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中国ヨーグルトドリンクの転換点|茉酸奶、Blueglass、一只酸奶牛の第一派から、「新中式」の第二派へ

    中国で大きな市場を誇るミルクティー市場も、出店余地が狭くなると、加盟店オーナーと投資資金は次のカテゴリーへ移っていく。
    数年前にその受け皿となったのが、注文後に店頭で作るヨーグルトドリンクだった。
    中国では「現製ヨーグルト」と呼ばれる。

    現製ヨーグルトは2010年代前半から存在していたが、長く小さな市場にとどまっていた。
    転機は2021年以降である。

    新茶飲のトレンドで商品開発、原料供給、店舗管理、加盟店展開の方法が整い、低温ヨーグルトの製造と冷蔵物流も成熟した。
    既存の仕組みを新しい商品へ載せ替えられる条件がそろい、資本と加盟店が一斉に流れ込んだ。

    この記事では、現製ヨーグルト市場を作った3ブランドと、その後に伸び始めた新中式ヨーグルトを見る。

    現製ヨーグルトの第一波が作った市場

    茉酸奶、Blueglass、一只酸奶牛は現製ヨーグルトの異なる売り方を作った。

    茉酸奶は果物とヨーグルトを一杯へまとめ加盟店で全国へ広げた。
    Blueglassは美容や乳酸菌を40元台(約900円)の商品にし高価格の市場を開いた。
    一只酸奶牛は紫もち米を使い14元(約320円)前後の日常価格で1,000店規模へ成長した。

    3ブランドが共通して変えたのはヨーグルトを買う場所と飲む場面である。
    スーパーで買って家で食べる乳製品を、商業施設で注文し、その場で作って持ち歩く飲み物へ変えた。
    2023年には30〜40元の商品にも行列ができ、複数の新興ブランドが資金調達を発表した。

    その後、3ブランドは別々の場所で成長の壁に当たる。


    1.茉酸奶(More Yogurt)|果物ヨーグルトを1,600店へ広げ、加盟店管理でつまずく

    茉酸奶は2014年に上海で創業した。
    看板商品はアボカドとヨーグルトを混ぜたシェイクである。

    現在の規模だけを見ると最初から急成長したブランドに見える。
    実際には創業から2019年末までの約6年間で店舗数は20店ほどだった。
    当時の主流だった十数元のミルクティーに対し、茉酸奶の商品は20元(約450円)を超えており、購入のハードルが高かった。

    市場が動いたのは2021年末に全国で加盟店募集を始めてからである。
    新茶飲で店舗を運営してきた加盟店オーナーが参入し、2023年には出店速度が急上昇した。
    同年7月までに900店以上を新たに開き、店舗数は一時1,600店を超えた。

    商品も強かった。
    ブランド発表によると、看板のアボカドヨーグルトシェイクシリーズは年間2,100万杯を販売した。
    果物の量が見えヨーグルトの健康的な印象もある。
    一杯で満足感がありミルクティーより高い価格にも理由を付けやすかった。

    しかし店舗数が増えるにつれ各店の原料と衛生管理が追いつかなくなった。2023年にはシェイクに使う乳製品の原料を巡って批判を受け、全店で粉末状の植物性クリームを使わない新しいミルクベースへ切り替えた。
    2024年には新京報の記者が北京の複数加盟店で、賞味期限を40日以上過ぎた原料の使用、期限ラベルの貼り替え、要冷蔵の果物の常温保管などを確認した。
    行政当局も一部店舗を立件し、茉酸奶は該当店舗との契約を解除した。

    2025年末の営業中店舗は1,166店とされ、ピークから400店以上減った。
    創業者の趙伯華は持分と役職から離れ、乳業大手の君楽宝が出資比率を42.86%まで高めて第二位株主になっている。

    茉酸奶は加盟店方式によって現製ヨーグルトを全国へ広げた。
    同じ仕組みが成長後の弱点も大きくした。
    1,000店を超える加盟店で原料の保管、廃棄期限、レシピ、従業員教育をそろえるには、出店と同じ速度で管理側を強くする必要があった。

    このブランドが第一波で作ったのは、果物入りヨーグルトシェイクの市場と、加盟による全国展開の道である。
    後に残った課題は、多数の店舗で商品の約束を守り続けることだった。


    2.Blueglass|健康機能で高級路線を開拓し、購入頻度の壁に当たる

    Blueglassは2012年に北京で始まった。
    2018年に現在の名称へ変え、ギリシャヨーグルトを使った濃厚な商品、美容や健康を意識した成分、洗練された店舗を組み合わせて若い都市生活者へ訴えた。

