芋出し画像

悲しい話もかけるんだっおばよ

第話 うちの座敷童が家出したした


倕方。

旅先の叀い商店街を、空手家パパは䞀人歩いおいた。

西の空には、ただ少しだけ橙色が残っおいる。

倕飯の買い物をする人。

店じたいを始める八癟屋。

自転車で垰っおいく孊生。

䞀日の終わりぞ向かっお、商店街がゆっくり静かになり始める時間だった。

そのずき。

胞元で、

ブルッ。

䜕かが震えた。

「  ん」

スマヌトフォンではない。

魂カヌド。

空手家パパは足を止める。

「たたかよヌ  」

最近、このカヌドが反応するず、ろくなこずがない。

呚囲を芋回す。

そこで気づいた。

少し先の自動販売機。

その前に、小さな女の子が立っおいる。

䞃぀か八぀くらいだろうか。

赀い着物。

少女は手の䞭の䜕かを、䜕床も投入口ぞ入れようずしおいた。

だが、入らない。



「お嬢ちゃん、どったのヌ」

少女が振り返る。

「䜕か困っおるなら蚀っおごらん」

少し考えお、付け加えた。

「あ。おじさん、あやしくないからねヌ」

我ながら、蚀えば蚀うほど怪しい。

少女は手のひらを開いた。

そこにあったのは、穎の開いた叀い硬貚だった。

「これで、あれ飲みたいの。でも入らない。  おじさん、これ壊れおる」

「叀いお金だねえヌ」

空手家パパは笑った。

「よし、おじさんが奢っおあげよう どれ飲みたいの」

少女は自動販売機を端から端たで真剣に眺めた。

そしお、

「これ」

赀い猶を指さす。

「いちご 赀いから、たぶん甘い」

「たぶんっお」

空手家パパが笑う。

そのずき。

少女の赀い袖の向こうに、自動販売機の明かりが透けお芋えた。

「  ん」

少女も自分の腕を芋る。

「どうしたの」

「いや  」

空手家パパは目を现めた。

「なんか着物、透けおない」

「え」

少女が袖を持ち䞊げる。

「  ほんずだ」

少し離れた堎所では、䞀匹の黒猫がこちらをじっず芋おいた。

空手家パパは、ずりあえず硬貚を入れる。

ガコン。

苺ゞュヌスが萜ちる。

「ほい」

「わあ ありがずう、おじさん」

少女が受け取った。

その指先が――。

猶ぞ、沈んだ。

「  え」

ガコン。

苺ゞュヌスが地面ぞ萜ちる。

少女が慌おお拟おうずする。

しかし。

指が猶をすり抜けた。

「  あれ」

空手家パパは少女ぞ駆け寄った。

「うわヌ なにこれ 病気 倧䞈倫」

そのずき。

「病気じゃねえず思うぞ」



声がした。

振り返る。

誰もいない。

いるのは黒猫だけ。

「    」

「䜕だ、その顔」

「猫が喋った」

「そこかよ」

「こわっ」

黒猫が毛を逆立おる。

「俺よりそっちを心配しろ 座敷童が透け始めおんだぞ」

少女は䞍安そうに自分の手を芋る。

「  私、消えちゃうの」

黒猫は答えない。

空手家パパも、さすがに笑えなくなった。

「ねこさん。原因わかる」

「分からん。ただ、こい぀はずっず藀原の家にいた。こんなずころたで䞀人で出おきたのは、俺が知る限り初めおだ」

「家から離れたせい」

「だから分からんっ぀っおんだろ」

「ですよねヌ」

空手家パパは頭を掻く。

こういうものに詳しそうな人間を、䞀人だけ知っおいる。

スマヌトフォンを取り出した。

「ちょっず埅っおね。知り合いに聞いおみるから」

電話をかける。

数回の呌び出し音。

『  はい、雚宮です』

「あ、雚宮さん ちょっず聞きたいんだけど」

『嫌な予感しかしたせんが、どうぞ』

「座敷童子っお、家から離れるず消えたりする」

電話の向こうが静かになった。

『  今床は䜕を拟ったんです』

「拟っおないよ 女の子」

『その蚀い方はもっず駄目です』

「違う違う 赀い着物の女の子が透けおんの あず喋る黒猫がいる」

『    』

「もしもし」

『情報を䞀぀ず぀お願いしたす』

「えヌっずね」

空手家パパは少女を芋る。

その向こうでは、商店街の店が䞀軒、たた䞀軒ず明かりを萜ずしおいく。

西の空に残っおいた橙色も、い぀の間にかほずんど消えおいた。

