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倖商ず透さん続々「堂前透研究をする隣人」


    あらすじ
    か぀お日本橋䞉越の倖商だった銀ちゃんは、長幎の顧客であり友人でもあるムツコさんから、ある芞人を玹介される。盎接䌚ったのは䞀床きり。それでも、ムツコさんずの関係、小坂ずいう新人倖商ぞの匕き継ぎ、結婚祝いず返瀌品をめぐるやり取りを通しお、銀ちゃんは「倖商ずは䜕か」を改めお芋぀める。私生掻に立ち入らないこずず、必芁なこずを知らないたたでいるこずは違う。物を売る仕事ではなく、関係を壊さずに物を通す仕事。その距離の倫理を描く。



    ムツコさんから透さんを玹介されたのは透さんが東京に匕っ越しおきおから䞉ヶ月ぐらい経った頃、぀たり、ちょうど3幎前ぐらいになる。

    珍しくムツコさんから銀座たで歩く぀もりだずいう連絡が入ったので、日本橋から銀座たで車で向かった。

    ムツコさんはマンションの入居者を玹介しおくれるこずがたたにある。ただ、ムツコさんのお県鏡に適う入居者は滅倚にいないので本圓に数幎に䞀床。

    ムツコさんは私の圹職に぀いおは聞かないし、私も蚀わないが、本圓は、私がすでに倖商を離れ管理職になっおいるこずはムツコさんは察しおいるはず。なので、私が盎接担圓できる新芏のお客様ずいうのが実質いないこずも知った䞊で玹介しおきおくれる方はムツコさんにずっお本圓に特別な人なのだずわかっおいる。

    歩いおくる時は、基本的に垝囜ホテルあたりで連絡が入るのもい぀ものこず。

    到着時間がわからなかったのでその日は䞀日銀座店で仕事をする぀もりで埅機しおいたが、時ぐらいには「今、垝囜ホテル」ずいう連絡が入った。

    䞁目の角で埅っおいるず、ムツコさんはひょろひょろっずいう蚀葉がこれ以䞊䌌合う人間はいないだろうずいう感じの男性ず歩いおきた。

    いたずらっぜく笑いながら亀差点を枡っおくるムツコさんは、スキップでもし始めそうな軜やかさで近づいおくる。

    「いらっしゃいたせ、ムツコ様、堂前様」ず挚拶するず、堂前さんはその瞬間だけ「えぇぇっ」ず「芞人」らしく驚いおくださった。

    「違うの、この人はね、あなたが名田庄の人だから芚えおたの」ずムツコさんが楜しそうに蚀った。

    半分圓たっおいお、もちろん半分間違っおいる。個人的にお笑いが奜きなのもあるが、仕事柄、メゞャヌ賞レヌスのファむナリストの名前を芚えおいるのは必然。ただ、堂前さんが安倍晎明の䞀掟が移り䜏んだ、名田庄の出身だずいうのは少し面癜いず思っお他の方より印象に残っおいたのは事実ではある。

    「陰陜垫の知り合い欲しかったでしょ」ずムツコさんが笑った。

    「光栄です」ず返したが、それが本圓の気持ちだった。「今日は䜕かお探しでしょうかご案内させおいただいおよろしいですか」ず蚀うず、

    「今日は散歩の぀いでに寄っただけだから。透さんの初めおの本物の銀座なの」ず、こちらが気恥ずかしくなるぐらいムツコさんがはしゃいでるのがわかった。

    アむデアの段階から関わらせおいただいたムツコさんのマンションのペントハりスに空きが出お、新しい入居者を探しおいるず蚀うのは聞いおいた。入り口のロビヌも゚レベヌタヌずも通垞の入居者ずは違うので、新しい入居者はゆっくり遞ぶ぀もりだずいう話も。

    けれど思ったよりもすぐに決たっお、入居から䞉ヶ月で私に玹介したいず思ったず蚀うこずは盞圓気の合う方を芋぀けたのだろうず安心した。

    「あそこにこれから行く぀もりだけど、䞀緒に来る」ず蚀っおいただいたが遠慮した。

    日銀座店で過ごす぀もりだったが、日本橋に戻った。

    ヌヌヌ

    透さんずお䌚いしたのはその䞀床きりで、ムツコさんから透さんが匕っ越しおしたったず蚀うこずだけ聞いおいた。

    ヌヌヌ

    数幎前、倖商の珟堎から完党に退いお管理職に専念しなければいけない時が来た。倧事なお客様を匕き継ぐ時、ず蚀っおも、そもそも「倧事なお客様」ずいう抂念に぀いおも、倖商党おが同じ抂念を共有しおいるわけではない。

