芋出し画像

だから、長いんだっおばよ

第12話 収容違反


午埌。

空手家パパは、超垞察策局の地䞋斜蚭にいた。

本来なら、今日は戊いに来たわけではない。

黒瀬から連絡があったのは、数時間前だった。

『埡圱カナタの件で、少し確認したいこずがある』

埡圱カナタ。

胜力者専門の闇バむトを仲介する組織《BLACK BOX》を䜜った男であり、以前、空手家パパず雚宮ナギが研究斜蚭で遭遇した胜力者でもある。

珟圚は察策局に収容されおいる。

問題は、その埡圱本人ではなかった。

「魂カヌドがない」

「ああ」

地䞋ぞ向かう゚レベヌタヌの䞭で、黒瀬が答えた。

「埡圱を確保した時点で所持しおいなかった。本人に確認しおも、たずもに答える気がない」

「萜ずしたずか」

「財垃じゃないんだぞ」

「でも俺、よくスマホなくすよ」

「魂カヌドず䞀緒にするな」

魂カヌドは䞀人に぀き䞀枚。

胜力を䜿うための道具ずいうより、自分自身の魂ず結び぀いたものだ。普通なら、そう簡単に本人から離れるものではない。

だからこそ、黒瀬も気にしおいた。

「それで、なんで俺」

「正確には、お前じゃない」

黒瀬が空手家パパの呚囲ぞ芖線を向けた。

そこには、手のひらほどの小さな少女が浮いおいる。

粟霊リュミ。

「もしや、リュミさん」

「そうだ。人間の蚀葉を話し、魂カヌドに぀いお意思疎通できる超垞存圚。䜕か感じるものがないか、䞀床芋おもらいたかった」

「なるほどヌ」

リュミが胞を匵る。

「わたし、倧抜擢」

「俺は」

「付き添いだ」

「扱い」

゚レベヌタヌが地䞋ぞ到着した。

扉が開く。

盎埌。

ズンッ

足元から、突き䞊げるような衝撃が走った。

「うおっ」

空手家パパが壁に手を぀く。

地震――ではない。

もっず局所的な、地䞋のどこかで巚倧な䜕かがぶ぀かったような揺れだった。

倩井の照明が激しく明滅する。

廊䞋の奥から、棚や機材が倒れる音が立お続けに響いた。

ガシャン

さらにもう䞀床。

ドンッ

「  䜕、今の」

リュミが空手家パパの肩ぞしがみ぀く。

黒瀬の衚情が倉わった。

「最深郚か  」

盎埌。

けたたたしい譊報が、地䞋斜蚭党䜓に響き枡った。

『譊告。C区画にお収容異垞』

続いお、別の譊告が重なる。

『F区画――収容異垞』

「二か所」

黒瀬が通信機を取る。

その向こうから聞こえおきたのは、䜕かがぶ぀かる音だった。

悲鳎。

ノむズ。

そしお廊䞋の奥から、䞀人の職員が這うように珟れた。

癜衣が血で染たっおいる。

「人呜救助ヌヌヌ」

「埅お空手家パパ」

もう走っおいた。



     ◆

閉たりかけた防火扉ぞ飛び蟌み、職員を匕きずり出す。

間䞀髪。

背埌で重い扉が閉じた。

「倧䞈倫ですか」

職員は息を荒らしながら、震える指で奥を瀺した。

「C区画  赀い  女  」

そしお、もう䞀぀。

「N-07  」

「えぬ」

聞き返す暇はなかった。

通内攟送が響く。

『最深郚・第䞀拘束、応答なし』

黒瀬が職員を受け取った。

「空手家パパ。勝手に――」

「ちょっず人助けしおくるから、埌のあれやこれやはお願い」

「おい せめお通信機を持っおいけ」

通信機を受け取るなり、空手家パパは走り出した。

どこぞ行けばいいのかは知らない。

巊から人の声。

右からは、䜕かを匕きずる音。

さらにその奥から、女の笑い声たで聞こえおくる。

「こっち」

人の声がした巊ぞ走る。

曲がった先では、倒れた棚の䞋に研究員が挟たれおいた。譊備員が必死に匕っ匵っおいる。

そしお、その奥。

赀い服の女が立っおいた。

長い髪。

異様に長い指。

血のように赀い爪。

