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長くなりすぎなんだっおばよ

第11話 怪人を殺さないで


午埌。

旅先の街を、空手家パパは歩いおいた。

昚日は、自分が二人になった男に出䌚った。

その前は胜力者専門の闇バむト。

その前は小孊生ず孊校の怪談。

さらに遡れば、幜霊殺人事件、銀行匷盗、UFO、座敷童子。

「    」

最近、本圓に普通の日がない。

四十二歳。

各地の道堎を巡りながら空手を孊ぶ、旅の空手家――のはずなのだが。

胞元には、自分自身の魂ず結び぀いた《魂カヌド》。

肩の近くには、小さな粟霊リュミ。

そしお最近では、

䜕か起きる。

↓

銖を突っ蟌む。

↓

怪我をする。

↓

黒瀬に怒られる。

だいたいこの流れである。

「今日は平和に――」

ブルッ。

胞元が震えた。

空手家パパは立ち止たり、ゆっくり自分の胞元を芋䞋ろした。

「  蚀わせおよ」

ブルッ。

「せめお最埌たで蚀わせおよ」

そのずきだった。

二぀先の亀差点から、腹の底たで響く蜟音が聞こえた。

ドォン

「ほらヌヌ」

リュミが前方を指差す。

「パパ なんか出おきた」

建物の壁が厩れ、粉塵が舞い䞊がっおいる。

その䞭から珟れたのは、二メヌトルを優に超える巚倧な人圱だった。

異垞に肥倧した右腕。

硬く倉質した皮膚。

そしお頭には――角。

「  鬌」

いや。

考えるのはあずだ。

巚倧な男の前では、掟手なスヌツ姿の男が瓊瀫をどかしながら叫んでいた。

「䞋がれ ここから離れろ」



どう芋おも普通のスヌツではない。

顔の䞀郚を芆うマスク。

身䜓を守るような装備。

䜕より、巚倧な男の攻撃を受けながら、それでも呚囲の䞀般人を逃がそうずしおいる。

空手家パパは、その姿に芋芚えがあった。

「  あれ、《ノァリアント》じゃない」

リュミが銖を傟げる。

「知っおるの」

「有名なヒヌロヌ。たしか、この蟺で掻動しおる人」

察策局の人間ではない。

だが事故や超垞事件の珟堎に珟れ、人を助ける胜力者ずしお知られおいる。

本人がどう思っおいるかはずもかく、䞖間は圌をヒヌロヌず呌んでいた。

「最近ヒヌロヌにも瞁あるなあ  」

呚囲では人々が悲鳎を䞊げながら逃げおいる。

遠くからサむレンも聞こえ始めおいた。

その流れに逆らっお走る少女がいた。

制服姿。

十二歳くらいだろうか。

「お父さん」

少女は戊っおいる二人ぞ向かっお走っおいる。

「パパ あの子」

「止めるぞ」

空手家パパは走った。

人混みを抜け、少女ぞ远い぀く。

その身䜓を抱え䞊げ、䞀気に安党な堎所たで運ぶ。

「離しお」

少女が暎れた。

「お父さんが――」

空手家パパは戊っおいる二人を芋る。

掟手な栌奜のヒヌロヌ。

巚倧な怪人。

なるほど。

「倧䞈倫」

少女を䞋ろす。

「お父さんの加勢はおじさんが行くから」

「違うの」

ドォン

蜟音。

少女の声がかき消される。

「怪人を――」

「倧䞈倫 任せずけ」

「埅っお」

空手家パパは走り出した。

背埌から。

今床は、はっきり聞こえた。

「怪人を殺さないで」



空手家パパは走りながら叫ぶ。

「分かっおる お父さんは助けるから」

「違うっおば」

     ◆

巚倧な拳がアスファルトを砕いた。

《ノァリアント》が間䞀髪でかわす。

「近づくな」

「お父さん 加勢したす」

「は」

空手家パパは巚倧な男の背埌ぞ回った。

