
羽田からルフトハンザ航空で
パリに向かうことにした。
ルフトハンザ航空で一度ミュンヘンを経由していく。
どうでもいいが、ルフトハンザ航空はとても良い航空会社だった。そうそう乗ることもなかろうが、また利用したい。
羽田から乗った飛行機で隣に座っていたのはドイツ人の若い兄ちゃんであった。24歳だと言っていた。ただ日本のことをえらく誉めていた。
まくし立てるようによく話す若者だった。
「日本は素晴らしい。安全だよ、食事が美味しい、絶対に又来るよ」
「僕が駅で迷っていたら、そこまで連れて行ってくれるんだ。他でもチケットの買い方や行き方を教えてくれた。しかも僕が何かお礼をしたいと言うと要らないって言うんだ。信じられない、なんてkindでPoliteなんだ。ドイツ人にあんな人たちいないよ、みんな無視だよ。」
私もこの前までアメリカに居たので「僕もアメリカに居たけども、帰ってきたら日本人は凄く英語が上手くなった。昔は日本人はシャイで英語が話せないなんて言われたんだけどねえ」と言うと「駅のスタッフも店のスタッフも親切だよ。」「誰も盗まない。ドイツで、トイレなんかにスマホを置き忘れたら一瞬でなくなるよ。でも僕がトイレにものを忘れた時に慌てて戻ったら全部そのまま残ってたよ。凄いことだよ、ドイツじゃありえないよ。」とのこと。なお彼は日本人の地域差も感じたようで「東京の人はGentleだった。凄く助けてくれた。大阪の人はちょっと違って乱暴で適当な人が多いみたいだ。大阪の人の方がドイツ人みたいだと思う」などと言っていた。
私は普段日本に対して批判的な記事を書くことも多いのだが、駅員の皆さんと店舗のスタッフの皆様には感謝を捧げたいと思う。
しばしば「日本人とドイツ人は勤勉性で、フォーマルを好む点で類似点が多い」と言われるが、私は勝手にドイツ人のイメージを持っていたのでそう聞いてみたが、彼は笑いながら答えた。
「違う違う、ドイツ人はそんなに真面目じゃない。日本人は有休を半分しか使わないらしいけど、ドイツ人は絶対に全部使うよ。すぐに仕事辞めるし」
彼はハンブルグの近郊に住んでおり、ミュンヘンからハンブルグに乗り継ぐらしかった。
「移民はヤバいよ、ハンブルグの南部に移民しかいない地区がある。ドイツ人はもう誰も近づかないし、政府も手が出せないから放置だよ。」
「僕はエンジニアになるんだ。」と彼は言った。
「どこで働いてるんだ?」と聞いたら「この旅行から帰ったらポルトガルに行く。ドイツは税金が高すぎるんだ。若者から45%も税金を取る。おかしいよ。BMWとかみんな海外に移転を始めている。政府が馬鹿なんだ。クリーンエネルギーを推進しようとして、原発を全廃(Bomb)してしまったよ。でどうしてると思う?フランスからエネルギー買ってるんだ、フランスのエネルギーは多くが原発なのに。エネルギーコストが上がっちゃったから自動車会社は国外移転しようとしてる。今の大統領は議会でも早く辞めろ出て行けと言われてるよ。」
「今は何で発電してるんだい?」と聞くと「風力さ。馬鹿だろ?原発と効率が違いすぎるんだ。足りるわけないじゃないか。」
(筆者注:実際には火力発電なども組み合わせている)
彼は若者にありがちな極論はあるものの、政治や経済に興味が強かった。
「沖縄になぜ米軍がいるんだ?」と言われたので私はフライトマップを使って中国や台湾との位置関係、地政学的な意味で重要なポイントであることを話した。
まくし立てる彼からは「まだ何物にもなれない若者」の焦りと生意気さが滲み出ていて、私は若干持て余しながらも好感を持った。若者というのはこうであった方がいい。
最近は何でもAIで答えを教えてくれるし、情報過多で変に老成している若者が増えた気がするが、こういうエネルギーと一種の焦燥感に満ちた状態は、ある意味若者の特権で、とても素晴らしい。
私の英語が拙いせいもあって、丁度いい聞き手のような感じになったので、彼は気持ちよく話せたのかも知れない。
彼の話す声はだんだん大きくなったので、後ろに座っていた中年女性が来て「ごめんなさいね、旦那が寝てるから声を小さくしてくれる?」と注意されてしまった。彼はそこからは声を落としたが、熱量のようなものは終始そのままであった。
飛行機を降りるときに「Have a good Flight」と型どおりの挨拶をして別れ、私はタラップを移動してパリへの乗り継ぎ便の通路へ向かった。
最後彼がドイツの国内線のゲートに向かっていく後ろ姿を見ながら、名前も聞かなかったこの青年に良い未来があると良いなあ、という思いが自然にこみ上げてきた。