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夏の終着点 | 掌編小説

    硝子鳥




    夏といえば、暑いからと「納涼」だと宣のたまい
    怪談に肝試し、度の過ぎた動画配信。


    夏の巷ちまたには、事実か創作か定かではない「怖い話」が、蔓延している。


    *****



    「ことごとく、浅はかよのう」



    と、暗闇の中、ぼぅっと鬼火おにびがあがり、

    主あるじが言ことをこぼす。


    「馬鹿者が一人、我われの石碑によじ登って足蹴にしおったわ」



    次々に 方々から声が涌わく。



    「ほんまやなぁ、そんなに、命が惜しくないのかねぇ」

    「見えんというのは、哀れよのう」

    「取り囲まれとるのが、わからんのよ」

    「試しに音を少したててやると、半狂乱よ」

    「あれは、愉快よのぅ」

    「最近は、異変を起こすと礼を言われる始末ぞ」

    「夏になると湧いてきて、ギャーギャー煩いわ」

    「溜まっておる下々の下種な輩が、精気を吸うたり悪さをしよるようだが」

    「まぁ、すきにさせたらええわ」

    「かまわん、かまわん」



    「が、調子に乗ってもらっては困るよのう」


    と、主が聲こえを落とす。



    「やっていいことと、悪いことはあるぞな」

    「こちらの理ことわりを踏み躙にじることは、むろん、見過ごせぬ」


    「うぬ」

    「そうよな」



    「では、出いで向くか」


    「しかたあるまいな」


    「夏の締めくくりかのぅ」


    「そうさな、今年の夏の終着点というところかの」



    「此の頃は、触らぬ神に祟りなしという言葉も知らんのかの」

    「くわばら、くわばら」



    「愚おろかにして知らず、禍わざわいを招く。 ぞ」

    「くわばら、くわばら」







    一つ一つ鬼火が、すっと消えゆき



    夏の終わりの空気を揺らした。









    この作品は、風まかせ文芸部 ・第69回お題企画(夏の終着点)に 掌編小説 で お邪魔させていただきました。


    最後まで、お付合いいただきありがとうございました。
    皆様、良い夜を。


     
     
     
    こんにちは、硝子鳥(がらすどり)と申します。 シンガポール在住。現実と幻想の境界で、日常に潜む少し奇妙で美しいものを探しながら言葉で色を塗るように短編小説・ショートショート・エッセイ・詩などを書いています。あなたの日常に、そっと忍び込めたら嬉しいです。

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