女はゆっくりず、こちらぞ歩いおくる。

「先に人」

空手家パパは棚ぞ手をかけた。

重い。

譊備員ず二人で持ち䞊げ、研究員を匕き抜く。

その瞬間、ずれた棚が肩ぞ盎撃した。

「うぐっ」

激痛が走る。

だが、研究員は出た。

「䞊ぞ」

譊備員が研究員を支えお走る。

その背䞭ぞ、赀い女が飛びかかった。

「お前の盞手は――」

空手家パパが間ぞ入る。

「こっちだ」

前蹎り。

腹ぞ叩き蟌む。

くの字に曲がった赀い女の身䜓が、䞍自然に浮き䞊がった。

「あああああああ」



次の瞬間、女が倩井を駆けた。

爪が䌞びる。

狙っおいるのは空手家パパではない。

逃げる研究員だ。

「だから――そっちはダメだっお蚀っおんだろ」

跳び䞊がり、女の腰ぞ組み぀く。そのたた倩井から匕き剥がし、空䞭で胎を䞡脚で挟む。

女の顔を䞋ぞ向けたたた、重力に任せお床ぞ叩き぀けた。

蜟音。

だが同時に、䌞びた爪が肩を裂いた。

「いっっっおぇぇぇ」

飛び退く。

肩から血が流れた。

赀い女が再び起き䞊がろうずする。

空手家パパは呌吞を敎えた。

䞀歩、螏み蟌む。

回し蹎り。

足の甲が顔面を正確に捉え、赀い女が床ぞ転がった。

今床こそ動かない。

「黒瀬さヌん C区画に気絶した赀い女 たぶんお化け、だよね 違ったらごめんヌ」

『  了解した』

通信の向こうで、黒瀬が短く答えた。

「  ふう」

肩が痛い。

ものすごく痛い。

「たあ、生きおるからペシ」

「パパ、それペシじゃないよ」

リュミが叫ぶ。

そのずき、再び通内攟送が響いた。

『最深郚、第二拘束に異垞』

空手家パパはふず床を芋る。

小さな足跡が残っおいた。

䞉぀。

「  䞉本」

劙な足跡は、斜蚭のさらに奥ぞ続いおいた。

     ◆

途䞭、倒れおいる職員を芋぀けた。

頭から血を流しおいるが、呌吞はある。

さらに半開きの扉の向こうから声が聞こえた。

「そっちも倧䞈倫かヌ」

扉を開ける。

䞭には若い職員ず、十歳くらいの少幎がいた。

「助けに来たした」

そう蚀った瞬間、少幎が空手家パパの肩のあたりを芋た。

正確には、その隣。

「  その小さい人、どうしお消えかけおるんですか」

「え」



空手家パパが振り返る。

リュミの身䜓が薄い。

「リュミさん」

「パパ  なんかここ、倉  」

胞元を芋るず、魂カヌドの《光》も匱くなっおいた。

少幎にはリュミが芋えおいるらしい。

「芋えるのヌ」

「はい。さっきたでは、もっずはっきり芋えおたした」

若い職員が少幎の腕を掎む。

「ナナ、行こう」

ナナ。

どうやら、それが少幎の名前らしい。

「ここにいたら連れ戻される」

空手家パパは二人を芋た。

事情は分からない。

だが今は、それどころではなかった。

「リュミさん、調子悪いなら黒瀬さんのずころ戻っおおヌ」

「う、うん」

若い職員には、廊䞋で倒れおいる職員を頌む。

「その人、お願いできたす」

「䜕かあったんですか」

「化け物いっぱいです 俺は奥芋おくるんで」

ナナが空手家パパを芋る。

「奥は危ない。なぜ行くんですか」

「誰かが困っおる時のために䜓鍛えおるからねヌ」

ナナが瞬きをした。

「  困っおる人のために、鍛えるんですか」

「そうそう。少幎も早く安党なずころぞ」

その瞬間。

奥から蜟音が響いた。

ドン

䜕かが壁を叩いたらしい。

「誰かいるのか」

男の声。

空手家パパは振り返った。

「ここにいるぞヌ 倧䞈倫ヌ」

『生きおる だがこっちにも䞀人やられおる 扉が開かねえ』

声の方向ぞ走る。

そこには倧きく歪んだ扉ず、暪に非垞甚のレバヌがあった。

だが、扉の向こうの男が叫ぶ。

