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恋愛ラボ💘5章 結婚しなければならないと思っているあなたへ〜

    第5章

    結婚は人生保険なのか?


    恋愛ラボ・結婚研究室のドアが勢いよく開いた。


    「あの!私、結婚しなきゃいけないんです」

    研究員は顔を上げた。

    その言葉は、
    この研究室では珍しくなかった。
    しかし。
    気になることが一つあった。

    『したい、ではなく?』

    女性は一瞬止まった。

    「あ・・・」

    『しなきゃ?』

    女性は少し困ったように笑った。

    「そうですね…しなきゃです」

    研究員はノートを開く。
    カリ。

    最初の一行を書く。

    症例No.005
    結婚したいではなく、結婚しなければならない人

    👨‍⚕️「重症ですねぇ」

    「まだ何も話してませんけど!?」

    👨‍⚕️「わかりますぅ」

    「なんで!?」

    👨‍⚕️「顔ですぅ」

    「はぁ⁈」


    研究員は白紙を一枚差し出した。


    『少し実験をしましょう』


    「実験?」


    『はい』


    研究員はペンを差し出す。

    『結婚しなかった未来を書いてください』

    女性は笑った。

    「嫌な実験ですね」

    『そうかもしれません』

    女性はペンを持つ

    そして 止まる
    書けない

    『どうしました?』

    「・・・わからない」

    研究員は黙っている

    女性は紙を見つめた


    白い紙 真っ白な未来
    その紙を見ているだけで、少しだけ胸が苦しくなる。

    『何が浮かびますか?』

    女性は目を細めた。

    「マンション」

    『はい』

    「一人暮らし」

    『はい』

    「静か」

    『はい』

    「親はいない」

    研究員のペンが止まる

    女性もその言葉に少し驚いた

    今まで考えたことがなかった
    親はずっといるような気がしていた

    でも

    私38歳
    父は68歳
    母は65歳


    数字にすると、急に現実味が出る

    女性は少し黙った
    研究室も静かだった
    遠くで時計の秒針だけが聞こえる


    「私・・・」


    『はい』


    「親がいなくなるのが怖いのかも」

    研究員は何も言わない

    女性は続ける

    「結婚できないことじゃなくて」

    「親がいなくなって、本当に一人になることが怖いのかもしれない」

    ・・・。


    👨‍⚕️「人間ですねぇ」

    女性はもう驚かない
    いつの間にか隣にいた



    👨‍⚕️「未来が怖い時って」
     「未来を見てるようで」
     「実は喪失を見てるんですよぉ」

    女性は先生を見る
    初めて少しだけ真面目に


    👨‍⚕️「失うのが怖いんですぅ」


    👨‍⚕️「若さも」
      「親も」
      「可能性も」
      「選択肢も」

    先生は欠伸をする

    👨‍⚕️「だから結婚を急ぐんですぅ」

    ・・・。

    『もし』

    『明日、理想の人と結婚できるとして』
    『不安は全部消えますか?』

    女性は反射的に

    「はい」

    と言いかける

    でも 止まった

    消えない
    たぶん、消えない

    親は年を取る
    自分も年を取る
    病気になるかもしれない

    不安は消えない

    結婚しても
    消えない

    女性は小さく笑った
    少しだけ
    力が抜けたような笑顔だった

    「私」

    『はい』

    「結婚をゴールだと思ってました」

    『はい』

    「でも違うんですね」

    研究員は頷く

    『結婚はスタートです』

    『人生の不安が消える場所ではなく』
    『誰かと人生を続ける場所です』

    ・・・。



    女性は立ち上がった。
    研究室へ来た時より、

    未来が明るく見えたわけではない。
    不安が消えたわけでもない。
    でも。

    何を怖がっていたのかは、
    少しわかった気がした。

    それだけで、
    人は少し前へ進める。


    恋愛ラボ・結婚研究室。

    本日の研究は終了である。

    女性は研究メモを見つめていた。

    結婚したら安心できる。
    ずっとそう思っていた。

    だから焦った。
    だから婚活をした。
    だから結婚を急いだ。

    でも。


    今日初めて気づいた。

    私が欲しかったのは、
    結婚そのものじゃなかった。

    未来を一人で抱える怖さから、少し解放されたかったのだ。

    親が年を取ること。
    自分が年を取ること。
    いつか病気になるかもしれないこと。
    誰かを失うこと。未来がわからないこと。

    本当に怖かったのは、
    結婚できないことではなく、
    人生の不確実さだった。

    女性はゆっくりと息を吐いた。

    少しだけ。
    肩の力が抜けた気がした。


    『何か見つかりましたか?』
    研究員が尋ねる。

    女性は小さく笑う。
    「結婚相手を探していたと思ってました」


    『はい』

    「でも」

    女性は窓の外を見た。
    夕方の光が研究室に差し込んでいる。

    「安心を探していたのかもしれません」


    研究員は頷いた。

    『それは大きな発見ですね』

    その時だった。

    👨‍⚕️「人間ですねぇ」

    先生がソファの下から顔だけ出していた。

    「先生、そこ好きですね」

    👨‍⚕️「落ち着くんですぅ」


    『先生』



    👨‍⚕️
    「でもですねぇ」
    珍しく先生の声が静かだった。

    👨‍⚕️「安心って、誰かにもらうものじゃないんですよぉ」

    研究室が静かになる。


    👨‍⚕️「誰かがいて安心することはあります」

    👨‍⚕️「でも、安心を全部預けると」

    👨‍⚕️「その人が揺れた時に、自分も揺れるんですぅ」

    女性は黙って聞いていた。

    👨‍⚕️
    「結婚は保険じゃありません」
    「契約でもありません」

    👨‍⚕️「不安を消す魔法でもありません」
    先生は少し笑った。

    👨‍⚕️「ただ、人生を一緒に考える人が増えるだけですぅ」

    ・・・。

    女性はその言葉を何度か心の中で繰り返した。

    人生を一緒に考える人。

    それは、
    人生を代わりに背負ってくれる人ではない。
    人生を保証してくれる人でもない。


    ただ、
    嬉しい日も。
    苦しい日も。
    迷う日も。

    隣で
    『どうする?』

    と話せる人。
    そんな存在なのかもしれない。

    女性は立ち上がった。

    研究室へ来た時より、未来が明るく見えたわけではない。不安が消えたわけでもない。

    でも。
    何を怖がっていたのかは、
    少しわかった気がした。
    それだけで、人は少し前へ進める。


    恋愛ラボ・結婚研究室。
    本日の研究は終了である。


    【研究メモ】
    症例No.005
    結婚は人生保険なのか?

    主な症状
    ☑ 結婚すれば安心できる気がする

    ☑ 将来への漠然とした不安がある

    ☑ 老後や病気を想像すると焦る

    ☑ 一人で生きる未来が怖い

    ☑ 「結婚したい」より「結婚しなきゃ」が強い



    研究結果

    人は時々、結婚相手を探しているようで、安心を探している。

    しかし、結婚は人生を保証する制度ではない。
    不安を消す魔法でもない。

    結婚とは、
    人生の不安をなくすことではなく、人生を一緒に考える相手と出会うことなのかもしれない。


    次回研究テーマ
    第6章
    好きなのに結婚したくない人

    愛している。
    一緒にいたい。
    離れたくない。

    それなのに、
    結婚という言葉が出た瞬間、
    心が逃げ出す人がいる。

    自由がなくなるから?
    責任が重いから?
    過去に何かあったから?

    それとも――
    その人が恐れているのは、
    結婚ではなく別の何かなのだろうか。
    研究は、さらに謎めいた領域へ進む。🧪📖✨

     
     
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