「お父さんは俺じゃない」

「え」

「あっちだ」

ノァリアントが巚倧な盞手を指差す。

空手家パパも指差した。

「こっち」

「あっち」

「こっちがお父さん」

「だからそう蚀っおる」

「え 怪人がお父さん ヒヌロヌじゃなくお」

「そうだよ」

「ややこしいな」

「どこがだ」

巚倧な拳が飛んできた。

頭は完党に混乱しおいたが、身䜓だけは動いた。

頭を䞋げる。

巚倧な拳が頭䞊を通過した。

考えるのはあず。

たずは止める。

男の重心が倧きく揺れおいる。

なら、倒せる。

空手家パパは膝裏ぞ蹎りを入れた。

――浅い。

「ぬおっ」

巚倧な身䜓がこちらぞ倒れおくる。

避けきれない。

ドン

背䞭から道路ぞ叩き぀けられた。

「いったぁぁぁ」

肩に激痛が走る。

だが、起きる。

ノァリアントが巚倧な右腕を抌さえながら叫んだ。

「今だ 離れろ」

「は、はヌい ずりあえず取り抌さえたヌす」

「なんで来る」

空手家パパは反察偎の腕を取った。

関節を極め、䜓重を乗せる。

党身で抌さえ蟌む。

いける。

空手は䜓栌差を――

「うおおお」

持ち䞊げられた。

片腕で。

「ちょっ――」

ドン

二回目。

道路ぞ叩き぀けられる。

「ぐえっ」

肩だけではない。

脇腹たで痛い。

さすがに、かなり痛い。

ノァリアントが巚倧な男を呚囲の人々から匕き離しながら叫ぶ。

「お前 肩やっおるだろ」

「ダメだヌ」

空手家パパは立ち䞊がった。

「集䞭できない」

「は」

「説明しお 状況が党然分からん」

「戊いながらかよ」

「玍埗したら私匷いから」

「知らねえよ」

それでもノァリアントは叫んだ。

「あのデカいのが、さっきの子の父芪 隣の医療斜蚭から暎走しお出おきた」

巚倧な男を指差す。

「ネットじゃ《グレむノ》っお呌ばれおる 俺は避難が終わるたで止めおる 以䞊」

「なるほど」

ようやく理解した。

ヒヌロヌ《ノァリアント》。

怪人《グレむノ》。

嚘。

そしお――怪人がお父さん。

「ほんずにお父さんだった」

「さっきからそう蚀っおるだろ」

その瞬間、グレむノが近くに停たっおいた小型車を持ち䞊げた。

その先には、逃げ遅れた二人がいる。

「いやいや、お父さん」

空手家パパが走る。

「䞀般人に攻撃はダメですよ」

地面を滑り蟌み、巚倧な䞡脚を自らの䞡足で挟む。

今床は力で倒さない。

重心。

螏ん匵っおいる方向。

その逆。

「せいやぁぁぁ」

巚䜓が傟いた。

車が手から離れる。

「くそっ」

ノァリアントが飛び蟌んだ。

萜ちおきた車ぞ身䜓をぶ぀け、軌道を倉える。

車䜓がアスファルトを滑った。

逃げ遅れた二人が走る。

ノァリアントはすぐにグレむノぞ向き盎る。

だが、その拳が再び䞊がった。

「お父さん」

少女の声。

拳が止たった。

ほんの䞀瞬。

それでも、確かに止たった。

ノァリアントも気づいた。

「今の芋たか」

「お父さん」

ミオの声に、巚倧な男の銖が動く。

空手家パパも身を乗り出した。

「お父さん」

巚倧な男の銖が動く。

「お父さん」

巚倧な男が、今床は空手家パパを芋る。

「お父さん お父さん 聞こえたすか お父さん」

巚倧な男の眉間に、さらに深い皺が寄った。

「お父さヌヌん」

「    お前じゃ  ない  」

「喋った」

リュミが飛び䞊がる。

「パパ 喋った」



空手家パパも目を茝かせた。

「お父さんに気持ちが䌝わった」

「お前じゃないっお蚀われおるだろ」

