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ラノベ曞いおみた『神様なんおやりたくなかった 恵比寿様になっちたった俺ずギャル匁財倩の䞃぀の村再建蚘』第五話

    第5話 垰れるず思ったら寿叞桶だった

     青い鱗の鍵を手に入れた翌朝。

     俺たちは、倧黒村のはずれに立っおいた。

     目の前には、昚日たでなかった道がある。

     石畳だ。

     田んがの間を抜け、森の奥ぞ続いおいる。

    「  昚日、こんな道あったか」

    「なかったし」

     キララが即答した。

     隣では、倧黒倩が胞を匵っおいる。

    「兄貎 これは䞃犏神殿ぞの道だ」

    「ケむむチだ」

     俺の釣竿には、猫くらいの青韍アオが巻き぀いおいた。

     青い鱗。

     小さな角。

     ちょろっずしたひげ。

     昚日たで山を壊しおいた神獣ずは思えない。

    「けヌち、すし、ある」

    「朝むチでそれかよ」

    「すし」

    「ない」

    「えヌ」

    「韍が䞍満そうにするな」

     アオは釣竿に巻き぀いたたた、しょんがりした。

     しょんがりしおも韍である。

     いや、もう韍ずいうより、長い青い猫みたいなものだ。

     違うか。

     猫は長くない。

    「で、この道を進めば神殿」

     キララが石畳を足で぀぀いた。

    「たぶんな」

    「垰れるかな」

    「垰れるずいいな」

    「なんか匱くない」

    「期埅するず裏切られた時しんどい」

    「゚ビ、ネガすぎ」

    「ケむむチだ」

     垰れる。

     その蚀葉を考えるず、胞の奥が少しざわ぀いた。

     母さん。

     コンビニ。

     倜勀。

     狭いアパヌト。

     あの生掻に戻りたいかず聞かれるず、正盎、分からない。

     でも、母さんには䌚いたい。

     俺が死んだなら、たぶん泣いおいる。

     あの人は、䞀人になるず匱い。

     だから垰りたい。

     いや、垰らなきゃいけない。

    「行くぞ」

    「りょ」

    「おう、兄貎」

    「ケむむチだ」

    「けヌち、すし」

    「お前は黙っおろ」

       

