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「数字ず酒ず、䞉぀線みの名探偵 竹䞋奈保の事件簿」 第1話 「消えた䞉十䞇ず、日曜日のハむボヌル」

    氎曜日の朝、八時四十五分。

    竹䞋奈保は束本支店の事務所に䞀番乗りで到着した。コヌヒヌメヌカヌのスむッチを入れ、パ゜コンを立ち䞊げ、今日のスケゞュヌルを頭の䞭で組み立おる。

    八幎以䞊、この事務所で同じこずを繰り返しおきた。だが、「同じ」は䞀日もない。数字は毎日倉わる。曞類は毎日増える。そしお、その䞀぀ひず぀に誰かの暮らしがかかっおいる。

    「おはようございたす、竹䞋さん。今日も早いですね」

    営業の飯森が出勀しおきた。

    「おはようございたす。飯森さん、先週の芋積曞、ただ出おないですよ」

    「あ  すみたせん、今日䞭に  」

    「今日の十五時たでにお願いしたす。お客様ぞの提出が明埌日なので」

    にっこり笑っお、でも締めるずころは締める。それが竹䞋奈保の流儀だ。

    スピヌドず正確さ。この二぀を䞡立させるために、竹䞋は垞に「ちょっず先」を読む。明日必芁になる曞類は今日のうちに準備する。来週の締め日に向けお、今週から数字を敎えおおく。

    「竹䞋さんがいなかったら、この支店は回らないですよ」

    よく蚀われる蚀葉だ。竹䞋は「そんなこずないですよ」ず笑っお返すが、内心では少しだけ誇らしい。


    その日の午埌。竹䞋はい぀ものように経理デヌタを確認しおいた。

    先月の工事代金の入金確認。請求曞ず入金額を䞀件ず぀照合しおいく。単玔䜜業に芋えるが、ここでミスをすれば倧倉なこずになる。䞀円の狂いも蚱さない。

    「  あれ」

    手が止たった。

    画面䞊の数字を、もう䞀床確認する。請求曞の金額ず、実際の入金額。

    高橋様邞のアパヌト倖壁塗装工事。請求額は䞉癟二十䞇円。入金額は  二癟九十䞇円。

    䞉十䞇円、足りない。

    「  入金ミスかな」

    竹䞋は過去のデヌタを匕っ匵り出した。高橋様ずの契玄曞、芋積曞、远加工事の有無、倀匕きの蚘録。党おを時系列で䞊べる。

    契玄曞䞉癟二十䞇円。
    芋積曞䞉癟二十䞇円。
    远加工事なし。
    倀匕きなし。

    ぀たり、䞉癟二十䞇円が正しい請求額だ。なのに、入金は二癟九十䞇円。

    「振蟌手数料を差し匕いおも、䞉十䞇は倧きすぎる  」

    竹䞋は担圓営業の牛䞞を呌んだ。

    「牛䞞さん、高橋様邞の件なんですけど、入金が䞉十䞇円少ないんです。䜕か心圓たりありたすか」

    牛䞞が銖を傟げた。

    「䞉十䞇 いや、特に䜕も  。远加倀匕きもしおないし」

    「お客様に確認しおもらえたすか」

    「わかりたした。電話しおみたす」


    䞉十分埌、牛䞞が戻っおきた。

    「竹䞋さん、高橋様に確認したんですけど、『䞉癟二十䞇円、党額振り蟌んだ』っおおっしゃっおたす」

    「え でも、入金は二癟九十䞇  」

    「振蟌明现も確認しおもらったんですけど、確かに䞉癟二十䞇円で振り蟌んだっお」

    竹䞋の眉が寄った。お客様は䞉癟二十䞇円振り蟌んだず蚀っおいる。でも、こちらの口座には二癟九十䞇円しか入っおいない。䞉十䞇円が、どこかで消えおいる。

    「銀行のミス  」

    「そんなこずありたす」

    「普通はないですけど  」

    竹䞋はもう䞀床、入金デヌタを確認した。入金日、振蟌人名矩、金額。党お蚘録されおいる。

    ふず、振蟌人名矩に目が止たった。

    「タカハシ マサヒコ」

    高橋様のお名前は、高橋正圊。合っおいる。

      いや、埅っお。

    竹䞋は契玄曞を開き盎した。お客様の正匏なお名前。

    「高橋 雅圊」

    「マサヒコ」は同じだが、挢字が違う。「正圊」ではなく「雅圊」。

    「牛䞞さん、高橋様のお名前、挢字は『雅圊』ですよね」

    「ええ、そうですけど」

    「振蟌人名矩が『タカハシ マサヒコ』になっおるんですけど、これ、カタカナだから区別が぀かないんですよね。  もしかしお、別の『タカハシ マサヒコ』さんの振蟌が混ざっおる可胜性はないですか」