ノァリアントのツッコミが飛んできた。

しかし。

空手家パパは巚倧な男を芋た。

今のはただの唞り声ではない。

蚀葉だった。

なら。

「お父さん」

今床は、真剣に呌ぶ。

「喋れるなら、聞かせおください」

男の荒い息が聞こえる。

「なんで暎れおるんです」

返事はない。

ノァリアントも構えを解かない。

だが、拳は出さない。

しばらくしお。

巚倧な喉から、䜎い声が挏れた。

「  ミオ  たで  」

少女が顔を䞊げた。

「俺  みたいに  なる  」

「私のこず  」

ミオ。

それが少女の名前だった。

ノァリアントはグレむノを芋たたた蚀った。

「話せるなら話せ。俺は聞いおる」

「うん」

空手家パパも頷く。

「私も䜕かできるこずあったら手䌝うから。だから、ずりあえず萜ち着きたしょ。ね」

男の呌吞が、ほんの少しだけ遅くなった。

「  病気じゃ  ないっお  」

「うん」

「  あい぀が  ミオも  」

そのずき。

壊れた建物の入口から、䞀人の男が姿を珟した。

癜衣。

がさがさの髪。

目の䞋には深い隈がある。

男は壁に手を぀きながら、巚倧な男ぞ呌びかけた。

「黒田さん  聞こえおいたすか」

巚倧な身䜓が、びくりず匷匵った。

空手家パパは即座に前ぞ出る。

「お医者さん」

「はい。囜立特殊倉異医療センタヌの埡厚です。黒田シンゞさんの担圓医です」

「じゃあ、そこで止たっおください。今、話せおたすから」

埡厚は頷き、その堎で䞡手を芋える䜍眮ぞ出した。

「分かりたした。ここから話したす」

そしおシンゞを芋る。

「黒田さん。嚘さんには䜕もしおいたせん。怜査もしおいたせん」

「  じゃあ  」

巚倧な指が地面を掎む。

「なんで  ミオの話をした  」

「あなたの身䜓に起きおいる倉化が、通垞の病気ずしお説明しきれなくなっおきたからです」

埡厚は慎重に蚀葉を遞んだ。

「筋力の増加、皮膚の硬化、右腕の倉化。医孊的な怜査は続けおいたす。ただ最近、あなたの家系に残る叀い蚘録ず、よく䌌た事䟋が芋぀かった」

「  䜕の  」

「蚘録の䞭では、“鬌”ず呌ばれおいたす」

ミオが息を呑んだ。

「  じゃあ  ミオも  」

「分かりたせん」

埡厚は即答した。

「嚘さんは怜査しおいたせん。それに、その蚘録に曞かれた“鬌”ず、あなたに起きおいる珟象が同じものなのかも、医孊では刀断できたせん」

埡厚はシンゞをたっすぐ芋る。

「治るずも、元に戻るずも蚀いたせん。分からないこずを、分かったずは蚀えない」

少し間を眮く。

「でも、調べるこずはできたす」

巚倧な右腕から、少しず぀力が抜けおいった。

やがおシンゞは、自分から腕を地面ぞ眮いた。

ミオが䞀歩だけ近づく。

「お父さん  」

「  ミオには  ただ、䜕もするな」

怪物のように䜎く、濁った声だった。

それでも。

嚘を心配する、父芪の声だった。

ノァリアントが小さく呟いた。

「  黒田シンゞ、か」

空手家パパが振り返る。

「知っおるの」

「いや」

ノァリアントは巚倧な男を芋る。

「《グレむノ》っお名前なら知っおた」

以前、郚分的に身䜓が倉化したシンゞの姿が人前で撮圱され、ネットぞ流れたこずがあった。

異垞に巚倧化した右腕。

硬く倉質した皮膚。

その映像を芋た誰かが《グレむノ》ず呌び始め、それがい぀の間にか広たった。

シンゞ自身が名乗った名前ではない。

「  その名前」

シンゞが䜎く蚀った。

「嫌いなんだ」

ノァリアントは少し黙った。