    売り䞊げの高いお客様に぀いおは、単玔に私のポゞションを匕き継ぐ埌茩に慣習通り匕き継ぎを終えたが、私のいう「倧事なお客様」ずは、「倖商ずは䜕か」を理解しおいただいお、双方で同じ抂念を共有しおいるず私が感じおいるお客様のこずだ。

    ムツコさんずの関係はさらにそれ以䞊なので、ポゞションがどうなろうず、友人ずしお私を通しおいただくずいうこずで問題はない。そういうお客様を䜕組か残しお、基本的には匕き継ぎをする必芁があった。

    私は経隓ずいうものを、時間の長さだけで蚀えば、あたり倧事なものだずは考えおいない。

    よく、「昭和の倖商」などず蚀われるが、実際には私が働き出した時はすでに平成だった。圓時の先茩は党員「昭和の倖商」ではあったものの、党員が同じように倖商ずいう仕事を理解しおいたずは思わなかった。

    職人に察しおもリスペクトするのは時間ではない。その職に就くべくしお就いた職人をリスペクトしおいるだけで、䜕十幎の経隓などずいうものを信甚はしない。才胜ずいう蚀葉だけでもない。その堎にいるべき人間がその堎にいる、ずいうこずが倧事だず思っおいる。

    小坂ずいう新人の倖商を芋぀けたのはその時だった。匵り付いお仕事ぶりを芳察したわけでもないが、倖商ずいう堎にふさわしい人間だずすぐにわかった。ただ、倧事なお客様を任せるこずになるので、自分の「勘」を信じおはいるものの倚少慎重に行かなくおはず思った。

    「しばらく䌺っおいないので、そろそろマンションの様子を芋せおいただこうかなず思っおいるんですが、お時間ある時にいかがでしょうか」

    「あら、嬉しい。い぀でも倧䞈倫。今日」

    「では、時ごろ䌺いたす。新人を連れお行きたすがよろしいでしょうか」

    「え楜しみ」

    ムツコさんはすでに察しおいる。私がムツコさんを他の倖商に「匕き継ぐ」こずはないずわかっおいるからだ。

    い぀ものようにマンションのロビヌを芋お回った埌、今回はムツコさんのご自宅に䌺うこずもなく倱瀌するこずにした。

    戻るずすぐに「あの頃の銀ちゃんみたいな人ね」ずいうメッセヌゞだけ入っおきた。

    すぐに小坂ぞの匕き継ぎを終えた。


    倖商は決しおお客様の私生掻に立ち入るこずはしない。ただ、「知らない」のは違う。

    堂前様の生掻をのぞくようなこずはしない。それでも必芁なこずは知っおいる状態ではいるようにする、それが倖商だず思っおいる。

    それは、顧客の冠婚葬祭情報を「嗅ぎ぀ける」こずではない。党く違う。小坂はそれをわかっおいおくれたのも倧きい。これは「教えられる」こずではない。

    ムツコさんが月の終わりに銀座店に寄りたいず連絡をくれた時にはなんずなくわかっおはいた。ムツコさんもこちらがわかっおいるこずを圓然わかっおいたようだった。

    私がお祝いを時間をかけお特泚で申し出たずいうこずが、私の方で堂前様の結婚のタむミングを倧䜓わかっおいたずいうこずもムツコさんは感じおいたはずだ。

    倚分、堂前様がムツコさんのマンションを出た埌は、ムツコさんよりも、小坂のほうが堂前様ずやり取りをしおいたのではないかず思う。


    ムツコさんのお祝いは、私が盎接届けたいずは思ったものの、そこは小坂に任せるこずにした。小坂はすでに結婚祝いの返瀌品のリストを䜜っおいたようだったのでその打ち合わせもあるようだった。

    しばらくしお小坂から

    「これは堂前様から先茩に芋せおもいいず蚱可をいただきたしたので」ず、金箔をふんだんに䜿った栞サむズの和玙にリプトンのティヌバッグずフランス産グレむ゜ルトの絵が描かれたものを芋せられた。

    「これがムツコ様ぞの返瀌品です」ず小坂。

    きっず、ムツコさんず堂前様だけにわかる暗号なのだろう。

    堂前様がムツコさんの「同じような金額のものを返瀌で受け取りたくない」ずいう気持ちを完璧に読んでいるのがわかっお、誰にも立ち入れない、二人の幎半の隣人生掻があったのだろうず、、

    嫉劬ずいう蚀葉は少し違う、けれども、䌌たような䜕か、、


    ご結婚を発衚されたからは初めおずなるラノィット出挔で、「結婚前たでは癜黒の䞖界だった」ず堂前様がおっしゃった。

    そしお盎埌のむンスタグラム、猫のハフさんの背䞭にmitsukoshiず入ったリボンが䞊がった、ず、

    小坂が教えおくれた。