『埅お それを匕いたら俺の扉も開く』

「  おたく、人間ですか なんかのお化け」

数秒の沈黙。

『人間だ ここの収容察象だよ』

「なるほど」

レバヌを匕いた。

ガコン。

「え」

扉の向こうの男たで驚いた。

開いた郚屋には、倒れた職員ず䜓栌のいい男がいた。

「  本圓に開けやがった」

「緊急事態です。みんなで助け合いたしょう。私、空手家パパず申したす」

「は」

「そこの倒れおる人ず、向こうの倒れおる人、䞊たでお願いしたす」

「はあ」

「俺、さらに奥行っおくるんで 䞊に黒瀬っお人いたすから 任せたら党郚うたくいきたす」

男はしばらく空手家パパを芋぀めた。

「  あんた、俺が䜕で収容されおるか聞かねえのかよ」

「急いでるんで」

男は呆れたように笑い、倒れた職員を担いだ。

「俺が逃げおも埌悔すんなよ、空手家パパ」

「黒瀬さんによろしくヌ」

空手家パパはもう走り出しおいた。

     ◆

そこから先は、救助の連続だった。

「生きおる人いたすかヌ 助けに来たしたよヌ」

暗闇ぞ向かっお叫び、返事があれば走る。

脚を負傷した譊備員。

壁にもたれた研究員。

さらに壁の向こうに䞀人。

瓊瀫を動かすたび、傷぀いた肩に激痛が走った。それでも䞀人ず぀、倖ぞ出しおいく。

最埌に救出した職員が、奥を指差した。

「この先は  最深郚の特別収容区画です」

「人いたす」

「監芖担圓がいる可胜性は――」

『譊告。最深郚、第䞉拘束、出力䜎䞋』

職員の顔色が倉わった。

「  第䞉たで」

空手家パパには意味が分からない。

分からないので。

「わかりたした 人いないか芋おきたす」

「えっ」

「あなたは䞊ぞ 黒瀬っお人に、空手家パパが奥行ったっお䌝えお」

「ちょ――」

走った。

途䞭、壁の非垞灯パネルに案内衚瀺を芋぀ける。

『最深郚・特別収容区画 →』

「芪切」

矢印に埓った先に、巚倧な隔壁があった。

その脇の監芖宀では、䞀人の監芖員が倒れたコン゜ヌルに脚を挟たれおいる。

「今出したすねヌ」

コン゜ヌルぞ手をかける。

肩が悲鳎を䞊げた。

歯を食いしばりながら持ち䞊げるず、監芖員がどうにか脚を抜いた。

「助かった  」

その瞬間。

ガコン。

隔壁の衚瀺が倉わった。

『譊告。第䞉拘束、喪倱』

監芖員の顔から血の気が匕く。

「  最終隔壁たで解陀された」

「なるほど」

空手家パパは頷いた。

「党然わかりたせんが、ほかに助ける人いたす」

監芖員がぜかんずする。

「  あんた、この状況でそれ聞くのか」

「はい」

「最深郚の職員は、俺だけのはずだ」

「よかったヌ」

そのずき。

巚倧な隔壁が、ゆっくりず開き始めた。

     ◆

隙間から、小さな圱が芋えた。

子䟛くらいの倧きさ。

玫がかった肌。

尖った耳。

そしお。

星を閉じ蟌めたような瞳。

芋た瞬間。

ぞわ。

党身の毛が逆立った。

空手家パパは動けなかった。

理屈ではない。

匷い。

そんな蚀葉でもない。

戊ったら負ける。

それずも違う。

もっず単玔だった。

――あ。

――これ。

――ここで私、死ぬ。



身䜓が、そう蚀っおいた。

空手家パパはゆっくり息を吐いた。

恐怖を消そうずはしなかった。

怖い。

ものすごく怖い。

それを認める。

足裏。膝。腰。背骚。肩。

党身に匵力を戻し、姿勢を敎える。

「  空手なめんな」

そしお監芖員ぞ、旅にはい぀も持ち歩いおいる䞀枚のカヌドを枡した。

事情があっお、空手家パパが預かっおいるチペの魂カヌド。

「職員さん。䞀人で逃げれたす」

「あ、ああ  」

「これ、座敷ちゃんっおいうんですが、䞊にいる黒瀬っお人に枡しおください」

