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とびきりの拍手を、書いた私たちへ〜脳内妄想note創作大賞授賞式〜

    深水双葉

    note創作大賞の中間発表が近づいてきた、八月の終わり。

    私の脳内では、中間発表なんてとっくに通り越して、note創作大賞授賞式が盛大に執り行われている。

    もちろん、自分が受賞する前提ではない。

    私の推し作家さんたちが、キラキラのステージに、ドレスやスーツに身を包んで立っている。
    その配信を、「推し」と書かれたハートのうちわ片手に、
    「きゃーー!」
    と言いながら見たいのである。

    私の脳内note創作大賞授賞式は、黒塗りのでかい車から始まる。
    車種は知らない。とにかく、でかくて黒い車なのである。

    そのでかい黒塗りの車が、会場前に次々と滑り込む。

    そこから、中間発表を突破した錚々たる作家さんたちが降りてくる。

    会場まで続く長い長いレッドカーペットをにこやかな笑顔で歩く、推し作家さんたち。

    フラッシュがパチパチと焚かれ、カメラマンの要望に応えて、振り返ってはポーズを決める。
    サインを求められれば、にこやかに立ち止まる。

    その長い長いレッドカーペットは、眠い日も、疲れた日も、ときには自分の文章なんて誰が読むんだと思いながらも。
    血が滲むような努力をして、それでもひたすら書いてきた作者さんたちにこそ、相応しい。

    ――そう信じてやまない私は、ここで、配信画面を見ながら、そっと涙ぐむ予定である。
    ティッシュは一箱、必須。

    そして、会場へ入った作家さんたちは、ステージを見ながら着席する。

    脳内妄想note創作大賞授賞式、いよいよ開幕である。

    会場が暗くなる。
    巨大スクリーンに、新海誠監督の撮った映像が流れる。
    新海誠監督は、私が勝手に指名した。
    新海誠監督には、まだ一言も伝えていないし、伝える術もないし、会ったこともないけど、妄想だからいいのである。

    映像には、一本のロケットが映し出される。
    ロケットには、
    『note創作大賞2026』の文字。
    ロケットが、たくさんの「ことば」を乗せて宇宙へ飛んでいく。
    やがて宇宙空間へ辿り着いたことばたちは、星になり、今度は地球へ向かって降り注ぐ。
    無数のことばが、夜空を埋め尽くす。
    ……陳腐ではあるが、壮大ではある。

    そして突然、その巨大スクリーンを突き破って、note運営の偉い人が登場するのだ。
    誰なのかは知らない。とにかくアルマーニに身を包んだ賢くて、偉くて偉くて偉い人である。

    偉い人は、司会者として、軽快な足取りでステージ中央へ躍り出る。

    そして、アメリカンジョーク満載のトークを繰り広げる。

    「AIに書けないもの? この世にはないね!」
    (会場、笑い)

    「でも、そこの紳士も! あちらの淑女も! AIを超えたものを書いた!」
    (ここで、スタンディングオベーション)

    私はもちろん、家で「きゃー」と言いながら、ハートのうちわ片手に、飛び跳ねている予定である。

    そして、いよいよ各部門の発表。
    去年の受賞者がステージへ現れる。
    片手には、あの白い封筒。

    スクリーンには、今年、中間発表を突破した作家さんたちのお顔が、ワイプで次々と映し出される。

    みんな、少し緊張している。
    私はもっと緊張している。

    去年の受賞者が言う。
    「今年のミステリー部門、受賞作品は――」
    ハサミで封筒を切る。
    紙を取り出す。

    一度、息を呑む。
    そして、
    「〇〇さん! おめでとうございます!」

    受賞者に、スポットライトが当たる。
    両手で口を押さえる。
    (これ、絶対)

    「オーマイゴッド」と小声で言いながら、立ち上がる。(オーマイゴッドは私の希望)

    周りの候補者たちは、うんうんと頷きながら、盛大な拍手を送る。

    受賞者は、涙をこらえながらステージへ向かう。
    去年の受賞者と抱き合い、トロフィーを受け取る。
    そして、スピーチ。

    「私がここまで来られたのは、家族のおかげです。夜中に一人で書いてきてよかった。みんなのおかげです。note運営の皆さま、選んでくださってありがとう。ああ、感謝が言い足りない。ありがとうありがとう」

    会場総立ち。
    去年の受賞者ともう一度抱き合い、そのままステージ袖へ消えていく。

    私は配信を見ながら、号泣している……ティッシュ二箱目。

    そう。
    私の中で、note創作大賞授賞式というのは、そのくらいのものだった。
    いや、そのくらいのものであるべきだと、今でも思っている。


    ――ところが、この間。
    私は、ふとYouTubeを開いた。
    「note創作大賞 授賞式」で検索。
    動画が一本。

    授賞式は、オフィスの本棚の前で、それはそれは静かに執り行われていた。

    ※ちなみに、かなり古い動画なので、現在は違うかもしれない。

    ……私は、腰を抜かした。
    いや。
    本棚が悪いと言いたいわけではない。
    むしろ、文学に関係する場所としては、たいへん正しい。
    文句を言いたいわけでもない。

    ただ……ただ……
    私の脳内には、すでに黒塗りのでかい車が十台くらい停まっていたのにー!とは思った。
    レッドカーペットも必要なのにー!とも思った。

    だって、書くというのは、驚くほど地味な行為だ。
    一人で、パソコンやスマホに向かう。
    書いて。消して。また書く。
    何時間もかけて書いたのに、ほとんど読まれないこともある。
    自分では大切だと思っている一文が、誰にも拾われないことだってある。
    それでも、また書いて、作品にする。

    だったら、その作品が選ばれた日くらい。
    黒塗りのでかい車から降りてもいいではないか。
    レッドカーペットを歩いてもいいではないか。

    書いた人が、これでもかというくらい盛大に祝われる日があってもいい。

    だから、
    とびきりの拍手を、書いた人へ。

    選ばれる人にも。
    選ばれないかもしれない、私たちにも。


    私は、切実にそう願っている。


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    【エッセイしりとり企画作品】の、バトンをあさたろうさんから頂戴しました。

    「と」から始まるタイトルをということで……
    今回のエッセイを書きました。

    あさたろうさんの素敵な命のエッセイから、バトンをもらったのに……私は勝手に脳内妄想劇場を開催してしまいました🙏😂


    そして、また!
    私もバトンを繋ぎます!🏃‍♀️‍➡️🪈

    タイトルは、「き」から始まるエッセイです。


    🏃‍♀️‍➡️🪈
    中馬正輝さん!

    バトンを、違うバトンで返します🤭✌️
    よろしくお願いいたします🤭🤲


    (もちろん、スルーしてくださっても大丈夫です🙆‍♀️)


    企画の詳細はこちらから💁‍♀️


    🌱バトンを渡した人の記事のタイトルの最後の文字をタイトルにつける
    🌱本文140字〜3000字
    🌱締め切り8月31日
    🌱#エッセイしりとり のタグをつける
    🌱3名以内で次の人に繋げる(繋げなくてもいい)


    🕳️穴から這い出る「バトン🪈」を、ありがとうございました🐌🌱

    #エッセイしりとり

     
     
     
    ことばが好きです。🌱 書き溜めたエッセイが、気づけば100本以上貯金できました。書くたびに、その話に似合う声を探しています。 エッセイ、ミステリー、ファンタジー小説。毎日ことばを掘っています。(TALESにも投稿してます)

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