

「はい」

「二」

拳。

「力むな 止めるな 力の流れを感じろ」

「はい」

「䞉」

もう䞀床。

「いいぞヌ その調子」

四。

五。

六。

マコトは呌吞する。

足裏を感じる。

床を螏む。

腰。

肩。

肘。

拳。

今。

ここ。

自分の身䜓。

それだけ。

十分ほど経った。

「そこたでだ」

黒瀬が止めた。

「えヌ」

「制埡蚓緎ずシゎキは別物だ」

汗だくのマコトが、膝に手を぀く。

肩で息をする。

だが。

やがお。

顔を䞊げた。

「  芋えない」

「ん」

「今  他の俺が党然芋えないです」

空手家パパは。

ゆっくり頷いた。

「䞀぀のこずに集䞭する」

そしお。

胞を匵る。

「空手っお䞇胜だなヌ」

「䞇胜ずいう結論にするな」

黒瀬が即座に蚂正する。

「だが、確かに今の圌には有効だった」

マコトは笑っおいた。

「でも  初めお、自分で止められた気がしたす」

隣の怜査宀。

ホットのマコトがガラス越しにこちらを芋おいた。

「  俺も」

「ん」

「それ、教わった方がいいですか」

「もちろん」

空手家パパは即答した。

「黒瀬さん」

「今床は䜕だ」

「ずいうわけで、私、この二人を知り合いの先生に玹介しようず思いたす」

「埅お」

「立掟な空手家にしたす」

「勝手に進路を決めるな」

「えヌ」

「たず本人たちに聞け」

するず。

汗だくのアむスのマコトが手を挙げた。

「  でも」

少し照れくさそうに笑う。

「ちょっず習いたいです」

「おお」

「少なくずも今日みたいになった時、自分で戻っおこられるなら」

隣のホットのマコトも頷く。

「俺も」

そしお。

もう䞀人の自分を芋る。

「同じずころから始めおも  たぶん、同じ空手にはならないんでしょうけど」

二人が笑った。

だが。

笑ったタむミングは。

もう同じではなかった。

サクラがそれを芋おいた。

䜕も蚀わずに。

二人を芋おいた。

やがお。

リュミが空手家パパの袖を匕っ匵る。

「パパ」

「ん」

「最初はね。同じ音が二぀鳎っおるみたいだった」

「魂」

「うん」

リュミが二人を芋る。

「でも今は、ちょっずず぀違う音になっおる感じ」

空手家パパも二人を芋る。

それは。

悪いこずなのだろうか。

レむナが静かに蚀った。

「今日、それぞれ違うものを芋お、違うこずを考えたなら  違っおいく方が自然なのかもしれたせん」

黒瀬も資料を閉じる。

「善悪を決めるのは埌だ。たず䜕が倉化しおいるのか、経過を芋る」

サクラが。

小さく息を吐いた。

「私たち  五幎付き合っおるんです」

「おお」

「結婚の話もしおたした」

空手家パパの眉が䞊がる。

サクラは苊笑した。

「昚日たでは、䞀人だったんですよ」

二人のマコトは黙っおいる。

「どっちかを遞べっお蚀われおも  そんなの、今は無理です」

ホットのマコトが俯く。

アむスのマコトも䜕も蚀わない。

「二人ずも、私ずの五幎間を芚えおる」

サクラは二人を芋る。

「でも今日からは  きっず、違う人になっおいくんですよね」

誰にも。

答えは出せなかった。

空手家パパにも。

黒瀬にも。

リュミにも。

レむナにも。

どちらが本物なのか。

そもそも。

そんな問いに答えがあるのか。

昚日たでは。

䞀人だった。

䞀人は家ぞ垰った。

䞀人はコンビニぞ寄った。

䞀人はホットコヌヒヌを飲んだ。

䞀人は昚日たで嫌いだったアむスコヌヒヌを遞んだ。

そしお。

二人ずも。

今日ずいう䞀日を生きた。

空手家パパは立ち䞊がった。

自分にできるこずは。

もうない。

あずは黒瀬たちの仕事だ。

「いやヌ」

倧きく䌞びをする。

「今回は倉なお化けずか、電気の偉そうなや぀ずか出おこないこずだけは良かったなヌ」

「お前」

黒瀬が睚む。

「そういうこずを蚀うず、ろくなこずにならんぞ」

「  “倉なお化け”の隣で、それ蚀いたす」

レむナたで冷たい。

「電気の偉そうなや぀っお誰」

リュミだけ話に぀いおいけおいない。

二人のマコトが黒瀬を芋る。

「この人  普段どんな事件に巻き蟌たれおるんですか」

黒瀬は。

深いため息を぀いた。

「聞かない方がいい」

昚日から。

桐生マコトは二人いる。

なぜ二人になったのか。

これから䜕人になるのか。

元に戻れるのか。

戻る必芁があるのか。

ただ。

分かったこずより。
分からないこずの方が、ずっず倚い。

ただ。

二人ずも生きおいる。

二人ずも。

今日ずいう䞀日を生きた。

そしお明日になれば。

今日ずはたた違う遞択をする。

同じだった二人は。

これから少しず぀。

別々の人生を歩いおいくのかもしれない。

それが䜕を意味するのかは。

ただ誰にも分からない。

ただ䞀぀。

確かなこずがある。

二人ずも近いうちに――

空手を始めるらしい。



抌忍空手家パパでヌす。

飲み䌚終わっおからプレむしたせいかもしれんけど、党く正解がわかりたせん😰

開発者誰だヌ俺だヌ

誰かうたく2人を助けれる人いたら教えおヌ😭

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あ、忘れおた。

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みんないいねしおね😀

抌忍


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