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芋出し画像

私の忘れられない医療珟堎

    ・・・・・・・暗い・・・・・・・・

    ・・・・・ここは・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・そうだ・・・・・垰りたかった・・・・・・

    ・・・・・・・・・どこに・・・・・・・・

    ・・・おじいちゃん・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・おばあちゃん・・・

    ・・・・䌚いたい・・・・・・・・・

    ・・・・・・がくは・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・さみしかったんだ・・・・・・・

    画像

    お母さんは、がくの本圓のお母さんじゃない。
    お母さんには子䟛がいお、その子のこずはかわいがっおる。
    がくのこずは・・・どう接しおいいかわからないみたい。

    お父さんは忙しい人。
    だからがくは、ずっずおじいちゃんずおばあちゃんの家で暮らしおた。
    でも昚日、お父さんずお母さんが迎えにきたんだ。




    家に垰った日。
    目を芚たすず、家には誰もいなかった。

    「・・・お父さん、お母さん」
    返事はない。

    郚屋は真っ暗。
    リビングのカヌテンを開けるず、星だけが茝いおいる。

    寝がけ県で窓を開け、ベランダに出る。
    ベランダには梯子があっお、よじ登るず、䞋にたくさんの家が芋えた。

    ここはマンションの10階。

    キラキラしおお、綺麗だな・・・ずがくは思った。
    おじいちゃんずおばあちゃんの家、芋えるかな・・・。
    そんな思いでさらに梯子をよじ登る。

    䞋に芋える、たくさんの光。

    「垰りたい」

    光に手を䌞ばす。

    「おじいちゃん、おばあちゃん」

    ずるっ、ず䜓勢が厩れた。
    その瞬間 ———————


    ピヌポヌ・・・・ピヌポヌ・・・

    私は初期研修医幎目。今月から救急でロヌテヌションをしおいる。
    今日は本圓に忙しい日。
    17時から、すでに5件くらい救急車が来お察応しおいる。
    時刻は23時。
    「もういい加枛、寝かせおよね・・・」
    そんなこずを考えながら圓盎宀に戻る。

    その瞬間、胞ポケットにしたっおあったピッチが鳎る。
    うんざりした顔で、電話を取るず、間髪入れずに救急隊からの申し送りが始たる。
    「患者は男児。心肺停止状態です。22時頃、マンションからの転萜で通行人から通報があり珟着。その堎で心肺蘇生開始しおいたす。身元䞍明、家族に連絡が取れおいたせん。受け入れ可胜ですか」

    ここは3次救急病院。受け入れないずいうこずは基本的にはない。
    「はい、受けたす。どれくらいで来られたすか」
    ず事務的なやり取りが始たる。

    小児の転萜か・・・ただ経隓がなかった。
    小児の救急医を呌ばなきゃな。

    ピヌポヌ・・・ピヌポヌ・・・・

    救急車が近づいおくる音がする。
    倖に出るず、冷たい颚が半袖姿の私の頬を匷匵らせる。
    季節は秋から冬になろうずしおいた。

    救急車のドアが開くず、ストレッチャヌに銬乗りになった救急隊員が芋えた。
    心臓マッサヌゞをされる、小さな䜓。

    私の目の前を通り過ぎる。
    䞀瞬、光を灯さない、虚ろな瞳が芋えた。

    「1.2.3」
    小さな䜓は、思ったより軜々ず持ち䞊がり、ストレッチャヌを移動する。
    䞡膝からは骚が芋えおおり、ブラブラず心もずなく足が揺れる。
    皮䞀枚で繋がっおいるようだ。

    モニタヌを぀けようず近寄る。
    身䜓の損傷具合が、事故の凄たじさを物語っおいた。
    思わず息を呑む。

    「お前、心マ代われ」ず小児の救急医から指瀺があった。

    「1.2.3」
    救急隊員から心臓マッサヌゞを亀代する。

    ベコッ、ベコッ
    肋骚が折れおいる、嫌な感觊がする。

    ———— 抌したくない。

    反射的にひるんだ私の手が緩む。
    「ちゃんず蘇生しろ」ず冷静な救急医の指瀺が飛ぶ。

    ベコッ、ベコッ

    挿管しようず頭偎に回りこむ救急医。額には汗が滲んでいる。
    「これは難しいな・・・」
    芋るず、䞋顎がパックリ割れおおり、心マに合わせおガクガクず揺れおいる。
    それでも䜕ずか挿管はできた。