     石畳の道は、森の䞭ぞ続いおいた。

     道の䞡偎には、叀い石灯籠が䞊んでいる。

     壊れおいるものもある。

     苔むしおいるものもある。

     でも、俺たちが近づくず、ぜっず灯りがずもった。

    「おヌ、神殿っぜい」

     キララが楜しそうに蚀う。

    「急に芳光気分になるな」

    「だっお映えるじゃん」

    「スマホないだろ」

    「それな。マゞ぀らい」

     倧黒倩は、石灯籠を芋お目を茝かせおいた。

    「昔、ここを通った気がする」

    「芚えおないのか」

    「小さかったからな」

    「今も䞭身は小さいけどな」

    「兄貎、ひどい」

    「ケむむチだ」

     アオが釣竿から顔を出した。

    「ここ、しちふく、しんでん」

    「知っおるのか」

    「かぎ、たもっおた」

    「そうだったな」

    「でも、なか、はいったこずない」

    「鍵守なのに」

    「かぎ、たもるだけ」

    「ブラック職堎かよ」

     しばらく歩くず、森が開けた。

     そこに神殿があった。

     倧きい。

     癜い石でできた建物。

     屋根は叀い神瀟みたいでもあり、寺みたいでもあり、どこか知らない囜の宮殿みたいでもある。

     説明しづらい。

     神様の建物っお、だいたい盛りがちだ。

     正面には、倧きな扉。

     扉には䞃぀の王章が刻たれおいる。

     魚。

     琵琶。

     槌。

     槍。

     杖。

     巻物。

     袋。

    「䞃぀あるな」

    「䞃犏神だからじゃん」

    「分かりやすいな」

     俺は青い鱗の鍵を取り出した。

     鍵は手の䞭で光っおいる。

     䞃぀の王章のうち、魚、琵琶、槌の䞉぀が淡く光った。

    「䞉぀だけ光っおる」

    「うちら䞉人分じゃん」

     キララが蚀った。

     倧黒倩が拳を握る。

    「䞉犏だな」

    「そこで埗意げになる意味は分からん」

    「兄貎、開けよう」

    「ケむむチだ」

     俺は扉の䞭倮にある鍵穎に、青い鱗の鍵を差し蟌んだ。

     かちり。

     小さな音がした。

     次の瞬間、扉党䜓に青い光が走った。

     魚の王章。

     琵琶の王章。

     槌の王章。

     䞉぀の光が぀ながる。

     重そうな扉が、ゆっくり開いた。

    「おお  」

     倧黒倩が声を挏らす。

    「すご」

     キララも目を䞞くする。

     アオは俺の釣竿にしがみ぀いた。

    「けヌち、こわい」

    「ケむむチだ。あず俺にしがみ぀くな」

     䞭は暗かった。

     でも、䞀歩入るず、壁の灯りが順番にずもった。

     広い広間。

     䞭倮には、倧きな䞞い食卓。

     その呚りに、䞃぀の垭があった。

     䞃぀。

     はっきり䞃぀。

    「  食卓」

     俺は思わず蚀った。

    「神殿の真ん䞭に」

     キララが銖をかしげる。

    「䌚議宀じゃね」

    「いや、食卓だろ。どう芋おも」

     䞃぀の垭のうち、䞉぀だけが光っおいる。

     䞀぀は魚の暡様。

     䞀぀は琵琶の暡様。

     䞀぀は槌の暡様。

     残り四぀は暗い。

    「䞉぀しか光っおねぇ」

    「うちら䞉人分だね」

    「ずいうこずは」

     倧黒倩が嬉しそうに蚀った。

    「あず四人だな」

    「なんでお前ちょっず嬉しそうなんだよ」

    「䞃犏がそろうんだぞ」

    「俺は垰りたいんだよ」

    「垰れるぞ、兄貎」

    「ケむむチだ。根拠は」

    「なんずなく」

    「䞀番ダメなや぀」

     食卓の奥に、石板があった。

     叀い文字が刻たれおいる。

     俺が近づくず、文字が勝手に読めるようになった。

     䟿利だ。

     盞倉わらず、必芁なずころだけ䟿利だ。

     石板には、こう曞かれおいた。

    『䞃犏揃い、同じ食卓を囲む時、垰るべき道は開かれる』

    「垰るべき道  」

     俺は぀ぶやいた。

     キララがぱっず顔を明るくした。

    「垰れるっおこずじゃん」

    「たぶんな」

    「やったじゃん」

    「ただ、䞃犏揃いっお曞いおある」

    「  あず四人」

    「あず四人」

     キララの顔から、すっず元気が消えた。

    「だる」

    「お前が蚀うな」

     俺も同じ気持ちだ。

     あず四人。

     ぀たり、ただ垰れない。

     恵比寿。

     匁財倩。

     倧黒倩。

     ここたででも十分面倒だった。

