
全体像を見せる授業実践例⑬「落下するのにどれくらいかかるの?」
みなさんこんにちは、数学meganeです。
先週、3年生は新しい単元に入りました。
ここまで二次方程式に苦しめられたこともありませんでしたが、ようやくその長いトンネルも抜けることができました。
(果たして本当に抜け出せたのか…?)という感は拭えませんが…。(笑)
今回ご紹介する授業実践は、以前からずっとやってみたいと思っていた授業。
実は、私が尊敬する先生が実践していた授業です。
以前、実際に授業を見せていただき、そのときの記憶をもとに、自分なりに再構成したものです。
そもそも私自身、関数の授業がすごく苦手で、単元最初の授業は本当に悩みます。
今回も「あの先生のように、うまくいくかな…。」という不安感を抱きながらのスタート。
まあ、物は試し。
まずはやってみる。
そこから得られるものもたくさんあります。
ぜひ、最後まで読んでいただけると嬉しいです!
【3年生 数学 関数y=ax²の導入授業】
パーツ①「活性化」
T:「今、私は二つの物体を手に持っています。消しゴムと1枚の紙。これを今から同時に落とします。どちらが先に床に着くと思いますか?予想をペアにどうぞ。」
T:「消しゴムだと思う人?紙だと思う人?」
⇒消しゴムだと予想する人が圧倒的多数。
T:「消しゴムでしたね。」
⇒「空気抵抗があるから」という意見が出てきます。
そこで、その空気抵抗の影響を小さくするために次のような話をします。
T:「では、続いて。紙をこうします。(くしゃくしゃに丸めます。)また落とします。どっちが先に床に着くと思いますか?予想をペアにどうぞ。」
T:「消しゴムだと思う人?紙だと思う人?」
⇒ここで「同時に落ちる」という意見も見え始めます。
T:「今度はほぼ同時でしたね。」
T:「空気抵抗を無視できるとき、同じ高さから同時に静かに離した物体は、重さに関係なく同じように落下します。今日は、このように重力だけを受けて落下する運動を考えます。」
T:「ちなみに、今回の実験、厳密には完全な自由落下運動ではありませんが、今日は現象を理想化して、自由落下運動であると仮定して関数y=ax²について考えていきましょう。」
T:「物体を静かに離してからの時間をx秒、落下した距離をymとします。空気抵抗を無視し、今日は計算しやすいように、y=5x²という式で考えていきましょう。」
⇒厳密に自由落下運動を再現することはできませんが、今回は関数y=ax²の導入なので、ある程度理想化して考えていくように促します。
また、最初に式を見せています。
今日は「この式を使うんだ。」という全体像が見えることで、生徒にとっても何をしなければいけないのかが明確になってきます。
パーツ②「二乗に比例する関数の特徴」
T:「ではみなさん、前を向いてください。」
T:「今回新しい関数を学習する上で、大切な特徴を確認します。この表を見てください。」
⇒yの値が空白、xの値が0~3まで書かれた表を板書しています。
二乗に比例する関数は、どうしても数字が大きくなってしまい、計算が大変になるので、あえて3までしか書いていません。
T:「表を埋めてみます。xが0のとき、yの値は?ペアと確認。」
S:「0です。」
T:「いいですね。じゃあ、xが1の時は?もう一度ペアと相談。」
S:「5です。」
T:「どうやって求めましたか?ペアに解説してください。」
⇒関数における表の作成は、意外と難易度が高い場合が多いです。
「代入」していることに気が付いていない生徒もいるので、ここは全員で確認しておきます。
T:「ありがとう。では、残りのyの値はどうなる?ペアと確認。」
S:「20です。」
S:「45です。」
T:「いい感じ!じゃあ、この関数の特徴を確認するよ。比例や反比例の時にもこんな特徴がありました。」
T:「比例の時は、xが2倍、3倍となると、yの値は?ペアと確認。」
S:「2倍、3倍です。」
T:「反比例の時は?ペアと確認。」
S:「1/2倍、1/3倍です。」
T:「そうですよね。では、この表においてはどうでしょうか?」
S:「4倍、9倍になってます。」
T:「お、いいね!勘のいい人なら次もいけそうだね。4倍したら?ペアと確認。」
S:「16倍です。」
T:「じゃあ、5倍なら?」
S:「25倍です。」
T:「お、いいね。どんな特徴?ペアと議論して。」
S:「yの値は、xの倍の数を二乗した数分だけ倍されてる。」
T:「そうですね。式を見ると、yはx²の5倍になっています。このように、y=ax²と表される関係を、『yはxの二乗に比例する』といいます。」(※aは0でない定数です。)
⇒単元最初の授業であること、関数という単元であることも踏まえ、かなり生徒とのやり取りが多くなっています。
ただ、ペア活動を小刻みに入れているので、生徒は元気に活動することができています。
どうしても、教師側がしゃべる必要がある場面があります。
一方的な講義形式ではなく、「動」を意識することで、生徒が退屈にはならないようにしています。
また、ノートを取るという「静」も使い、「動」と「静」を交互に入れながら、生徒を活性化させていきます。
パーツ③「課題解決①」
T:「今日は最初に二つの問題について考えてもらいたいです。」
T:「まず一つ目です。」
