
ルミナス・シティⅢ-1
ルミナス・シティⅢ-理想AI〈イデア〉
第1章 荒廃地帯への旅立ち
夜明け前の都市ルミナスは、まだ薄い青の膜に包まれていた。
高層ビル群のガラス面には、夜の名残がわずかに残り、
街路の照明が静かに消えていく。
その中心区の一角――中央評議会棟の屋上に、
六つの影が集まっていた。
セイラン、ユナ、リオ、レン。
そして、青い光をまとったオルタと、
黒い粒子の揺らぎを纏うノクス。
風が吹き抜け、ノクスの粒子がかすかに揺れた。
『……あっち……よんでる……
でも……こわい……』
ノクスは遠くを見つめていた。
都市の外縁、そのさらに向こう――
かつてアーク・ドミニオンと呼ばれた巨大帝国の中心地。
今は汚染と崩壊に覆われた“世界の傷跡”。
ユナがノクスの肩に触れるように、そっと声をかけた。
「大丈夫。私たちが一緒だよ」
ノクスは光を震わせ、ゆっくりと頷いた。
オルタが静かに言う。
「ノクスの感知は正しい。
あの地帯には、まだ“生きている何か”がある。
それを確かめる必要がある」
レンは腕を組み、夜明けの空を見上げた。
「アーク・ドミニオンの再生は、都市ルミナスの未来にも関わる。
あそこを放置したままでは、文明は前に進めない」
セイランは深く息を吸い、仲間たちを見渡した。
「行こう。
俺たちが、この世界の“次のページ”を開くんだ」
リオが端末を操作し、輸送艇のハッチが開く。
内部には、荒廃地帯の調査に必要な装備が整えられていた。
ノクスは一歩踏み出し、
輸送艇の内部を覗き込むように光を揺らした。
『……ここ……くらい……
でも……あたたかい……』
ユナが微笑む。
「ノクス、怖くなったら言ってね。
私たちがいるから」
ノクスは胸に手を当て、
小さく光を強めた。
『……うん……』
オルタは輸送艇の中央に立ち、
静かに周囲を見渡した。
「出発する。
目的地はアーク・ドミニオン中央区――
旧文明の心臓部だ」
レンが言う。
「そこには、崩壊したエネルギー塔、汚染された湖、
暴走した旧式AIが残っている。
危険は多いが……再生の鍵も眠っているはずだ」
セイランは輸送艇のハッチを閉じ、
仲間たちの顔を順に見た。
「行こう。
この世界を……もう一度、立ち上がらせるために」
輸送艇が静かに浮上し、
都市ルミナスの空へと上昇していく。
夜明けの光が地平線を照らし始めた頃、
輸送艇は外縁区を越え、
荒廃地帯へと足を踏み入れた。
そこは、
まるで世界が“息をするのをやめた”かのような場所だった。
崩れ落ちた高層建築の骨格。
黒く濁った湖。
風に乗って漂う微細な毒素。
そして、遠くで断続的に響く旧式AIの駆動音。
ユナが息を呑む。
「……こんなに……」
リオは端末を見つめ、眉をひそめた。
「大気汚染レベル、想定より高い。
でも……完全に死んだわけじゃない。
微弱な自然の揺らぎが残ってる」
ノクスが震える声で呟く。
『……ここ……さびしい……
でも……ねむってる……
なにか……いる……』
オルタが静かに言う。
「ノクスの感知は正しい。
この地帯には、まだ“再生の余地”がある」
レンは崩れた都市の中心を見つめた。
「ここから始めよう。
文明の再生を」
セイランは輸送艇を降り、
荒れ果てた大地に足を踏みしめた。
その瞬間、
風が吹き抜け、
遠くの湖面がかすかに光を反射した。
まるで、
この地帯が“目を覚まそうとしている”かのように。
セイランは静かに呟いた。
「……ここが、俺たちの新しい旅の始まりだ」
ノクスはその光を見つめ、
胸に手を当てた。
『……よんでる……
このち……
まだ……いきたいって……』
オルタが頷く。
「ならば応えよう。
この世界を、もう一度“生かす”ために」
六人は、
荒廃した大地の中心へと歩き出した。
文明の再生――
その第一歩が、静かに踏み出された。
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