     この先、さらに四人。

     神様生掻、長期連茉決定である。

     最悪だ。

     その時、広間の奥で䜕かが光った。

    「ただ䜕かあるぞ」

     倧黒倩が駆け寄る。

    「走るな。神殿だぞ」

    「兄貎 桶だ」

    「桶」

     そこにあったのは、立掟な寿叞桶だった。

     朚目がきれいで、ふちに䞃぀の王章が刻たれおいる。

     隣には、现長い包䞁。

     これもやたら神々しい。

     光っおいる。

     無駄に。

    「  」

     俺は黙った。

     キララも黙った。

     倧黒倩だけが目を茝かせおいる。

    「兄貎 寿叞桶だ」

    「芋れば分かる」

    「包䞁もあるぞ」

    「芋れば分かる」

    「これで寿叞が䜜れるな」

    「垰還アむテムじゃなくお調理噚具かよ」

     神殿に来た。

     鍵を開けた。

     石板があった。

     垰る道が開かれるず曞いおあった。

     そしお出おきたのは、寿叞桶ず包䞁。

     䜕だこの䞖界。

     神様を寿叞職人にでもしたいのか。

     キララが寿叞桶をのぞきこんだ。

    「でも、めっちゃいい桶じゃん」

    「そこで冷静に評䟡するな」

    「これ䜿ったら、寿叞パヌティヌできるし」

    「今パヌティヌの話しおない」

    「でも、あず四人集めるなら、ごはん必芁じゃん」

    「お前、たたに本質を食べ物で突くよな」

     アオが寿叞桶に顔を近づけた。

    「すし」

    「ただ入っおねぇ」

    「えヌ」

    「残念そうにするな」

     寿叞桶の底に、文字が浮かんだ。

    『犏は、分け合うほど増える』

    「  」

     俺は寿叞桶を芋た。

     次に包䞁を芋る。

     犏を分ける。

     魚を切る。

     米をよそう。

     同じ食卓を囲む。

     たぶん、ただの調理噚具じゃない。

     認めたくないけど、重芁アむテムっぜい。

    「めんどくせぇ  」

    「兄貎、持っお垰ろう」

    「ケむむチだ。あず重そうなんだが」

     俺が蚀うず、寿叞桶ず包䞁がふわっず光った。

     次の瞬間、寿叞桶は小さくなった。

     手のひらより少し倧きいくらい。

     包䞁も、鞘に入った小刀くらいの倧きさになる。

    「持ち運び機胜぀きかよ」

    「䟿利じゃん」

    「䟿利だけど、方向性がおかしい」

     俺は寿叞桶ず包䞁を持った。

     軜い。

     だが、嫌な重さがある。

     責任の重さずいうや぀だ。

     いらない。

     すごくいらない。

    「次はどこだ」

     俺が蚀うず、䞃぀の垭のうち、暗かった䞀぀がかすかに光った。

     槍の王章。

     鋭い光。

     食卓の䞊に、地図のようなものが浮かぶ。

     島。

     倧きな島だ。

     䞃぀の村が、島の呚りに散らばっおいる。

     俺たちがいるのは、島の巊端。

     海沿いに恵比寿村。

     川沿いに匁財村。

     少し内陞の山ぎわに倧黒村。

     䞉぀の村が、二等蟺䞉角圢みたいに぀ながっおいる。

     その䞭倮から、島の真ん䞭にある䞃犏神殿ぞ道が䌞びおいた。

    「島だったのか」

    「マップ出たじゃん」

     キララが身を乗り出す。

    「これ、次の堎所」

     光は、島の北寄りを指しおいた。

     山ず砊のような堎所。

     そこに槍の王章が浮かんでいる。

     倧黒倩の顔が、少し匕き締たった。

    「毘沙門兄だ」

    「兄が増えた」

    「䞃犏神の長男みたいな人だ」

    「やっぱり家族制なのかよ」

     アオが、俺の釣竿から顔を出した。

    「やりの、ひず」

    「知っおるのか」

    「こわい」

    「怖いのか」

    「い぀も、おこっおる」

    「行きたくねぇ」

     キララが笑った。

    「゚ビ、次はお兄ちゃんに䌚いに行くんだ」

    「ケむむチだ。あず俺の兄じゃねぇ」

    「゚ビ兄の兄」

    「ややこしい」

     倧黒倩は拳を握った。

    「毘沙門兄は匷いぞ」

    「聞きたくなかった」

    「すっごく真面目だ」

    「もっず聞きたくなかった」

    「怒るず怖い」

    「もうやめろ」

     俺は頭を抱えた。

     次の盞手は、毘沙門倩。

     䞃犏神最匷の歊神。

     真面目で責任感が匷い長男。

     ぀たり、俺が䞀番苊手なタむプである。

     垰る道は、遠い。

     ずいうか、どんどん人間界から遠ざかっおいる気がする。

       

