
「冷蔵庫の色が変わった日。食を共にするということ」
彼のために始めた献立作りが、私の未来を変えた
仕事帰りのスーパーで、空腹と疲労を抱えながら店内を歩く。
何を作ろう。
何を買おう。
カゴに商品を入れては戻し、気づけば時間だけが過ぎていく。レジで合計金額を見るたびに、「またこんなに使っちゃったな」と少しだけため息が出る。
実家暮らしの頃の私は、料理をすることはあっても、それはたまに気が向いた時だけだった。毎日の献立を考え、買い物をし、食卓を整えることがどれほど大変なのか、想像したこともなかった。
そんな私が、同棲をきっかけにほぼ毎日料理を作るようになった。
当時の彼は、体調を崩しやすかった。
熱を出すこともあれば、気持ちが落ち込んでしまうこともあった。
私は医者でも栄養士でもない。
それでも、「私にできることがあるならしたい」と思った。
そこから、食事との向き合い方が少しずつ変わっていった。
以前の私は、好きなものを食べてお腹が満たされればそれで十分だった。
けれど二人で暮らすようになってからは違う。
限られた生活費の中で、どうすれば健康的な食事を続けられるだろう。
どうすれば無理なく続けられるだろう。

写真:筆者
そんなことを考えながら、少しずつ栄養について学び始めた。
その頃、本で読んだ言葉が今でも心に残っている。
「冷蔵庫の中は、その人の腸の中と似ている」
その言葉を読んだ日、私は冷蔵庫を開けた。
そこには茶色い食材が多く並んでいた。
それから私は、買い物をするときに少しだけ意識を変えた。
赤いトマト。
緑のブロッコリー。
オレンジ色のにんじん。
色とりどりの野菜が冷蔵庫に並ぶように心がけた。
冷蔵庫を開けた時に見える景色は、そのまま私たちの体を作るものだと思ったからだ。
今、私は毎週末に一週間分の献立を考えている。
けれど、最初に考えるのは食材ではない。
「最近どう?」
そんな何気ない会話から始まる。
最近よく眠れているか。
胃腸の調子はどうか。
仕事で疲れていないか。
頭痛はないか。
日々の会話の中から、彼の体や心の様子を少しずつ集めていく。
そして、その週の献立を考える。

写真:筆者
もちろん、食事だけで体調が変わるわけではない。
けれど、相手の体調を気にかけながら献立を考える時間そのものが、私にとっては思いやりだ。
気づけば、この一年以上、彼はほとんど体調を崩していない。
私自身も以前より健康について考えるようになった。
そして何より変わったのは、食事に対する考え方だった。

写真:筆者
食事はお腹を満たすためだけのものではない。
誰かを思いやる時間であり、暮らしを整える時間であり、家族を支える時間なのだと思うようになった。
同時に、実家で毎日食事を作ってくれていた母の存在の大きさにも気づいた。
当たり前のように並んでいた食卓には、栄養だけではなく、家族を思う気持ちが詰まっていたのだ。
そして、この経験は私自身の未来も変えた。
家庭によって悩みは違う。
忙しい人もいれば、疲れやすい人もいる。
子育て中の家庭もあれば、共働きの夫婦もいる。
だからこそ、一人ひとりの暮らしに寄り添った献立があってもいいのではないかと思うようになった。
パーソナルジムがその人に合った運動を提案するように、その家庭に合った食卓を提案できる人になりたい。
今の私の夢だ。
彼のために始めた献立作り。
それはいつの間にか、私自身の生き方や未来を見つけるきっかけになっていた。
これからも私は、料理を通してたくさんの人の笑顔を増やしていきたい。
毎日の食卓が、誰かの健康を支え、心を温める場所になるように。
そんな思いを込めて、これからも料理と向き合っていこうと思う。

写真:筆者