
『こわがりのすん』16ユリ・ゲラー🥄
ユリ・ゲラーをご存知だろうか?
私と同世代なら、殆どの方が知っている有名な超能力者だ。
彼は念力でスプーンを曲げたり、動かなくなった時計を動かしたりする。
「すん」が子どもの頃、TVでも特集番組が放送されたりと、ちょっとした超能力ブームがおきていた。
たぶん、あの頃は殆どの子ども達が、スプーンに向かって
「曲がれ、曲がれ、曲がれ」
と、念力を送っていたと思う。
中には力づくで曲げてしまう輩もおり、給食の先割れスプーンなどは、被害の対象になりやすかった。
「すん」も、何気なくスプーン曲げに挑戦してみたくなった。
この前「おとさん」がイギリスで買ってきた英国貴族の紋章がついたスプーンは、どれも凝った細工が施され、家族それぞれが自分のお気に入りを選んで使っていた。
「すん」が選んだのは、緑の地に金色のライオンの絵がついたスプーン。
「ようちゃん」のは、赤と青の地にライオンと一角獣が向き合ったスプーン。
ココアをかき混ぜる時もプリンを食べる時も、このスプーンを使うと特別美味しくなる。
そんな素敵なスプーンだった。
この時、家には沢山スプーンがあったのだが、何故か「すん」は「ようちゃん」のスプーンを手に取った。
そして、そして、
「曲がれ」
と、一言だけ言ってみた。
すると、どうだろう。
なんと、なんと、
その途端に、スプーンの首がもげてポトンと落ちた。
「えっ?なんで?」
もしかして、「すん」は超能力者なの?
「すん」は、怖くなった。
しかも「ようちゃん」の大事なスプーンを、壊してしまった。
帰宅した「ようちゃん」に事の次第を説明したのだが、「すん」の話を信じてくれない。
そして、ブリブリに怒っている。
「超能力なんて、ウソだね。わざとやったんだろう。どうせやるなら、自分のスプーンでやればいいのに」
「ようちゃん」が怒るのも、もっともだ。
申し訳ないと、心の底から思っている。
でもそれより、自分が超能力者だと知ってしまった「すん」は怖くなる。
そしてそれからは、超能力を封印して一切使わないことを心に固く誓った。
「すん」は、普通の人間になった。