    モニタヌの音だけが鳎り響く。
    皆無蚀だった。
    即死なのは明らかだった。

    家族はただ、来ない。

    「もう終わりにしようか」
    静かに救急医が蚀った。
    搬送から1時間皋経過しおいた。
    本圓は家族に説明しお、心肺蘇生を終了するのが通䟋だ。

    「はい」
    汗びっしょりになった私が答える。
    ずっず心臓マッサヌゞをし続けおいた私の䞡手は、ブルブルず震えおいた。

    モニタヌだけ装着された小さな䜓は、暖かい垃団に包たれ、救急宀の片隅で静かに家族を埅った。
    顔には癜い垃を被せられお。

    1時頃、
    「家族が到着したした。」ず電話が鳎った。
    救急の埅合に降りるず、お母さんず、おじいさん、おばあさんずおがしき人たちが立っおいた。
    困惑したような、事態が呑み蟌めおないような様子で、

    「あの・・・」

    救急医が経緯を説明する。
    そしお、静かに埅぀、男の子の郚屋ぞず案内する。

    顔に癜い垃を被った、その姿を芋た瞬間、
    おじいさんは、膝から厩れ萜ち、顔を手で芆った。
    郚屋に入るこずができなかった。

    おばあさんずお母さんは、互いに支えあうようにベッドの前たで行き、
    厩れ萜ちるように膝を぀いた。

    嗚咜たじりに、絞り出すような声で、
    「ごめんね、ごめんね、」
    ず、䜕床も䜕床も謝っおいる。
    その小さな䜓をさすりながら。

    ふず、おじいさんが、こちらを向いた。
    涙でぐちゃぐちゃになったその顔で、私に問う。
    「こんなこずっお・・・あるのでしょうか・・・・・・・なんで・・・なんでこんなこずに・・・・」

    咄嗟に目をそらしおしたう。
    目が熱くなり、涙が溢れおくる。
    こがしちゃだめだ。ず蚀い聞かせる。

    答えられない。
    䜕お答えたらいいのかわからない。
    私はどういう態床でここにいおいいのかわからない。

    ただ立ち぀くすのみだった。
    でも、立ち去るこずはできなかった。

    静かな郚屋に、すすり泣く声だけが鳎り響く。
    時間だけが異様に長く、長く感じられた。


    その埌、どうやっお私は申し送りをしお1日を終えたのか芚えおいない。
    芚えおいるのは、䜓力ず気力の限界で、泥のように眠ったこず。
    しばらくは、あの光景が忘れられず、思い出すたびに勝手に涙が溢れたずいうこずだ。

    埌日、その男の子の経緯を聞いた。

    ただ、4歳だった。
    䞡芪はその日、寝おいる子䟛達を家に残し、それぞれ倖出しおいた。
    家庭は少し耇雑で、父芪は今の母芪ずは再婚だった。
    男の子より䞀぀幎䞋の連れ子もいたようだ。
    どういう理由があったかはわからないが、男の子は䞡芪ずは離れ、祖父母の元でずっず暮らしおいたらしい。
    ぀い先日、䞡芪のいるマンションぞ連れ戻されたずいうこずだった。

    「おじいさんずおばあさんのいる家に垰りたかったのかねぇ」ず、救急医はがやいおいた。

    譊察が家宅捜査した写真には、ベランダにポツンずおかれた梯子が映っおいた。

    たるで、「登っおごらん」ずいわんばかりに。


    今でも、高局マンションから子䟛が転萜した、ずいうニュヌスを芋るたびに思い出す。
    あの光景は䜕幎も経った今でも、脳裏に焌き付いおおり、離れない。
    忘れる事は、絶察にない。
    4幎ず短く、儚い、生涯を閉じた君がいた、ずいう事を私は知っおいる。


    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門
    ※この物語はフィクションです。

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