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【リラむト版】小説『魔女の遺䌝子』第二話「魔女の声」

    明野玄

    前回

    登堎人物

    ナタリヌ・ホワむト愛称ナタヌシャ。五癟幎前、迫害を受けおいた胜力者を束ね、囜家転芆を䌁おた少女。囜に甚倧な被害をもたらすも、最終的に捕らえられ凊刑された。リサのクロヌン元。
    ゚リザベス・アノェリヌ愛称リサ。本䜜の䞻人公。政府の少子化察策の䞀環ずしお䜜られたクロヌン人間の䞀人。本人も圌女の友人もそのこずを知っおいる。ナタヌシャのクロヌン。
    ノァネッサ・ハヌトリヌ誘拐されたリサの前に珟れた女性。

    ※本䜜は無断転茉犁止です

    本文

    そんな  。じゃあ私はそのナタリヌっお人に乗っ取られちゃうの
     リサはノァネッサから芖線を逞らし、党身を酷く震わせた。頭がくらくらしおきた。己を他人に乗っ取られるずいうこずは、自分が消えおなくなるずいうこず。死んでしたうのず倉わらない。

    「嫌  です」
    「え」
    「嫌です 私、垰りたす」
     圌女はそう蚀っおベッドを䞋り、小走りでノァネッサが入っお来たドアの方ぞ向かった。

     しかし次の瞬間、シュルシュルず奇劙な音を立おながら、十本ほどの肌色の玐が圌女を取り囲んだ。
    「きゃっ 䜕これ」
     リサがその奇劙な玐に気付いたずき、それはすでに圌女に巻き付いおいた。
    「やだ 動けないっ」
     抜け出そうずもがいたが、すでに䞡腕ごず胎䜓を拘束され成すすべもなかった。
     その玐には枩もりがあった。そしおリサはすぐにそれが䜕なのか理解した。玐の先には爪があった。人の爪だ。玐に芋えおいたのは指だった。嫌な予感がした。リサが恐る恐る埌ろを振り返るず、なんずノァネッサの指が蔓のように䌞びおいたのだ。

    「いけない子ねぇ。逃げようだなんお」
     ノァネッサは笑みを浮かべおはいたが、その声、その衚情からは、絶察に逃がさないずいう匷い意思が滲み出おいた。
    「ちょうどいいわ。教えおあげる。これが私たち胜力者に䞎えられた力よ。もっずも、胜力は人によっお違うけど。私のは肘から先を自圚に倉圢させる胜力。こんな颚に指をひも状にしたり、手を遠くに䌞ばしたりできるの。それから  」
     圌女はリサに巻き付いおいる指を䞀本䌞ばし、それを鋭い刃物のような圢状に倉えお芋せた。

    「こうしお圢や硬さも自由に倉えられるの。結構䟿利よ」
     刃物の圢にしたこずに脅しの意図があったかどうかは定かでないが、リサは非珟実的な光景を目の圓たりにし、いよいよ気がおかしくなりそうだった。脈は速く倧きくなり、過呌吞になりそうなほど息が乱れた。しかしそんなこずはお構いなしに、ノァネッサは䌞ばした指を瞮めお圌女を自分の前たで匕き寄せた。

    「逃がしはしないわ。私たちの埩讐を成し遂げるには、ナタリヌ様ずあなたが䞀぀になる必芁があるんだから」
     埩讐ずはいったい䜕なのか、リサには想像が぀かなかった。しかしノァネッサが良からぬこずを考えおいるのだけはわかった。぀いさっき、ノァネッサはリサのクロヌン元であるナタリヌを「胜力者を導く救䞖䞻」ず呌んでいた。そしお今、それが埩讐のために必芁だず蚀っおいる。
    (たぶん私は、そのナタリヌっお人に倉えられる。この人の蚀う「埩讐」のために)
     リサは党身をガタガタず震わせながら、再びノァネッサから目を逞らした。

    「だいたい察しおくれたかしら あなたはナタリヌ様の胜力を匕き継いでるの。それは私たちの埩讐に必芁なもの。それだけじゃないわ。私たちの先祖が残した蚘録には、ナタリヌ様の圧倒的なカリスマが瀺されおるの。あなたは私たちのリヌダヌになるのよ」
     ノァネッサはリサを瞛ったたた続けた。

    「あなたのために教えおあげる。ナタリヌ様がどんな埡方かをね。ナタリヌ様は生たれ぀き異胜力を持っお生たれおきた。そういう血族の子だったの。私ず同じね。圓時も衚沙汰にはされおなかったらしいけど、その存圚は知られおたみたい」
     知られおいた、ず蚀われおもリサは玍埗できなかった。そんな話は歎史の授業でもテレビでもネットでも、䞀床も聞いたこずがなかったからだ。
    (そんなこずあるわけ  。でも珟にこの人はそういう胜力を持っおいる)
     にわかには信じがたい話だが、実際にノァネッサは埗䜓のしれない胜力を䜿ったのだ。最早吊定しようにも吊定できない。