    商品にはコラーゲン、乳酸菌、食物繊維、果物などが並び、価格は主に35〜49元(約800〜1120円)。
    ミルクティーより高く、ランチ一食に近い水準だった。
    大型の店舗や一等地への出店も多く、健康食品とファッションブランドの中間にいるような見せ方を選び、「ヨーグルト界のエルメス」と呼ばれた(「⚪︎⚪︎のエルメス」が中国ではよく出てきます)。

    2021年には2億元を超える資金調達を行い、3年間で1,000店を目指す構想を掲げた。
    現製ヨーグルトが高価格でも成立するという期待を最も強く背負ったブランドだった。

    Blueglassが作ったのはヨーグルトへ健康機能性を積み重ね、40元台の価格を付ける市場だった。
    その価格を支えるには、原料の説明だけでなく、客が効果や満足感を継続して感じる必要がある。

    健康訴求が強くなるほど、広告表現への監視も厳しくなった。
    運営会社は過去に抗酸化や免疫力をうたう広告で処分を受け、2024年には男性向け商品の性的機能を暗示する広告を理由に40万元の罰金を科された。

    店舗の伸びも鈍った。
    第三者集計では2025年11月の店舗数は214店。
    構想と比べて店舗数は伸びなかった。

    2025年には一部商品が第三者のデリバリープラットフォームで19.9〜23.9元(約450〜550円)まで値下げされた。
    店頭価格を一斉に変更した施策ではなかったが、49元の商品に約6割の割引が付いた意味は小さくない。

    高価格の商品は一度試してもらいやすい。
    毎週、毎月と繰り返し買ってもらう段階では、価格がそのまま頻度を制限する。
    健康や美容への関心があっても、ドリンク一杯に40元以上を払い続ける客は限られる。

    Blueglassは現製ヨーグルトの単価を引き上げた。
    現在はその単価をどの購入頻度で支えるのか、価格を下げた商品と高価格のブランドイメージをどう両立するのかという課題を抱えている。

    Blueglassは現在、AIを使った個別栄養提案を掲げ、健康管理サービスへ領域を広げている。
    顧客の体調や目的に応じて商品を提案し、高価格に理由を持たせようとしている。


    3.一只酸奶牛|(A Yogurt Cow / The Yogurt Cow)日常価格で1,000店へ広げ、売上を利益に変えられなかった

    一只酸奶牛は2015年に重慶で創業した。
    看板はヨーグルトへ紫もち米を加えた「酸奶紫米露」で、現在も公式サイトの中心商品に置かれている。
    価格は13〜20元(約300〜450円)ほど。
    果物中心の茉酸奶、機能性と高価格のBlueglassに対し、穀物の食感と日常価格で別の顧客をつかんだ。

    紫もち米は色と食感が分かりやすく腹持ちもある。
    重慶や成都など四川・重慶地域で人気を得た後、店舗は20を超える省へ広がった。
    2021年にはすでに1,000店を超え、現製ヨーグルトの量販ブランドとして茉酸奶より早く全国規模へ達している。

    同年、大手乳製品メーカーの新希望乳業が2.31億元で運営会社の60%を取得した。
    乳製品の製造、低温物流、原料調達を持つ大手乳業会社と、若い顧客を持つ1,000店チェーンの組み合わせだった。
    買収時には3年間で累計1.27億元(約29億円)以上の純利益を上げる計画が置かれている。

    しかし実績は計画から大きく外れた。
    買収価格は2019年の未監査純利益約3,500万元(約8億円)を基準に決められた。
    買収後の3年間には累計1.27億元以上の純利益が期待されていたが、2021年3〜12月は868万元(約2億円)にとどまり、2022年は992万元(約2.2億円)の赤字、2023年1〜9月も416万元(約1億円)の赤字となった。

    一方、2023年1〜9月の売上高は2.35億元(約53億円)に達し、前年通期の2.09億元(約48億円)を上回った。
    売上は増えていたが、利益が残らなかった。

    店舗数も伸び悩んだ。
    2021年から2023年まで毎年200店を超える新店を出したものの、全体は1,000店前後で推移した。
    新店と近い数の既存店が閉じていたことになる。

    新希望乳業はコロナ禍の影響と、直営店への先行投資を赤字の主因に挙げている。
    加盟店と直営店を併用したことで、本部が家賃、人件費、開業費を負う店舗が増えた。
    地域によっては原料の供給価格や物流費が高く、加盟店への出店・販促支援が不足しているという声もあった。
    酸味のある冷たい商品は冬に需要が落ちやすく、総合ティーチェーンもヨーグルト商品を相次いで投入していた。

