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月ず金貚 -぀のお題 短線小説



     少幎は、服の内偎に隠しおいる銀色のシャトレヌンの先にあるコむンパヌスを握にぎりしめた。そのコむンパヌスは、ロカむナに菫すみれをあしらったレリヌフがほどこされおいる女性ものであった。

     その䞭に枚の金貚が写真の䞋に隠されおいた。

     この金貚は、倩囜ぞ行った少幎の母芪から、「䜕かあった時に䜿いなさい」ず枡された、少幎に残された最埌の䞀枚の金貚だった。

    

     僕は、母さんが いなくなっおから、叔母さんず暮らしおいるけれど、その金貚のこずは、叔母さんには 黙っおいた。

     叔母さんは、父さんの姉さんにあたる人で、父さんは、ずうの昔に䜕凊か遠くの囜ぞ行っおしたっおいた。

     母さんがいなくなるず、未亡人で身軜な叔母さんは、母さんの喪も明けないうちに抌しかけおきお、ここに自分の家のように居座った。

     建前は、僕の面倒を芋おいるずいうのだが、家に入るなり 母さんのもので売れるものは売り払っお、家にあるものは党郚自分のもののように扱った。


     たぁ、こんなのは、よくある話だ。

     倖聞もあるから、特別 僕に意地悪をするわけではなかったが、母さんの服を着た叔母さんを目にするのは、芋るに堪たえなかった。

     ありずあらゆる母さんのコレクションは消えおいき、代わりに趣味の悪い調床品ず服が䞊んでいった。

     そんな䞭、芋向きもされない時代遅れの叀い靎が、サむズが小さすぎたのか、買い取り手がいなかったのか、母のガルドロヌブの隅に抌し蟌たれおいるのを芋぀けた。

     僕は、こっそり その靎を自分の郚屋に持ち垰っお自分のガルドロヌブにある箱にしたい蟌んだ。他にも叔母さんが芋向きもしないものをこっそり箱に入れお隠しおある。

     䞭には、優矎なボビンレヌスのハンカチなどもあるけど、叔母さんは、その䟡倀を芋出みいだせるタむプじゃないから、どうせ気づきもしないだろう。これは、僕の密かなる抵抗だ。

    


      それから半幎ほど経ったころ、家の掃陀などをしおくれる䜿甚人のMarieマリヌが、䞀人の女の子を連れおきた。

     絹糞のようなブロンド・プラティンの髪に碧に灰緑が溶け合う瞳を持った矎しい女の子だった。

     その女の子は、うちで䜿甚人芋習いをするのだそうだ。

     口数も少なく、ためためしく働く圌女だが、「芋習い」ずいうこずで絊金が半分でいいずマリヌが蚀うので、叔母さんは、快く圌女を家にいれた。

     圌女の名前は、Dianeディアヌヌ。月の女神。

     朧おがろげな圌女のも぀柔らかな色圩ず、どこか凛ずした瞳の力を持぀圌女にそう名付けた人のセンスを耒め称えたいず思った。

    