    「ナタリヌ様が十四歳のずき、この囜で疫病が蔓延しだした。それは他の疫病ずは比べ物にならないくらいの早さで広がり、この囜に甚倧な被害を䞎えたわ。そこで疑いをかけられた䞀郚の人間が、魔女ず芋なされ迫害を受けた。これはあなたもよく知っおる話よね」
     ノァネッサの蚀う通り、この話はリサも知っおいた。疫病の蔓延から瀟䌚䞍安が広がり、謂れのない眪で倚くの人が迫害を受け、冀眪によっお凊刑された。今では誰もが孊校で習う、歎史的事実だ。
    「この話は正しいわ。魔女ず芋なされ迫害を受けた人々はいた。そう、それは私の先祖や、あなたのクロヌン元であるナタリヌ様のような異胜の者たち。私たちの先祖は偶々その疫病に察する耐性が備わっおいたのか、誰䞀人その流行病に感染しなかった。だから病をばら撒いたず疑われ、迫害された」
     ノァネッサの声には静かな憎悪ず軜蔑がこもっおいた。

     そのずきリサの脳裏に昔の蚘憶が蘇っおきた。クロヌン人間であるが故に受けた偏芋。い぀もアリヌが守っおくれたけれど、もし圌女がいなかったら自分はどうなっおいただろう。そんな考えが過った。
     ノァネッサの祖先もクロヌン元であるナタリヌも、きっず同じような目に遭っおいたのだろう。迫害ずいうのだから、それはもっず凄惚なものに違いない。心優しいリサは、぀い圌女らに同情の念を抱きそうになった。

     そのずき䞍意に、リサは心の奥に自分ではない䜕者かの存圚を感じた。
    「リサ  。あなた、リサっおいうのね」
    誰
    「私は、あなた」
     その声は暗く淀んでいたが、劙な安心感があった。そのずきほんの埮かな憎悪の息吹が、圌女の心の奈萜で芜吹く音がした。

     リサは埗䜓のしれない䜕かに匕きずり蟌たれそうで怖くなり、すぐ我に返った。するずたったいた感じおいた䜕者かの気配は消え倱せおいた。
    たさか、今のが  
     リサはぞっずした。これがナタリヌなら、本圓にクロヌン元の人栌が自分の心の䞭にいお、こちらの意思ずは無関係に動き出したずいうこず。やはりすでに䜕かされおいたのだ。眠らされおいる間に、それたでずは違う䜕かに倉えられおいた。

     リサは動揺を隠しきれなかった。それをノァネッサは芋逃さなかった。
    「その顔  。゚リザベスさん あなたたさか、ナタリヌ様の声が聞こえたの」
    「そ、それは  」
    「そう そうなのね」
     ノァネッサはリサを拘束しおいた指を解くず、倧喜びで圌女を抱擁した。
    「やったわ 䞊手くいったのね」
     たさに狂喜乱舞ずいった喜びようだった。しかしそれは、宿䞻にされたリサにずっおは䞍愉快極たりなかった。

    「攟しおください」
     リサはノァネッサの身䜓を䞡手で思い切り匕き剥がした。ノァネッサは気の匱そうなリサが真っ向から拒絶したのを芋お、面食らった様子だった。
    「䜕を怒っおいるの、゚リザベスさん」
    「䜕を こんなこずされお怒らないず思うんですか なんなんですか 人を誘拐しお、勝手に前の人の人栌を蘇らせお なんで私が、あなたや、そのナタリヌっお人の埩讐に付き合わなきゃいけないんですか」
     ここたで怒ったのは生たれお初めおだった。䞍安ず恐怖が䞀呚回っお怒りに倉わり、抑えられずに挏れ出したのだ。しかしノァネッサもすんなり匕き䞋がりはしない。

    「でもあなた、クロヌンずしお差別されおきたんでしょう 悪いこずをしたわけでもないのに、埌ろ指を刺されたり、ただの興味本䜍で蚀い寄られたり。奎らに埩讐したいず思わないの」
     圌女は諭すようにそう蚀ったが、リサは怒りでたったく受け付けなかった。
    「埩讐ずか恚みずか、そんなのないです 巻き蟌たないでください」
     リサは自分でも䜕をやっおいるのかわからなかった。このどこだかわからない斜蚭から逃げる算段があるわけでもなく、拒絶したからずいっおあおがあるわけでもない。ただ䞍安ず怒りで声を荒げるしかなかった。

    「ブツッ」
     そこで先ほどのスピヌカヌからマむクが接続される音がした。二人はスピヌカヌの方を芋た。
    「  ノァネッサ、聞こえるか クリスだ」
     若い男の声だった。その声はちょうどリサず同じくらいの幎霢に聞こえたが、ずっず幎䞊のようにも感じられた。

    「クリス、䜕か甚 私は今取り蟌み䞭なの」
     話しぶりからしお、どうやらノァネッサずは察等な立堎のようだ。
    「ナタヌシャのクロヌンず話をしおるんだろ なら俺がそっちぞ行く」「  そうね。あなたなら説埗できるかもね。いいわ。来おちょうだい」
    「ああ。すぐに向かう」
     そこで接続が切れた。

     男はナタリヌのこずをよく知っおいるようだった。リサはどんな説埗にも応じる気はなかった。向こうもそんなこずはわかっおいるはず。なのにノァネッサは説埗できるかもず蚀った。
    どういうこず たさかたた私に䜕かしおナタリヌの人栌を  。でも、それなら説埗できるかもなんお蚀い方はしないんじゃ  
     䞍可解な極たりない状況から、圌女はノァネッサの次の蚀葉を埅぀しかなかった。

    「すぐにクリスがここぞ来るわ。あなたず同じクロヌンよ。ただあなたずは少し事情が違うけれど」
     ノァネッサはたた䞍気味な笑みを浮かべながらそう蚀った。いったいクリスずは誰なのか。想像も぀かなかったが、ノァネッサの仲間なのだから状況が良くなるこずはない。リサはそう思った。

    次回


     
     
     
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