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『生きとるわ』レビューコンテストで、まさかの優秀賞。たくさんの「スキ」より、誰に「スキ」と思われるか。

    「浮かれて車に轢かれそう」
    母にこんなLINEを送ったら
    「そんなアホな」
    と返ってきた。
    コテコテの大阪のおばちゃんな返信に、思わずニヤニヤする。

    あれから数日が過ぎたというのに、私の気持ちは高揚したままだ。
    ようやく少し落ち着いてきたが、しばらくはふわふわとして地に足がつかず、仕事にも身が入らず、何をしていても上の空だった。

    ✏︎  ✏︎ ✏︎

    6月4日 21:20
    もっさり(彼)との電話を終え、メールをチェックをしていると「文藝春秋」という文字が見えた。文藝春秋のメルマガなんて取ってたっけ? 怪訝に思いながらメールを開くとこんな文言が書かれていた。

    「『生きとるわ』レビューコンテスト 優秀賞ご当選のおしらせ」

    2月、私はこのコンテストに応募していた。

    「『生きとるわ』レビューコンテスト」優秀賞ご当選のおしらせ

    又吉直樹さんによる選考の結果、ご応募作品が【優秀賞】に選ばれましたのでお知らせいたします。
    (略)
    受賞者に関する解禁情報は6月16日(火)18時を予定しておりまして特設サイト上で発表予定です。SNSなどでご受賞のポストをされる場合は、こちらのサイトで情報が公開されてからのポストをお願いいたします。

    メールより抜粋

    えっ!?
    頭の中が真っ白になる。動悸がする。
    何かの間違いかもしれない。夢かもしれない。嘘かもしれない。
    ほっぺたをつねる。痛い。

    私は何度もメールを読み返した。

    又吉直樹さんによる選考の結果⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎ ⚫︎
    確かにそう書かれている。

    又吉が読んでくれたって事やんな。
    読んで選んでくれたって事やんな。

    心臓のバクバクが止まらない。
    どうしよう。こういう時は何をしたら良いんだろう。気持ちだけがワサワサとして何も手につない。

    震える手でメールのスクショを撮り もっさりに送ると、切ったばかりの電話を再びかけた。
    「私、凄くない?」
    「すげーよ」
    「ほんまに凄くない?」
    「すげーよ」

    ワタシ、スゴイ!!

    なっちゃん(応募をすすめてくれた又吉好きの親友)にもすぐさまメッセージを送る。妹と母にもLINEで報告をした。

    ダイニングテーブルに腰をかけて、なっちゃんからの返事を待つ。

    部屋にはキッチンから聞こえてくるジーッという冷蔵庫の唸り声と、壁掛け時計が正確に時を刻むカチカチという音だけが響いていた。
    何も考えられないし、何もできない。
    放心状態とはこういう感じなのかな。と思う。
    今、私の中ではドーパミン、セロトニン、オキシトシンなんかがドバドバと放出されているに違いない。

    ✏︎  ✏︎ ✏︎

    1時間後、ようやくなっちゃんから返信が来た。

    ちょっと待って…あかん、窒息しちゃう
    おめでとう
    嬉し過ぎて死にそうです

    ちょっとだけでも、電話しない?

    ✏︎  ✏︎ ✏︎

    気持ちを落ち着かせようと先にシャワーを浴びたなっちゃんだったが、慌ててシャンプーとコンディショナーを間違ったらしい。
    何にも手につかない私も、なっちゃんにすすめられ、取り敢えずシャワーを浴びた。

    「もしもし、なっちゃん」
    「もしもし、むくみちゃん。やばすぎるわ。語彙力無さすぎやけど、やばいって言う言葉しか出てこおへん」
    「やばすぎるやろ」
    「どれが選ばれたん? パパが読みたいって」
    「それが、私もどれか分からへんねん。発表の日に選ばれた作品が掲載されるみたい」