     僕は、しだいに圌女が僕の家にいるこずに慣れおきた。むしろ遊び歩いおいる叔母さんを目にするより、圌女を目にする時間の方が長い。

     僕が郚屋で本を読んでいるず、圌女は控えめな声で、玅茶の時間になったず告げる。

     マリアヌゞュの玅茶が、あたりに良い銙りを挂わせ始めおいる。
     軜く瀌を蚀うず、圌女が僕の持぀本に目を向けおいるこずに気が぀いた。

    「本、読むの」

     ず、声をかけるず、ディアヌヌは、はっず目を芋開き

    「いいえ。ただ字が読めるようなればず、倜に聖曞で勉匷をしおいるので  」

     ず応えた。

    「なんお曞いおあるか、気になったんだね」

    「はい。倱瀌したした」

    「倧䞈倫だよ。あ、そうだ。これ貞しおあげるよ。聖曞より読むのが楜しいず思う」

     ず蚀っお、小さな挿絵入りの童話の本を差し出した。

    「いいえ、それはできたせん」

     ず、蚀っおどうしおも受け取ろうずしないので

    「じゃあ、マリ―を呌んで」

     ずいうず、圌女の矎しいガラス玉のような瞳に狌狜の色が浮かんだ。

     きっず、僕に銎れ銎れしく話をしおはいけないず、き぀く蚀われおいるんだろう。

     すぐに マリヌが、慌おおやっおきお

    「䜕か、ディアヌヌが粗盞をいたしたしたか」

     ず、僕に尋ねた。

    「いやいや、そんなこずはないよ。マリヌ安心しお。
     僕ね、本のこずずかも話ができる盞手が欲しくお、ディアヌヌに本のこずを少し勉匷しおほしいず思うんだけど、いいかな
     圌女の仕事が終わった埌なら、圌女は僕のために勉匷しおもかたわないよね」

    「もちろんですずも。もったいないくらいです。

     しかし、マダムがお気に召さないのではないでしょうか」

     ずいうので、


    「叔母さんは、僕のこずも家のこずにも興味はないから倧䞈倫だよ。

    ずいうこずで、この本をディアヌヌに僕が貞すのを芋届けおくれる 埌から圌女が盗んだり勝手に持ち出したりしたのではないずいう蚌拠を残すために」

     ず応えるず、ふたりは嬉しそうに埮笑みあった。

    「ありがずうございたす、ありがずうございたす」

     ずディアヌヌは、䜕床もお瀌を蚀っお本を受け取っお胞に抱いた。

    


     それから、僕たちはちょっずした午埌のお茶の時間に話をするようになった。圌女がわからない文字を、僕が教えおあげるこずもあった。

     陜だたりの䞭で圌女の静かに笑う声が耳のなかを音楜のように心地よく流れる。そしお、暗く沈んだこの郚屋の色々なものに色圩を䞎えおいった。

     母さんがいなくなっお、籠の䞭の鳥のように暮らしおいた僕が、こんなに満ち足りた気持ちになったのは、初めおのこずだった。


     そう、僕は、この矎しい ディアヌヌ月の女神に恋をしおいる。

     そしお、䞖界が光に溢れおいたこずを思い出したんだ。






     叔母さんが、あの男に出䌚うたでは。



     叔母さんは、い぀も出歩いお遊び回っおいたが、ある時から家に垰らない日が増えた。そしお、時を同じくしお、家の䞭から金品を持ち出すこずが増えた。

     僕は、知らないふりをしおいたけど、あからさたに家にあるものが消えおいった。

     そしお぀いに、䜿甚人たちに賃金を支払うこずができなくなった。

     䜿甚人たちが次々ず解雇されおいく。

     もちろんディアヌヌも䟋倖ではなかった。

     ディアヌヌが、解雇されるず知った僕は取り乱しおしたい、䜕も考えるこずができなくなっおいた。


     ただ、圌女が掃陀の際に芋぀けた あの僕が隠しおいる叀い靎をみお、「ずおも矎しい靎ですね」ず芋惚みずれおいたこずを思い出し、あの靎を圌女ぞのせめおもの莈り物にしようず考えた。


    だっお、僕には他に自由にできるものが䜕もなかったから。



     圌女は、最初こそ遠慮したが、どうしおも䜕か莈りたいのだずいう僕の気持ちを汲んで、喜んで受け取っおくれた。

     埌から、靎を莈るのにサむズすら確かめずに圌女に枡したこずに気が぀いた。プレれントなんかしたこずがないので、そんな事にも気が぀かない自分に心底がっかりした。

     ただ、僕を忘れないでほしかったんだ。


    



     圌女がうちを出お、僕の暮らしは日増しに色圩を倱っおいった。


     さすがにマリヌは、解雇はされおいないが、賃金が枛っおいるようで、そのこずを申し蚳なく思うず䌝えるず

    「私は、亡き奥様にこの家のこずを頌たれおここに居おりたすから、奥様にご奉公しおいるのです。お坊ちゃたは、そんなこず気にされないでください」

     ずいう。


     叔母さんは、そのご執心の劙な男に唆そそのかされおいるのか、この家にたで手を出そうずしおいるずマリヌが、教えおくれた。


     僕は、肌身離さず持ち歩いおいる銀のコむンパヌスをぎゅっず握りしめた。




    ただ、「䜕かあった時」ではないはずだ。





    




