
朝顔は、朝咲くのだろうか
朝顔は、本当に朝咲くのだろうか。
高校生の私は、それを試してみた。
つぼみの朝顔を一輪、煤竹の花入れに挿し、床の間へ置く。
雨戸を閉め、部屋は真っ暗になった。
私は、わくわくしていた。
翌朝、まだ暗いうちに雨戸を開ける。
朝顔の前に、ただ座った。
静かだった。
暗闇に目が慣れたのか。
それとも夜が明けてきたのか。
ふと、朝顔が動いた気がした。
ぽっと、花の先がほどけた。
思わず息をのむ。
少しずつ。
本当に少しずつ。
花は、自分の力だけで朝を迎えていく。
私は泣きそうになっていた。
そこには、朝顔と私だけの時間が流れていた。
実験をしようとした邪な私。
ただ咲くことだけをしている朝顔。
それだけのことが、どうしてこんなにも強いのだろう。
あれから何十年もたった。
でも、あの朝の静けさと、朝顔が開いていく姿は、今も忘れられない。
出会えてよかった。
あの素晴らしい時間に、今でも感謝している。
もし客人を迎える日があるなら、咲いた朝顔を飾るのではなく、一緒に朝顔が咲く時間を贈りたい。
それが、私にとって一番のもてなしだと思っている。