
小宇宙【コスモ】を抱えて
小宇宙と書いて「コスモ」と読むことを、わたしは『聖闘士星矢』で知った。
当時、中学生だったこともあり「かっこいいじゃん」とその読み方を気に入った。
『キミは、小宇宙を感じたことがあるか⁉』
『燃えろ オレの小宇宙よ!』
名言を脳に刻み込み、いつか使うと心に誓った。
だけど、小宇宙なんて言葉、実生活では使う機会がない。小宇宙を引出しの中にしまったまま、わたしは大人になった。
ところで、わたしは不注意のせいか体のあちこちを柱やら椅子の脚やらにぶつけてしまう。
先日もローテーブルの脚に脛をぶつけ、派手な痣ができてしまった。中心が赤紫色でその周りはうっすらと青い。まるで宇宙のような……。宇宙……。いや、これは、小宇宙!
チャンスとはふいに訪れるものだ。わたしの脛に小宇宙が誕生するなんて。
テレビの前に寝そべる子どもに痣を見せつける。
「これ! 見て! 小宇宙みたいでしょ!」
「え、こすも、って何……」
「コスモって、小宇宙のことよ! 小宇宙が燃えてるの、わたしの脚で!」
「え、こわ」
「小宇宙を感じたことがあるか⁉」
ドン引きの表情で「無いよ」と呟いた。なぜこの感動が伝わらないのか。もっと小宇宙を感じてほしい。
我が子の視線はすでにテレビへと戻った。脛の小宇宙は「なんかすみません」としょんぼりしている。
ええい、負けるか。燃えろ! 小宇宙よ!