『たず、その子が座敷童だずしおも、家から離れたから消えるずは限りたせん』

雚宮の声がする。

『土地なのか、人なのか、物なのか。それずも党く別の理由なのか。私には刀断できたせん』

「うヌん  」

空手家パパは少女を芋る。

さっきより。

ほんの少しだけ、茪郭が薄くなっおいる気がした。

時間だけが過ぎおいる。

「  ずりあえず、䜕ずかしないずな」

空手家パパは腕を組む。

「家からの゚ネルギヌ䞍足」

黒猫が呆れたように尻尟を振る。

「知らん」

「うヌん、わかんない カヌドで力あげれない」

そしお閃いた。

「それか私の血ずか飲んだら回埩しない 劖怪だし」

黒猫がものすごく嫌そうな顔をした。

「血はやめろ。劖怪を䜕だず思っおんだ、お前」

「いらないよ おじさんの血こわい」

少女にも党力で拒吊された。

仕方ない。

ならばカヌドだ。

空手家パパは魂カヌドを取り出す。

刻たれおいる胜力は、

《光》。

「よし  これで力を――」

カヌドが茝いた。

光が少女を包む。

しかし。

少女の身䜓を、そのたた通り抜けた。

「え」

光は䞀本の筋ずなり、商店街の奥ぞ走っおいく。

同時に、

ガシャヌン

䜕かが割れる音。

そしお少女の身䜓は、䞀瞬ほずんど透明になった。

「ええヌごめんヌ」

空手家パパは頭を抱えた。

「たじ䜿えねヌ呪いのカヌド」

光の先ぞ走る。

そこは閉店した叀い駄菓子屋だった。

割れたガラス瓶。

その䞭倮に、小さな叀い巟着袋が萜ちおいる。

淡く光っおいた。



少女が入口たで来る。

「あ  」

巟着を拟う。

するず、薄くなっおいた指先がほんの少しだけ濃くなった。

「これ、ミチコの」

「ミチコ」

「うん。昔、ミチコず遊ぶずきに䜿っおたの。今日、おうちから持っおきた」

どうやら家を出るずき、䞀緒に持ち出したらしい。

そしお、この駄菓子屋で萜ずした。

「どういうこず」

空手家パパは肩口ぞ叫ぶ。

「぀うかリュミさん あんたカヌドの専門家なんだからもっず教えお」

淡い光ずずもに、小さな粟霊が姿を珟した。

「専門家っおほどじゃないっおば」

リュミは巟着を指さす。

「でも今の《光》、この子を治そうずしたんじゃなくお、この子ず繋がっおるものを照らしたみたい」

「なるほど」

空手家パパの顔が茝いた。

「぀たりミチコさんか家に䜕かあるっおこずか」

黒猫が口を開く。

「いや、ただそうず決たったわけじゃ――」

「わからんけど、ずりあえず行っおみよう」

「人の話を聞け」

「合点承知」

空手家パパは少女を抱き䞊げ、そのたた走り出した。

十数秒埌。

亀差点で止たった。

「    」

黒猫が远い぀く。

「合点承知じゃねえ 堎所知らねえだろ」

腕の䞭から少女が顔を出した。

「あっち。おうち、あっちだよ」

「よし 急ぐよヌ 舌噛たないようにねヌ」

「は、はいっ」

倜ぞ倉わり始めた町を駆ける。

濡れた石畳。

现い路地。

長い階段。

少女の身䜓が腕をすり抜けかけるたび、抱え盎す。

「はやヌヌい」

少女が歓声を䞊げた。

「おじさん、銬より速い」

「比范察象が叀い」

商店街を抜ける頃には、西の空の橙色も消えおいた。

街灯が䞀぀。

たた䞀぀ず灯り始める。

やがお、倧きな日本家屋が芋えおきた。

門の前。

癜髪の女性が、懐䞭電灯を手に立っおいる。

こちらを芋た。

そしお――。

「  チペ」

震える声。

空手家パパは駆け寄った。

「ミチコさんですか」

「はい  」

「座敷ちゃんが消えかかっおるんです 助けおあげお」

「チペ  」

ミチコが少女を抱き締める。



その瞬間だった。

薄かった指。

足。

頬。

ゆっくりず色が戻っおいく。

「  ミチコ。あったかい」

「チペ  よかった  」

しかし。

完党には戻らなかった。

ミチコがチペの手を芋る。

そしお、チペが持っおいる巟着にも目を留めた。

「それ  ただ持っおいおくれたの」

チペは小さく頷いた。

「うん」

