
『こわがりのすん』2カレーの日
金曜日の晩ごはんは、たいていカレーライスだった。
今日も「おかさん」は、台所で玉ねぎを刻んでいる。
だけど、いつもとちょっと違う。
学校で怪我をした「ようちゃん」を病院に連れて行った「おかさん」は、さっき帰って来たばかりだった。
「ようちゃん」の怪我は大したことはなかったが、夕飯の支度が遅れたので「おかさん」はイライラしている。
「すん」は大好きな「おかさん」に笑ってほしくて、まとわりつく。
赤いSBのカレー粉の缶を指して、
「これ、いついれるの?」
と聞いたが、「おかさん」は無言だ。
「ねぇ、いついれるの?」
「すん」は、「おかさん」のエプロンを引っ張る。
ジャガイモの皮を剥いていた「おかさん」は、慌てて包丁を置いた。
「すんちゃん、危ないから向こうで遊んでなさい」
「なんで?」
すると突然「おとさん」がやって来て、
「言うことを聞きなさい」
と言うなり、「すん」を抱え上げた。
「えっ?」
「おとさん」は「すん」をお風呂場に下ろすと、ドアを閉めて外からカギをかけた。
「えっ? えっ? なんで?」
「すん」には、何が何やらさっぱりわからない。
カレー粉をいつ入れるか聞いただけなのに。
空腹時の「おとさん」は、怪獣になる。
「ねぇ、あけてー。あけてよぅ」
ドアの向こうは、静まり返っている。
ダメかぁ。
優しくお願いしてもダメなら、今度は「おとさん」を怖がらせるために怒鳴ってみよう。
「すん」は、思いっきりドラ声を張り上げて、
「こらぁっ!」
と、叫んでみた。
向こう側から、「ようちゃん」のクスクス笑いが聞こえる。
聞こえているなら、開けてよ。
も一度、怒鳴ってみよう。
「こらぁっ!こらぁっ!」
けれど渾身の「こらぁ」は、誰も怖がらせることは出来ず、「すん」は眠ってしまった。
しばらくして「おとさん」が、ドアを開けてくれた。
カレーのいい匂いがする。
「おかさん」が、ジャガイモたっぷりのカレーをよそってくれた。
「わぁ、おいしそう」
「ハイ、すん、プレゼントあげる」
「ようちゃん」はそう言うと、どさくさに紛れて自分のお皿から「すん」のお皿に、嫌いなニンジンを入れた。
ちっとも嬉しくないプレゼントだ。
でも、みんなで食べるカレーは美味しい。
ちょっぴり辛いカレーは、大声を張り上げたノドに少しだけしみた。