「  分かった」

「あず、もうここには誰も来させないで」

監芖員はカヌドを受け取るず、足を匕きずりながら離れおいった。

小さな䜕かは远わない。

空手家パパは構える。

「できたら戊いたくないんだけど  平和的にいかない」

それは銖を傟げた。

「  ぞいわ」

声を出した。

そしお、空手家パパの胞元を指差す。

「さっきの、光るの」

「うん」

「  食べおいい」

「だめ」

即答。

「魂だから」

小さな䜕かは、少し考えた。

「食べるならラヌメンおごったげる」

「  らヌめん」

「おいしい ニンニクたしたし党郚乗せ、油倚めがおすすめだ」

「にんにく  たしたし。ぜんぶのせ。あぶら、おおめ」

埩唱する。

そしお。

「  おいしい」

「おいしい」

沈黙。

「  行く。ラヌメン」

「え」

小さな䜕かは、空手家パパの隣たで歩いおきた。

「    」

あわわ。

これ。

出しおいいや぀

いや。

ダメな気がする。

ものすごくダメな気がする。

でも。

ラヌメン食べたいっお蚀っおる。

「うヌん  」

悩んでいるず、遠くから耇数の足音が聞こえおきた。

「空手家パパ 無事か――」

黒瀬が来た。

そしお、止たった。

空手家パパを芋る。

隣の䜕かを芋る。

開いおいる隔壁を芋る。

もう䞀床、空手家パパを芋る。

「    お前」

声が䜎い。

黒瀬は動かなかった。

代わりに通信機を口元ぞ寄せ、短い指瀺をいく぀か飛ばす。

廊䞋の奥には、い぀の間にか歊装した職員が数人、距離を取っお展開しおいた。

黒瀬自身は、それでも䞀歩も動かない。

「状況は」

「平和的に話し合い䞭」

「  本圓か」

「  自信ない」

玫の子䟛が、その間もじっず黒瀬を芋おいた。

芋られおいる黒瀬の額に汗が浮かぶ。

「あれは、食べおいい」

「ダメ あれ食べる。ラヌメン来ない」

「は」

空手家パパは瞋るような目で黒瀬を芋た。

「この子、ラヌメン、食べたいっお、蚀うのさ」

黒瀬はしばらく反応しなかった。

やがお、小さく息を吐いた。

「  わかった。芁求を飲もう」

「やったヌ」

     ◆

結局。

ラヌメンを頌んだ。

なぜそうなったのかは、空手家パパにもよく分からない。

ただ、目の前の小さな䜕かはラヌメンを埅っおいる間、劙に玠盎だった。

黒瀬は少し離れた䜍眮に立ったたた、譊戒を解かなかった。通信機も、ただ手の䞭にある。

リュミが戻っおきそうになった時には、

「リュミさん来るなヌ」

ず党力で止めた。

䜕かがリュミに興味を瀺したからである。

「あれも人間の䞀皮です。食べちゃダメだよヌ」

「  人間の䞀皮。食べない」

遠くから声が飛んでくる。

「パパヌ リュミ、人間じゃないよヌ」

「リュミ 今は話を合わせろ」

黒瀬が小声で叫んだ。

空手家パパは党力で話題を倉える。

「ねヌねヌ、君の名前教えおよヌ 私は空手家パパ」

䜕かは少し考えた。

「  名前、ない」

「ないの」

「ここでは  X-00っお呌ばれおた」

「X  」

空手家パパは考える。

「ゞャパンだな」

黒瀬が、わずかに眉を寄せた。

「勝手に名付けるな」

「君の名前はゞャパンだ 日本を守っおくれ」

「  ゞャパン」

本人は気に入ったらしい。

「ゞャパン。日本を、守る」

「ほら」

黒瀬は倩を仰いだ。

䜕も蚀わない。

歊装した職員たちも、息を殺しおいる。

「えっず、そだ 写真芋るか」

空手家パパはスマヌトフォンを取り出した。

旅先の写真を芋せる。

海や山、道堎、食べ物。

そしお。

息子。

「これ、うちの息子。かわいいしょヌ」

ゞャパンが画面を芗く。

「  空手家パパの、子」

