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最後の一球

    猫ノ宮おしゃけ

    ゲーム上では後一枚。

    投手・知覧智也

    僕がカードを置く。

    カードには県立高校エースと描かれている。

    「投手・知覧智也」
    球速:142キロ
    制球力:92
    変化球:88
    特殊能力:最後の一球

    向かいに座る悠介が笑った。

    パチン。

    机に置かれたカード。

    「打者・黒川康正」
    打力:95
    ミート:94
    選球眼:87
    特殊能力:逆転打

    「甲子園決勝、最終回設定てな」

    ほぉ、ほぉ。

    僕が出したカードはこの夏、まだ一度も負けてない。
    だから、僕は強気だった。

    「知覧選手、投球」

    カードを裏返す。

    ストレート。

    球速142キロ。
    黒川のミート94。
    判定__打者有利。

    「もらった」

    悠介がカードに指をかける。

    僕は奥歯を噛み締めた。

    「まだだ…」
    カードの右下。
    小さく刻まれた文字が目に入った。

    __特殊能力《最後の一球》

    僕がカードを指でなぞる。

    「発動」

    何も起こらない。

    悠介が笑う。

    「は…?不発?」

    描かれたマウンドには知覧智也はいない。

    「えっ?…」

    次の瞬間、もう一人の選手が立っていた。

    背番号は同じ。
    顔も同じ。

    けれど、知覧智也ではない。

    カードの名前がゆっくり書き換わっていく。

    「投手・知覧智也」

    その文字が消える。

    そして、

    「投手・知覧___」

    悠介の笑顔が消えた。

    「……おい」

    僕は答えない。

    《最後の一球》
    それは、智也の投げる球じゃない。

    「たぶん、ここからが本当の勝負だ」

    僕はカードを握った。

    同じ顔。

    同じ背番号。

    そして、同じ夏。

    僕はカードを構える。

    「投げるぞ…」

    最後の一球、カードの知覧智也が大きく腕を振った。


    拡張パック《血脈》


    お題「高校野球怪談」でした。

    お題成仏!!!!





     
     
     
    noteでは、毎週のお題からショートストーリーを書いてます。 ありふれた日常に小さな違和感を。 日常に少しだけ不思議を混ぜてます。

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