    なっちゃんとデータ共有している、4つの感想文を2人で読み返す。

    「私は3つ目のやと思うねん」となっちゃん。
    「私は2つ目のかなって。あっ、でも4つ目かもしれへん。」と私。

    私たちの興奮は覚めやらず、話は尽きない。これを機に、小説を書き上げて新人賞に応募しよう、と 夢みたいなことを語る。
    あり得ないと思っていたことが現実になった今、もしかすると夢は夢ではなくなるかもしれない。

    時計の針はもう、テッペンを周っていた。お互い翌日も仕事なので名残惜しいけれど電話を切った。

    「今日は寝れへんかも」
    なっちゃんにそう言った私だったが、10分後には布団の中で記憶をなくしていた。

    ✏︎  ✏︎  ✏︎

    翌日、なっちゃんから メッセージが来た。
    「(発表がある)16日、むくみちゃん一人がいいなら一人で。
    もし私が横にいたほうがいなら一緒にご飯食べない?」

    1人でいたら気絶してしまうかもしれない。なっちゃんが横にいてくれると心強い。

    当日は、公式サイトで 私の書いたレビューとそれに対する又吉先生のコメントが掲載される。
    副賞の『生きとるわ』名前入りサイン本と特製ブックカバーも待ち遠しいけれど、又吉先生にコメントをもらえることが何よりも嬉しい。

    6月15日、発表前日。なっちゃんと待ち合わせ場所のやり取りをしていると、1通のメールが来た。

    むくみ さま
    お世話になっております。文藝春秋の〇〇です。
    (略)
    6/16(火)18:00 予定とお伝えしておりました発表日ですが、
    6/17(水)18:00 に変更させていただくことになりました。

    メールより抜粋

    えっ。17日に変更? 
    「肩透かし」っていう言葉は、こう言う時に使うんだろうな。
    なっちゃんに連絡を入れ、私は16日の有給申請を取り下げた。

    2ヶ月半も待ったのだ。1日くらい遅れたからって、どうって言うことない。私たちは17日の予定を調整した。

    ✏︎  ✏︎  ✏︎


    人の目を気にせずに、自分の書きたいことを書く。
    それだけで十分なはずなのに、普段は閑古鳥が鳴いている記事に、時々たくさんの「スキ」が付くと嬉しく思う自分がいた。
    私は「スキ」の数を気にしないフリをして、心のどこかでは気にしていた。

    でも、もうそんなことは気にしない。又吉直樹、その人に刺さっただけで十分だ。


    何を書いていいのかも分からずに、2年前の6月9日に書き始めたnote。
    程なくして「#なんのはなしですか」という魔法の言葉に出会い、何を書いてもいいんだと思うようになれた。
    そして今、私は書きたいことで溢れている。

    これまで書いてきたのは、今日のためだったんだ、と素直に思える。
    人生に無駄はない。

    ✏︎  ✏︎  ✏︎

    2026年6月17日 18:00
    今、梅田の商業ビルの屋上で、奇声を発しているショートカットの女性2人組がいたら、それは なっちゃんと私だ。
    50歳のおばさんの青春はまだまだ終わらない。
    どうか、そっと見守っていて欲しい。

    と、締めくくる予定だったのに、なっちゃんに急な仕事が入ってしまい、この瞬間を私は1人で迎えることになった。
    今、私は又吉からのコメントを見て、気絶いているかもしれない。

    ↓発表はこちらのサイト


    因みに、今回受賞したのは「優秀賞」であって「最優秀賞」ではない。
    「最優秀賞」を受賞したみたいな記事になっているけど、どうか許してほしい。

    他の人にとっては小さな賞でも、私にとっては憧れの又吉に選んでもらえた、人生で最高に嬉しい賞だから。

     
     
     
    好奇心旺盛なアラフィフ、独身、子なし。 パートナーのもっさりと週末を過ごす生活。 好き : 昼寝・ラジオ・猫・又吉直樹・武田砂鉄・岡本太郎 苦手 : 乗り物・閉鎖空間・人混み・行列・鳩

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