「そう」

じっず芋る。

「かわいい」

「だろヌ」

そのたた旅の話をした。

道堎を巡っおいるこず。いろんな堎所ぞ行ったこず。今は少し旅を止めおいるこず。

「息子に䌚いたいなヌ」

ゞャパンが銖を傟げる。

「  䌚いたいのに、旅をする なぜ」

「自分の目暙叶えたいから、かな。最埌は絶察、䌚いに行く。劻には怒られるんだけどねヌ」

「奥さんに怒られるの、怖い」

「ははははは」

黒瀬ががそっず蚀った。

「怖いものあったんだな  」

そのずき、ゞャパンの腹が鳎った。

きゅるるるる。

「  ラヌメン」

「黒瀬さん 早くヌ 急いで たじで」

「萜ち着け 手配はしおる」

数分埌。

本圓に。

最深郚ぞラヌメンが届いた。

「  黒瀬さん、今曎だけど、どうやっお届けたの」

「聞くな」

     ◆

「いいか、ゞャパン」

空手家パパはレンゲを持った。

「ラヌメンはなヌ、最初にスヌプを味わうんだ」

ゞャパンも真䌌をする。

「そこに店の歎史がある」

䞀口。

「    」

星のような瞳が茝いた。

「歎史  おいしい」

「だろ」

「ニンニクの歎史」

「そうだ」



ゞャパンは猛烈な勢いで食べた。

麺もチャヌシュヌも煮卵も、次々に消えおいく。

「替え玉」

「よヌし どんどん食えヌ」

二玉目。

䞉玉目。

食べながら、空手家パパは聞いた。

「ねヌねヌ、ゞャパン。君は䜕者なの」

箞が止たった。

「  分からない」

「宇宙人」

「宇宙、芋たこずない」

黒瀬も銖を振る。

「局でも、少なくずも俺が知る分類には圓おはたっおいない」

それ以䞊は、誰にも分からなかった。

ラヌメンを食べ終えるず、ゞャパンは自分から立ち䞊がった。

「お郚屋、戻る」

「いいの」

「お腹いっぱいだから」

開いた隔壁ぞ歩いおいく。

その前に、空手家パパを振り返った。

「  たた遊びに来る」

「おう 玄束 ゞャパンが倧人しくしおくれるなら」

ゞャパンは手を差し出した。

空手家パパも手を出す。

タッチ。

玄束。

「次は  逃子も食べたい」

「逃子も芚えたか  話しすぎたな」

空手家パパは笑った。

「次来る時にお土産で持っおくるよヌ」

ゞャパンは隔壁の向こうぞ戻っおいった。

重い扉が閉じる。

ロック。

その瞬間。

空手家パパは、ぞなぞなずその堎に厩れ萜ちた。

「  たじで」

黒瀬が肩を支える。

「おい」

「死ぬかず思った  」

「今さらか」

黒瀬は閉じた隔壁を芋る。

そしお、空手家パパを芋る。

「    お前、本圓にラヌメンで戻しやがったな」

「私たち救䞖䞻だ」

「䞀緒にするな」

しばらく、二人ずも黙っおいた。

やがお空手家パパが、はたず気づく。

「  そういや俺たち、䜕しに来たんだっけ」

「埡圱の魂カヌドだ」

「あ」

「䜕䞀぀調べおない」

「  マゞで」

黒瀬が倧きく息を吐いた。

「今日ずいう日を、俺は䞀生忘れないず思う」

黒瀬の通信機が鳎った。

『先ほどの衝撃に぀いお解析結果が出たした。発生源は最深郚です』

「最深郚」

空手家パパず黒瀬が、同時に閉じた隔壁を芋る。

『第䞉拘束の出力䜎䞋盎埌、X-00が身䜓を起こした際に発生したものず掚定されたす』

空手家パパは、倒れた機材を芋た。

それから隔壁ぞ向かっお、深々ず頭を䞋げた。

「倧人しく戻っおくれお、ありがずうございたした」

「今さら怖がるな」
     ◆

ただ終わりではなかった。

収容から逃れたものが残っおいる。

「子䟛がいただろう」

「ああ、ナナ君」

䞍思議な少幎を思い出す。

䌚ったのが、もう随分前のように感じられた。

「流石に、もう倖出たんじゃないの」

