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「いつか、が今日になった日」


おそらく最初で最後だろう。

そんな風に行くことが決まった、今日のランチ。

荻窪トマト。

並ぶのは必須であるこのお店。

何度も店の前まで来ては、
時間が中途半端だったり、
並ぶ時間がなかったりして、
食べられずにいた。

今日は満を持してである。

一時間半は並ぶと想定して、
二人して読みかけの本を携えて荻窪へ向かった。

私はパートナーに勧められた
森永卓郎さんの
『日本人「総奴隷化」計画』を持参した。

まだ全く読んでいなかった。

読み始めるのにちょうどいいかなと思った。

お店の前に着くと、
先にすでに4人並んでいた。

私たちも足早に後に並んだ。

足と腕、何ヶ所も蚊に刺されながら、
気がつかないふりをして
(ちょっともじもじはしたけれど)
本に集中してお店が開くのを待った。

カレーとシチューがあるのだが、
今日はシチューはないとマダムに告げられた。

ビーフストロガノフの選択肢は消えた。

行くと決まった時、私は
ビーフカレーと、6,000円超えの
ビーフストロガノフのどちらにしようか
迷っていた。

今度いつ来られるかわからない。

最初で最後かもしれない。

そう考えると、選択に迷っていた。

一皿6,000円は、私にはとても贅沢な金額である。

選択肢がなくなったことで残念な気持ちに
なっているのと同じぐらい、
少しホッとしている自分に笑った。

でも、体験として食べてみたかった。

まあ、今日はこれで
和牛ビーフカレーを堪能するぞ。

そう決めた。





パートナーのビーフタンカレー


私の和牛ビーフカレー



36種類のスパイスを使っているという。

一口、二口と食べながら、
シェフはこれを何年作ってきたんだろうと思った。

長い年月をかけて、
ひとつのカレーを作り続けてきたのだろう。

そう思うと、
カレーを食べているというより、
その時間を少し分けてもらっているような
不思議な気持ちになった。

帰りに笑顔で声をかけてくれた
シェフの笑顔が忘れられない。

マダムの丁寧な接客にも感銘を受けた。

行くことができて、本当によかった。

いつか行こうと思っていた店が閉店して、
もう二度と味わうことができない。

そんな経験を何度かしてきた。

「いつか行こう」と思っているうちに、
その「いつか」がなくなってしまうことがある。

だから今日は、
ずっと「いつか」と思っていた場所に行けた。

それだけで、十分だったのかもしれない。

今日はシェフの温かく優しい笑顔を思い出しながら、
眠りにつこうと思う。

ご馳走様でした。



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