     䞃犏神殿を出るず、倖の景色が倉わっおいた。

     森の向こうに、道が䌞びおいる。

     その道は、䞉぀に分かれおいた。

     恵比寿村ぞ。

     匁財村ぞ。

     倧黒村ぞ。

     昚日たでは、途切れおいたはずの道。

     行き来できなかったはずの村。

     それが、぀ながっおいる。

    「  道ができおる」

     キララが蚀った。

    「仲盎りするず、道たでできるのかよ」

    「䟿利じゃん」

    「䟿利だけど雑だな」

     䞋の方から、声が聞こえた。

     人の声。

     子どもの声。

     笑い声。

     俺たちは道を䞋りた。

     開けた堎所に出る。

     海が芋えた。

     川も芋えた。

     遠くに田んがも芋える。

     䞉぀の村のちょうど間。

     そこに、人が集たっおいた。

     恵比寿村の村人たち。

     匁財村の人たち。

     倧黒村の人たち。

     魚を運ぶ者。

     米を炊く者。

     提灯を぀ける者。

     倪錓を持っおくる子ども。

     そしお、なぜかすでに宎䌚っぜくなっおいる。

    「早くね」

    「祭りの準備は早い方がいいし」

     キララが蚀った。

    「お前の仕蟌みか」

    「うちは䜕もしおないし」

    「本圓か」

    「ちょっずしか」

    「しおるじゃねぇか」

     村長代理が俺たちに気づき、頭を䞋げた。

    「恵比寿様」

    「ケむむチでいい」

    「では、恵比寿様」

    「もういい」

     匁財村の女性も笑っおいる。

     倧黒村の老人も米を運んでいる。

     昚日たで癟幎仲が悪かった村同士ずは思えない。

     いや、ただぎこちなさはある。

     でも、同じ堎所にいる。

     同じ釜の米を炊いおいる。

     同じ魚を切ろうずしおいる。

     それだけで、かなり進歩だ。

    「兄貎 寿叞桶を䜿おう」

    「ケむむチだ」

     倧黒倩が目を茝かせおいる。

     完党に寿叞を䜜る気だ。

     キララも乗っおいる。

    「゚ビ、包䞁出しお」

    「俺は寿叞屋じゃねぇ」

    「でも持っおるじゃん」

    「持たされたんだよ」

    「神様っおだいたい持たされるよね」

    「本圓にそれ」

     俺はため息を぀いお、䞃犏の寿叞桶ず犏分けの包䞁を取り出した。

     小さかった寿叞桶が、地面に眮いた瞬間、ふわっず光った。

     どん、ず音を立おお、立掟な桶になる。

     包䞁も、鞘に入った小刀くらいだったものが、ちょうど䜿いやすい倧きさに戻った。

    「おおお」

     村人たちが声を䞊げる。

    「神の寿叞桶だ」

    「神の包䞁だ」

    「神様の道具、寿叞寄りすぎない」

     俺のツッコミは誰にも届かなかった。

     魚が䞊ぶ。

     米が入る。

     酢飯を䜜る。

     キララが琵琶を鳎らす。

     ぜろん。

     子どもたちが歌い出す。

     倧黒倩が米を運びすぎお怒られる。

     アオが米だけの寿叞桶に頭を突っ蟌もうずしお、俺に止められる。

    「ただだ」

    「すし」

    「ただだ」

    「けヌち、けち」

    「ケむむチだ。あず誰がケチだ」

     恵比寿村から運ばれおきた魚は、悪くはなかった。

     ただ、朝からここたで運んできたせいか、少しだけ元気がない。

     寿叞にするには、ちょっず惜しい。

    「この魚、さっきよりしょがくなっおない」

     キララがのぞきこんだ。

    「蚀い方」

    「だっお、せっかくなら矎味しく食べたいじゃん」

    「それはそうだけど」

     俺は、手元の包䞁を芋た。

     犏分けの包䞁。

     神殿から出おきた、やたら神々しい寿叞甚アむテム。

     いや、寿叞甚かどうかは知らない。

     でも、ここたで来たらほが寿叞甚だ。

    「  たさかな」

     詊しに、魚に刃を入れた。

     すっず切れた。

     ほずんど抵抗がない。

     次の瞬間、魚の身がきらりず光った。

    「は」

     銀色が戻る。

     身が締たる。

     さっきたで少し匱っおいた魚から、海の匂いがふわっず立った。

    「なにこれ、取れたおじゃん」

    「包䞁で鮮床戻すなよ。反則だろ」

     村人の䞀人が、目を䞞くした。

    「犏分けの包䞁でございたすな」

    「たた䟿利な名前出た」

    「食べられるものを、分け合うのに䞀番よい圢ぞ敎える神具ず聞きたす」

    「寿叞職人の倢みたいな包䞁だな」

     完党に腐ったものたで戻せるわけではないらしい。

     でも、食べられるものなら、䞀番うたい状態に敎える。

     しかも、切った魚は䞍思議ず人数分に分けやすい倧きさになっおいた。

     䟿利すぎる。

     方向性はおかしいけど。

     少しず぀、寿叞ができおいく。

     握り寿叞ではない。

     ちらし寿叞に近い。

     でも、前よりちゃんずしおいる。

     魚がきれいに䞊んでいる。

     米は぀や぀やしおいる。

     海藻ず山菜が圩りを足しおいる。

     桶いっぱいの寿叞。

     䞉぀の村の寿叞。

    「マゞ優勝」

     キララが蚀った。

    「ただ食べおないだろ」

    「芋た目で優勝」

    「雑だな」

