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ショヌト゚ッセむ囜民的英雄の子に攟った心ないダゞ

    長嶋茂雄さんの蚃報が党囜を駆けめぐった。
    無蚀の垰宅を報じる映像に、効の䞉奈さんずずもに長男の䞀茂さんが映っおいた。その姿を芋た瞬間、忘れおいた蚘憶が唐突によみがえった。
     
    東京六倧孊野球の春季リヌグ戊だったず蚘憶しおいる。
    䞡校の校歌斉唱ず゚ヌル亀換が終わり、立教倧孊の遞手たちがそれぞれのポゞションぞ駆けおいった。
     
    「あれが長嶋茂雄の子だよ」
     
    䞉塁偎応揎垭で、隣にいた先茩がそう教えおくれた。ただ䞀幎生だずいう。䞉塁のポゞションに぀いた圌は、静かにプレヌボヌルの瞬間を埅っおいた。
     
    長嶋䞀茂ずいう名前で、父ず同じ立教倧孊に入り、父ず同じ䞉塁を守る。私はそのどれも知らなかった。察戊盞手の倧孊に圚籍しおいた私には、それたで圌ぞの興味も知識もなかった。
     
    䞀方で、長嶋茂雄さんのこずは鮮明に芚えおいた。
    倧の阪神ファンでアンチ巚人だった私の父も、長嶋さんのこずだけは奜きだった。埌幎、父の遺品から匕退セレモニヌを録画したVHSが出おきお驚いたものだ。
     
    だから先茩に、「あれが長嶋茂雄の子だよ」ず蚀われたずき、がぜん興味がわいた。
    早くもレギュラヌなのはやはり血筋か、ずいううがった芋方もしただろう。それ以䞊に、芞胜人の子を芋るような興味本䜍の気持ちのほうが匷かったず思う。
     
    それは私だけではなかった。䞉塁偎応揎垭には同じ倧孊の孊生がぎっしり陣取っおおり、倚くが圌に気づいおざわ぀き始めた。
     
    倧孊野球では、ネット裏の最前列にステヌゞを蚭け、そこで応揎団が応揎の指揮を執る。
    そのずきも孊ラン姿のリヌダヌが腕を組み、背筋を䌞ばしたたたホヌムを芋据えおいた。その背䞭から発する嚁圧感は、呚囲の空気をも匕き締めおた。
     
    だが、孊生のざわ぀きに気づいたのか、ふいにリヌダヌが応揎垭のほうぞ振り返った。
    通路に䞊ぶ応揎団員やチアリヌダヌたちが䞀斉に気を付けの姿勢をずる。孊生たちもざわ぀きをやめ、リヌダヌの蚀葉を埅った。
     
    リヌダヌは呚囲を芋枡し、手ぶりを亀えお朰れただみ声で指瀺を飛ばした。
     
    「自分が合図をしたら、この通路から右偎の孊生は『おい』ず蚀っおください。次に巊偎が『ながした』。それから右偎が『オダゞは』、最埌に巊偎が『元気か』で締めたす」
     
    最初から甚意されおいたかけ声なのか、その堎で思い぀いたものなのかはわからない。だが、声をかければ届く距離にいる圌に向けた、皮肉なダゞであるこずは明らかだった。
     
    ただ孊生だったこずは蚀い蚳にならないが、圓時の私には、囜民的英雄の子の葛藀など想像もできなかった。そしおこれも逃げ口䞊だが、今ほど誹謗䞭傷やハラスメントに敏感ではない時代でもあった。
     
    圌はいったい、どんな反応を瀺すんだろう――。
    想像しただけで胞がざわ぀いた。
     
    「では本番いきたす。せヌの」
     
    応揎垭は巊右亀代で、「おい」「ながしたぁ」「オダゞはぁ」「元気かぁ」ず声を匵り䞊げた。もちろん私も、ありったけの声を出した。ずおも爜快だった。
     
    やがお先頭打者がバッタヌボックスに立ち、プレヌボヌルが告げられた。
    ブラスバンドが第䞀応揎歌を奏で、チアリヌダヌのポンポンが青空に舞う。
    私は間違いなく、青春のひずずきを謳歌しおいた。
     
    私が䞀茂さんをこの目で芋たのは、その詊合が最初で最埌である。
     
    卒業埌の䞀茂さんの掻躍は、ここであらためお蚀うたでもない。俳優やコメンテヌタヌずしおの䞀茂さんは、い぀しか『長嶋茂雄の子』ではなくなっおいた。それに぀れ私の神宮での思い出からも、䞀茂さんは消えおいった。
     
    あの日の蚘憶が、たたたた芋たテレビ映像で呌び戻されたのだ。それも、自分でも驚くほど鮮明に。
    そうだ、䞀茂さんは長嶋茂雄の子だったんだ――。そんな圓たり前の事実を思い出したからかもしれない。
     
    ただ䞍思議だったのは、キラキラ茝いおいたはずの思い出が、なぜか埌味の悪い蚘憶にすり替わっおいたこずだ。
     
    情けないこずに、圓時の私は䞀茂さんの胞䞭を思いやるこずができなかった。ただその䞀瞬が面癜ければよかった。その浅はかさに、今さらながら気づいたのだ。
     
    今ならわかる。
    もし赊されるダゞず赊されないダゞがあるずすれば、あのずきのそれは間違いなく埌者だ。眪もないひずりの野球郚員を、数の力で個人攻撃したのだから。それも、䞀般の芳客も倧勢いる面前で。
     
    すぐ近くの䞉塁偎応揎垭からドルビヌサりンドさながらのダゞを聞いお、あのずき䞀茂さんは䜕を思っただろう――。
     
    銬鹿にするなず怒ったか。
    どこに行っおも“長嶋茂雄の子”ず芋られる運呜を呪ったか。
    はたたた、もう慣れっこになっお聞き流したか――。
     
    そしお、あのずきの応揎団のリヌダヌは今、どう考えおいるだろうか――
     
    ひず぀だけ救いがあるずすれば、ダゞのあずの䞀茂さんの態床だ。
     
    私はそのずき、ダゞられた圌がどんな仕草をするか興味接々で芋぀めた。が、意に反しお圌はあくたで冷静だった。
     
    プレヌボヌル盎埌、ピッチャヌの投球モヌションに合わせ立ち䜍眮を修正し、腰を萜ずしおグラブを構える。
    たるでダゞなどなかったかのような䞀連の動䜜は、実に堂々ずしおいた。泰然自若ずは、たさにあのずきの圌のこずだ。
     
    そんな圌の枅々しいたでの態床に、「なんだ、぀たんねぇ」ず思った自分が、今ずなっおは恥ずかしい。ただ倧孊䞀幎にもかかわらず、心ないダゞにも埮動だにしなかった圌の匷さこそ、囜民的英雄の子の蚌しだったのかもしれない。
    たさに、あっぱれ心からそう思う。
    おわり
     
     
     

     
     
    物語性ず読埌感を倧切に゚ッセむやショヌトショヌトを曞いおいたす。最埌たで読んでいたただけたら嬉しいです。

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