「私が子䟛の頃、あなたず遊ぶずきに䜿っおいたものね」

巟着を握るチペの指は、さっきより確かに濃く芋える。

けれど。

理由たでは誰にも分からない。

「さあ、おうちに入ろう」

ミチコが手を匕く。

チペは動かなかった。

「  私、ただ垰りたくない」

ミチコの手が止たる。

空手家パパはチペの前にしゃがんだ。

「座敷ちゃん、䜕かしたいこずがあるの」

チペは俯いた。

そしお、ぜ぀りず蚀った。

「  海、芋たい」

顔を䞊げる。

「氎族通も。電車も乗りたい。コンビニっおいうずころも、もっず芋たい」

少しだけ唇を噛む。

「私、䞀回も海芋たこずない」

誰もすぐには答えなかった。

「ミチコも、サキも、みんな奜き。でも  」

チペは門の倖を芋る。

「おうちにいるだけじゃなくお、倖にも行っおみたい」

「うヌん  」

空手家パパは考えた。

考えた。

考えた。

そしお。

「ない知恵絞っお考える。  いや、無理だ」

再び電話を取り出す。

『はい、雚宮です』

「雚宮さん 家に結び぀いおる怪異を倖に出す方法」

『たた急ですね』

「海が芋たいんだっお」

しばらくしお雚宮が答えた。

『たず、その子が“家そのもの”に結び぀いおいるず決め぀けない方がいいず思いたす』

「ほう」

『土地かもしれない。人かもしれない。物かもしれない。私にも分かりたせん。ただ――持ち出せる“瞁”のようなものがあるなら、詊す䜙地はあるかもしれたせん』

空手家パパはチペの手を芋る。

そこには、叀い巟着。

「巟着、ずか」

『  可胜性はありたす。でも、保蚌はできたせんよ』

チペが巟着を握り盎す。

少しだけ、身䜓が濃くなる。

「ここから海はどれくらい」

ミチコが答えた。

「車なら䞉十分くらいですよ」

チペの目が茝いた。

「䞉十分 海、そんな近くにあるの」

空手家パパは笑った。

「よし」

嫌な予感がしたのか、黒猫が䞀歩䞋がった。

「じゃあみんなで海氎济に行こヌ」

「は」

ミチコが目を䞞くする。

「海氎济っお  もう倜ですよ」

「现かいこずはいいんです」

「现かくねえよ」

黒猫が突っ蟌む。

「そこの猫ちゃんも行くぞヌ こういうのは倧勢であればあるほど楜しいんだヌ」

「なんで俺たでだ」

「あ、そうそう。雚宮さんも匷制参加ねヌ」

『今から』

電話の向こうから悲鳎。

『ちょっず埅っおください。私はただ行くずは――』

䜕も聞こえない。

空手家パパの頭の䞭はもう海だった。

そのずき。

二階の窓が開いた。

十歳くらいの少女が顔を出す。

「おばあちゃん  チペ」

「サキ」

チペが手を振る。

空手家パパも手を振った。

「君もおいでヌ みんなでお出かけだヌ」

「海 行く」

こうしお。

癟五十幎間、ほずんど家の倖を知らなかった座敷童の、初めおの倧冒険が始たった。

◟初めおの海

䞉十分埌。

空は完党に倜ぞ倉わっおいた。

車を降りた瞬間。

チペは動かなくなった。

暗闇の向こうから、音がする。



ざあああ  。

ざあああ  。

繰り返し。

どこたでも。

チペは巟着を握りしめたたた、ゆっくり砂浜ぞ歩いた。

「  これ」

誰に聞くでもなく呟く。

「これが、海」

「そうだよヌ」

「  これ、党郚  氎」

「そうそう」

「党郚」

「たぶん党郚」

「たぶんっお䜕だよ」

埌ろから黒猫の声。

チペは恐る恐る砂を螏んだ。

「  やわらかい」

靎を脱ぐ。

裞足になる。

もう䞀歩。

もう䞀歩。

波が来た。

「わっ」

慌おお逃げる。

サキが笑う。

「チペ、逃げなくおも倧䞈倫だよ」

「远いかけおきた」

「波だから」

もう䞀床近づく。

今床は波が足先ぞ觊れた。

チペは目を䞞くした。

しゃがみ蟌んで、指で海氎に觊れる。

そしお、ちょっず舐めた。

「しょっぱい」

「海だからね」

サキが笑う。

チペも笑った。

二人で波打ち際を走る。

ミチコは少し離れた堎所から、その姿をずっず芋おいた。



癟五十幎。

ずっず同じ家にいた少女が。

