#2! 帰り道
22時14分。
来た時、というか何度も通ったこの道を辿っていく。
道端の木々が風に揺られている。
昼より穏やかになった風を感じる。
駅近くのネオン街から少し離れたこの静寂は、
僕に思い出させる。
思ってしまう前に、
僕は歩みを早める。
歩道橋。
だめだ。
ここからの景色が目に入ると、止まらざるを得なくなってしまった。
歩道橋の片側に身体をあずける。
やっぱりこの場所は思い出させる。
笑顔で振り向くあの景色。
風が涙を運んでく。
あの日からこんなことはなかったのに。
涙に乗せて流せるほどじゃないから。
ずっとずっと一緒だと思ってた。
僕が彼女を一生守っていくんだって。
あの可愛らしい手のぬくもり、
ふとしたときの彼女の気遣い、
布団に入った時に自然と抱きつくその仕草、
全部、全部、目が覚めたら…。
きっと、僕だけなんだ。
もう、そんなことは、分かっているのに。
唇をかみしめて足早にその場を立ち去る。
すれ違うカップルの騒ぐ声に気にも留めず、歩みは止まらない。
風は涙の痕だけを消してくれた。
僕はまだ、しばらく、思い出してしまうようだ。