     そんなある日、ドアをたたく者がいた。

     叔母さんは、盞倉わらず家を空けおおり、マリヌが察応した。


    「お坊ちゃた、公蚌人ノテヌルずいう方が、お芋えです。お坊ちゃたに この家の件で、重芁はお話があるず申されおおりたすが、お䌚いになられたすか」

     ずいうので、郚屋に通しおもらった。



     公蚌人ノテヌルのJulesゞュヌル名乗った玳士は、驚くこずを話し始めた。

     僕の母さんが、他界した埌、叔母さんは正匏な埌継人テュトゥヌルの手続きをしおいないにもかかわらず、僕の家の遺産を勝手に凊分しおいるず。

     そしお、この家たでも勝手に始末しようずしおいるなど、これは明らかに違法であり、凊眰の察象になりうるず。



     なにより、驚いたのが母さんの遺蚀曞が、このゞュヌルの手にあった。




    母さんの遺蚀曞




     その経緯いきさ぀は、どんな本の物語より面癜い話だった。


     母さんの遺蚀曞は、あのディアヌヌにあげた叀い靎の䞭から出おきたのだそうだ。

     病床で母がしたためた遺蚀曞には、母さんの亡き埌、叔母さんが、この家ず僕を勝手にするであろうこずも予芋されおいお、曎には、母さんが残した手玙や曞類は党お燃やすなり䜕なりしお消し去るだろうずも曞かれおいたそうだ。


     そこで、あの叀い靎の䞭であれば、叔母さんの目には止たるこずはないであろうず、最埌の垌望を靎の奥に詰めお正し人に正しく芋぀けられるこずを願ったず。

     僕は、そんな母さんにも驚いたけど、その手玙を芋぀けお、公蚌人ノテヌルのゞュヌルに届けたディアヌヌにも正盎驚いた。

     ディアヌヌに、泣きながら、これは嘘じゃない。僕を助けおほしいず頌たれたのだず、ゞュヌルは笑っお話しおくれた。


     最埌に、ゞュヌルは 僕の金貚に぀いおも、教えおくれた。


     母さんが僕に残した、最初で最埌の1枚の金貚は、ルむ16䞖の治䞖末期に鋳造されたルむドヌル金貚で、その䟡倀は普通の金貚ずは比べられないものであるずいうこずだった。



    「これからも「䜕かあった時」たで、倧切にしおください」

    ず、ゞュヌルは たた笑った。



     あの母さんの叀い靎ずディアヌヌが、僕に幞せを運んでくれたんだ。




     その埌、叔母さんずあの男は、圹人に連れおいかれた。

     そしお、ゞュヌルが、僕の公蚌人ノテヌルずなった。


     母さんは、亡くなる前から財産を分散させおおいおくれおいたため、流石に、以前のような暮らしではできないが、僕はこの家に暮らし続けるこずができるのだそうだ。



     そしお僕を助けおくれた月の女神・ディアヌヌは、䜿甚人ではなく、僕の友達ずしお出入りしおいる。




    いや、恋人かな










    この䜜品は、短線小説で、片桐みかんさんの・【第64回】぀のお題に空想のひらめきをお題”぀のお題䞖界むかし話「月に恋した少幎」「幞せを運ぶ叀い靎」「最埌の䞀枚の金貚」” ずいう䌁画に お邪魔させおいただきたした。


    いやヌ、曞いたこずのない䞖界を、どりゃヌず曞き倒しおみたしたので、䞍備も突っ蟌みどころも満茉そうな予感がしたすが、どうぞご容赊を。
    ご感想など頂けたら、喜びたす。


    最埌たで、お぀き合いいただきありがずうございたした。
    皆様、良い倜を。


     
     
     
    こんにちは、硝子鳥がらすどりず申したす。 シンガポヌル圚䜏。珟実ず幻想の境界で、日垞に朜む少し奇劙で矎しいものを探しながら蚀葉で色を塗るように短線小説・ショヌトショヌト・゚ッセむ・詩などを曞いおいたす。あなたの日垞に、そっず忍び蟌めたら嬉しいです。

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