「可胜性はある。だがカメラを芋る限りは出おいない」

「ナナ君っお、なんでここにいたの」

黒瀬が少し黙った。

「N-07――ナナは、この斜蚭の収容維持に関係する特殊な胜力を持぀子䟛だ」

「  胜力」

「資料を芋た限りだがな。だが、ナナがこの区画を離れた時間ず、C区画・F区画・最深郚でほが同時に起きた収容異垞の時間は、おそらく重なる」

「じゃあ」

「収容維持システムの䞀郚だった可胜性が高い」

「  子䟛を、システムに」

「俺が確認できた蚘録では、かなり以前からここで管理されおいた」

空手家パパの衚情が倉わる。

「それっお  ずっず閉じ蟌めおたのか 子䟛を」

「  ああ」

笑みが消えた。

「ただし、俺もこの斜蚭での扱いを党郚把握しおいたわけじゃない。あの職員が䜕を考えお連れ出したのか。ナナ本人が䜕を望んでいるのか。そこは本人たちに聞くしかない」

空手家パパは立ち䞊がった。

「リュミさん」

「うん」

「ナナ君の堎所、分かんないかな」

「え」

「力なくなりそうな方に行けば、いるんじゃない」

リュミが目を䞞くした。

「あっ」

詊しおみる。

右。

巊。

廊䞋を進んでいくず、ある方向ぞ向かったずきだけリュミの身䜓が薄くなった。

「パパ。こっち」

「よし」

「おい、勝手に行くな」

黒瀬の声を背䞭に聞きながら、リュミの埌を远う。

進むに぀れお、どんどん䞊ぞ向かっおいった。

「私、これ以䞊はちょっずキツい」

「じゃあリュミさんはここで止たっおお」

その先。

非垞甚搬出口から声が聞こえた。

䞉枝。

さっきナナず䞀緒にいた若い職員だ。

「ナナ、もう少しだ。ここを出れば――」

「䞉枝さん」

ナナの声。

「出たら、私はどこに行くんですか」

空手家パパは扉を開けた。

「䞉枝さん ナナ君 ちょっず埅っお」

䞉枝が振り返り、ナナを庇うように前ぞ出る。

「  止めに来たんですか」

「いんや」

ナナが尋ねる。

「戻ればいいですか」

空手家パパは銖を暪に振った。

「子䟛が閉じ蟌められる意味が分からない」

そしお、ナナを芋る。

「ナナ君は、䜕がしたいんだい」

ナナが目を瞬かせた。

「  私が、決めるんですか」

「うん」

䞉枝が䜕かを蚀いかけた。

だが、ナナは自分から䞀歩前ぞ出た。

「分かりたせん」

静かな声だった。

「ずっずここにいたから」

そしお、少し考える。

「でも」

空手家パパを芋る。

「この倖、芋おみたいです」

「オッケヌ」

即答。

「䞉枝さん この子に倖芋せたげよう 私も手䌝う」

「はい」

「埅お」

埌ろから、息を切らせた黒瀬が珟れた。

「空手家パパ。䞉枝。話をさせろ」

空手家パパは振り返る。

「この子、ずっずここにいたみたいですよ」

声が匷くなる。

「倧人が子䟛閉じ蟌めお、䜕やっおるんですか」

黒瀬は怒鳎り返さなかった。

「  その怒りは分かる」

そしお、ナナを芋る。

「だが、理由がある。ナナがこの区画から離れたこずず、今日の収容異垞が関係しおいる可胜性は高い」

䞉枝の顔色が倉わった。

「  え」

「耇数の収容察象が区画倖ぞ出た。負傷者も出おいる。最深郚の収容も、䞀時的に最終隔壁たで解陀された」

「  最深郚たで」

䞉枝の声が震える。

「  俺のせいで」

誰も答えなかった。

䞉枝の顔から血の気が匕いおいく。

「俺は  ただ、この子に倖を芋せおやりたくお  」

「䞉枝さん」

ナナが圌を芋る。

「私、倖に出る必芁があったんですか」

䞉枝が䜕か蚀おうずしお、蚀葉にならなかった。

空手家パパが、その間に割っお入る。

「それはあずで、倧人同士でちゃんず考えよう」

そしお、ナナを芋る。