T:「○○さんが東京タワー高さ320mの地点からバンジージャンプを試みました。何秒で地上に着きますか?」
⇒ここで現実離れした具体場面での問題を提示します。
そこに生徒も登場させることで、生徒の興味は一気に爆上がり。
この時点で笑いが起き、みんなのやる気はMax状態。
T:「次に○○さん。彼は高いところが大好きで、地上4500mの地点からスカイダイビングを試みました。さあ、何秒で地上に着くでしょうか?」
⇒こちらもみんな爆笑。
なかなか文章では伝わりにくい部分もありますが、かなり面白おかしくなるように、全体に伝えています。
「え~どれくらいなのかな?」
「結構かかりそうなイメージだけど…」
いろいろ予想をする生徒の声。
T:「では、解いてみてください。」
⇒ここでは、ロープやパラシュートによる力、空気抵抗は考えず、静かに落下し始めるものとして計算することはしっかり伝えておきます。
ここからはしばらく自由に動いて、みんなで一緒にワイワイ解いていきます。
先ほどは時間xから落下距離yを求めましたが、今度は落下距離yから時間xを求めます。
式に代入すると、前の単元で学んだ二次方程式が出てきます。
解の吟味も必要になります。
方程式の解は二つ出てきますが、今回は落下し始めてからの時間を求めているので、場面に適するのはどちらかを考えます。
これも前単元の学習を生かすことができます。
ただし、学力的に厳しい生徒もいるので、できた生徒には、その生徒に教え合いをするように伝えます。
解いていくと、
「え~、320mから落ちてくるって意外と速いんだ…。」
「スカイダイビングって、パラシュートとかなかったらこんなに速く落ちてくるんだ。」
という驚きを口にする生徒が多数。(320mだと8秒、4500mだと30秒になります。)
ある意味で関数y=ax²のすごさを実感させることに成功しています。
関数を楽しんでいる様子がとても印象的でした。
ただし、実際には空気抵抗が必ずあるので、実際の落下時間とは差があるということは確認しておきます。
パーツ④「課題解決②」
T:「みんな素晴らしい。余裕で計算できていましたね。」
T:「では続いて、こんな場合はどう?」
T:「今度は○○さんが地上1kmの地点からスカイダイビングします。さあ、何秒で降りてくるかな?」
T:「次はちょっとふざけます。(笑)」
T:「(丸を板書します。)これ、地球です。○○さんは、どうしてもブラジルでサッカーが観たいと思い、反対側まで穴を掘って進もうと考えました。」
⇒この時点で、生徒はこの話の異変に気付き、クスクス笑っています。
T:「穴を掘り終えて、開通させたのは良いのですが、○○さんは日本が恋しくなり、穴に飛び込んで帰ることを試みました。」
S:「先生、○○さん燃えてなくなりません?」
S:「重力あるから無理じゃない?」
⇒笑いながらもすごく常識的なことを言い出す生徒たち。(笑)
T:「実際には、地球の中で重力の大きさや進む方向との関係が変わるので、この式はそのまま使えません。」
T:「ここからは架空の問題として、地球の直径(提示したのは約12700km。計算しやすいようにしています。)と同じ距離を、ずっとy=5x²に従って進むとしたら何秒かかるか、考えてみましょう。」
⇒生徒からは、熱や重力など、現実には無視できない条件への指摘が出ました。
こうした反応は、式を使って考えるときに「どんな条件を置いているのか」を意識する入口になると感じました。
そういうことを味わってもらえるのも、関数のいいところだと思います。
この後は、提示した2問を必死になってみんなで解いていきます。
しかも、今回は根号が付いた数が答えに登場します。
地球の問題にいたっては、単位をそろえた上で、大きな数や根号を扱う必要があります。
しかし、みんな一生懸命解いています。
それは「興味のある内容」になったから。
最初に使う式を示し、整数解になる問題で「落下距離を代入し、二次方程式を解いて時間を求める」という一連の流れを経験させます。
その見通しを持った上で、根号のある答えになる問題へ進みました。
また、課題提示の際には、生徒を例え話に登場させて笑いを取っていく。
こちらの発話量が少し多くなっても、楽しんで問題に取り組むことができる。
こういう授業も、これからどんどん考えていきたい。
ちなみに、地表付近で空気抵抗を無視し、物体を静かに離した場合、落下距離はおよそy=4.9x²で表されます。
今回はさらに計算しやすくするために、係数を5に近似して扱っています。
将来的には、この自由落下運動の式を、データを取って確かめる、なんてこともしてみたいと思っています。
空気抵抗や落下させる場所の高さなどなど、さまざまな問題は抱えていますが…。(笑)
でも、チャレンジしてみるのは価値があると思っています。
自分なりにまた考えてみたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このnoteでは、
・授業でそのまま使える教材・授業展開
・思考力を育てる問題
・実際の授業実践、指導のコツ
・授業づくりについての考え方
を中心に発信していきます。
忙しい中でも「これなら使える」と思ってもらえるような、現場目線の即戦力になるような教材を届けたいと思っています。