
Truth〜藤のはな紅くそめられ 27
エピローグ
縣信嗣は追手を気に掛けながらも、吹上の有馬の陣に辿り着くことが出来た。
そこで宇都宮城が旧幕府軍に攻め入られ、多勢に無勢。軍監、香川圭介の判断により全軍が撤退したことを説明した。
暫しの休息を得て、館林までの案内役も得られた。
途中、佐野を通過する際に、重臣たちとも合流でき、館林領内へと入った。
藩主、戸田忠恕公一行は縣ら重臣が到着した二日後に漸く館林の地を踏んだ。
2026年足利
藤は花弁をゆらゆらと風に任せながら、五月の陽光の煌めきを一身に受けていた。
年を経た藤はまだ自分が若木だった頃の記憶が、この時分に強く吹く北東の風と共にもたらされ、揺蕩う水面に映し出されたかのように切れ切れとなって、流れの中で消えていった。
藤を見上げていた年若い女性が不意に涙を一雫こぼした。
「どうしたの?」一緒にいた女性の友達が驚いて声を掛けた。
涙を指先で拭うと「…分からないんだけど、大切な人のことを思い出したような気がして。」と、いい笑った。
「なにそれ?さては彼氏でも出来たな?教えてよ?琴葉。」
琴葉と呼ばれた女性は困ったような表情を浮かべ、違う、違うと両手を振り、穏やかに談笑をしながら藤の元を去って行った。
雲雀が空高く鳴いた。
終