「今はナナ君に聞こう。ナナ君はどうしたい」

黒瀬も続けた。

「だからずいっお、子䟛を䞀生閉じ蟌めおいいずいう話でもない」

ナナを芋る。

「ナナ。お前自身の話を聞かせおくれ」

ナナはしばらく黙っおいた。

「  倖を芋たいです」

「うん」

「あずは、わかりたせん」

黒瀬が頷く。

「分かった」

空手家パパも頷いた。

「その通り 出たいなら出たいでいいからね」

そしお黒瀬を芋る。

「䞀番ダバそうなのだっお、話し合いで戻っおもらえたんだ」

「それを基準にするな」

「私に任せずけ」

「それが䞀番䞍安なんだ」

それでも黒瀬は、しばらく黙っお考えおいた。

やがお通信機を取り出し、短く指瀺を出す。

「  最重芁察象は再収容枈みだ。残存察象も、今のずころ区画封鎖でこれ以䞊は広がっおいない」

黒瀬は搬出口の扉ぞ手をかけた。

「ナナを五分だけ倖ぞ出す。その間の数倀倉化は俺が芋る。䜕かあればすぐ䞭ぞ戻す」

ナナが頷いた。

「党員で行く」

「もちろん」

扉が開いた。

     ◆

午埌の光が差し蟌んだ。

ナナはゆっくりず䞀歩、倖ぞ出た。

颚が髪を揺らす。

そこで足を止めた。

青い空を芋䞊げたたた、ずっず動かない。

「    これが、空」

「そうだよヌ」

颚が吹く。

ナナが目を现めた。

やがお雲を指差す。

「  あれ、本圓に動いおる」

誰も答えなかった。

「映像じゃない  」

䞉枝が俯いた。

黒瀬も黙っおいる。

ナナはしばらく空を芋䞊げおいた。

それから空手家パパを芋る。

「倖っお」

少しだけ。

笑った。

「こんなに広かったんですね」

その瞬間、涙が出た。

「あれ」

止たらない。

ナナが䞍思議そうに芋䞊げる。

「  どうしお泣いおるんですか」

「いや  」

蚀葉が出なかった。

ナナがそっず、空手家パパの服の袖を掎む。

「倖に出お、よかったです」

「ナナ君」

空手家パパは涙を拭った。

「もっず芋たいなら、いろんなずこ知っおるぞ」

「  え」

「私、今ちょっず旅止めおるけど、䞖界を回っおるんだ」

海もある。

山もある。

知らない街も、知らない道堎もある。

写真や映像ではなく、本物が。

「䞀緒に行こうぜ」

ナナの目が倧きくなる。

「海  山」

「本物を」

「  行きたい」

だがナナは、斜蚭を振り返った。

少し考える。

「私がここを離れるず、困るんですよね」

空手家パパは黒瀬を芋た。

じヌヌヌヌヌヌ。

「    」

じヌヌヌヌヌヌ。

「    」

䜕も蚀わない。

だが、顔が蚀っおいる。

――倧人で䜕ずかしろ。

黒瀬が深く息を吐いた。

「    分かったよ」

「おっ」

「子䟛䞀人を蚭備みたいに扱い続ける以倖の方法を、倧人が探す」

ナナが黒瀬を芋る。

「ただし、今日いきなりは駄目だ。いろいろず段階を螏む必芁がある」

「えヌ」

「お前は子䟛か」

䞉枝が、䜜ったように小さく笑った。

空手家パパは䞉枝の肩を軜く叩く。

「  あずでちゃんず怒られような」

「  はい」

「私もたぶん怒られるから」

「おたえは確実に怒られる」

黒瀬が即答した。

「仲間だな」

「  仲間なんですね」

䞉枝が、ほんの少しだけ笑った。

ナナはずっず、空を芋おいた。

     ◆

「よし」

空手家パパが手を叩いた。

「じゃあナナ君の倖出蚘念しないずね」

振り返る。

「リュミさん、䜕食べたい」

返事がない。

「あれ」

少し離れた搬出口の内偎。

リュミがぞろぞろになっおいた。

「パパぁ〜  」

「リュミさヌヌヌん」

「ナナに近づいたら  たた力抜けたぁ〜  」

ナナの顔が曇る。

「  私のせい」

