見出し画像

名前のない転校生|きのこ書店🍄‍🟫|平日短編note



小学3年生の春、転校生が来た。

彼女は、あっという間にクラスに溶け込んだ。

きっと、それは彼女が
僕たちが一度話したことは覚えていたからだ。

「だって、あの時はこうだったんでしょ?」


話さないことも。

「ねぇ、大丈夫?
こういうの、本当は嫌いなんでしょ?」

幼稚園から一緒のやつらより、僕のことをわかってくれた。


ある日、

放課後の誰も居ない教室で、僕が書いていた絵を、彼女は褒めてくれた。

兄に貶されて以来、絵を人に見られるのが怖かった。

「えっ? そこがいいんだよ!私は、好き!」

それがうれしくて、
みんなが見ている時でも気にせずに描けた。

夏休みも終わり、

僕は、宿題の他に
自信作を何枚も持って学校に向かった。

あの子に見てもらいたかった。


でも、居なかった。

彼女は、また転校していった。


数年後、卒業式間近の教室で。

「そういえば、転校生、いたよね?」

卒業アルバムに載らない彼女。

僕が描いた彼女の横顔だけが残っていた。

いいなと思ったら応援しよう!