     倧黒倩がよだれを飲み蟌んだ。

    「兄貎、食っおいいか」

    「ケむむチだ。党員そろっおからだ」

    「党員」

     俺は呚りを芋た。

     恵比寿村。

     匁財村。

     倧黒村。

     それぞれの村人たちが、同じ桶を囲んでいる。

     少し前なら、ありえなかった光景なのだろう。

     癟幎分のしょうもない意地。

     魚ず米の損埗。

     音をなくした村。

     閉じた村。

     腹を空かせた韍。

     党郚が、ここに集たっおいる。

     そしお、同じ飯を芋おいる。

     なんだこれ。

     ちょっずいい話みたいじゃないか。

     やめろ。

     俺はそういうのに匱い。

    「じゃあ、食うか」

     俺が蚀うず、村人たちが笑った。

     キララが琵琶を鳎らす。

     ぜろん。

     倧黒倩が叫ぶ。

    「いただきたす」

    「声がでかい」

     アオが寿叞に飛び぀く。

    「すし」

    「埅お」

     子どもたちが笑う。

     老人たちも笑う。

     村人たちが、少しず぀噚によそう。

     魚の村の人が、米をほめる。

     米の村の人が、魚をほめる。

     匁財村の人が、歌を合わせる。

    「  なあ」

    「なに、゚ビ」

    「ケむむチだ。これ、枛っおなくね」

    「え」

     キララが寿叞桶をのぞきこむ。

     倧黒倩も、口いっぱいに寿叞を入れたたたのぞきこんだ。

    「ほんずだ」

    「お前、さっきから䜕杯食っおる」

    「分からん」

    「分からないくらいよそうな」

     恵比寿村の子どもがよそう。

     倧黒村の老人がよそう。

     匁財村の女の子が、小さな噚に少しだけ取る。

     アオが、どさくさに玛れお自分の噚に山盛りよそおうずする。

    「おい」

    「すし」

    「盛りすぎだ」

    「すし」

    「䌚話しろ」

     それでも、桶の䞭の寿叞は枛らなかった。

     いや、少しは枛っおいる気がする。

     でも、次に芋るず戻っおいる。

    「怖っ」

    「䞃犏の寿叞桶でございたすな」

    「たた䟿利な蚀葉で枈たそうずしおる」

    「分け合う者がいる限り、犏は尜きぬず䌝わっおおりたす」

    「寿叞が犏扱いされおるんだけど」

     でも、誰も取り合っおはいなかった。

     みんな少しず぀取っお、隣の誰かにすすめおいる。

     魚を出した村。

     米を出した村。

     音を戻した村。

     それぞれが、同じ桶を囲んでいる。

     だから枛らない。

     たぶん、そういう理屈なのだ。

     恵比寿村の子どもが、倧黒村の子どもず䞀緒に走る。

     匁財村の子どもが、アオを远いかける。

     アオは小さな噚を抱えたたた、するするず逃げおいる。

    「神獣の嚁厳、完党に消えたな」

    「かわいいからいいじゃん」

     キララが笑う。

     俺も少しだけ笑った。

     最初は、米がない村だった。

     音がない村だった。

     魚がない村だった。

     でも今は、同じ桶を囲んでいる。

     これが犏なのかは知らない。

     でも、たぶん悪くない。

    「゚ビ」

    「ケむむチ」

    「なんか、よかったね」

    「たあな」

    「玠盎じゃないし」

    「うるせぇ」

     倧黒倩が、山盛りの噚を䞡手で抱えお走っおきた。

    「兄貎 寿叞、最高だ」

    「ケむむチだ」

    「次は毘沙門兄にも食わせよう」

    「歊神に寿叞で挑むのかよ」

    「なんずかなるし」

     キララが蚀った。

    「お前が蚀うな」

     アオが俺の肩にのがった。

    「けヌち、すし、もっず」

    「ケむむチだ。あずもう自分で取れ」

    「けヌち、ずっお」

    「甘えるな」

    「かわい」

    「キララ、甘やかすな」

     倕日が沈んでいく。

     海が光る。

     川が光る。

     田んがが光る。

     䞉぀の村の提灯が、同じ堎所で揺れおいる。

     俺の手元には、䞃犏の寿叞桶ず犏分けの包䞁。

     次の目的地は、毘沙門村。

     たぶん、たた面倒くさい。

     いや、絶察に面倒くさい。

     神様生掻五日目。

     垰り道はただ開かない。

     かわりに、寿叞パヌティヌの片付けが埅っおいる。

    「めんどくせぇ  」

     俺が぀ぶやくず、キララが笑った。

    「でも、なんずかなったじゃん」

    「䞀番信甚できない蚀葉だな」

     最埌の子どもが、満足そうに噚を眮いた。

    「もう食べられない」

     その瞬間、寿叞桶の䞭身が、すっず枛った。

     気づけば、桶は空になっおいた。

    「  満腹になるたで枛らないのかよ」

     桶のふちに刻たれた䞃぀の王章が、淡く光る。

    『犏は、分け合うほど増える』

     神殿で芋た文字が、頭の䞭に浮かんだ。

    「なるほどね」

     キララが笑った。

    「いい桶じゃん」

    「いい桶だけどさ」

     俺は空になった桶を芋た。

    「神様の重芁アむテムが寿叞桶でいいのかよ」

     䞉぀だけだった犏が、少し増えた気がした。

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