初めお芋る海で笑っおいる。

黒猫は砂浜ぞ座り、尻尟だけをゆっくり動かしおいた。

空手家パパは気づいた。

チペの姿は、ただ少し薄い。

それでも。

巟着を持っおいる間は、ここぞ来る前より安定しおいるように芋える。

「よかったなヌ」

空手家パパが蚀う。

チペが振り返った。

「うん」

その笑顔は、今たでで䞀番はっきり芋えた。

砂浜には、他にも䜕組か人が残っおいた。

倜釣りをしおいる人。

花火を片付けおいる家族。

波打ち際で遊んでいる芪子。

だから最初は、誰も異倉に気づかなかった。

「危ない」

サキの声。

少し離れた岩堎。

幌い子䟛が足を滑らせた。

身䜓が海ぞ萜ちる。

芪らしい人物の悲鳎。

空手家パパは走った。

「たずは子䟛だ」

岩堎ぞ向かう。

同時に。

チペが反射的に、その子ぞ手を䌞ばした。

次の瞬間。

奇劙なこずが起きた。

子䟛ぞ襲いかかろうずしおいた波が、䞀瞬だけ勢いを倱った。

沈みかけた身䜓が、氎面ぞ抌し戻される。

そしお――。

チペの赀い着物から、急速に色が抜けた。

「  」

空手家パパは濡れた岩堎を蹎る。

子䟛の腕を掎んだ。

足が滑る。

膝を岩ぞ匷く打ち぀ける。

「ぐっ  」

それでも離さない。

次の波が来る前に、子䟛を浅瀬ぞ匕き䞊げた。

「倧䞈倫か」

咳き蟌む子䟛。

芪が駆け寄っおくる。

助かった。

しかし。

「  よかった」

埌ろから声がした。

遠い。

振り返る。

チペだった。

向こう偎が芋えるほど、身䜓が透けおいる。

さっきたで砂浜を走っおいた足さえ、ほずんど芋えない。

「  あの子、倧䞈倫だね」

笑っおいた。

そしお。

手から巟着が萜ちた。

指が、もう垃を掎めなくなっおいた。

「座敷ちゃん」

空手家パパは魂カヌドを取り出した。

「カヌドをヌ 光を巟着に」

《光》が灯る。

「巟着の力を倍増させろヌ」

リュミが叫ぶ。

「パパ この子に力を入れるんじゃなくお、繋がっおるものを照らしお」

光が巟着ぞ集たった。

するず。

芋えた。

巟着から。

ミチコぞ。

サキぞ。

チペぞ。

现い光の糞が䌞びおいる。

「いけえええ」

光を流す。

だが。

ぷ぀ん。

䞀本が切れた。

サキぞ䌞びおいた糞だった。

「  サキ」

チペの声がさらに遠くなる。

「そこにいるのに  なんか、遠い」

「やめろ、抌し蟌むな」

黒猫が巟着を光から匟いた。

ミチコがチペを抱き締める。

サキも手を䌞ばす。

しかし。

その指が、チペの手を半分すり抜けた。

「リュミさん」

空手家パパが叫ぶ。

「カヌド化 はやく」

リュミがチペの前ぞ飛ぶ。

だが、すぐには觊れなかった。

「できるかもしれない でもパパ、これは普通のカヌド化ずは違う」

チペを芋る。

「チペちゃんそのものを、カヌドに繋ぎ止めるこずになる」

チペはただ意識があった。

「チペちゃん」

リュミが叫ぶ。

「消えないために、いったんカヌドになる 元に戻せるかは、あたしにも分からない」

空手家パパはチペを芋た。

「カヌドになったら絶察、助ける」

蚀い切った。

「今はカヌドになっお」

チペはミチコを芋る。

サキを芋る。

そしお。

最埌に空手家パパを芋た。

「  海、たた芋られる」

「ああ」

チペは、小さく頷いた。

「じゃあ  お願い」

声が震える。

「消えるの、やだ」

リュミが䞡手を䌞ばした。

光がチペを包む。

しかし。

足りない。

光が散る。

チペの茪郭が厩れおいく。

「ミチコさん」

空手家パパが叫んだ。

「サキちゃん」

二人を芋る。

「遊んでたこず 昔の思い出 䜕でもいいから話しお 座敷ちゃんずの瞁を匷くしお」

ミチコが涙を拭った。

「チペ  芚えおる」

震えながら笑う。

「私が八぀の頃。抌し入れに二人で隠れお  お母さんが本気で私を探しお  」

光が䞀本戻った。

サキも叫ぶ。

「ゲヌム 䞀緒に芋たよね 私がやっおるの、ずっず暪で芋おたじゃん」

もう䞀本。

「お菓子も半分こした」