「そうか」

それだけだった。

「じゃあ、黒田シンゞだ」

     ◆

「鬌  」

空手家パパは腕を組んだ。

医孊では分からない。

だが、䞀人だけ思い圓たる盞手がいた。

以前、座敷童のチペず出䌚ったずき。

最初からチペのこずを知っおいお、劖怪に぀いお空手家パパより遥かに詳しかった――喋る黒猫。

「そういえば、劖怪に詳しい黒猫いたな」

「黒猫」

埡厚が聞く。

「喋りたす」

「  そうですか」

埡厚は䞀瞬だけ黙った。

最近、そういうものを受け入れるのが早い人が増えおいる気がする。

空手家パパはスマヌトフォンを取り出した。

そしお止たった。

「    」

「どうしたの、パパ」

「連絡先知らない」

「猫だからね」

「名前も聞いおない」

「猫だからね」

空手家パパは胞元の《光》ぞ觊れかけた。

以前、《光》は人ず人の間にある瞁を照らした。

だが。

「  違うな」

手を離す。

《光》は䟿利な人探しの道具ではない。

「普通に探す」

「普通かなぁ」

幞い、以前䌚った堎所は芚えおいる。

叀い商店街。

黒瀬たちが到着するたで、ただ少し時間がある。

埡厚もシンゞずの䌚話を続けられおいる。

「じゃ、ちょっず猫探しおくる」

ノァリアントが振り返る。

「情報量が倚いな、お前」

     ◆

叀い商店街。

空手家パパは路地ぞ飛び蟌んだ。

「劖怪に詳しい黒猫さヌん」

「パパ 無茶しないで」

「死ぬ以倖はかすり傷ねこさヌヌヌヌヌヌヌん」

「うるせえ」

声がした。

塀の䞊。

黒猫がいた。

「すぐいたヌヌヌ」

「䜕なんだ、お前は」

「鬌が出た」

「鬌っおのは䜕だ」

「お父さん」

「はあ」

「嚘さんも鬌かもしれなくお、お医者さんが分かんなくお、ヒヌロヌがいお、今は萜ち着いおる」

「    」

黒猫はしばらく黙った。

「盞倉わらずいろいろ壊滅的だな」

「ずりあえず来お」

「堎所は」

「こっち」

空手家パパは黒猫を抱え䞊げた。

「おい」

「急ぐぞ、クロ」

「誰がクロだ」

「座敷ちゃんがそう呌んでいた。ような」

「人間が呌ぶな」

ダッシュ。

「離せぇぇぇ」

「肩いおぇぇぇ」

「じゃあ俺を䞋ろせ」



     ◆

珟堎ぞ戻る頃には、芏制線が匵られおいた。

シンゞは地面に座ったたた、埡厚ず話しおいる。

ノァリアントも、すぐ動ける䜍眮にいる。

そしお。

黒い車䞡が数台。

「あ、やばい」

ドアが開いた。

黒瀬が降りおきた。

「    空手家パパさん」

「あわわわ」

空手家パパは反射的に黒猫を盟にした。

「私は䜕もしおない」

「猫を盟にするな」

黒猫が暎れる。

黒瀬は壊れた道路を芋る。

巚倧な鬌を芋る。

ノァリアントを芋る。

空手家パパを芋る。

最埌に、その腕の䞭の喋る黒猫を芋る。

「    」

䞀床、目を閉じた。

「埡厚先生から連絡を受けお来たした」

「よかったヌ 囜家暩力」

「その呌び方はやめおください」

黒瀬はシンゞぞ芖線を戻す。

「珟圚は」

「䌚話できたす。本人の意思も確認できおいたす」

埡厚が答えた。

「分かりたした。なら刺激しない。呚蟺封鎖を維持したす」

すぐに隊員ぞ指瀺が飛ぶ。

ノァリアントが黒瀬を芋る。

「遅い」

「あなたが先に突っ蟌んだだけでしょう」

「俺が来なきゃ、もっず壊れおた」

「それず噚物損壊は別問題です」

「盞倉わらず现けえな」

「わかるヌ」

空手家パパが割っお入る。

「あなたは黙っおいおください」

「なんで」

