#003「世代が違っても現場は動く。共通言語は「ゴール」だ。」
ジャンル:現場の人間関係
60代のベテラン職人と、20代の若手が、同じ現場で働いている。
指示の出し方も、道具の使い方も、コミュニケーションのスタイルも、何もかも違う。
どちらかに合わせようとするのが、実は一番うまくいかない方法でした。

現場には、60代のベテラン職人と、20代の若い監督が一緒にいる。
これは、今では珍しいことではありません。
でも、現場を長くやっていると、世代が違えば「仕事の常識」もかなり違うことに気づきます。
60代の職人には、言葉より背中で見せる。
経験で判断する。細かい説明より、「任せてくれ」と言う人が多い。
一方で、20代の若い人は、スマホで調べる。
理由を知りたい。「なぜ、そうするんですか?」と聞く。
どちらが正しい、という話ではありません。
現場では、この違いをどう扱うかが、監督の仕事の一つになっています。
私が若かったころは、今よりも、もっと一筋縄ではいかない職人がたくさんいました。
本当に、いろいろなタイプがいました。
日中に打ち合わせをしても、なかなか取り合ってくれない。
こちらが「お願いします」と言っても、なかなか話が進まない。
17時になれば職人さんは帰る。
私はそこから安全書類などを整理して、19時くらいに下請け会社へ電話する。
すると、親方はもう飲んでいるんです(笑)。
「親方、明日の仕事なんですけど……」
こっちは必死です。
こちらの言うことを聞いてもらわないと、自分の仕事が終わらない。
ところが、不思議なことに、相手にお酒が入っているほうが、話が進むんですよね。
昼間は取り合ってくれなかった話が、夜になると、「ああ、それならこうしよう」と決まっていく。
そして、20時ころにようやく調整が終わる。
ところが、その打ち合わせで、「明日までに終わらせなければならない仕事」が発生する。
そこからまた仕事です。
翌朝まで仕事をしていることも、当時は珍しくありませんでした。
今の若い監督に、こんな話をしても、なかなかまともに聞いてもらえないかもしれません。
「そんな時代もあったんですね」で終わってしまう。
それは当然だと思います。
昔と今では、働き方も、法律も、仕事の環境も違います。
だから、「昔のやり方に戻せ」と言いたいわけではありません。
ただ、あの頃の現場で、今振り返ると一つだけ大事だったと思うことがあります。
それは、面倒くさいながらも、相手と時間をかけて話をしていたことです。
職人は、基本的にまじめな人間が多い。
なぜかといえば、仕事をしなければ報酬にならないからです。
もちろん、誰だって働かなければ報酬はありません。
ただ、職人は、会社や現場に行けば、それだけで報酬があるわけではない。
一日、汗水垂らして仕事をして、出来高を上げて、初めて報酬につながる。
だから、若い監督がこの感覚を理解していないと、職人からは「この監督は、俺たちの仕事を分かっていない」と思われてしまうことがあります。
そして、そこで少しでも「違和感」があると、職人は孤絶気味な態度を取る。
ここを力ずくでいっても、テコでも動きません。
最近、実際にあった話です。
左官工と若い監督との間で、トラブルがありました。
原因は、左官工が当日作業する場所が、片付いていなかったこと。
前日の打ち合わせで、「ここは片付けておく」という約束までしていた。
ところが当日、片付いていない。
当然、左官工が指摘します。
そのとき、若い監督が言った。
「そんなに怒らないでよ。」
本人からすれば、もしかしたら軽口だったのかもしれません。
でも、職人からすれば、話はそんなに軽くありません。
今日、仕事ができない。
仕事ができなければ、稼ぎにならない。
つまり、「仕事=稼ぐ」という、とても当たり前のところで話が止まってしまう。
だから、世代の違う人間を動かすときに、「若いから説明してあげよう」とか、「ベテランだから何も言わずに任せよう」だけでは足りないんです。
大事なのは、まず相手の仕事を理解すること。
そして、信用を積み重ねること。
ベテランの監督や所長が、同じようなことを言ってもトラブルにならないことがあります。
なぜか。
長年のコミュニケーションで、「この人は、自分たちの仕事を分かっている」という信用が積み重なっているからです。
もちろん、ベテランだから何を言っても許される、という話ではありません。
信用があるからこそ、多少の行き違いがあっても、「まあ、あの人が言うなら」と話が続けられる。
逆に、信用がまだ積み上がっていない状態で、相手の仕事を軽く扱うような言葉を使えば、同じ一言でも意味が変わってしまいます。
ここで、最初の「世代が違っても現場は動く」という話に戻ります。
私は、若いころは「職人に合わせなければいけない」と思っていました。
ベテランの職人にはベテランのやり方がある。だから、こちらが合わせる。
それも一つの方法だったと思います。
でも、長く現場をやってきて思うのは、すべてのやり方を合わせる必要はない、ということです。
60代の職人は、長年の経験から判断する。
20代の若い人は、理由を理解してから動く。
その違いは、無理に一つにする必要はありません。
共通にすればいいのは、「やり方」ではなく「ゴール」です。
私が現場で大事にしている言葉があります。
「安全に、良いものを、約束通り作る。」
これが共通していれば、やり方が違ってもいい。
ベテランには、「こう動いてください」ではなく、「ここだけは品質を守ってください」と伝える。
やり方は、ある程度任せる。
若い人には、なぜその作業が必要なのかを説明する。
「こういう理由があるから、この手順でやるんだ」と分かれば、目的に向かって自分で動けるようになる。
つまり、「やり方は違っていい。目的は同じでいい。」
これが、世代の違う人間を一緒に動かすときの、私なりの答えです。
昔の職人と、今の若い人。
働き方も、考え方も、コミュニケーションの取り方も違います。
だからこそ、「昔はこうだった」と言い続けるだけでは、今の現場は動きません。
でも、昔の現場から学べるものはある。
それは、相手を自分のやり方に合わせることではなく、相手が何を大事にして仕事をしているのかを知ることです。
そして、こちらも「この現場で、何を目指しているのか」を伝える。
安全に、良いものを、約束通り作る。
ゴールが同じなら、そこへ向かう道が違ってもいい。
現場では、全員が同じ方法で動く必要はありません。
必要なのは、全員が同じ方向を向いていることです。
あなたの現場の共通言語は、何ですか
あなたの現場で、世代の違う人間が一緒に働いているとき、何が共通言語になっていますか。
「うちの現場のルール」「所長の方針」もいいと思います。
でも、一番強い共通言語は「この建物を、ちゃんと完成させる」というシンプルな目的かもしれません。
世代が違っても、目指す場所が同じなら、人は動きます。
やり方を統一しようとするより、目的を一致させることのほうが、所長の大切な仕事だと今は思っています。
コメントで「うちの現場の共通言語」を教えてもらえると、とても参考になります。
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🐢 建設版マーフィーの法則
「世代間のすれ違いのほとんどは、やり方の違いではなく、目的の共有不足から来ている。」
📌 noteタグ:#現場監督 #建設業 #世代間 #現場の人間関係 #チームマネジメント
