
私がキャンプ道具を捨てた理由
お父さんとお母さんが離婚したあとも、私は変わらずお父さんとたまに会っていた。
とにかく趣味が合うし、会話の間も含めて居心地がいいのだ。
年に一回、お父さんとキャンプに行くのが恒例だった。
行ったことのない地域、息をのむような美しい景色。夜の森の吸い込まれそうな静けさ。それらはいつも私が知らない世界を、見せてくれる。
そんな恒例行事を続けているうち、いつの間にか私もキャンプが趣味になっていた。
お父さんが再婚したあと、お父さんの再婚相手と三人でキャンプに行った。
私が下準備をして、お父さんが料理をするというのがいつもの流れだったが、その年のキャンプでは下準備の役を、お父さんの再婚相手がしてくれた。
お父さんの再婚相手には子供がいた。
女の子と男の子。
長女は二十代後半。私と同世代で、さっぱりとした感じの良い子だった。
数年後、再婚相手の長女が結婚し、子供が生まれた。
お父さんにとって、人生で初めての孫。
孫を慣れた手つきで抱っこする父。かわいい赤ちゃんに向ける笑顔。
「鈴ちゃん、お酒おかわりする?」
お父さんの奥さんがにこにこした笑顔で私に声をかけてくれる。
「うん、ありがとう」
私も笑顔で返事をする。
その年は、キャンプではなくみんなで集まってバーベキューをしていた。
下準備はお父さんの再婚相手、お肉はお父さんと、長女の旦那さんが焼いてくれて、おにぎりやサンドイッチを長女が作ってきてくれていた。
私は、その中で完全にお客さんだった。
「で、キャンプ道具全部捨てたわけ?」
呆れたように朔が言った。
「まあね」
彼氏と言うにはまた微妙な関係の男友達の家で、私はソファに寝転がる。
そんなわたしを呆れた顔で見下ろしながら、朔はソファーの前に腰掛けた。
「なにも全部捨てる必要ないじゃん」
「あるんだよ。捨てたくなったの。きれいサッパリ」
「しかも、家族の話とキャンプ道具がどう話につながるのかわからない」
「朔には分かんないんだよ。この、繊細な気持ちが」
「仲間はずれにでもされたわけ?」
「いや全く。その逆ですごく仲良くしてる」
「じゃあ何が問題なの」
「何が問題っていうか、すべてが問題」
「その、なぞなぞみたいなのやめてくれない?」
朔が私に冷たい視線を投げかけながら言う。
「だってさあ、」
私は朔の冷たい言葉など全く気にせずため息をつきながら続ける。
「昔のお父さんと私には、もう戻れないんだなって思ったんだもん」