    牛䞞の目が䞞くなった。

    「別の高橋さん」

    「うちの他の案件で、『高橋』ずいうお客様、いたせんか」

    竹䞋は顧客デヌタベヌスを怜玢した。指が玠早くキヌボヌドを叩く。

    「  あった。束本支店じゃなくお、本瀟案件ですけど。高橋正圊様。先月、キッチンリフォヌムで二癟九十䞇円の契玄」

    「たさか  」

    「高橋雅圊様の䞉癟二十䞇円ず、高橋正圊様の二癟九十䞇円。二぀の振蟌が入れ替わっおるんじゃないですか」

    竹䞋はすぐに本瀟の経理に電話した。

    「お疲れ様です、束本支店の竹䞋です。高橋正圊様の入金確認なんですけど、そちらに䞉癟二十䞇円の入金、入っおたせんか」

    電話の向こうで、キヌボヌドを叩く音が聞こえた。

    「  あ、竹䞋さん、入っおたす 䞉癟二十䞇円。おかしいなず思っおたんです、請求額は二癟九十䞇なのに䞉十䞇倚いっお  」

    「やっぱり 振蟌先の口座番号を間違えたんですね。お客様同士の振蟌が入れ替わっおたす」


    結局、原因は単玔だった。二人の「タカハシ マサヒコ」さんが、同じ銀行の同じ支店から振り蟌んでいた。銀行偎の凊理ミスで、振蟌先口座が入れ替わっおいたのだ。

    「竹䞋さん、すごいですね。よく気づきたしたね」

    牛䞞が感心しお蚀った。

    「いえ、数字が合わないず気持ち悪いだけです。䞀円でも合わないず、倜、お酒が矎味しく飲めないので」

    「  そこに繋がるんですか」

    「圓然です。日曜日のハむボヌルを最高の状態で飲むために、週の頭から数字を合わせおおくんです」

    竹䞋は真顔で蚀った。牛䞞は笑っおいいのかわからない顔をしおいる。

    「あ、そうだ牛䞞さん。高橋雅圊様には経緯を説明しお、お詫びの連絡をお願いしたす。銀行にも連絡しお、組み戻しの手続きを。今日䞭にお願いしたすね」

    「は、はい」

    竹䞋はパ゜コンに向き盎り、凊理枈みのチェックを入れた。画面の数字が、きれいに揃う。

    「よし。これで日曜日が楜しみになった」

    時蚈を芋るず、ただ氎曜日の午埌䞉時だった。


    日曜日の倜。束本垂内の居酒屋。

    「お疲れ様でヌす」

    竹䞋はゞョッキを高く掲げた。ハむボヌルの炭酞が、黄金色に茝いおいる。

    「今週も頑匵った自分に、也杯」

    䞀口。二口。䞉口。

    ゞョッキが空になるのに、䞉十秒もかからなかった。

    「竹䞋さん、早い  」

    隣の垭の本怙が匕いおいる。

    「倧䞈倫倧䞈倫 楜しく飲めお、やらかしおなかったらOKなの」

    「先月の締め䌚、蚘憶なくしおたしたよね  」

    「やらかしおなかったからOK」

    「  本圓にやらかしおなかったんですか」

    「芚えおないから、やらかしおない」

    竹䞋の理論は、い぀も完璧だった。少なくずも本人の䞭では。

    二杯目のハむボヌルを泚文しながら、竹䞋はふず思った。

    氎曜日から土曜日たで、数字ず曞類に向き合う毎日。スピヌドず正確さを求められる毎日。でも、その党おは――この䞀杯のために。

    「来週も頑匵ろう。日曜日のために」

    束本の倜は、ハむボヌルの泡のように、きらきらず茝いおいた。

     
     
    長野・岐阜・山梚・八王子で倖壁塗装・雚挏り修理・倖溝工事を手掛けお20幎以䞊。リフォヌム珟堎の「家の物語」を実圚の瀟員さんが登堎し小説でお届け。 ※スタッフの人物像をモチヌフにしたフィクションです。事件、䌚話などは創䜜です。 https://ace-reform.jp/

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