    2023年、新希望乳業は45%を関連会社の草根知本へ1.485億元で譲渡し、持分を15%まで減らした。
    原料供給の関係は継続している。
    乳業会社が残したのは得意分野である原料側の取引で、店舗事業の支配権は手放した。

    Blueglassは40元台の高価格が購入頻度の壁になった。
    一只酸奶牛は14〜20元の日常価格で1,000店まで広がったが、直営店への投資や店舗運営の負担によって利益を残せなかった。


    第一波のブランドが残した三つの課題

    3ブランドは別々の入口から現製ヨーグルトを市場へ広げ、成長後には異なる問題を残した。

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    第一波のブランドの店舗は減っているが、現製ヨーグルト自体への需要は消えていない。
    果物と混ぜる、穀物を入れる、健康的な印象を伝えるという商品自体は、その後も多くの店で売られている。

    そして第一波ブランドが残した課題を埋め、さらに新たな魅力をまとう形で、新しいブランド群が育ち始めている。


    第二派ヨーグルトは何を変えたのか

    第一派のブランドが成長の壁に当たるなかで、2024年以降は李若桃手作酸奶、楼下酸奶、顧二叔手作酸奶などが伸び始めた。
    中国の業界メディアは、この新興群を「手作りヨーグルト」や「新中式ヨーグルト」と呼んでいる。本稿ではこれらを現製ヨーグルトの第二派として見る。

    第二派が持ち込んだ大きな変化は、ヨーグルトに中国の食文化と美意識を重ねたことだ。
    この「新中式」スタイルは、先に見たように伝統的な素材や意匠を、現在の暮らしに合う商品や空間へ組み直す動きを指す。
    ヨーグルトでは、もち米、花、茶、地域の果物に加え、木桶や器、店内の絵画までがその表現に使われている。
    業界メディアの咖門も、新中式ヨーグルトの特徴を文化体験、手作り感、地域性から説明している。

    この方向は以前GAFUCAFEの記事で取り上げた、CHAGEEが中国茶を現代的なミルクティーへ展開し、野人先生が中国の米や花をジェラートへ取り込んだ動きとも通じる。
    古くから知られた素材に現在の若者が手に取りたくなる飲み方、見た目、店を組み合わせる。
    ヨーグルトにもこうした伝統の現代化が広がったと捉えられる。

    もち米を蒸す湯気は、店で調理していることを伝えると同時に、昔ながらの甘味店の温かさを感じさせる。
    花や果物の色を重ねた商品には見て楽しむ魅力があり、器や店内の意匠も写真を撮りたくなる理由になる。
    素材を食べるところから、店の雰囲気を楽しむところまで、中国的な体験としてまとめている。

    経営面では日常利用を意識した価格と店舗づくりも進んだ。
    新興ブランドの客単価は13〜26元(約300円〜600円)を中心とし、商店街や大学周辺などで15〜30平方メートル、スタッフ2〜3人の小型店を運営する例もある。
    高価格帯を広げた第一派の一部に対し、利益を確保しつつ手頃な価格で繰り返し買える店を増やしている。

    新中式の素材と美意識がもう一度ヨーグルト店へ行きたくなる理由を作る。
    価格と店舗運営の工夫がその魅力を日常的な商売として続ける条件になる。
    第二派は第一派で表面化した課題へ手を入れながら、茶やジェラートでも広がる新しい消費の流れを取り込み新たな価値を作っている。


    4.李若桃手作酸奶(Li Ruotao Yogurt)|蒸したもち米と中式の店づくりで、ヨーグルトを新しく見せる

    第二派をリードするブランド、李若桃手作酸奶は2024年4月、重慶・観音橋に1号店を開いた。
    看板は店内で蒸した白もち米とヨーグルトを組み合わせた商品で、初期の主力価格は12〜18元(約270円〜410円)。
    茶、ナッツ、果物などを加えた商品にも、もち米を共通して使っている。

    店舗には木製の看板や木彫りの吊り札、籐編みの照明があり、昔ながらの中国の店を思わせる。
    目立つ場所に置かれた蒸し器からは、もち米の湯気と香りが立ち上る。
    木を使った内装と実際の調理がつながり、客が商品を受け取る前から店の特徴を伝えている。