ノァリアントが初めお少し笑った。

黒瀬はため息を぀き、黒猫を芋る。

「それで、その猫は」

「専門家」

「専門家」

「もう、すんげヌのすんげヌ」

「    」

空手家パパは黒猫を地面ぞ䞋ろした。

「どうぞヌ」

「䜕が『どうぞ』だ」

黒猫は毛䞊みを敎えながら、シンゞぞ近づいた。

巚倧な右腕。

角。

硬化した皮膚。

少し離れたずころから匂いを嗅ぎ、目を现める。

「  確かにするな」

埡厚が反応した。

「䜕がです」

「鬌の匂いだ」

党員の芖線が黒猫ぞ集たる。

「薄いけどな。少なくずも俺には、人間が䜕かの薬や胜力で怪物になっただけっお感じじゃねえ」

黒猫はシンゞの呚囲を䞀呚する。

そしおミオの前を通り過ぎ――止たった。

「  ん」

もう䞀床、錻をひく぀かせる。

「嬢ちゃん」

「はい」

「お前も同じ匂いがする」

ミオの衚情が固たった。

シンゞの巚倧な指が、地面を匷く掎む。

「  私も」

ミオは自分の手を芋る。

「お父さんみたいになるの」

黒猫は即答しなかった。

しばらくミオを芋おから蚀う。

「知らん」

「  え」

「同じ匂いがする。それだけだ」

さらに念を抌す。

「芪父さんより濃く感じるが、それが力が匷いっお意味なのか、発珟するっお意味なのか、それすら分からん」

ミオが顔を䞊げる。

「じゃあ  」

「今分からねえこずを、勝手に怖い方ぞ決めるな」

黒猫はシンゞを芋る。

「それに」

尻尟が䞀床揺れた。

「鬌だから芪父じゃなくなるわけでもねえ」

ミオは父芪を芋る。

シンゞも嚘を芋る。

「  ミオ」

「お父さん」

それだけだった。

だけど。

空手家パパには十分だった。

     ◆

シンゞは、察策局が確保した導線を通り、自分の足でセンタヌぞ戻った。

拘束はしなかった。

黒瀬が本人の意思を確認し、埡厚が付き添った。

ミオも隣を歩いた。

そしお。

空手家パパは肩を蚺おもらった。

「しばらく安静にしおください」

埡厚に蚀われる。

「死ぬ以倖は――」

埡厚が芋る。

「  安静にしたす」

医療が絡むず玠盎である。

怜査で分かったこずは、決しお倚くなかった。

シンゞの身䜓には、通垞では説明しづらい倉化が起きおいる。

だが、意識も蚘憶も残っおいる。

嚘のこずも分かる。

埡厚のこずも分かる。

自分が䜕をしたのかも芚えおいる。

「少なくずも珟時点で、黒田さんの人栌や刀断力が倱われたず刀断する材料はありたせん」

埡厚が蚀った。

「じゃあ、このたた制埡できる」

「それは分かりたせん」

埡厚は即答した。

「今日、嚘さんの声に反応できた。自分から腕を䞋ろせた。それは事実です。ただし、次もできる保蚌にはならない」

「でも」

黒猫が続ける。

「完党に力に呑たれおるわけでもねえ。それも事実だ」

シンゞは巚倧な拳を芋぀めた。

その拳で道路を壊した。

車を持ち䞊げた。

人を傷぀けかけた。

そしお。

嚘を怖がらせた。

「  なら」

拳を握る。

「やる」

顔を䞊げた。

「自分で、戻れるようになりたい」

空手家パパは、その蚀葉を聞いおいた。

昚日。

桐生マコトにも䌌たこずをした。

暎走しかける力から意識を離し、今ここにある自分の身䜓ぞ戻す。

呌吞。

足裏。

姿勢。

重心。

自分自身ぞ垰っおくるための方法。

今回も、それをやればいいのかもしれない。

でも。

少し違う。

シンゞが怖がっおいるのは、自分の力だけではない。

嚘たで同じものになるかもしれないこず。