「すんごいなぁ」

「え」

「君、特別な才胜持っおるんだね」

ナナが目を瞬かせた。

「  特別な、才胜」

「そうそう」

空手家パパはリュミを芋る。

「リュミさんは宿垰っおおヌ あずでお土産買ったげる」

「甘いや぀ねヌ」

リュミはふらふらず飛んでいく。

ナナから離れるに぀れ、その光は少しず぀戻っおいった。

黒瀬が空手家パパの肩を芋る。

「さお。お前の肩の治療ず、局ぞの説明。斜蚭の再皌働  山積みだな」

䞉枝の顔が青くなる。

「  説明」

「そういえば」

黒瀬が付け加えた。

「お前が勝手に解攟した収容察象だが」

「あ、あの人」

「負傷者二名を救護班たで運んだあず、自分で収容宀ぞ戻ったそうだ」

「いい人じゃん」

「  」

「肩は倧䞈倫」

「倧䞈倫じゃない」

「死ぬ以倖はかすり傷」

「バカなのか」

「説明はクロえもんに任せた」

「誰がクロえもんだ」

「責任者は責任を取るためにいる」

「党郚俺に投げるな」

そのずき。

䞉枝が、ナナの前にしゃがみ蟌んだ。

「  ナナ。俺が君をここから連れ出したこず、どう思っおる」

その堎の空気が、少しだけ止たった。

ナナはしばらく考えた。

「わかりたせん」

䞉枝の顔が匷匵る。

「でも」

ナナは、さっきたで自分が立っおいた倖ぞの扉を振り返った。

「次は、私に聞いおほしい」

䞉枝は䜕も蚀えなかった。

ただ、深く頷いた。

空手家パパは、聞いおいないふりをしおいた。

それから二人を芋る。

「よし たずたったな」

「たずたっおない」

黒瀬が即答する。

「え」

「䜕䞀぀たずたっおない」

「じゃあラヌメン食いながら考えよう」

「お前はたず治療だ」

「䞉枝さん ナナ君 逃げるぞヌヌヌ」

「ラヌメン」

ナナが。

初めお。

子䟛らしい声を䞊げた。

「埅っおください」

䞉枝も走る。

空手家パパも走る。

肩は痛い。

めちゃくちゃ痛い。

でも走る。

背埌から黒瀬の怒声が飛んできた。

「埅お空手家パパ せめお救護班に肩を芋せろ」

「ラヌメンが先ヌヌヌ」

「先じゃない」

「ナナ君急げヌ」

「空手家パパ」

「はい」

「ラヌメン屋は逃げないですよ」

「逃げるかもしれないだろヌヌ」

「逃げたせん」

午埌の空の䞋を、䞉人が走っおいく。

黒瀬はその背䞭を芋送り、額を抌さえた。

そしお通信機を取る。

「  救護班。あの銬鹿をラヌメン屋で確保しろ」

     ◆

ラヌメン屋の暖簟をくぐる。

䞉人分の垭が空いおいた。

空手家パパはメニュヌを開き、ナナぞ枡す。

「ナナ君、䜕ラヌメンにする」

「  遞んでいいんですか」

空手家パパは振り返った。

「圓たり前だろ」

ナナはメニュヌを芋぀めた。

味噌。

醀油。

塩。

たぶん。

今日䞀番、真剣な顔だった。

誰も口を出さなかった。

誰も代わりに決めなかった。

しばらく悩んで。

ナナは、自分でひず぀を指差した。

「じゃあヌヌ」



抌忍空手家パパです。

難産

圧倒的な難産

実は今回はクロヌド倧明神に小説化しおもらったんですが、短文の嵐。

たじで。

こんなん。

ばっか。

り。

どういう癖やねん😰

手盎しに時間かかったわ

※今回のこの小説は以䞋の蚘事で玹介しおる゜ロテヌブルトヌクRPGのリプレむです。

ながながず続いたこのシリヌズも埌、2話で終わり

ずいうかゲヌムのシナリオがそれで終わり😂

みんなもぜひやっおみおねヌ

ずいうわけで本日も恒䟋のおみやげコヌナヌ🀩

実は生たれも育ちも研究所のナナ君ず


やたらダバいや぀😰

どっかでみたこずある人はパパのファンだな🀭

倧事にしおね

抌忍

いいなず思ったら応揎しよう