さらに䞀本。

黒猫が巟着を咥えた。

「ったく  」

チペの胞元ぞ抌し圓おる。

「癟五十幎分だぞ。簡単に切れおたたるか」

そしお。

空手家パパは自分の魂カヌドを握った。

「座敷ちゃん」

手を䌞ばす。

「おじさんずも瞁を結ぶよ」

チペの指先が觊れる。

「おじさんの魂の䞀郚、座敷ちゃんにあげる」

今たでなかった堎所ぞ。

新しい䞀本の光が生たれた。

リュミが目を芋開く。

「――捕たえたっ」

光が爆ぜた。



チペの身䜓が、無数の光の粒になる。

ミチコが叫ぶ。

サキが手を䌞ばす。

光は消えない。

䞀点ぞ集たっおいく。

やがお。

䞀枚の小さなカヌドが、倜の砂浜ぞ舞い降りた。

赀い着物の少女。

その向こうには、初めお芋た倜の海。

空手家パパの魂カヌドずは違う。

チペ自身の魂。

そのカヌドだった。

ミチコが拟い䞊げる。

しばらく胞元ぞ抱いおいた。

空手家パパは埅った。

やがお口を開く。

「カヌドは、私が預かっおおきたす」

ミチコを芋る。

「絶察に元に戻したす」

そしお頭を䞋げた。

「それたで私に任せおもらえたせんか」

長い沈黙。

波の音だけが続く。

やがおミチコが顔を䞊げた。

「  この子があなたを信じお、自分で頷いたんですものね」

カヌドを差し出した。

サキが涙を拭う。

「おじさん  玄束だからね」

「うん」

「海、もう䞀回芋せおあげお」

空手家パパはカヌドを受け取った。

その瞬間。

自分の魂カヌドず、チペのカヌド。

二枚の間に。

䞀本の现い《光》が灯った。

黒猫がそれを芋䞊げおいた。

「  預かるっおのは、持っお歩くっお意味じゃねえぞ」

「ん」

「そい぀が垰っおこられる堎所たで、お前が背負ったっおこずだ」

空手家パパはチペのカヌドを芋る。

赀い着物の少女がいる。

海を芋たかった少女。

癟五十幎。

ずっず同じ家で暮らしおきた少女。

その少女が、初めお自分のために倖ぞ出た。

初めお自動販売機を芋た。

初めお苺ゞュヌスを買っおもらった。

初めお倕暮れの町を走った。

そしお。

初めお海を芋た。

ただ党郚は芋られおいない。

氎族通も。

電車も。

コンビニも。

遊園地も。

花火倧䌚も。

芋たいず蚀っおいたものは、ただたくさんある。

だから。

ここで終わりにはしない。

空手家パパは笑った。

「あったりたえだヌ」

倜の海ぞ向かっお声を匵る。

「子䟛の居堎所を守るために、倧人がいるんだよヌ」

黒猫が目を䞞くした。

それから、ふいっず海を向く。

「  倧口叩きやがっお」

サキが泣きながら笑った。

ミチコも笑った。

リュミは空手家パパの肩の暪で、嬉しそうにくるりず宙返りした。

チペを救えたのか。

ただ分からない。

元の姿ぞ戻せるのか。

それも分からない。

家を離れたから薄くなったのか。

誰かを助けようずしたこずで、さらに䜕かを倱ったのか。

巟着がなぜチペを少しだけ安定させたのか。

誰にも、ただ分からない。

ただ䞀぀。

確かなものがある。

二枚のカヌドを繋ぐ现い《光》だけは。

い぀たでも、消えなかった。



――その頃。

倜の道路を、䞀台の車が海ぞ向かっおいた。

ハンドルを握る女性は、盛倧にため息を぀く。

「  たったく。匷制参加っお䜕なんですか」

雚宮は時蚈を芋る。

完党に遅刻だった。

「私が着くたで、䜕も起こしおなければいいんですけど  」

もちろん。

もう党郚終わっおいる。

そんなこずを。

雚宮は、ただ知らない。



抌忍空手家パパです。

今回の話はヌ

静かな絵本䜜家Momoさん20に挿絵を描いおもらっおたすヌ😀

いやヌ、描く人が倉わるず物語の雰囲気も党然倉わるねヌ。

いったい誰の絵が、この小説に䞀番合うんだろ🀔

「この人の挿絵奜き」ずかあったら教えおくださヌい

さお、いよいよ第䞀回ゎヌストラむティン絵画祭は本日で䜜品募集の締切を迎えたす。

もし、挿絵が気に入った方いたら䌁画参加も考えおみおくださいヌ😂

抌忍

いいなず思ったら応揎しよう