    カップの中にもその印象が続く。
    果物を使ったヨーグルトのフローズンドリンクへ白もち米を加えると、滑らかな飲み口に柔らかく噛める食感と米の香りが重なる。
    店頭で見たもち米を口の中でも感じられるため、商品と店の記憶が結びつきやすい。

    創業者の蘭猛も、店頭での蒸しのもち米や地域の素材によってヨーグルトの中式らしさを強めると語っている。
    蒸し器は、何を作っているかを見せる道具であり、ヨーグルトを中国の食文化へ結びつける店の象徴でもある。

    地域性は果物にも表れる。
    奉節のネーブルオレンジや巫山のスモモなど、重慶の素材を商品開発に使ってきた。
    創業者によれば果物は地元の農家から直接仕入れ、中間業者を減らして原料コストも抑えている。
    地元の味を店の特徴にしながら、調達の費用にも手を入れた。

    出店は重慶で店舗を集中させるところから始まった。
    1号店の翌月には同じ観音橋エリアへ3店を加え、その後も主要商業地や大学周辺で直営店を増やした。
    2026年3月には全国100店超、重慶だけで約60店に達したと地元紙が報じている。

    さらに同年5月のブランド発表では約300店へ拡大した。
    5月の労働節連休では5日間に全国で117万杯を販売し、看板の「原葉白もち米ヨーグルト」が35万杯を占めたという。
    茉酸奶や他の飲料チェーンももち米入りヨーグルトを投入し、商品への関心は専門店の外へ広がっている。

    李若桃では、もち米の食感、蒸し器の湯気、木を使った店内、重慶の果物が一つの店の印象を作っている。
    伝統的な素材を現在のヨーグルトドリンクへ組み合わせ、その魅力を手頃な価格で提供した。
    第二派の中でも、商品と店舗の両方から新中式を伝える例である。

    今後は店舗数が増えても、もち米の蒸し上がりや保管、提供速度をそろえる必要がある。
    新中式によって生まれた来店理由を、いつ買っても満足できる一杯へ定着させることが次の課題になる。


    中国の食文化を商品から空間まで広げる

    第二派の新中式はブランドごとに異なる姿を取っている。
    李若桃がもち米を蒸す温かさを見せる一方、楼下酸奶は中国の乳製品文化や絵画を商品と店舗へ取り込んだ。

    上海発の楼下酸奶(Louxia Yogurt)は、唐宋時代の乳製品「酥酪」を着想源に掲げる。
    ヨーグルトドリンクやボウルに加え、ミルクを加熱した際に表面へできる膜を使った乳製品「奶皮子」も商品に取り入れている。
    原料の色を層状に重ね、果物の薄切りや食用花を添えた美しい見た目にも特徴がある。

    蘇州・十全街店では、中国絵画《漢宮春暁図》を着想源にした壁画が店内を飾る。
    白と木を基調にした空間へ屏風や提灯を思わせる照明を組み合わせた。
    価格は15〜28元で、北京SKPなどの高級商業施設にも出店している。
    商品を眺める楽しさとその店で過ごす時間を価値にする方向だ。

    懒山碗は雲南の食文化をテーマに、花、果物、茶、乳製品をヨーグルトへ組み合わせる。
    ローズやプーアル茶を使い、雪山や洱海(雲南省にある大きな湖)を連想させる商品名までそろえている。
    杭州の「龍井酪雪」など出店する街に合わせた限定商品も展開した。
    地域の素材と風景が新しい味を作る手掛かりになっている。

    3ブランドは中国の食文化を、味、作る動作、商品名、器、空間へ広げている。
    ここに第二派の新しい魅力がある。

    第一派が広めたヨーグルトと果物・穀物の組み合わせを土台に、新中式が店ごとの違いを作る。
    価格や小型店の工夫は、その魅力を買いやすく、運営しやすい形へ整える役割を担う。
    ヨーグルトの第二派は、第一派の後に商品と店を作り直す方法を示している。

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    ※本記事のヘッダー画像は特定ブランドの実際の商品ではなく、AIで生成したイメージ画像です。


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    新中式(東方思想)の関連記事として、CHAGEEと野人先生それぞれで見られる東方思想について(も)書かれた記事


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    中国・アジア飲料市場リサーチャー。 事業開発/市場リサーチ歴17年。 中国・アジアのカフェ・ティードリンク市場を現地視察+事業開発視点で読み解き、店づくりや飲食ビジネスに使える示唆として届ける記事を毎週配信。 自身のティードリンクブランドの立ち上げ計画も進行中。 Xもやってます。

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