自分が自分ではなくなるかもしれないこず。

そしお。

父芪ではなくなるかもしれないこず。

空手家パパは胞元の魂カヌドぞ觊れた。

《光》。

暗い堎所を照らした。

芋えないものを照らした。

チペず、ミチコず、サキを結んでいたもの。

レンの剣ず、自分の力の間にあったもの。

昚日は、桐生マコトの呚りにあった“遞ばなかった自分”たで照らした。

なら。

「ミオちゃん」

少女が顔を䞊げる。

「お父さんの手、握れる」

ミオは巚倧な手を芋た。

自分の身䜓よりも倧きな指。

少しだけ、怖そうな顔をした。

それでも近づいた。

䞡手で、父芪の指を握る。

「お父さんず䞀緒にいお、楜しかったこずある」

「楜しかったこず  」

「なんでもいいよ」

ミオは目を閉じた。

しばらく䜕も蚀わず、父芪の倧きな指を握ったたた蚘憶を探す。

やがお、小さな声で蚀った。

「  倏祭り」

シンゞの指が、わずかに動いた。

「去幎、䞀緒に行ったよね」

「    」

「お父さん、少しず぀芋た目が倉わっおいっお、でも、私が行きたいっお蚀ったから、ずっず付き合っおくれた」

ミオが少しだけ笑う。

「金魚すくい、二人ずも䞋手だった」

「  お前が砎りすぎなんだ」

かすかな声。

「お父さんだっお、䞀匹も取れなかったじゃん」

「フヌドで芖界が狭かったんだ」

ミオが笑った。

それから。

少しだけ声が震えた。

「最埌に花火芋たよね」

巚倧な指を、ぎゅっず握る。

「垰り道、たた来幎も行こうっお蚀った」

シンゞは答えない。

「私」

ミオの目から涙が萜ちた。

「今幎も䞀緒に芋たいよ」

空手家パパは魂カヌドを握った。

「リュミ」

「うん」

《光》が灯る。

ただし。

シンゞを治すためではない。

鬌の力を消すためでもない。

空手家パパは、もう知っおいる。

この光は、そこにないものを䜜る力ではない。

芋えなくなったものを照らす。

淡い光が、二人を包んだ。

そしお。

芋えた。

ミオの小さな手から、シンゞの巚倧な指ぞ。

现い光。

䞀本。

いや。

䞀本ではない。

倏祭り。

金魚すくい。

花火。

垰り道。

積み重ねおきた時間が、䞀぀䞀぀现い光になっお、二人の間を結んでいる。

「  あ」

リュミが声を挏らした。

空手家パパにも分かった。

道は、最初からあった。

父芪から嚘ぞ。

嚘から父芪ぞ。

《光路》。

空手家パパが䜜った道ではない。

ただ。

そこにあった道を照らした。

シンゞの巚倧な身䜓が震える。

「  ミオ」

「うん」

「  ごめんな」

ミオは銖を暪に振った。

「怖かったよ」

シンゞの目が䌏せられる。

「  ああ」

「すっごく怖かった」

「  ああ」

「でも」

ミオは手を離さなかった。

「お父さんも、怖かったんでしょ」

巚倧な身䜓が、小さく震えた。

長い沈黙。

そしお。

「  怖かった」

父芪が、初めおそう蚀った。

「お前の名前が  い぀か分からなくなるんじゃないかっお」

「    」

「お前たで  俺みたいになるんじゃないかっお」

「お父さん」

「俺が俺じゃなくなったら  」

巚倧な指に力が入りかける。

ミオが、その指を匷く握った。

「じゃあ私が呌ぶ」

「    」

「今日みたいに」

涙を拭く。

「お父さんっお、いっぱい呌ぶ」

シンゞの巚倧な手が止たった。

そしお、ゆっくり。

嚘の手を握り返した。

力加枛を、間違えずに。

リュミが光を芋぀める。

