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音楽家のリアル舞台裏

劇場の舞台裏は暗い。
鳥目の私には危険なくらい暗い。
舞台に出る本番5分前には、舞台裏で全員スタンバイする。

シーンとしている同僚もいれば、お喋りに余念のない人もいる。

デカくて難しいソロが控えている同僚でも、いつもと変わらず世間話をする人もいれば、一人で楽器を握りしめ「集中❗️」している人もいる。

仕事に向かう姿勢に差はあるが、お客様に喜んで欲しい、という気持ちに差はない、と思いたい…

先日は、モーツァルトの『魔笛』を演った。
オケピットに入って、ではなく、演奏会形式で舞台上で。

舞台裏で出待ちの時、若い同僚が、
「昨日からお腹の具合が悪くて…昨晩も、本番中に何度もオケピットから出ていこうかと思った。」
と言う。
「あらまあ…お腹に来る風邪かな?」と私。
「食べたものが悪かったかなあ。でも、思い当たるのは、玉ねぎを大量に使った料理を食べたくらい…」
そこに40代の同僚が口を挟む。
「胃カメラや大腸カメラをやったら?」
え?大袈裟じゃあ…

「40歳を超えると、そういうのやった方良いらしいのよ。私はやった。上からも下からも!」
目も口もデカい派手な顔のスタイル抜群の彼女が言うと、すごく圧がある。
お腹の具合が悪い同僚はまだ20代だけど…

実際、日本の会社でやるような健康診断は我々のカイシャ(半官半民)には無い。
個々人でやってね〜という感じ。
唯一、仕事場で行われる健康診断は、軽い問診(世間話)と血圧測定、あとは視力と聴力検査のみ!
超ピンポイント!

視力、大事❗️
来る日も来る日も譜面🎼を読むわけだから、譜面がボヤけて見づらかったら死活問題。
老眼が入ってくると、みんなメガネに苦労する。
多焦点メガネを嫌う人は多い。
演奏中、視線は常に動いていて、譜面だけを見ているわけでないので、目玉だけを動かすとボケちゃう多焦点メガネは合わない、と言う同僚が多い。

だからといって、譜面の置かれた70cm位の距離に焦点をしぼったメガネにすると、指揮者がボヤける…

何が大事で何を捨てるか、は同僚間でたびたび話題に上るテーマだ。
大抵、譜面を読むことが第一義で指揮者の細かい表情なんかは捨てる…というところに落ち着く。

騒音の中で仕事をしていると、聴覚はだんだん衰えるらしい。
皆、耳の中の形に合わせて一人一人作られた耳栓を持っている。
音を完全に遮断はしないが、音量は抑えられるというシロモノだ。

大音量や鋭い音の曲をやっていると、心悸亢進することがある。
やはり健康に良くないのだろう。
音は空気の振動だものね。
鼓膜だけでなく、内臓が揺れるのを感じるもの。

私は、耳栓嫌いなので、観客から見えないオケピットでの仕事だと、大音量で演奏中の同僚には悪いけど指で耳栓する。
せっかく悪くならずに来た私の耳、守らせていただきます。

さっきの話に戻すと、
くだんの40代同僚は、
「大腸カメラの際、下剤をいっぱい飲まされるでしょう?あれで、お腹の中のモンが綺麗さっぱり出されちゃうわけ。そうすると、気分も良いし、肌の状態もすごく良くなったの。ピカピカ✨。だから、またやりたいんだけど、医者に必要ないって言われちゃって。」
そりゃあ、検査だからね。美容じゃないからね。

それで私が、
「いや、ドイツでは知らないけど、日本には腸内洗浄やってくれる美容外科があってね…腸内デトックスっていって高いんだけど…それやると、本当お肌が綺麗になるらしい。余計な溜まったモン出すわけだから。体重も減るし。でねー、それ、家でやってる人もいるらしいんだよね。ネットでそれ用の器具を売ってんのよ。」
「ウソ〜‼️」

と、話が白熱して来たところで、
「はい、舞台に出て下さい。」
の指示が。

我々3人は、話し足りないような、本番直前に尾籠な話をしていた自分たちに呆れるような変な気分で明るい舞台に出たのだった。