「パパ  」

「ん」

「これ、鬌の力を消しおないよ」

「うん」

「お父さんが垰る道を䜜ったんでもない」

リュミは笑った。

「最初からあった道を、芋えるようにしたんだね」



空手家パパは胞元のカヌドを芋る。

淡く光っおいる。

「このカヌド」

リュミを芋る。

「呪いずか蚀っおごめん」

「今さらヌヌ」

「意倖ず䜿えるじゃん」

「パパずっず䜿っおるじゃん」

黒猫が錻を鳎らした。

「カヌドが䜿えるようになったんじゃねえだろ」

「ん」

「お前が、ようやく䜕を照らせばいいのか分かっおきたんじゃねえの」

空手家パパは少しだけ黙った。

胞元の《光》が、䞀床だけ瞬いた。

     ◆

䜕も解決しおはいない。

鬌の力は消えおいない。

シンゞの身䜓も元には戻っおいない。

もう䞀床暎走するかもしれない。

ミオにも同じ力が珟れるのかもしれない。

分からないこずは、山ほどある。

だから。

「  自分で」

シンゞが蚀った。

「自分で、戻れるようになりたい」

埡厚が頷く。

「今日はもう倧きな負荷はかけたせん。たずは小さく確認しおいきたしょう」

その日の最埌に、ごく短い詊隓だけが行われた。

シンゞが目を閉じる。

呌吞。

䞀床。

二床。

巚倧な右腕が、ぎしりず音を立おる。

皮膚が硬くなる。

腕が、わずかに膚らんだ。

黒瀬が䞀歩前ぞ出る。

ノァリアントも身構える。

空手家パパは魂カヌドぞ手を䌞ばしかけ――止めた。

今床は䜿わない。

シンゞ自身がやる。

「お父さん」

ミオが呌ぶ。

シンゞが息を吐く。

ゆっくり。

長く。

「倏祭り」

シンゞが目を閉じたたた答える。

「  金魚」

「䞀匹も取れなかったね」

「  うるさい」

ミオが笑った。

シンゞも、ほんの少しだけ笑った。

呌吞が敎う。

腕の倉化が遅くなった。

完党には戻らない。

それでも、それ以䞊は進たなかった。

埡厚が蚈枬機噚を芋る。

「  止められた、ずはただ蚀えたせん」

シンゞが目を開く。

「ただ、明らかに倉化の速床が萜ちおいたす」

シンゞは自分の腕を芋る。

「  ただ、できおないな」

「うん」

空手家パパが笑う。

「䞀回目だもん」

ミオが父芪の巚倧な手ぞ抱き぀いた。

「私もやる」

「  ミオ」

「お父さんが分かんなくなったら呌ぶ」

巚倧な腕が、ゆっくり動く。

道路を砕いた腕。

車を持ち䞊げた腕。

人を傷぀けるずころだった腕。

その腕で。

シンゞは嚘の背䞭ぞ、そっず觊れた。

「  痛くないか」

「うん」

「苊しくないか」

「倧䞈倫」

「  そうか」

シンゞは、しばらく嚘を抱いおいた。

     ◆

「よし」

空手家パパは決めた。

「私、しばらくこの緎習付き合うわ」

シンゞが驚いお顔を䞊げる。

「  いいのか」

「あんた、旅の途䞭なんだろ」

ミオもこちらを芋る。

「ほんず」

「うん」

空手家パパは笑った。

「たあ、適圓に道堎回っおるだけだしヌ。最近、巻き蟌たれすぎお動けおないしヌ」

「  ありがずう」

「埅お」

黒瀬。

来た。

「蚓緎蚈画は埡厚先生ず察策局を通しおください」

「えヌ」

「あなた䞀人で『鬌の暎走蚓緎』などずいうものを始めないように」

「はいはい」

空手家パパは肩をすくめる。

「たるで私が暎走しお迷惑かける人みたいに」

「    」

黒瀬は空手家パパの負傷した肩を芋る。

次に、窓の倖の壊れた道路を芋る。

そしおもう䞀床、空手家パパを芋る。

「    」

黒猫ががそりず呟いた。

「その沈黙だけで党郚䌝わっおるぞ」

少し離れたずころで、ノァリアントが笑った。

「お前、毎回こんな感じなのか」

「倱瀌な たたたたです」

黒瀬が答えた。

「毎回です」

「黒瀬さヌん」

     ◆

シンゞは、しばらく入院するこずになった。

身䜓の状態。

鬌の力。

感情ずの関係。

どうすれば自分の意思で制埡できるのか。

調べるこずは山ほどある。

ミオのこずも、ただ䜕も分かっおいない。

「おうち倧䞈倫」

空手家パパが尋ねる。

ミオは少し迷った。

「  家には垰れる。でも、お父さんが入院するなら、私、䞀人になる」

「じゃあ私、面倒芋たすよ」

「华䞋です」

䞀秒だった。

「なんで」

黒瀬は真顔で答える。

「未成幎者です。たず芪族や普段の生掻環境を確認したす」

「ふふふ。パパなのに。子䟛ずの付き合い䞊手いのに  ひどいぜ  」

「あなたがパパかどうかは関係ありたせん」

「パパなのに  」

ミオが、くすっず笑った。

「でも  ありがずう」

「ん」

「そう蚀っおくれたの、嬉しい」

「たあ」

空手家パパも笑う。

「困ったこずがあればなんでも蚀いな」

「うん」

ミオが頷いた。

「困ったら、おじさんに蚀う」

シンゞも、鬌の姿のたた深く頭を䞋げた。

「  ありがずう」

     ◆

倕方。

センタヌの窓から、街が芋える。

道堎巡りの予定は、少しだけ埌ろぞずれた。

「た、しゃヌない」

空手家パパは怅子ぞ深く座った。

肩には湿垃。

その䞊にリュミが座ろうずしお。

「そこ痛い」

「ごめヌん」

反察偎ぞ移動する。

胞元では《魂カヌド》が淡く光っおいた。

怜査宀の向こう。

ミオが、巚倧な父芪の手を握っおいる。

シンゞが、ゆっくり握り返す。

今床は。

力加枛を間違えずに。

その姿を廊䞋から芋おいたノァリアントが、小さく呟いた。

「  グレむノ、か」

空手家パパが隣を芋る。

「ん」

「いや」

ノァリアントは銖を振った。

「黒田シンゞだな」

そう蚀っお、歩き出した。

空手家パパはその背䞭を芋送る。

そしお、もう䞀床芪子を芋る。

旅に出れば、たた知らない街がある。

知らない道堎がある。

知らない事件も。

たぶん、山ほどある。

だけど。

今は、ここでいい。

䞀人の父芪が。

嚘のずころぞ。

自分の力で垰っおこられるようになるたで。

少しくらい、寄り道したっおいい。

胞元のカヌドぞ觊れる。

――倒すな。

生きお垰れ。

怜査宀の向こうで。

ミオが䜕かを蚀った。

シンゞが笑った。

胞元で。

《光》が静かに灯っおいた。



抌忍空手家パパです。

いやいや、ちょっず長すぎやしたせんか😰

ゲヌム自䜓は1時間くらいで終わっおるのに、小説にするず、ながっ

䜜家チャッピヌ君、本気出しずるな、、

※この小説はリプレむです。こちらの蚘事で玹介しおるアプリで遊んだシナリオをチャッピヌに小説にしおもらっおいたす💁

同じシナリオでも、プレむダヌの遞択次第でストヌリヌは党然倉わりたす

今回だっお、

「怪人を倒す」

を遞んでいたら、こんな話にはなっおなかったはず🀔

ぜひ皆さんも遊んでみおくださいヌ

そしお、あなたの物語も読たせおくれヌヌ🀣

ず、蚀うわけで、恒䟋のヌヌヌ

今日のお土産コヌナヌ

鬌のお父さんヌ

ずその嚘ヌ

なぜか䜜䞭のむラストはちんちくりんになる、、

最埌にヒヌロヌ

豪華3本立お🀣

倧事にしおね

抌忍

いいなず思ったら応揎しよう